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魔王の器 作者:月野文人

第四章 大陸大乱編

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まさかの参戦者

 大陸西方南部におけるシドヴェスト王国連合とルースア帝国の戦いは激しさを増している。ルースア帝国が攻勢を強めているのだ。
 きっかけはグラーツ王国の都グランツーデンの落城。シドヴェスト王国連合が落としたグランツーデンは、ルースア帝国によって奪回されていた。
 それによってルースア帝国軍は北側からシドヴェスト連合王国の領土への侵入が可能となり、実際にグランツーデンに一万を残し、残りの一万でディーフリートが守る城塞の背後となる西側に回り込んできた。
 東西両方面から攻められる形となったシドヴェスト王国連合はかなり厳しい状態に置かれており、堅牢な城砦を活かして何とか守ってはいるが、それも時間の問題という状況になってきている。

「カルロスの行方はまだ分からないのかい?」

 激しい戦いもひと段落。その間に開いた軍議の場でディーフリートはシドヴェスト連合王国の諜報を担っているサーキバス族の長であるレムに問いを向けた。
 グランツーデンの守将であったのはカルロス。そのカルロスの行方がディーフリートには掴めていないのだ。

「グランツーデンから逃れたことまでは分かっている」

「それは聞いた。僕が聞きたいのはその先だ。カルロスは、グランツーデンから逃げた兵はどこにいる?」

 グランツーデンを脱出したのはカルロスだけではない。ある程度まとまった軍が落城前にグランツーデンから逃れたことが調べた結果、分かっている。
 ディーフリートが求めているのはその軍勢だ。東西から挟まれる形で攻撃を受けているディーフリートは外部からの援軍を必要としていた。

「西方に逃れた。オッペンハイム王国に向かったのではないか?」

「……どうしてそこまで逃げる必要がある」

 オッペンハイム王国は同盟国ではあるが、そこに逃げ込むよりもシドヴェスト連合王国領の方が遥かに近い。何よりもシドヴェスト連合王国領内での戦いはまだこれからなのだ。

「それを我らに聞かれてもな」

 サーキバス族のレムは他人事のように答えた。実際にディーフリートの人族の臣下が何をしようと自分たちには関係ないと思っている。

「それを調べるのが諜報を担当する貴方たちの仕事だ」

 サーキパス族に限らず、シドヴェスト連合王国に属する魔族が本当の意味で自分に仕えているわけではないとディーフリートも分かっている。怒りを見せることなく、冷静な声で自分たちの役目を果たすように求めた。
 契約を重視する魔族にはこういった言い方が有効だと知っているのだ。

「なるほど。確かにそうだ。一つ分かったことはある」

「何故それを言おうとしないのかな?」

 分かったことがありながら、それを黙っていたレムにディーフリートはさすがに不満そうな顔を向けている。

「まだ確証があるわけではない。不確定の情報を伝えるのは我らの本意ではない」

「それでいいから教えてもらおう。不確定であってもそれを受けてどう判断するかは僕の問題だ」

「では。グランツーデンの落城には恐らくカムイ・クロイツが絡んでいる」

「……何だって?」

 レムの報告を受けてディーフリートは大きく目を見開いている。
 そのディーフリートの反応を見て、レムは冷笑を浮かべている。何を今更と思っているのだ。

「最初に城壁を突破したのは、突然現れた千ほどの部隊だったのが分かっている。その部隊に対して、ルースア帝国軍が戦闘態勢を取ったこともだ」

「それがカムイが率いる部隊だと?」

「断定は出来ない。だが、魔法の一撃で城壁に穴が開き、二発目でそれが大きく広げられて部隊の進入を許すまでになった」

「魔法二発で……」

 たった魔法二発で、自分たちが苦労して落としたグランツーデンが奪われた。そんなことがあり得るのかとディーフリートは思っている。

「驚くことではない。その前に散々に痛めつけられた城壁だ。物理的な面でも魔法防御の面でもな」

「……そうか。そこを突かれたわけだ」

 どこの城壁にも魔法防御の魔道が施されている。グランツーデンはシドヴェスト連合王国軍自身の手によって、かなり城壁の攻撃を受けていた。その損傷が修復出来ていないところを狙われたのだ。

「ただ最初に使われた魔法は目撃情報から考えて闇属性魔法だ。それを使えるのは魔族でも限られた種族、もしくはその種族の血を色濃く継ぐ者しかいないはずだ」

「……カムイはその闇属性魔法を使えるのか」

 闇属性魔法などディーフリートは初めて聞いた。幼い頃、魔法が使えないはずだったカムイがそのようなレアな魔法を使えることにディーフリートは驚いている。

「以前から思っていたのだが、カムイ・クロイツのことを何も知らないのだな」

「それは……」

 カムイ個人の力がどれだけのものなのかディーフリートは知らない。これはディーフリートだけではない。旧シュッツアルテン皇国の者たちも、ルースア帝国の者たちも分かっていない。
 これだけ戦乱が続いてきた中で、カムイは戦場で本気の力を一度も見せていないのだ。それはカムイの四柱臣と言われるルッツたちも同じ。そうであることに、今更ながらディーフリートは気が付いて、愕然とした。

「本当の力を知らないまま敵に回すなど、人族にしては無茶なことをするものだ」

「何故、カムイはグランツーデンを攻撃したのだろう?」

 レムに問いを発するディーフリート。こんなことを聞くということはレムの言葉の意味を分かっていない証拠だ。

「……まさかと思うが、分かっていないのか」

 ディーフリートの問いにレムは呆れ顔を見せている。

「こちらの策略が露見した。それは分かるよ。でも、策略はルースア帝国を倒す為だ」

 ディーフリートはシュッツアルテン皇国での身分を捨てておきながら、その思考は皇国の枠から完全に外れていない。シュッツアルテン皇国を滅ぼしたルースア帝国は、それに加担したクラウディアは悪で、その悪を倒すことは正義とは言わないが、支持されるのが当然と思っている。
 ディーフリートはこれまでも何度もカムイが動き出さないことに対して何故を繰り返していながら、カムイの愚かさを嘆くばかりで、答えに辿り着いていなかった。その答えをようやくレムの口からディーフリートは聞けることになる。

「……何故、カムイ・クロイツがルースア帝国を倒さねばならないのだ?」

「何だって?」

 レムはわざとらしく大きく首を振って疑問を示している。こんなことも分からないのかという嘲笑の意味を込めてだ。

「カムイ・クロイツは種族融和などという愚かな夢を実現する為に、ルースア帝国を利用していた。それは上手く行っていたと思うが?」

「……それはそうかもしれない」

「そしてお主は自分の野心の為に、カムイ・クロイツを利用しようとして、拒否された。それはそうだ。お主は協力の見返りを何も与えていない」

「それは……」

 ルースア帝国は臣従の見返りに、異種族の地位向上を約束し、実際に皇帝の名で非合法奴隷の禁止を命じた。一方でディーフリートはカムイに無償の協力を求めている。しかも動かないカムイに焦れて、周囲を策略に嵌めるまでして。
 普通に考えれば、カムイがどちらに味方するかは明らかだ。実際はカムイはどちらの味方もしていないが、敵視されることにディーフリートは文句を言えないはずだ。

「半端者だがカムイ・クロイツの思考は我ら魔族に似たものではある」

「……カムイはそうであっても、周囲の人たちはそれで良いのか?」

 カムイの割り切った考えは分かった。だが、カムイの周囲にはヒルデガンドを筆頭にシュッツアルテン皇国出身者が大勢いる。そういった者たちは、皇国を滅ぼしたルースア帝国に思うところがあるはずだとディーフリートは思っている。
 自分がそうであるから、他者もそうだと思い込んでいるのだ。

「よく分からないが、良いと思うからカムイ・クロイツに付いて行くのではないのか? それに仮に少しくらい異論があっても忠誠を預けた相手に従うのは当たり前だと思うがな」

「……そうだね」

 ディーフリートとヒルデガンドたちの違いは忠誠を向ける存在がいるかどうか。
 カムイは王だ。自らがそれを否定しても周囲はカムイを王として見、その王に自ら望んで尽くそうとする。
 エリクソン王国の王位を棚ぼたのような形で得て、それでも南部をまとめてシドヴェスト連合王国の盟主となったが、目の前のレムと同じように、どこまで自分に本気で仕えているのか分からない臣下ばかりの自分とは違う。こんな思いがディーフリートの心に広がっていく。


「陛下! 敵の攻撃が再開されました!」

 会議室に飛び込んできた伝令が、ルースア帝国軍の攻撃再開を告げる。暗い気持ちを抱えながらもディーフリートは、戦いの場に戻っていった。

◇◇◇

 再開したルースア帝国の攻勢はこれまで以上に激しいものだった。シドヴェスト連合王国の城塞にとって背後となる西側から苛烈な攻撃を仕掛けてくる。正面に比べれば守りの薄い西側に攻撃の手を集中させようという意図だ。
 そんな中でも正面からの攻撃も絶えることなく続いている。守備力を分散させる為の作戦だと分かっていても、シドヴェスト連合王国は両方面に備えざるを得ない。戦況としてはかなり厳しい状況だ。

「耐えろ! ここは何としても耐えきれ!」

「下がるな! 防衛線を乱すと敵に突破されるぞ!」

 将官たちの指示の声が戦場に響いている。どの声にも余裕は感じられない。ルースア帝国の攻勢にかなり押されている。
 その原因の最大のものは、死を恐れることなく突撃を繰り返すルースア帝国軍の部隊。ルースア帝国はついに切り札を投入してきた。勇者の魔法による狂戦士部隊を投入してきたのだ。

「魔法を! 矢を放て! 接近を許すな!」

 狂戦士部隊の恐ろしさを、一度戦ったことがあるシドヴェスト連合王国軍はよく知っている。腕を落とされても、足を失っても戦うことを止めようとしない敵兵士となど、まともにやり合いたくはない。
 遠距離攻撃で何とか押しとどめようと必死だ。だが、そう簡単に止まる程度の狂戦士ぶりであれば、恐れる必要はないというものだ。

「足だ! 足を魔法で狙え!」

 矢が体に突き立っても敵兵の足が止まることはない。魔法の火に焼かれても、風の切り刻まれても同じだ。痛みなど感じていない様子の敵兵士を止めるには、物理的に動けなくするしかないと考えた。

「放てっ!!」

 敵部隊に向かって魔法が放たれる。それは着弾と同時に爆風を巻き起こし、敵兵士を吹き飛ばす。属性融合魔法だ。

「どうだっ!?」

 敵の足は止まった。それに喜んだシドヴェスト連合王国軍ではあったが、ゆっくりと起き上がってくる敵兵士の姿を見て、その思いはすぐに消し飛んだ。

「来るぞ……次の魔法の準備だ! 急げ!」

 敵狂戦士部隊の突撃が再開される。そう思って、次の攻撃の指示を出す将官。だが、その命令が実行に移されることはなかった。

「なっ!?」「あれは何だ!?」

 シドヴェスト連合王国軍の騎士や兵士の口から驚きの言葉が叫ばれる。
 その視線の先にあるのは、真っ白に輝く巨大な光の玉。それがゆっくりと城塞に迫ってきていた。

「……こ、攻撃を! 魔法で迎撃しろ!」

 敵の攻撃魔法だと分かって、慌てた様子で迎撃の指示が飛ぶ。だが、それは少し遅かった。
 光の玉は城砦の壁に激突。目も開けていられないほどの眩い閃光が周囲に広がり、それが収まったあと、人々の目に移ったのは城砦の壁にぽっかりと空いた穴だった。

「……壁が崩れた! 守りを固めろ! 敵の進入を許すな!」

 すかさず崩れた壁の守りを固めるように指示が出る。それと同時にその空いた壁に向かって突撃を開始した敵狂戦士部隊に矢や魔法が降り注ぐ。
 だがやはり狂戦士部隊は足を止めることなく、城塞に向かって進んでいった。接近戦は避けられそうもない状況だ。
 城砦の戦いはさらに激しさを、凄惨さを増していくことになる。

 その戦いを離れた場所から見つめている者たちがいる。

「……よく見えるな」

 長い筒から目を離して、カムイは隣にいるオットーに声をかけた。

「うちの新製品だからね。もともとの皇国の魔道具をかなり改良を重ねて、遠くまで見えるようにした」

 筒はオットーの商会が開発した遠見の魔道具。要は望遠鏡だ。皇国の軍事用の魔道技術を応用して作られたもので、その性能は大陸一だとオットーは自負している。

「じゃあ、あるだけ買おうかな?」

「毎度あり。っていっても今はまだ少ししかないからあげるよ」

「えっ、良いのか?」

 商人であるオットーがただで物をくれる。それにカムイは驚いている。目的は同じにしていても、商売は商売としてきっちりしてきたのだ。

「この時期に他国に売る気にはならない。この魔道具は平和になってから一般の人に活かしてもらいたいからね」

 もともと軍事利用の為の魔道具だが、オットーは一般の人々に使ってほしいと思っている。ただでカムイに渡すのは早く平和にしろという催促の意味だ。

「じゃあ、有難く」

 カムイも遠慮はしない。あるだけ買おうと考えたのは他国に渡したくないからだ。オットーもそれが分かっていて、全部譲ってくれるというなら有難く頂くだけだ。

「さて肝心の戦いの方だけど……あれって本当に光属性魔法なのか?」

 カムイはまだ遠見の魔道具を使って戦場を見ているマリーに声を掛けた。

「どうみてもそうじゃないかい? まあ光属性魔法にあれだけの威力の攻撃魔法があるとは知らなかったけどね。さすがは勇者様ってところかね?」

 マリーの知識では光属性は基本、治癒魔法がほとんど。攻撃系の魔法は数えるほどがなく、それも特別威力が高いものではない。
 魔法に詳しいマリーが知らなかったのだ。特別な魔法であるのは確かで、そんな魔法を誰が使えるのかとなれば勇者しか考えられない。

「確かにあれも凄いけど、俺が言っているのは兵士を高揚させるやつ。あれじゃあアンデッドにされているみたいだ」

「ああ。あれは不気味だったね。でも、勇者の魔法なんだろ?」

 アンデッドを生み出す魔法は闇属性魔法。勇者が闇属性魔法を使うはずがない。

「まあな。そもそもアンデッドを生み出す魔法って禁忌の類だからな」

「じゃあ光属性しかないじゃないか。さて勇者がここまで本気を出してきたってことは落城は時間の問題かね」

 勇者の魔法による攻撃で、シドヴェスト連合王国の城塞を守る壁が突破されそうだ。内部への侵入を許しては、数に劣るシドヴェスト連合王国側はかなり不利な状況になる。
 まして敵には狂戦士部隊が存在するのだ。

「問題は逃げられるかだな。ちゃんと逃走路は用意してあるんだろうな?」

「そこまで馬鹿じゃないだろ? ディーフリートはなんたってお前が王の器と高く評価した相手だ」

 これが本心ではないのはマリーが浮かべている意味ありげな笑みで分かる。

「……嫌味を言うな。言い訳をさせてもらうけど、どんな優れた才能も磨かなければ輝かないからな」

「そりゃあそうだ」

「大丈夫かな? ここでは目立ちたくないんだけどな」

 ここ最近のディーフリートのやってきたことはカムイから見て、どれも拙いものばかり。マリーの嫌味込みの褒め言葉を否定したことで、カムイは心配になってきた。

「別に逃走に失敗してもかまわないだろ?」

「ディーフリート本人はな。でも兵士には出来るだけ多く逃げて欲しい……まあ、ここで帝国に刃向かうわけにはいかないか」

 カムイたちが考えている策を成功させるには、ここでルースア帝国と正面から戦うのは望ましくない。シドヴェスト連合王国軍が崩壊しても仕方がないと割り切ったカムイだったが。

「でも、ここでシドヴェスト連合王国を見捨てるとセレネさんも死んでしまうかもね?」

 二人の会話を聞いていたオットーが口を挟んできた。

「……セレが逃げる余裕はあるだろ?」

 セレネは後方のエリクソン王国の城にいる。そうであれば敗戦の報を聞いてからでも逃げる余裕はある。敗戦情報くらいは伝える気持ちがカムイにもあるのだ。

「セレネさんってそういう性格だったかな?」

「……ええっ? まさか弔い合戦を挑むってこと?」

「それもあるね。でも……」

「カムイ様」

 オットーの言葉を遮る声。いつの間にかミトが地面に片膝をつく姿勢で控えていた。

「何かあったのか?」

 ミトがこういう姿勢でいるということは間者としてこの場に現れたということだ。そもそも、そうでなくては話に割り込んでくるはずがない。

「シドヴェスト連合王国の別働軍が近づいてきています」

「それは誰が率いている?」

 グランツーデンにいた軍はカルロスを散々に脅しつけて、オッペンハイム王国に向かわせている。そのカルロスが裏切ったのかとカムイは思ったのだが。

「それが……軍を率いているのはセレネ・エリクソン殿です」

 ミトの口からはカムイの思いもよらない人物の名前が出てきた。

「……あいつは馬鹿なのか? いや、馬鹿なのは知っていたけど、ここで出しゃばるか?」

 セレネが軍を率いて戦場に現れる。この情報は大いにカムイを動揺させている。完全に想定外の事態だった。

「だから意地張らないで魔族の協力を求めれば良かったんだよ」

 そんなカムイにマリーが文句を言ってきた。
 カムイは宣言通りに今回の戦いに魔族を参加させていない。魔族の力を持つ者で協力しているのはミトなどのカムイと同じ人族からハーフと呼ばれている者たち。多くはミトと同じ非合法奴隷として働かされていた魔族の二世たちだ。

「……決めたことだ。それにミトたちだって頑張っている」

 カムイはこう言うが数の不足、それも優れた能力を持つ間者数の不足は明らかで、そうであるから今回の様な事態を招いてしまうのだ。

「まあ、お前が決めたことだから好きにすればいいさ。でも今回のこれはどうするんだい?」

「それは……何もしない」

 ここでカムイたちが介入しては、作戦が大きく狂うことになる。それが分かっているカムイは動かないことを選択した。

「それはカムイの本心なのかな?」

 そのカムイにオットーが問い掛けてきた。

「えっ?」 

「カムイは自分がやりたいことをやると決めて、今回の戦いに臨んだんじゃないの? そうであるのに戦略の為に自分の気持ちを殺すなんて間違っているよ」

 カムイの目を正面から見据えながらオットーはこれを告げた。この台詞をカムイに告げるためだけにオットーはカムイに会いに来たのだ。

「……オットーくん。オットーくんは時々そんな風に美味しいところを持っていこうとするよね?」

「そう? 僕はただ皆に笑顔でいてもらいたいだけさ」

「……その台詞良いな。今度使おう」

「お前が言っても似合わねえよ。じゃあ、やるんだね?」

「いいのか?」

 もし本当に作戦が狂うような事態になれば、それで苦労どころか、さらに命を危険に晒すことになるのはマリーもだ。

「セレネはあたしも知らない仲じゃない。悪党のあたしたちが仲間を見捨てる様なことまでしたら救われないだろ?」

 マリーはセレネも仲間だと言った。これがカムイの気持ちを決めることになると分かっているのだ。

「なんか……まあ、いいか。はあ、しかし、どうしてこう面倒なことをしてくれるかな」

 わざとらしくため息をつきながら、カムイは文句を口にする。セレネへの文句ではあるが、そうでないようでもある。
 いずれにしろ、カムイは行動を興す為に動き出した。
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