第三十部〜一時の感情こそ大切なもの?〜
第三十部〜一時の感情こそ大切なもの?〜
「夏祭りだ」
それは魔王のくせに女で魔王っぽくなく寧ろ中身は単なる子供で家に居座っている、そんな魔王のその一言から始まった・・・。
「・・・は?」
俺は眉間にしわを寄せて聞き返した。
「夏祭りが今度あるんだろう?」
夏期講習が終わり、久しぶりの部活から帰ってくるなりエレンの一言がこれだった。
「いや、それよりお前飯は?今日お前の当番だろ」
俺の記憶が正しければ今日はエレンの飯なんだがな。
季節は夏だがもう家の中は蛍光灯の明かりが無ければ駄目なほどの時間帯になっていた、つまりは飯の時間だ。
「なめてもらっては困る、公私混同せずちゃんと用意してあるぞ」
リビングから指さす先には台所にあるできたてのご飯と早くしてくれといわんばかりのラミアがいた。
「エレン、公私混同してないのならばここは夕食にするべきだと思いますが?」
うん、ラミアの言うとおりだな。そもそもこいつの場合は活動の原動力が私事だし。
「だから飯にするぞ、話は後な」
「後でちゃんと聞いてくれるか?」
「はいはい聞くから、俺が聞かなかった事があるか?」
俺は鞄を投げ捨てて台所へ入っていく。
「ないな、恭平はよく人の話しを聞いてくれる人だ」
残念、正解は聞いてきたんじゃなくて聞かされてきた・・・だ。
「で、何でお前が夏祭りなんて知ってんだよ?」
食事を終えリビングでテレビでも見ながら聞いてみる。
「回覧板にチラシが挟まっていた」
ひらひらとエレンの手にはピンクの紙に堂々と”街主催の夏祭り!!ぜひご参加ください!!”とドンとスーパーの安売りのようにでかでかと書かれたチラシだった。
「んで?行きたいと・・」
まあ子供の為にあるようなもんだしな・・・。
「うん、行きたい」
当然の答えだ。
「ラミアは?」
ラミアに聞いてみた。
「・・恭平の今後に差支えが無ければ」
「・・そうか」
ラミアらしい答えだ、相手に合わせる辺りがなんとも・・・でもな、もじもじしながらチラチラと夏祭りのチラシ見てるんじゃ行きたいですって言ってるようなもんだぞ?
「俺としては別に行ってもいいと思うんだけどな・・・それ開始何時になってる?」
俺としてはこの街では毎年やっている事だがこの二人にとっては初めてだしな、行かせてやりたいという気持ちがあった。ただしそれは保護者付かつばれずにでのことだ、放っておいたら何やらされるかわかったもんじゃないしばれても困るのだ、片付けも責任も俺だし。
エレンとラミアは二人でチラシを見て日付と開始時間を確認する。
「今週の日曜日ですね」
「開始は屋台が六時から、花火が八時からだな」
日曜の六時からか、今日は水曜だから・・・。
「・・・弓道の大会も近いし、こりゃ前日じゃなきゃ予定立てられないな」
本人達には悪いがこちらにも都合というものがある、時間が空いたとしても面倒だが部活に付き合って後から合流しなければいけないかもしれんしな。(注、本来部活は自分から入って真面目にしなければいけません)
「えー、恭平は行けないのか?」
・・・こいつはホント自分中心だな、ラミアを見習え。
「出来る限りは行くっていってんだろ?
いざとなったらサボってでも行くから安心しろ」
多分今頃俺みたいなやつが街中に大量生産されてるから。
「恭平、武道を学んでいるなら真面目に訓練しないと後で後悔しますよ?
勝負事があるなら尚更です」
少しばかり問題視するラミア。
「家族サービスってことでいいだろたまには?」
いつも無理して付き合ってるけどな、部活も真面目じゃないし。
「まあ、恭平がそう言うなら・・」
「そんなわけだから適当に期待しとけ」
「久しぶりの息抜きだな!!」
喜ぶエレン。
「久しぶり?」
俺から見れば息抜きしまくりだな。
「研究がはかどらなくてな」
う〜んと腕を組むエレン。
「おいおい、しっかりしてくれよ?
家じゃ何時までも面倒見てやれないんだからな?ラミアもいるんだし、下手したら働いてもらうぞ?」
へらへらと笑いながら俺は言った。
「・・・・あり、かもな」
「ねえよ!!」
とりあえず当日どうやってこいつらを隠すか考えとくか。
次の日、夕方俺が部活を終えてから帰ろうとし丁度校門の近くまで来た時、携帯電話にメールが来た。
歩きながら携帯電話を開きメールを確認する。
「・・・翔か」
メールの内容は”よう!!”だった。
「・・ったく、何の用だ?」
俺は目の前に立っている翔に聞いた。
「何って毎年の事だろ?」
俺達は一緒に歩きながら校門を出る。
「今年も・・ってか?」
「天瀬は部活の連中とだと、坂下も長谷川も天瀬についていくってな」
「まあ、そんなもんだろ」
「そうなると今年も・・てわけだ。
あ〜何でこういう時に限って女子軍は皆いないかな〜」
翔はがっかりしながら歩いている。
つまりはそんなわけで俺達は毎年嬉しくも無く、女ッ気無しの夏祭りを男大人数で楽しんでたわけなのだ。実際男どもで夏祭りなんて屋台回ったら終わりだけどな。
「またお前が頑張ればいいだろ?」
笑いながら俺は言った。
またとは翔が祭りでナンパをしてみるというものだ、成功率はバラバラでうまくいく時もあれば駄目な時もあった、ただ最後に言える事は楽しみはその場限りってことだけだ。
「俺ばっかりだろ、今年はお前がやれ」
「断る、そもそも俺は今年は違うからな」
その場で俺達は歩くのをやめた、翔のやつはただ黙った。
「・・・どういったわけだ?来ないのか?男の悲しき祭りなのにか?」
悲しき祭りなら誰も行きたかねーよ。
「ブラックデイよろしく、そんなの誰も好き好んでいかねーよ。
今年は悪いが俺は別行動だ」
そう言うと翔は睨んできた。
「・・ほう?相手は?」
あまり言いたくない、下手したらこいつが皆に言いふらしそうだからだ。
「別に彼女ってわけでもねーよ、そういきり立つな。ただの家族サービスだ」
その言葉に翔は安心したのか睨むのをやめて再び歩き始める、俺もそれにつられるように歩く。
「ならばよし、貴様は俺達の期待を裏切らなかったようだな」
フッと格好つけたように言う翔、そこに疑問が生まれた。
「期待って何だよ?」
俺に何を期待してんだか・・・。
「俺とお前はグループに女が三人もいながらいまだに彼女もいない駄目男だからな、いわば彼女無しの輝く星なわけだ」
翔は歩きながらサラッと言ってのけた。
「・・・・」
ここで俺の感情はストップした。
・・・星?俺が?駄目男の?
このとき俺には今までの過去の駄目な俺がぱらぱら漫画のように浮かんだ。
「とりあえずそんな汚名を晴らす為にも彼女つくんないとな〜、でも俺が先な?」
はははと笑いながら翔は俺の前を歩いていく。
駄目男・・・へタレ・・・彼女無しな男どもの星・・・。
頭の中に絶望という文字が出てくる、女性に告白された事は黙ってたが男からすれば俺はそんな風に見られていたらしい。
「・・・どうした?今更か?」
翔が笑いながら俺の方へ来る。
「・・・」
「だ〜いじょうぶだって、俺はともかく来年こそは・・・」
そこで俺は翔の顔を思い切り叩いた。
「カペッ!?って何すんだおま・・」
「うわああああああん!!」
俺は翔の声も聞かずに一人で半泣きしながら家に走った。
家に戻ると早々リビングにいたエレンとラミアの二人に向かって俺はこう言った・・・。
「日曜日絶対行くことなったから、久しぶりの祭りだしお洒落でもして思いっきり羽目外してこい・・・思いっきりな・・」
「あ、ああ、分かった」
「・・はあ・・恭平がそう言うなら」
そうして夜はふけていった。
夜、寝ていると突然携帯電話が鳴った、この着信音だとメールではなく直接かけてきているようだ。
「・・誰だ?」
枕元に置いてある携帯電話を取って電話に出た。
「もしもし?」
『あ、恭平〜?いまOK?』
電話の本人は彩花だった。
「・・正直OKしたくない」
『じゃあ、用件だけ言うね?日曜の夏祭り行くの?』
「・・ああ、行く・・そんじゃ切るぞ」
『OKOK、それじゃおやすみなさ〜い♪』
「はいはいおやすみ」
電話は切れて俺はそのまま寝てしまった。 |