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魔王の器 作者:月野文人

第二章 魔王編

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踊る皇国

「魔王だ! 魔王が現れたぞ!」

 現れたのがたった五騎であっても、そこに魔王がいるとなれば、騎士はともかく兵は冷静ではいられなかった。
 戦況が圧倒的に有利であったにも関わらず、前線の部隊は恐慌に陥っている。

「……逃げ」

「駄目だ! これは魔王を討ち取る絶好の機会だ!」

 副官の言葉を遮って、オスカーが叫んだ。

「しかし!」

「そもそも背を向けて逃げられる状況なのか!?」

「……確かに」

「覚悟を決めろ! 者共、気合を入れろ! 進めぇええええ!」

 更に騎馬の駈足を早めて前線に突入していくオスカー。そうなれば、周りの直轄軍の騎士たちも躊躇ってはいられない。オスカーの後を追って、馬を全力で駆けさせていく。

「怯むな! 新手はたった五人だ! 押せ! 押せ!」

 前線に進みながら、周囲に檄を飛ばすオスカー。本陣でおどおどしていたオスカーとは別人のようだ。戦いの渦中に身を置くことで、オスカーは落ち着きと自信を取り戻していた。
 オスカーは騎士として優れた資質を持っている。それは、全軍を率いる将軍ではなく部隊を率いる百人将あたりが相応しいとも言えるのだが。
 とにかく、精気を取り戻したオスカーは、初陣とは思えぬ果敢さで、前線の戦いに突入していった。

「下がれ! 下がって、隊列を整えろ!」

 聞き覚えのある声が、オスカーの耳に入ってくる。カムイが叫んでいる声だ。

「……あそこか! 続け! 魔王を討つ!」

 声のする方向を見極めて、さらに馬を進めるオスカー。その後を必死で騎士たちも進んでいく。

「下がれ! 殿は任せろ! とにかく下がるんだ! 退却しろ!」

 カムイの声に反応して、前線にいた魔族たちが後方に下がっていく。そうなると勢いはもう完全に皇国軍のものだ。カムイを恐れていた兵たちも、戦功を得る絶好の機会と、追撃に移った。
 だが、その足は一瞬で止まる事になる。

「魔王だぁあああ!!」

 宙に舞う兵たちの首。言葉通りにカムイが殿として、皇国軍の中に突っ込んできた。

「恐れるな! 囲め! 魔王を討ち取るのは今だ!」

「まさか!? オスカーかっ!?」

「喰らえ!」

 騎馬の勢いを押さえる事なく、剣を構えてカムイに切り込むオスカー。

「喰らうか!」

 その剣を軽くカムイは手に持った剣で思いっきり宙に向かって振り払った。更に態勢を崩したオスカーを襲おうとするカムイ。

「させるか!」

「うわっ!」

 それをさせまいとオスカーに付いてきた騎士が後ろからカムイに切りかかる。それをやや態勢を崩しながらも、カムイは避けるが、そこに更に別の騎士の剣が迫る。

「卑怯者! それでも騎士か!」

「魔王相手に騎士の礼などいらん!」

 その言葉通りに、カムイ一人に何十人もの騎士たちが順番に切りかかっていく。それを体を躱し、剣で払って避けるカムイ。
 そんなカムイに横から、強烈な一撃が襲う。

「オスカー! お前まで!」

「馴れ馴れしく呼ぶな!」

「うるさい! この卑怯者!」

「黙れ!」

 オスカーが次々と振るう剣をカムイは躱していく。だが、カムイを襲う剣はそれだけではない。隙を見て、周りの騎士が剣を突き出していく。

「ウザい!」

 苛立った声をあげるカムイだが、騎士たちは、そんなカムイの気持ちなど構うつもりはない。相打ちになるのも恐れずに、カムイに向かって前後左右、あらゆる方向から全力で剣を振るっていく。
 確実に魔王を追い詰めているという感覚を彼等は掴んでいた。

「魔王! 覚悟しろ!」

 それはオスカーも同じ。勝利を確信したオスカーは、カムイへ必殺の一撃を放とうと大きく構えを取った。

「馬鹿め! 舐めるな!」

 だがそんなオスカーに、一瞬で騎士たちの囲みを抜けたカムイが迫ってきた。
振り上げられた剣が、オスカーの目の前に迫る。

「死ね!」

「させるか!!」

 宙に吹き上がる真っ赤な血。だが、それはオスカーのものではなかった。オスカーの前に立ちふさがったのは副官のセドリックだった。

「い、今だ! 魔王を討て!」

 一目で致命傷と思われる傷を負いながらも副官が大声で叫ぶ。

「うわぁああああ!」

「おぉおおおおお!」

 その声に応えた騎士たちが、一斉にカムイに切りかかる。同時に襲いかかる何本もの剣。
 それを避けようとしたカムイだったが、その腰を副官が最後の気力を振り絞って掴んでいた。

「ばっ、馬鹿! 離せ!」

 それを強引に振り払ったカムイだったが、一瞬の遅れが、躱せるはずの剣を躱す事をさせなかった。

「つっ!」

 足と肩に騎士の剣を受けたカムイは、剣を手離して、地面に転がり崩れた。

「や、やった!」

「止めをさせ! 早く!」

 そのカムイに殺到しようとする騎士たち。

「この馬鹿! 早く掴まれ!」

 それを遮る様に馬を乗り入れてきたのはアルトだった。地面に倒れているカムイに向かって手を伸ばす。それをカムイが掴んだ瞬間に一気に馬上に引き上げた。

「大丈夫か!」

「……痛い」

「馬鹿が! 砦まで引く! そこで態勢を整えるぞ!」

 馬の腹を蹴って、更に馬の足を速めるとアルトはその場を離れて行った。

「逃がすな! 追え!」

「早く! 魔王を逃がすな!」

 その後を追って急ぎ騎馬を走らせた騎士たちであったが、彼らが追いつける事はなかった。
 両側を崖に挟まれた細い山道を抜けた彼等が見たのは、高い崖に囲まれた場所にある砦。そこには銀十字の旗が掲げられていた。

「……出口を塞げ。攻める必要はない。とにかく逃がさないようにするのだ」

「はっ」

「至急、伝令を。北方伯家と皇都へだ」

「伝令は何と?」

「魔王を包囲した。至急、増援を求むだ。早く!」

「はっ!」

◇◇◇

 王国西部にある小さな街。西方の中心都市でもない街が、今は王国の中枢を担っている事を皇国は気付いていなかった。
 領主館の広間に集っているのは、王国を支える重臣たち。
 そして中央にルースア王国国王アレクサンドル二世・シードロフが座していた。

「魔王討伐に向かった皇国騎士団の数は一万。皇都にいる騎士団の半分になります」

「そうか。北方伯家からも援軍が出ているのだな」

「はっ。北方伯領軍は五千を出しております。総勢で一万八千。魔王軍を討つには……、恐らく足りません」

「負ける事もないであろう」

「はい。魔王軍には戦う気がないでしょうから」

「その事だが、間違いないか?」

「絶対とは申せません。しかし、戦う気があれば、増援が来る前に三千の軍勢など蹴散らしているはずでございます」

「それはそうだな。分かり易い策でありがたい事だ」

「はい。魔王の意図は明らかでございます。盗賊を装って皇国軍を誘き出した。そして、自ら姿を見せて、大軍を引き寄せる。我等の為に皇国に隙を作る為でございます」

「これで皇国の騎士団長が出てくるのを見込んでいたとしたら、恐ろしいな」

「ですが、その策は王国に向かう事はございません。油断はならないとは思いますが」

「それで良い。更に裏をかかれている可能性はないか?」

「中央が空になった王国を襲う可能性はないとは言えません。ただこれは魔王が魔族の為に領地を求める場合となります。略奪で魔王が動く事はない。これまでの行動からそれは間違いないと考えます」

「後は儂の命か。しかし、儂の命を狙うには、こちらの軍との全面戦争になる」

「本当に王自らが出陣されるのでございますか?」

「そちらの方が安全だという結論であったであろう?」

「このままこの街に潜んでいるという手もございます」

「それはまだ魔王を甘く見ておる。今回の事は、案外、こちらの動きを知っての行動かもしれんぞ」

「まさか?」

「タイミングが良すぎる。こちらが東方に軍を発した事は魔王も当然知っているはずだ。だが、魔王は動いた。それは、こちらが密かに軍を迂回させて、西方に張り付けさせた事を見抜いての事と考えたほうが辻褄はあう」

「……確かに」

「しかもたいして待つことなく、この情報だ。おかげで無駄な軍費を使わなくて済んだ。魔王に感謝しなくてはならんな」

「それは」

 滅多に聞けない国王の冗談。カムイの策を疑いながらも国王は上機嫌だ。ずっと待ち続けた機会が遂に訪れた。その喜びを押さえきれないのだ。

「恐ろしいな。色々と誤算はあったが、魔王を皇国から引き離せた事は我等にとって大きかった」

「魔王があのまま皇国にいたとなると、王国にとっては考えるだけで恐ろしい事態になりかねませんでした」

「それに比べて、残った皇国の次代を担う者は愚か者ばかりのようだな。まんまと魔王と我が国、両方の策に嵌っておる」

「はい」

「その様な者では次代は託せん。仕方ないので儂が代わりに皇国の面倒を見てやろう」

「それがよろしいかと」

「いよいよだ。儂の悲願がかなう時が近づいている」

「はっ」

「動くぞ! 各将軍に伝令を! 各街に散らばっている兵を集結させよ!」

「はっ!」

「集結が終わった軍から進軍せよ!」

「はっ! 目的地は!」

「予定通り、サスカット平原だ!」

「はっ!」

「今度は本当の皇国との戦争だ、前回のような醜態をさらすでないぞ」

「はっ!」

「大陸の覇権を今こそルースア王国の手に!」

「「「王国万歳! 国王陛下万歳! 大陸の覇者はアクレサンドル二世国王陛下なり!」」」

◇◇◇

 重臣会議の場はいつになく、熱のこもった状況になっていた。真っ向から意見を対立させているのは、クラウディア皇女とシモン宰相代行だ。

「速やかに魔王討伐に向かった皇国軍を引き戻すべきです」

「でも、魔王を追い詰めているのは間違いないよ」

「王国軍は本気です。本気で皇国を侵略しに来ています。それはクラウディア皇女殿下にも分かっているはずです」

「それは……」

「もう一度ご説明いたします。侵攻してきた王国軍は、王国騎士団直轄軍が五万、王国貴族軍が同じく五万。これまでの小競合いとは規模が違います。何よりも、全軍を率いるのはルースア国王アクレサンドル二世なのです」

「でも東方伯領軍と従属貴族軍、それに辺境領軍が集結すれば」

「それでも最大で五万です。半数にしかなりません」

「周辺の駐屯している皇国騎士団の軍を」

「それはもうやっております。それでも集結には時間が掛かります。集結が終わったにしても七万。まだ足りません」

「同数じゃないと勝てないの?」

「そうは申しません。問題は、王国を率いているのが、国王だという事です。皇国騎士団の一将軍では格が違います。格の違いは、そのまま兵の士気に現れます。それがクラウディア皇女殿下にはお分かりにならないのですか?」

「それは分かるけど、じゃあ、魔王はどうするの? 放っておくの?」

「それは……」

「今、魔王を攻めている軍を王国に向けたら、魔王は逃げてしまうわ。逃げるだけなら良いけど、皇国を攻めてきたら、どうするの?」

 シオン宰相代行が、言葉に詰まった事で、嵩にかかって問いを重ねてくるクラウディア皇女だが、それに何の意味もない事は周りの者には分かっている。
 彼等が求めているのは、その問いへの答えなのだ。シオン宰相代行を追い詰める事には何の意味もない。

「そろそろ口を開かせて頂いて、よろしいですか?」

「ヒルデガンド妃殿下……」

「今回は話すことが多いだろうと、私を同席させたテーレイズ様のお考えは正しかったようですね」

「何か良いご意見がおありなのですか?」

「良い意見はないですね。完全に策に嵌った状態から抜け出すことは容易ではありません」

「はい」「策?」

「まさか、クラウディア皇女殿下はお分かりになっていなかったのですか?」

「あの……」

「あまり時間を掛けたくありませんので、簡単に説明します。魔族が皇国に現れたのは、皇国に隙を作らせる為の策です。大規模な盗賊を装い、皇国軍を引き寄せる。そこで魔族の存在を明らかにして、更に大軍を集める」

「……魔王は王国と手を結んでいたの?」

「さあ、そこまでは分かりません。でも王国が、魔族が動くのを待っていた事は間違いありません」

「どうして?」

「どうしてそれが分かるかですか? その理由は動きが早過ぎるからです。盗賊が魔族だった。その第一報を知ってから動いたにしても、王都から軍を発して、皇国東方に現れるには時間としてはぎりぎり。皇都から援軍が発したのを確認してからでは、間に合うはずがありません」

「えっと……」

「最初から皇国の東方、王国から言うと、西方国境に軍を張り付けておいたのです。王国が東方に軍を向けたのは、その偽装ですね。そして国王自身も王都を離れて、西方のどこかに潜んでいたのだと思います」

「やっぱり、手を結んでいたんだね?」

「ですから、それは分かりません。でも、少なくとも王国には魔族の次の標的は皇国だという確信があったのでしょう」

「それが……」

「魔族は本気で戦っていません。時間稼ぎをしているだけです。恐らくは、カムイ・クロイツを追い詰めて、怪我を負わせたという事も、援軍を引き寄せる罠だと思います」

「そんな?」

「まんまとオスカーは、いえ、皇国騎士団長は、魔族の罠に引っかかったのです。そして皇国も」

「どうして分からなかったの?」

「はい?」

「ヒルデガンンドさんなら、魔王の策は分かったはずだよね?」

「何故、そう思うのですか? 私にはクラウディア皇女殿下がおっしゃる意味が分かりません」

「だって、ヒルガンドさんと魔王は特別な関係だよ。そんな関係にあるのに」

「あの、クラウディア皇女殿下。皇太子争いの為に、そのような事を言っておられるのでしたら、止めて頂けますか? 今はそのような争いをしている場合ではありません」

「でも」

「やはり、分かっていませんね。こちらのそういう思いも又、カムイ・クロイツは利用したのだと言う事を」

「えっ?」

「私個人はともかくとして、カムイ・クロイツは皇国にゆかりのある者です。そういう考えが、何となく、私達に魔族の次の標的は王国だと思い込ませていたとは思いませんか?」

「…………」

「そこにまさかの魔族の出現です。魔族を討つ絶好の機会と思った者はもちろん、魔族の意図を掴めずに困惑していた者も、なんとなく援軍の派遣を認めてしまいました。少し言い訳をさせてもらえば、王国の動きも判断に影響を与えました。王国の軍が動いた事で、魔族は王国への仕掛けを始めたと思ってしまったのです。完全な失態です」

「しかし、ヒルデガンド妃殿下。魔族と王国が連携とまではいかなくても、お互いを利用し合うなどとは分かるはずもない事です」

「分かっていなければならなかったのです。そうでなくても、前提を忘れなければ、見抜く事は出来たはずです」

「前提ですか?」

「魔族の標的は皇国と王国の両方だという事です」

「それは誰もが分かっておりますが」

「その両方との戦いに勝つには、どちらか一方との争いで、損耗する訳にはいきません。魔族にとって最適は皇国と王国を争わせて、双方が弱った所で、戦いを挑む事。これも誰もが分かっていた事ですが、それを忘れていました。そして、皇国が王国に攻め込む可能性がほとんどない以上、攻めさせるのは王国からしかないという事も」

「そうでした……」

「魔族が皇国に現れたという事は、王国が攻めてくるという事だったのです。それに気が付かなかったのですから、やはり失態です。仕方が無かったなどと言って、終わらせてはいけません」

「はい。申し訳ございません」

 黄金の世代の筆頭といわれたヒルデガンド。その理由をこの場に居る多くの者が感じ取った。ヒルデガンドは間違いなく人の上に立つべき人物だと。

「状況の説明は以上です。これからの対応を話し合いましょう」

「はい。しかし、何から」

「王国の侵攻を止める事が最優先です。東方の守りを固めなくてはいけません」

「その為には騎士団長を東方に向かわせるべきです」

「はい。でも、それを待っている訳にはいきません。ですから」

「……ですから?」

「私が行きます」

「妃殿下!?」「なっ!?」「馬鹿な!?」

「私が最適だと思います。これは軍の指揮がどうかではなく、旗印としてです」

「ルースア国王に対抗するには、皇族が出られるべき。それは分かりますが」

「それだけではありません。東方伯領軍の上に立つにも私が最適です。辺境領軍は、どこまで纏められるか分かりませんが、他の方よりは少しは話が通じると思っています」

「しかし、ヒルデガンド妃殿下自らを危険な戦場に」

「そんな事を言っている場合ではありません。それに一時の事です。魔族の備えは北方伯家、それに西方伯家の領軍も加えて、押さえにしてください。これは軍全体を東に寄せる意味もあります。万一、東方が突破されそうになった場合の後詰です」

「はい……」

「それであれば騎士団長は、東方に向えますね? 騎士団長が東方に到着次第、指揮権は本来の騎士団長に戻せば良いのです」

「お話は分かります。分かりますが、私は」

「この件については、テーレイズ様の了承は得ております」

「テーレイズ皇子殿下?」

「しっ、仕方が、ない」

「そんな……。他の方は? 異議のある方はいませんか?」

「シオン宰相代行。そのような事をしても無駄です。私は皇家の者として、皇国を守るために出来る事をしなければいけません。それを止める事は誰にも出来ません」

「……ヒルデガンド妃殿下」

「そして貴方たちも、皇国の為に為すべき事をしなさい。良いですね?」

「……承知いたしました。貴女様のご意志に従います」

「では、すぐに騎士団長、西方伯家、北方伯家に伝令を。時間がありません。今この瞬間も王国は皇国の民を苦しめている事を忘れないで」

「「「ははっ!」」」

 皇国の危機についにヒルデガンドも、世の中に飛び出す事になった。
 皇国学院時代に黄金の世代の頂点と言われたヒルデガンドがその真価を発揮する時だ。

◇◇◇

 皇都から東に延びる街道を数百の騎馬がかけている。
 その先頭にいるのは、白銀の戦装束に身を固めたヒルデガンドだ。遠目から見ていても、それははっきりと分かった。

「もしかしたらと思っていたけど」

「やってくれるねえ。妃殿下自ら出陣とは」

「ちょっと算段が狂ったかな?」

「東方を防ぎ切れると思ってるのか? いくらヒルデガンドさんが出たからって、それはどうだ?」

「分からない。でも、それとは別に不確定要素が出てきた」

「……何だ?」

「ちょっと失敗だな。戦場に出るのは良い。でも、そうするなら、クラウディアも、首に紐を括り付けてでも連れ出すべきだったな。マリーさんもあそこにいるようだから、主だった者で皇都に残ったのはテーレイズ皇子だけだ」

「おいおい。まさか、この状況で?」

「クラウディアを甘く見るな」

「おっと、知らなかった。カムイがそこまで、あの小娘を買っているとは」

「あれは馬鹿だ」

「……それは同意」

「皇国が負けるなんて夢にも思っていない。そういう者が考える事だ。俺達の常識では測れない」

「……皇国が割れるのは大歓迎だが、どういう形か見えねえのは痛いな」

「困ったな」

「しばらく様子見だな。囮は撤収、手勢を集結させるぞ」

「どこに?」

「聞くまでもねえだろ? 集結が容易で、東方の争いに介入し易い場所は」

「ノルトエンデしかない」

「ああ。ノルトエンデに帰還する」
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