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魔王の器 作者:月野文人

第一章 皇国学院編

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カムイ教室の出張授業

 ヒルデガンドが鍛錬の場所として選んだのは、皇都にある大きな屋敷の庭だった。庭と言っても、その広さはヒルデガンドを入れた六人が鍛錬するには十分過ぎるほど、広大なものだ。

「まだ少し散らかっていますけど、少しずつ綺麗にしていきます」

「……何でここ?」

「それは……、他に空いている屋敷がなくて」

 カムイの問いに、申し訳なさそうな顔で、ヒルデガンドは理由を告げた。

「まさか、この為に買い取ったなんて言わないよな?」

「その、まさかです」

「……さすが東方伯家のご令嬢って言うべきか?」

 この屋敷に来てから、ずっと呆れ顔だったカムイだが、これはトドメだ。学院の剣術大会の為に、屋敷を一つ買うなんて、カムイには理解出来ないやり方だ。

「でも、それほど高くなかったですよ。こういうのを格安というのですね?」

「それは一家心中があった場所だからな」

「……ごめんなさい。他に広い場所が見つからなくて。やっぱり、気になりますよね?」

「いや。懐かしくは思うけど」

 この場所は、元ホンフリート家の屋敷。カムイが生まれ育った場所だ。ただ、建物のかなりの部分が取り壊されていて、当時の面影はあまり残っていない。

「しかし、見事に壊したな」

「あっ、でもカムイが住んでいた離れは残してありますよ」

「よく知ってたな? とりあえずは、お気遣い頂きまして、ありがとうございます、かな?」

「……やっぱり、気になりますよね?」

「別に。でも、競技会が終わったらどうするんだ? 建物もこんなじゃ、使い道ないだろ?」

「そうでもありませんよ。建物はいわくつきだから、却って壊した方が良いと言っていました。そこに新しい建物を立てれば、それなりの値段で売れる見込みです」

「それもまた、さすがだ。なるほどな。そういう考え方もあるのか」

 ヒルデガンドの説明を聞いてカムイは素直に感心した。ただ娘の我儘を聞いた訳ではなく、そこに、きちんと利を求める東方伯家はさすがだという所だ。

「立地としては、かなり良い場所ですから」

「まあ、古い家柄だったからな。それだけが取り柄だった」

「その、ご家族の事は……」

「全く気にしてない。しかし、こんな事でここに来ることになるとはな」

 少し気持ちが落ち着いたカムイは、敷地を懐かしそうに眺め始めている。建物は壊されていも、庭に生えていた古い木などは、そのまま残っている。
 それなりに思い出がある場所だ。

「さて、いつまでも感傷に浸っていても仕方がない。始めようか?」

「そうですね。何から始めますか?」

「とりあえず、いつもの鍛錬を。それを見て気が付いた事があったら言うから」

「分かったわ。じゃあ、素振りからですね。始めますよ!」

「「「はい!」」」

 ヒルデガンドの声に大きな返事で答えた生徒たちは、すぐにカムイの前に横一列に並んで、素振りを始めた。

「なんで一列?」

「この方が見やすいかと思いました」

「それはそうだけど。何か、こっちが恥ずかしいな」

「今はカムイが先生ですからね」

「……じゃあ、続けて」

「はい」

 少し恥ずかしがりながらも、カムイはヒルデガンドたちの前を歩いて、一人一人の素振りの様子を眺めていく。それを何往復が繰り返した所で、カムイの足が止まった。
 目の前で立ち止まられた方は堪らない。何を言われるのかと緊張した面持ちでカムイを見ている。

「手、止めないで下さい」

「は、はい」

 言われた通りに又、素振りを始める男子生徒。足を止めたまま、カムイはその様子をじっと見ている。やがて、何を思ったか、その生徒の前で自分も素振りを繰り返した。

「へえ」

 それを見ていた男子生徒の様子を見て、カムイは感心した様子で声を漏らした。

「あの、何か?」

「なんで大剣を使っているのですか?」

「はい?」

「いや、あまり力なさそうなのに、何で重い剣を使うのかなと思って」

 カムイの言う通り、その生徒の小柄な体格には、持っている大剣は明らかに不釣り合いだった。

「それは……、鍛える為です」

「ああ、力がないのを自覚しているから、重い剣でついでに筋力も鍛えようと?」

「はい。そうです」

「止めたほうが良いです」

「えっ?」

「力を付けたければ、別の事でやれば良い。素振りは、剣を振る動きを体に覚えさせるもの。使いこなせない剣で、それをやっても無駄な動きを覚えるだけです」

「でも……」

 カムイの説明を聞いた男子生徒は、困った顔を見せている。

「他に理由があるのですか?」

「我が家の流派は、大剣を使う剣術なのです」

「家がそうだからと言って、それが全ての人に当てはまるものではないです。違いますか?」

「その通りです……」

「かと言って、勝手に変えたら不味いか……」

 カムイも元伯爵家の人間。貴族家の伝統への拘りは良く知っている。先祖伝来の剣術となれば、それを勝手に捨てる事など許されないのだ。

「仕方ないか……。勿体無いな。才能ありそうなのに」

「えっ?」「「「なっ?」」」

 カムイの呟きに驚いたのは、その生徒だけではなかった。同時にヒルデガンドたちも驚きの声を上げた。

「えっ?」

 それにカムイも驚きで返す。

「あの、カムイ。それは本当なのですか?」

「本当って。別に剣の達人という訳じゃないから、絶対とは言えない。見て、そう思っただけだ」

「そう……」

「何を驚いているのかな?」

「ニコラスは、ああ、彼はニコラス・コリントと言います。ニコラスは補欠なのです。それも補欠でも一番ではありません。今日連れてきたのは、練習熱心なので、カムイに教えてもらって、何か強くなれる、きっかけが掴めないかと思って」

「そうなんだ。……やり方次第ではいけると思う」

 もう一度、視線をニコラスに向けながら、カムイは強くなると言い切った。

「それを教えてあげてもらえませんか?」

「でも、流派の型を壊すことになると思う。しかも、新しい型を作るには、それなりに時間がかかるからな。その間は今よりも弱くなるかも」

「そう……」

 こう言われるとヒルデガンドも躊躇ってしまう。従属貴族の子弟とはいえ、ヒルデガンドに強制出来る事ではないのだ。

「あの!」

 そのヒルデガンドの代わりに、言われた本人がカムイに声を掛けてきた。

「何?」

「私は本当に強くなれますか?」

「それを聞くのは間違い。強くなれるかどうかは自分次第だから」

「……そうですね。じゃあ別の事を教えてください。どうして私に才能があると? そんな事を言われたのは初めてです」

「そうなんだ? 実家の剣術の先生って、あまり良い先生じゃなかった?」

「いや、それは……、父です」

 カムイの問いに、気まずそうにニコラスは答えた。

「あっ、ごめん。じゃあ、学院の教師は?」

「私は授業で負けてばかりですので」

「そう。その教師もどうかと思うな」

「あの、A組の剣術の教師ですので、かなりの人だと思いますけど」

 ヒルデガンドのクラスを担当する剣術教師だ。学院もかなり優秀な教師を当てている。ただ、指導の目が。ヒルデガンドと、その側近と呼ばれる生徒に集中してしまっていた。

「まあ、それは良いか。才能があると思った点は二つ。一つは、俺の素振り見えたよな?」

「それはもちろん」

「他に俺の素振りを見てた人は手を上げて」

 全員の手があがる。皆、カムイに注目していたのだから、当然だ。

「じゃあ……、君。俺は何回、剣を振りましたか?」

 カムイはニコラスの隣に立つ生徒に尋ねた。

「四回です」

「そんな……」

 その生徒の答えにニコラスが、落ち込んだ様子を見せる。

「ニコラスさんは? 何回に見えた?」

「……すみません。五回に見えてしまいました」

「正解」

「えっ?」

「俺は五回、剣を振った。見えていたのは、ヒルダとマティアスさん、それと……」

 もう一人に視線を向けたまま、カムイの言葉が止まる。名前を知らないのだ。

「ランクだ。俺の名はランク・ヴェッカー」

「ランクさん。他の二人は一回分、見えていない。それがニコラスさんの才能の一つ。目が良いんですね? それで負けてばかりという事は、攻撃に転じた時に、逆にやられるって所ですか?」

「はい。その通りです」

 今日、初めて自分を知ったであろうカムイが、自分の弱点を見事に言い当てた。この事に又、ニコラスは驚いた。

「多分、それは大剣のせい。重さに負けて、振りが遅れるから、相手に反撃を許してしまうんですね」

「そうだったのか。じゃあ、もう一つは?」

「どう言えば良いかな? 体の柔らかさかな?」

「そんなに柔らかくはないです」

「そうじゃなくて、関節の柔らかさ? 剣の振りがしなやかです。これは大剣を使ってきたおかげかもしれません。鞭のように剣を振る感じ。ニコラスさんは、俺と似たタイプです」

「嘘?」

 驚くニコラスの横で、ヒルデガンドたちが唸っている。自分に似ているというカムイの言葉に、ニコラスの持つ才能の凄さを感じていた。

「本当。俺の振りは、剣先は最後に動かす感じで振っている。今はもう意識はしていないけど」

「それをすると、どうなるのですか?」

「結果として、剣の振りは鋭さを増す。さっき言った通り。鞭をイメージしてみれば言いたい事は分かると思います。鞭の先端は、一番後ろから前に伸びていきますよね?」

「あっ、分かります」

「重い剣を使うことで、初動は却って良い感じだけど、重すぎて途中からの伸びがない。剣先もぶれている。それじゃあ、人は切れません」

「剣を変えれば、それは治りますか?」

「重さを軽くするだけで、かなり良くなるはずです。ただ、重さを感じなくなる分、鞭のイメージは、少し感じづらくなるかもしれません」

「ああ、そうなりますか」

「恐らく。今は剣の重さに任せて、無意識に出来ているだけですので、それを意識して出来るようにならないと。そして、それが出来たら、又、無意識に出来るようにしなければいけません。しかも、それを前後左右、斜め、あらゆる方向で。そこまで行くには、結構な時間が必要です」

 才能があっても、直ぐに強くなれる訳ではない。カムイも、誰にも負けないと言えるくらいの努力を、ずっと重ねてきたのだ。

「その間は、弱くなるという事ですね?」

「探り探り剣を振っていては勝てる訳がありません。かと言って、それを意識しなければ、いつまで経っても、振りは身につきません」

「……それでも、やってみたいです」

 迷った時間はほんのわずか。そのわずかな時間でニコラスの覚悟は決まった。今までずっと迷っていた剣に、カムイは、はっきりと道を示してくれた。まして、道の先に居るのは、そのカムイなのだ。進まないという選択肢などニコラスにはない。

「良いのですか? 流派から、かけ離れた剣になります」

「カムイさんが言った通りです。人それぞれ自分にあった剣があるはずです。私は自分にあった剣を身に付けたいと思います」

「剣術競技会には間に合いません」

「どうせ、補欠の補欠です」

「ヒルダ?」

 ニコラスの決意が分かった所で、カムイはヒルデガンドに問いを向けた。

「構いません。それはニコラスが決めることです。それに将来を考えれば、そうするべきだと私も思います」

「じゃあ、決まり。替えの剣はないから、今日は剣なしで」

「はい? それで出来るのですか?」

「問題ない。剣を振るように構えて」

「あっ、はい」

 ニコラスは言われた通りに剣を置いて、構えを取った。

「剣がないのだから、そんなにきっちり握る必要はない。力を抜いて」

「はい」

「そう。それで上段に構えて……。振る!」

「はっ!」

 気合を入れて、ニコラスは腕を振り下ろした。

「駄目」

「……すみません」

 カムイのダメ出しに、ニコラスは落ち込んだ様子を見せている。

「謝らなくて良いから。最初から出来ると思ってない。もう一度構えて」

「はい」

「一つ一つ、口で言うから、その通りに動いて。ゆっくりで良い」

「はい」

「足を踏み込んで、体が沈むのとは反対に手は上に……。腕が下に引かれる感じはある?」

「……いえ」

「それは足の踏み込みと手を上げるタイミングがずれてる。ちょっと待って」

 カムイはニコラスの後ろに回って、その手を掴む。以前、ヒルデガンドに教えた時と同じだ。

「足踏み込んで……。腕が引かれる感じは?」

「あります」

「今は俺が止めている。それを自分でやる感じ。手を上にと言ったのは、感覚的な事で、実際には手を動かすのではなくて、この引っ張られる感じを作る為。分かった?」

「はい」

「じゃあ、手を離す……。自然に腕は振られる」

 カムイが手を放すと同時に、ニコラスの腕が前に出る。

「これが……」

「力は必要ないと分かった? もっと腕をしならせる感じで。実際には大きくしなるはずはないから、これも感覚。肘から先が自然と伸びていく感じで」

「はい」

「じゃあ、自分だけでやってみて。今度は早く」

「……はっ!」

 カムイに言われた事を意識して腕を振るニコラス。だが、カムイは渋い顔だ。
 これは当たり前だ。今、カムイが説明しているのは、カムイが何年もかけて、身に染みこませた事。いきなり出来たら、それこそニコラスは天才だ。

「まあ、続けるしかないな。最後に俺が振ってみせる。ちょっとおおげさにやるから、良く見てイメージを掴んで」

「はい」

 剣を持って上段に構えを取るカムイ。完全に制止した状態から、わすかに体が前に揺れたと見えた瞬間に風切音と共に、カムイの前に、閃光が走った。

「す、凄い」

「まあ、こんな感じかな。じゃあ、続けて。あと、剣なしの素振りは普段もやった方が良い。腕の振りの早さよりも、しなる感じを意識して」

「分かりました!」

 敬語を止めたカムイとのやり取りはすっかり先生と生徒だ。カムイ教室の新たな生徒の誕生、となれば黙っていられない人が居る。

「カムイ。今のは私が教わった事と同じです。ニコラスと私の剣はどう違うのですか?」

「簡単に言うと、ヒルダは一撃必殺、ニコラスは手数で勝負。そんな違い。ニコラスの完成形は、少し変則的な剣になるな」

「つまり、二つを足すとカムイの剣ですね」

「えっと?」

「惚けても無駄です。カムイの剣がどういうものか少し分かりました。私の剣が一対一の剣であるとすれば、カムイの剣は一対多数の剣ですね。実戦の剣です」

「ただの我流だ」

「それを我流で身に付けるカムイは凄いですね」

「煽てても何も出ないから」

 ヒルデガンドに手放しで褒め称えられて、カムイは照れてしまっている。

「それは困ります。ちゃんと私にも指導してもらわないと」

「指導してます。今のは全員に共通する事です。基礎ですから」

「他の皆もですね」

「もちろん。あえて、個別に言うとすれば、ヒルダは剣を置く感じは、まあまあだけど、そこから全身を使って振りを早くしていかなければならない。上段からを徹底的に鍛える。それが完成したら、斜め、次は横。下に行くにつれて、全身をよほどうまく連動させないと振りは鋭くならない」

「はい」

「マティアスさんは剣を置く感じを意識はしていますけど、意識をしないと出来ていない。それを無意識で出来るようにならないと」

「そうだね」

「そして、ランクさんは……」

「俺はどうなのだ?」

 睨むような視線で聞いてくるランクに、カムイは苦笑いだ。熱心さの表れだと分かるのだが、第一印象の悪さが、未だに糸を引いている。

「もう少し力抜いたほうが良いですよ? 力任せに振っても、振りは早くなりません。力を入れるのは、相手に剣を当てる直前。そのタイミングを掴む必要があります。素振りでは力を抜くことを意識して、力を入れるタイミングは、藁を切るとか、紙を切るとかで練習したほうが良いです」

「藁はわかるが、紙だと? そんなものは簡単に切れる」

「本当に切れていますか? 破いているのではなくて?」

「それは……」

 この様に聞かれると、ランクは切れていると言い切れなかった。

「じゃあ、やってみますね」

 カムイは荷物を置いている場所に向かうと、カバンから紙を取り出して持ってきた。

「……自分では無理か。ランクさん、この紙を上から落としてもらえますか?」

「あ、ああ」

 カムイの所まで来て紙を受け取ると、ランクはそれを頭上に掲げた。

「……この辺かな。手を離したら、すぐに後ろに下がって下さい。間違って切ったら困るから」

「おい?」

「まあ、大丈夫です。じゃあ、行きます」

 構えを取るカムイ。それを確認して、ランクは、紙から手を離して、後ろに下がる。
 その目の前を通り過ぎる銀の閃光。
 一瞬の間を置いて、二つに分かれた紙がひらひらと舞い落ちていった。

「お前……、これで剣の達人じゃなければ何なのだ?」

「俺の師匠は糸を切ります。俺はまだ、それが出来ない。紙も、もう少し軽くなると無理ですね。切るのではなく、破くになります」

「あっ、そうだった」

 カムイの言葉で、それを思い出したランクは地面に落ちた紙を拾って、切り口を確認した。

「むう」

 真っ直ぐな切り口を見て、ランクの口からうめき声が漏れる。

「切れてました?」

「ああ……」

「ランクさんの目標はそれです。力だけでは、そうはなりません。剣の早さと剣筋の正確さが必要になります。どちらも無駄な力を入れていては無理です」

「分かった」

 カムイの言葉に、ランクは素直に頷いた。実際に目の前でやって見せられては、疑念も湧かない。

「後の二人は……、えっと?」

「あの? まさか、何もなしですか?」

「いやそうじゃありません。名前知らなくて」

「あっ、マテュー・ストラウスです」

「私は、ギルベルト・クルーガー」

「ああ、マテューさんとギルベルトさんは……、説明いりますか?」

「……やっぱり」「そうだよな」

「個別の指摘は、今の所は何も。さっき言った基礎を練習して下さい」

「「はい……」」

「ヒルダ。今日の所は、今言った事だけをやります。自分で正しい練習を出来るように。練習の練習です」

「はい……」

 学院最強を自負するチームが、練習を覚える所から。カムイの実力を知っているヒルダであっても、自分たちは、そこまで劣っていたのかと少し落ち込んでしまう。

「実戦的な練習は、二ヶ月目から。最初の一ヶ月は徹底的に基礎を洗い直しますからそのつもりで」

「はい」

「二ヶ月目の中頃から個別練習に入ります。その頃には、それぞれの得手不得手を把握出来ると思うので、練習内容はその時に考えます」

「は、はい」

「その後は剣術競技会に備えて、相手を想定した鍛錬です。それまでに出場チームの事は調べておきます」

「あ、あの、カムイ。そこまで考えているのですか?」

「はい? 引き受けたからには、これくらいは当然だろ?」

「……貴方という人は」

「さてと、かと言って、俺も鍛錬を疎かにしたくないから、ちょっとやらせてもらうな」

「良いですけど、何をするのですか?」

「色々と。なんたって、ここは嘗ての俺の家だからな。鍛錬用のものは、壊されずに残ってるみたいだし」

 そう言って、カムイは少し先にある杭の集まりを指さした。

「……あれが始まりですか?」

 ただの杭の集まりなのだが、それを見たヒルデガンドの心は震えた。

「そう。あれが、おれの剣の原点」

「ここに住んで居た時からなのね?」

「俺は弱かったからな。じゃあ、ちょっと外すから、何かあったら呼んで」

 カムイ教室の課外授業の初日は、これで終わることになった。
 やがて、始まった杭の上でのカムイの舞。ヒルデガンドだけでなく、全ての者が、その舞に見惚れる事になったからだ。
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