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魔王の器 作者:月野文人

第二章 魔王編

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皇国の受難

「分かりますか? 草の意味が?」

 ソフィーリア皇女に向って、それを言う宰相の笑みは、馬鹿にするようなものに変わっていた。

「……ば、馬鹿な?」

「さすがに騎士団長はご存じだ。ソフィーリア皇女にも分かる様にお教えしましょう。草とは、要は間者です。敵国に忍び込んで、色々と工作する役目を負った」

「な、なんで、そんな者が宰相に?」

「時間が掛かりました。それこそ祖父の代からですね。皇国に移り住み、皇国の民に紛れ込んだ。それから祖父も父も、そして私も懸命に出世の道を探り、三代で、どうにか辿り着いたのが辺境領主の下です。そこからでは皇国の中央は無理かと思ったのですけどね。陛下は私が書いた嘆願書に目を留めてしまった。後はご存じの通りです。中央に呼ばれて、陛下の為に尽力し、今の地位に私はあります」

 ここまでくると宰相の能力の問題ではない。ただの運だ。その運で今回、皇国は王国に負けた。

「そこまで引き立てられておいて、裏切ったのね」

「分かっていませんね。私の忠誠は王国にあります。皇国に忠誠を誓った事は一度もありません。ああ、言葉ではありますよ。本心ではという意味です」

「……何をしたの?」

「それをこれからお教えします。どうですか? 衝撃を受けました?」

「ふ、ふざけないで。そもそも、そんな事を話して無事でいられると思っているの?」

「思っていません。逃げるつもりはありませんから、話は最後まで聞いてください」

「……じゃあ、話しなさい」

 騎士団長と魔導士団長の二人が共にいる事で、ソフィーリア皇女はそれを許す気になった。
 皇国の最高の騎士と魔導士がいるのだ。危険を感じる事はない。

「実は私がやった事は大したものではありません。王国に情報を流していただけですね。その内容も、他の間者が頑張れば手に入れられるようなものです」

「だから?」

「おや、興味がなさそうですね。せっかく色々とお教えしようと思っていたのに」

「いいから、話しなさい!」

 あきらかに宰相が自分を弄っているのが分かる。ソフィーリア皇女には、その態度がどうにも許せなかった。

「はあ。ソフィーリア皇女には話し甲斐がありませんね。草と間者の違いは、一つです。草はたった一回、決定的な仕事をする為に、何十年でも我慢する事を求められるのです」

 ソフィーリア皇女の怒声にも、宰相の態度は変わらない。それはそうだろう。自分が草であると告白するという事は死を覚悟しての事だ。ソフィーリア皇女の怒声程度で心が怯えるはずがない。

「そのたった一回をしたのね?」

「はい。カムイ・クロイツへの伝令を送りませんでした。それだけの事ですが、効果は予想以上でしたね。まさか、カムイ・クロイツが魔王だったとは」

「知らないでやったの?」

「王国の目的はカムイ・クロイツを確保する事ですからね。逃したのは王国の失態です」

「結局、貴方の企みは失敗じゃない。王国だってタダでは済まないわ」

「既に相当の被害を蒙りましたね。油断していたとはいえ、たった百人の魔族に二万の軍勢が言い様にやられるとは、王国騎士団も情けないものです。でも、本心を言えば、そんな事はどうでも良いのです」

「……どういう事?」

「私もさすがに疲れました。祖父も父も、何もなすことなく死んでいきました。王国の為に人生の全てを費やしたというのに、何ら報われる事もなく。王国への忠誠なんて、嘘です。そんなものはとうの昔に私からは消え去っています」

「だったら、どうして? 報いてくれたお父様に忠誠を向ければ良かったじゃない?」

「……そう考えた事もあったのですが、それは無理でしたね」

 これを告げる宰相の顔には諦めの色が浮かんでいる。生きる事ではなく、何かを望む事を諦めた者の顔だが、その違いはソフィーリア皇女に分かるはずがない。

「どうしてよ」

「皇国も同じではないですか? 皇国だって草を使っています。その草たちは、今も、何ら報われる事もなく、じっと耐えているのです。お優しい陛下も、草に気を配ることなどなかった。近くにいて、それが良く分かりました」

「それは……」

「国に忠誠を向けるなんてくだらない事です。それに気が付いた私の希望は、一日も早く自分を解放する事。なんでも良かった。最後の仕事をして死ぬことが出来るのであればね」

「何もしないで死ねば良かったのよ」

「そういう訳にいきません。私にも意地がありますからね。少しは王国に草を認めさせたかった。私は満足です。最後の最後で大きな仕事が出来そうですからね」

「出来そう?」

「まだ最後の仕事は終わっていません。もうすぐ終わりますが」

「何を言っているの? 貴方はもう何も出来ないわ」

「……意外、ですね。あ、貴女が、最後、とは」

 宰相の様子が途端に苦しげなものに変わった。それだけではない、口から一筋の血が流れ出している。

「……ど、毒?」

 慌てて、周りを見渡すソフィーリア皇女。騎士団長も、魔道士団長も首を後ろにそらした姿勢で、宰相と同じように口から血を流している。二人とも既に事切れていた。

「ぜ、全員、の。お、茶に……、い、入れました。種類、は……、違って、も……た、耐性が、出来る、の、で、すか、ね?」

 答えを求めての問いではない。死を目前にして、もう何も話す事がないだけだ。

「…私に毒を盛っていたのは、貴方の指示なのね」

「……そう。で、でも……、こ、今回は……、ま、また違うもの……、そ、それも、致死量、です。た、助かる、ことは……、ない」

「ん、うぐっ」

 宰相の言葉に反応したかの様に、ソフィーリア皇女の口から苦しげな声が漏れる。胸から込み上げてくる嘔吐感に口を押えたソフィーリア皇女だったが、その指の隙間から血が漏れ出している。

「き、効いて……、きま、したね」

「だ、誰か!」

「さ、叫んでも……、無駄……、です。人払いは……、済ませ……、ました」

「……ひ、卑怯もの。わ、私が、し、死んでも、あ、兄が」

「こ、混乱……、し、します。皇子……、も、諸共に、と、思って……、いたの……、ですが。この、方が……、よ、良さそう……、だ」

「……ど、どういう事?」

「ク、クラウ……、ディア、お、皇女は……、お、愚か者……、です。さ、さぞかし……、こ、皇国……、を、混乱……」

 最後まで言い切る事をせず、宰相は、糸が切れた操り人形のように、がっくり首を後ろに倒すと、そのまま床に崩れ落ちて行った。

「ち、ちょっと、さ、最後まで……。だ、誰か……、助けて……。だ……」

 椅子から転がり降りて、這いつくばって扉に向かうソフィーリア皇女。その言葉は、誰にも届かなかった。

◇◇◇

「誰もいない。もう終わっちゃったのかな」

 入り口に誰も立っていないのを見て、クラウディア皇女は少し焦っていた。
 自分がいない間に会議が終わってしまったと思ったからだ。遅れたのは自分のせいではあるが、居ても居なくても、構わないと思われるのが悔しかった。
 それでも一応は、扉を開けて、会議室の中に入ってみる。

「……えっ、何? い、嫌だ! し、死んでる?」

 クラウディア皇女の視界に映ったのは、口から血を流して、椅子に座ったまま、ぴくりとも動かない騎士団長と魔法士団長だった。
 そして、すぐに床に倒れているソフィーリア皇女に気が付く。

「あ、姉上!」

 慌てて駆け寄ると、クラウディア皇女は、うつぶせになっていたソフィーリア皇女を抱きかかえて、仰向けに姿勢を変えた。

「姉上! 姉上!」

 顔を寄せて叫ぶクラウディア皇女だったが、ソフィーリア皇女はその声に反応を見せなかった。

「し、死んでいる?。ど、どうしよう?」

 あまりの出来事に頭の中が混乱してしまっているクラウディア皇女。ただ為す術もなく、おろおろとしているだけだ。

「えっと……。兄上がいない?」

 それでも、しばらくして、この場に居るはずのテーレイズ皇子がいない事に気が付いた。
 それに気が付いた事で、一気にクラウディア皇女の頭の中が冷めてくる。
 頭の中で様々な思考が蠢き、やがてポツリと呟いた。

「兄上がやったんだ。そうだよ。そうに違いない」

 状況的にそう考えてもおかしくない。ソフィーリア皇女がいなくなれば、テーレイズ皇子が皇太子になる確率は高くなる。
 だが、クラウディア皇女は無意識のうちに幾つかの前提を思考から外していた。
 一つは、自分の仕業と怪しまれる事が分かっていてテーレイズ皇子が暗殺などという真似をするのかという事。
 そして、もう一つは、そんな事をしなくても、現状はテーレイズ皇子のほうが優勢だという事だ。何といってもカムイが魔王であるという事実の影響は大きかった。
 クラウディア皇女の呟きは、自分の願望から出た言葉だ。

「どうしよう。まずは、どうすれば。兄上が犯人だとして。あっ、証拠。何かないかな?」

「……ち……がう」

「姉上?」

「……ち……が……う」

 ソフィーリア皇女はまだ生きていた。血の気を失った真っ青な顔で、クラウディア皇女の誤解を解こうと、振り絞るように声を出していた。

「……でも」

「……げ……ど……」

「何?」

「げど……く」

「あっ、そうか。薬。解毒の薬を取って来ないと」

「ち、……ち……が……う」

「解毒の薬じゃないの? えっと、どうしよう? 姉上、ちょっと待っていてね」

「……ク……ラ……ウ?」

 ただ何をする事もなく、意味もない言葉を吐くだけのクラウディア皇女。そんなクラウディア皇女の様子にソフィーリア皇女の頭に疑念がよぎる。

「えっと、えっと、そうだ。魔法だよね。解毒の魔法。そうだね。私使えたよね。混乱して忘れてた」

「…………」

 信じられないものを見たといった様子で、ソフィーリア皇女の青い目が大きく見開かれる。
 ソフィーリア皇女は分かったのだ。クラウディア皇女が混乱している振りをして、自分が死ぬのを待っているのだと。宰相が死ぬ間際に言おうとした言葉の意味を。

「大丈夫だよ。姉上。姉上が万一、死んでも、私が姉上の意思を引き継ぐからね」

「そう……いう……事……な……のね」

「ディーフリートさんにも協力してもらって頑張るから」

「……ゆ……る……さ……」

 最後の力を振り絞って、クラウディア皇女に向けて上げられた手は、何も掴む事なく、ばったりと床に倒れて行った。

「姉上? 死んじゃった? ……姉上、大丈夫だよ。姉上の代わりは私が立派に務めるから」

 クラウディア皇女の顔に浮かぶ笑み。それを見た者がいれば、一目でクラウディア皇女の本性が分かるであろう怪しい笑みが浮かんでいた。

◇◇◇

 左右に居並ぶのは文武の高官たち。
 中央の玉座には黒い喪服を纏った皇后が座っていた。やつれた果てたその姿は、皇帝の看病の疲れだけが理由ではない事は誰もが分かっている。
 ソフィーリア皇女が暗殺されてから、まだ数日しか経っていないのだ。

「もう嫌よ。どうして私が玉座になんて座らなければならないの」

「お母様。仕方がないの。お父様は未だに具合が悪いのだから」

 愚痴を吐く皇后に向って、正面に立つクラウディア皇女が説得の言葉を述べる。

「だからと言って」

「今日だけだよ。政務を取る人たちを決めたら、お母様はお父様の看病をしているだけで良いの。後は私たちに任せておいて」

 宰相も騎士団長も魔導士団長も一度に失った皇国。文武の三役を決めない事には、重要な物事は何も進まない。そして、それを決める権限を持つ者は、今は皇后しかいないのだ。

「じゃあ、早く決めましょう。誰から決めれば良いの?」

「そうだね。最初はすぐに決められる人が良いかな」

 クラウディア皇女の隣にはテーレイズ皇子も居るのだが、皇子は何も言葉を発しようとしない。
 本来であれば、継承権第一位のテーレイズ皇子が話を進めるべきなのだが、言葉の問題があるせいだと思って、文武の高官たちも何も言わずに、クラウディア皇女が進行するのを見ていた。

「それは誰?」

「まずは皇国騎士団長だね。私はオスカーさんが良いと思うの。亡くなった騎士団長もそれを望んでいると思うわ」

「若すぎないかしら?」

「大丈夫だよ。オスカーさんは騎士団長に相応しい実力と人望を持っているよ」

「そうなの? テーレイズはどう思う?」

「もっ、問題、ない」

「そう……。じゃあ、私もそれで良いわ。皇国騎士団長はオスカー殿ね」

 武官たちから、わずかにどよめきが起こる。その中身は様々だ。もしかしたら自分がと思っていた将軍たちは落胆のため息。それが当然と思う者たちからは喜びの声。異例といえる若さの騎士団長の誕生に驚く者、不安を感じる者もいる。

「……良いのかしら?」

 自分で言ったものの、あまりに簡単に決めてしまった事に、皇后は少し不安を覚えた。

「大丈夫だよ。反対の人は反対って言うから」

 クラウディア皇女はそう言うが、皇位継承権を持つ二人が同意した人事に反対の声など上げられる訳が無い。

「そう? じゃあ、次は魔導士団長かしら?」

「そうだね」

「えっと……。娘のマリーが居たわね。その人で良いのかしら?」

「うん。それも良いと思うけど」

「何、他に誰か居るの? 騎士団長が実子のオスカー殿なら、魔導士団長もマリー殿で良いのじゃない?」

「亡くなられた魔導士団長には、長男が居るわ。後を継ぐなら、その人だと思うの」

 クラウディア皇女の言葉を聞いて、今度はざわめきの声が広がっていく。特に魔導士団員の動揺が激しい。亡くなった魔導士団長の長男は、その能力を見限られて、嫡子の地位を剥奪されている事は魔導士団員であれば、誰もが知っているのだ。
 そして、それ以外の文武官たちも驚いている。派閥均衡でいくなら、テーレイズ皇子の側にいるマリーを選ぶのが無難なのだが、それにクラウディア皇女が抵抗を示した。
 それは皇太子位争いに立つと宣言したようなものだ。

「……テーレイズは誰か推薦する人はいないのかしら?」

「い、いないな」

「「えっ?」」

 皇后とクラウディア皇女。二人の口から同時に驚きの声が漏れる。皇后だって、マリーがテーレイズ皇子派である事くらい知っている。それを推薦しない意図が分からない。
 それはクラウディア皇女も同じだ。元ソフィーリア皇女派で固める、ここが正念場だと思って、意気込んでいたのに、見事に肩透かしを食らった形だ。

「……じゃあ、その人になるわよ?」

「もっ、問題、ない」

「……その人は何という名なの。ごめんなさい。私知らないのよ」

「えっと、マイケルさん」

「そう。じゃあ、皇国魔導士団長はマイケル殿ね」

 文武官たちのざわめきは治まらない。皇太子位はテーレイズ皇子で決まりだったと思っていた所に、まさかのクラウディア皇女の巻き返しがなったのだ。

「最後は宰相だけど。これは誰かいるかしら?」

「えっと、西方伯家の嫡男のディートハルトさんかな?」

「それは駄目よ」

「どうして?」

「宰相は文官の最高位。皇国の国政の多くの権限を有するわ。特定の有力貴族家の者を当てる訳にはいかないの」

「じゃあ……、ケイネルさんかな。彼の実家はどこの有力貴族家にも属していないよ」

 西方伯家の者は皇后が反対する事を見込んでのクラウディア皇女の小細工だ。そして、これは細工とも言えない、愚かなやり方。
 ケイネルがクラウディア皇女に近い存在である事くらい、国政に携わっている者であれば、誰でも知っている。クラウディア皇女もさすがに馬鹿ではないから、それくらいは分かっている。魔導士団長の座をあっさりとテーレイズ皇子が認めた事で、少し大胆な手に出ただけだ。

「……テーレイズはどう思う?」

「は、反対、だな」

「えっ?」

 また、あっさりと賛成するものと、高をくくっていたクラウディア皇女の口から、驚きの声が漏れる。

「じゃあ、誰が良いと思う?」

「じ、次席の者が、いっ、いるはずだ」

 文官の階級ははっきりとしている。極論を言えば、宰相などいなくても、権限を一つ下に落とすだけで、文官の業務は回っていくのだ。

「それもそうね。じゃあ、宰相という地位は置かずに、代行という事にしましょう。次席の方は誰かしら?」

「はい! 私でございます」

 文官の列の最も玉座に近い位置に立っていた者が声を上げた。

「お名前は?」

「はい。太夫を努めておりますシオンと申します」

「そう。ではシオン殿。貴方を宰相代行に任命するわ。太夫の後任は必要かしら?」

「出来ますれば。序列を一つずつ上げる形でもよろしいでしょうか?」

「ああ、そうね。それで良いわ」

「では、そう致します」

「はい。これで三役は決まりね。これで私はお役御免ね。後は任すわ」

「まっ、まだだ」

「あら、まだ何かあるの?」

「ノッ、ノルトエンデの、りょっ、領主を、きっ、決めて欲しい」

「ええっ?」

「きっ、決める、ひ、必要が、ある」

「……それは私が決めなければいけないのかしら?」

「ちっ、直轄地、だ」

「私には誰が良いかなんて、全く思いつかないわ。誰か推薦してもらえる?」

「クッ、クラウは?」

「私は……、誰もいません」

「では、おっ、俺から。ヒルダを、すっ、推薦、する」

「「「なっ!?」」」

 今度はざわめきなんてものではない。謁見の間全体に驚きの声が響き渡った。

「だ、駄目よ。ヒルデガンドをノルトエンデになんて行かせる訳にはいかないわ」

「だっ、代官を、おっ、置く。そっ、それで、あれば、きっ、危険は、ない」

「だからといって。……クラウディア?」

「私は反対」

「でっ、あれば。だっ、誰かを、推薦しろ」

「そんな事、急に言われても」

「だっ、代案が、なっ、無ければ、きっ、決まりだ」

「そんな?」

「きっ、決まりだ」

「……別に良い」

 厳しい目付きで自分を見つめるテーレイズ皇子に、クラウディア皇女はそれ以上、反論できなくなった。

「じゃあ、決めるわ。ノルトエンデ領主はヒルデガンド。現地には代官を置くことを前提として、それを認めるわ。代官は……、誰になるの?」

「ヒルダが、きっ、決める」

「そう。分かったわ。じゃあ、そういう事で。今度こそ終わりかしら?」

「…………」

「終わりね。以上よ。皆さん、ご苦労様」

 自分の役目は終わりと、さっさと玉座を立って、謁見の間を去っていく皇后。
 テーレイズ皇子も皇后が玉座を立つと同時に出口へ向って歩き出した。
 少し間を空けて、謁見の間を出て行くクラウディア皇女の背中を見つめる文武官たちの目は複雑だった。
 クラウディア皇女はやり過ぎたのだ。テーレイズ皇子にまんまと嵌められたと言っても良い。
 三役を自派で固めようとしたクラウディア皇女の行動は、度重なる悲劇で、混乱している皇国にさらなる災いをもたらすものだとしか、多くの文武官の目には映らなかった。
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