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魔王の器 作者:月野文人

第四章 大陸大乱編

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暗躍する者たち その二

 『カムイには人の運命を変える力がある』は、まだカムイがシュッツレーレン皇国学院にいた頃のオットーの言葉だ。この言葉の通り、カムイの周囲の者たちは、その当時には想像も出来なかった境遇に身を置くことになった。世の中そのものが変わってしまったからだとしても、それにカムイが影響を与えていたことは間違いない。
 そういった者たちの中で一人、ディーフリートは異色だった。ディーフリートもカムイの影響は受けている。暗殺から救われ、南部辺境領の取りまとめ役という地位に就いたことにもカムイが関わっている。
 カムイに王の器だと評され、実際にエリクソン王国の王となり、シドヴェスト王国連合の盟主にもなった。
 だが、カムイに影響を受けた者たち、その中でも味方といえる者たちの中で、その境遇に全く納得していない唯一の存在がディーフリートだった。
 それだけでない。ディーフリートがカムイの味方となった者の中で異色といわれるのは、ディーフリートはカムイと出会ってから一度も、その下に就くことを考えなかったという点にある。
 出会ってすぐにカムイの力を認め、ディーフリートはその力を自分の物にしたいと考えて積極的に行動した。ここまでは他の者たちと同じだ。
 その後、ソフィーリア皇女が亡くなって皇国の統治者となる可能性が消え、さらに命を狙われたことで全ての気力を失ってノルトエンデで世話になっていた時も、ディーフリートはカムイの臣下になるという選択はせず、世捨て人のような立場でいることを望んだ。
 ディーフリートは、ほとんどの敵味方がそうであったように、カムイの力を畏れることも、恐怖を感じることも、それに憧れることも、魅せられることもなかった。
 ディーフリートは常にカムイを下か、せいぜいが同列、もしくは第三者的な斜めの位置からしか見ていなかった。こういう点では、確かにディーフリートは王の器だったのかもしれない。人を仰ぎ見ることがないのだ。
 そんなディーフリートだが、結果として歴史の評価は低い。優れた能力を有していながら、それに見合った結果を残せなかったというのが、その理由だ。
 カムイに出会ったことが、もしくはカムイの存在そのものがディーフリートにとって不幸だったという者がいる。カムイに王の器などと評されたことで、勘違いをしてしまったのだと考える者もいれば、カムイのせいで分不相応な、間違った道に進んでしまったのだと言う者もいる。
 これは満更、デタラメな評価だとは言えない。カムイがいなければ、ディーフリートがシュッツアルテン皇国の皇帝もしくは皇帝代理となった可能性がある。そうなれば、大陸を統べるのはディーフリートであったかもしれないのだ。
 当たり前だが、この『もし』を考えることには全く意味がない。カムイ・クロイツは存在していたのだ。
 ディーフリートが、もし大陸の覇者になるという野望を持っていたのだとすれば、乗り越えなければいけないのは、ルースア王国でも帝国でもなく、カムイ・クロイツという一人の男だ。
 そして、ディーフリート・エリクソンは、その為と思われる行動を起こしていた。結局、ディーフリートは味方にはなっても、仲間になることは自ら拒んでいたのだ。

 大陸西方南部、シドヴェスト王国連合の領土の南には、かつてドワーフ族の王国があったと言われている、広大な山岳地帯が広がっている。荒々しい岩肌をむき出しにした険しい山々が続く山岳地帯。多くの活火山が含まれていることもあって、木々など生えることのない不毛地帯となっている。
 そのように危険で且つ、何の恵みもない場所なので、ドワーフ族が世界から姿を消した後も、そこに住む人族は居ない。
 そんな地に今、千人ほどの軍勢が集結している。ディーフリートが率いるエリクソン王国軍だ。
 人族など住まないこの地に、何故、ディーフリートは軍勢を引きつれてやってきたのかというと、人族が住まない、この場所だからこそ、集落を構えて住んでいる者たちに会う為だ。

「……本当に現れるとはな」

「それは、こちらの台詞です。噂を信じて探した甲斐がありました」

 青空の下、椅子だけを並べて向かい合っているのは、ディーフリートと、獣人族の男だ。ディーフリートはこの獣人族の男に会う為に、ここまで来ていた。

「ライアン族の長、バッカスだ」

 獣人族の男が名乗った。たてがみの様にも見える黄色の髪を持つ、かなり大柄な男だ。野性的な表情をしているが、発達した犬歯以外は、人族と見た目にそれほど大きな違いはない。

「シドヴェスト王国連合代表のディーフリート・エリクソン。こちらの呼びかけに応じてもらえたことに感謝します」

 今回の会談はディーフリートの側から申し入れたことだった。
 南部の山岳地帯には魔族の集落がある。こんな噂だけを頼りに人を送り、存在を突き止め、交渉を求めた。
 これが功を奏して、この会談が持たれている。

「話を聞きに来ただけだ。結論はまだ出ていない」

「ええ、分かっています。この場に来て頂いたことへの御礼です。まずは会って話さないことには何も始まりませんからね」

「それで? 何から話すのだ?」

「……まず最初に確認を。貴方がたは、アーテンクロイツ共和国に所属していない。これに間違いはありませんか?」

「当たり前だ」

 ライアン族は、カムイに従っていない獣人族の部族だ。ディーフリートはこれを事前に聞いていて、会いに来ている。

「理由を聞いても?」

 デーフリートの知識では、全ての魔族は魔剣に選ばれた者に従わなければならないはずだ。だが、このライアン族はその盟約を破っている。これの理由、というより、真実なのかをディーフリートは確かめたい。

「魔剣のことは?」

「知っています」

「ではレイのことは?」

「……魔王レイ。魔剣の所有者であった人ですね?」

 ノルトエンデにしばらく住んでいたディーフリートは魔剣について、ある程度の知識を持っている。その程度のことはカムイとしても隠すような話ではない。

「……そのレイは簒奪者だ。我らが祖先である魔王からその座を奪ったのだ」

「魔王レイが簒奪者?」

 この話をディーフリートはノルトエンデで全く聞いていない。

「レイという異世界人は自分の復讐のために魔族を利用したのだ。魔族を従わせる為に、魔王であった我らが祖先を追い払い、その座に収まった」

「……だから、魔剣に選ばれた相手であろうと従う気はない?」

「当然だろう。どうして簒奪者の言うことを聞かねばならんのだ?」

「……では、今、従っている魔族はどうして?」

 魔王レイが簒奪者であるならば、今度は、どうして従う魔族がいるのかが気になる。

「あれは裏切り者の子孫どもだ。真の魔王を、保身か欲の為かは知らんが、裏切って簒奪者に手を貸したのだ」

「……そういうことですか」

 バッカスの話が事実であるならば、魔族には二派があることになる。バッカスが真の魔王と言っている者に仕えていた魔族と、魔王レイに付いた魔族の二派だ。
 どちらに正義があったのかは、ディーフリートには関係ない。

「魔王レイも魔剣も我らは認めておらん。当然、盟約に参加しておらん」

「そういった部族は他にもあるのですか?」

 真の魔王とやらに最後まで忠誠を向けていたのがライアン族だけとは限らない。他にもいる可能性は高いと考えて、ディーフリートはこれを尋ねた。

「あるな」

「その他の部族はどこに住んでいるのですか?」

「……それは分からん。千年前にノルトエンデを追い出されて、散り散りになった。我らは何とかここまで逃れてきたが、他の部族がどうなったかまでは」

 他の部族のことを全く調べていないというバッカスの言葉に、ディーフリートは少し不安を感じてしまう。
 これは千年もの間、他の土地にほとんど出ることがなかったということを示している。そうでなくても、他部族の所在を調べる能力がないのかもしれない。

「それを調べることは出来ますか?」

 この場で遠慮は無用だ。ライアン族の能力をきちんと見極めた上で、ディーフリートは判断しなければならないのだ。

「……邪魔をされないのであれば」

 バッカスの答えは条件付きだった。邪魔をする相手が誰かと考えれば、この条件はかなり問題となる。

「邪魔されるほどの敵対関係なのですか?」

「簒奪者レイの時代は、お互いを敵視していたはずだが、それなりの時が過ぎた今はどうなのか……。使者は何度か来たので、それほどでもないと思うが、その使者の要求を何度も拒否しているからな」

 どうやら他の土地にほとんど出ていないという推測の方が正しかったのだと、ディーフリートは分かった。ライアン族は千年前から、自ら他の部族との交流を持つことをしてこなかったのだ。

「今、大陸はルースア帝国がそのほとんどを治めている形になっていますが、そのルースア帝国は、魔族に人族と同じ権利を与えると約束しています」

「……そんな話は、にわかには信じられん」

 これはライアン族だからということではない。長い歴史の中で、ずっと魔族と人族は敵対してきた。過去の歴史の知識を人族より古くまで知り、それでいて長命の分、近しく感じる魔族には、人族が融和を求めるなど簡単には信じられない。

「信じるも何も、事実そういう布告が出ています」

「……しかし」

「正直言えば、先はどうなるかは私にも分からない。でも、今はそうなっている」

「……そうか。それで我らに従えと?」

「そうではありません。連合に加盟しないかと言っているのです」

 これがディーフリートの目的だ。ライアン族をシドヴェスト王国連合に引き入れたいのだ。

「……その目的は?」

「もちろん、貴方たちの力を求めてのことです」

「だろうな」

 ディーフリートの答えはバッカスが考えていた通りのものだった。それ以外に理由など思い浮かばない。

「ルースア帝国による大陸支配など仮初の形に過ぎません。すぐに破綻することになる。私たちは、やがて巻き起こる戦乱において、自らを守る力を求めているのです」

 これは少し嘘をついている。戦乱から守る力ではなく、戦乱を巻き起こし、そこで勝ち抜く力をディーフリートは求めているのだ。

「そのルースア帝国とやらは強いのか?」

「数だけは。総兵力はおよそ十八万から二十万。我らの六倍から七倍です。ただ同盟国の軍とあわされば、戦力差はその半分になります」

「……確かに数は多いな」

 バッカスにとって二十万という数字は想像出来ない数だった。

「全てと一度に戦うわけではありません。多くても六万。これであれば、ほぼ同数での戦いになります」

 これはルースア帝国とディア王国の軍勢だけを相手にする前提での数だ。ディーフリートは、他の従属国の軍勢が参戦してくるとは思っていない。

「なるほど。同数か」

「はい。そうなれば、個々の強さが物を言います。その点で人族は魔族に遠く及ばない。貴方たち、ライアン族の力が勝敗を決めることになるでしょう」

「ふむ……」

 ディーフリートの言葉に、多分におだてが含まれていることはバッカスにも分かっている。それでも悪い気はしない。相手の評価が高ければ高いほど、引き出せるものも多くなるのだ。

「我らが連合に加盟するとして何を得られるのだ?」

 バッカスは、その引き出せるものが何かを具体的に確認することにした。

「安住の地を。平野部に領地を用意します。小さいですが街も渡します。ライアン族はそこで国を建てれば良い」

「領地か……」

 どれほどの広さの領地かは分からないが、街もあるとなればそれなりの広さの土地。考えていたよりも遥かに好条件だ。何と言っても、まだ何もしていないのだ。

「国を建てて、シドヴェスト王国連合に加盟してもらう。あとは、その国をどうしようと貴方たちの勝手です。もちろん、守ってもらうことはありますが」

「守ってもらうこととは?」

「連合内で争いを起こさないこと。軍事力を提供すること。その軍事力を運営する資金を提供すること。まあ資金については、いきなりは無理でしょう。当面は連合から支援する形を取ります」

「ふむ」

 ディーフリートが話した内容は、簡単なもので特に問題と思えるものは何もない。

「あとは要望です」

「要望?」

 ディーフリートが新たな要求を持ち出してきたことで、バッカスにやや警戒心が生まれる。こういう後出しの条件が、多くの場合に一番重要なのだと交渉経験のほとんどないバッカスでも分かっている。

「国を富ます為には、国民を増やす必要があります。ライアン族だけでなく、他の地に散らばっている魔族も呼び寄せてはどうですか?」

 バッカスの思った通り、ディーフリートにとって、これが最も大事な点だ。魔族の数が増えれば、それだけ軍事力が増す。ライアン族への厚遇はこれを見込んでのことだ。

「……他の部族と共生しろと?」

 ディーフリートの話を聞いたバッカスの表情が険しくなる。この反応はディーフリートにとって想定外だった。

「何か問題がありますか?」

「そのような環境で暮らしていては、血を汚す者が出てくるかもしれない」

「……血を汚す、ですか?」

 魔族ではないディーフリートには分からない言葉だ。

「他族と血の交配を行う者が出てしまう可能性がある」

「……それが問題なのですか?」

 ディーフリートはノルトエンデに住む、それも社交的なごく一部の部族としか接していない。本来、魔族が持つ純血への拘りを知らなかった。

「……人族には分からんか」

「はい」

「他の部族もこの地に呼ぶということであれば、別の街を用意してもらいたい。これは相手も望むことのはずだ」

「……ノルトエンデではいくつもの部族が共に暮らしていたと思いますが?」

 部族ごとに街を引き渡すとなると、どれだけの領地を譲ることになるか分からない。ディーフリートはノルトエンデを引き合いに出して、バッカスの要求を拒否しようと考えた。

「何を言う。それぞれが街や村を作って暮らしているはずだ」

「いや、都でも、他の街でもいくつかの部族の人がいました」

「……それは仕事場ではないのか? こちらが言っているのは暮らしの場だ。女子供が暮らす場所と言えば分かるのか?」

 純血に拘りを持つ部族だとしても、他部族の者と全く交流しないわけではない。そうでなくては、魔王の下に集まることなど出来ない。
 子を産む女性たちを他部族から引き離すことにバッカスは拘っているのだ。

「……そういうことなのか」

 ディーフリートはノルトエンデの魔族の生活まで知らない。それぞれの部族の集落にも行ったことはないのだ。
 獣人族のように混血を受け入れて、いくつもの部族が共生している集落もあるのだが、それを知らなかった。
 知らなくてこの場合は幸いだ。ノルトエンデの獣人族の状況について話せばバッカスは激高しただろう。同じ獣人族、ノルトエンデの獣人族の長であるライアンがライアンと名乗っているのには意味がある。その名の通り、ライアンはライアン族で、魔王レイについたライアン族の流れをくむ者の一人。バッカスにとって、裏切り者の中でも最悪の裏切り者の子孫だ。

「……これについては、他の部族が合流することが決まってからで良いのではないか?」

 純血を守る為の生活環境には拘りはある。だが、まだ来るとも分からない他部族のせいで、この話がご破産になることをバッカスは望んでいない。問題を先送りしようと考えた。

「その都度、交渉ですか……それも仕方がないか」

 単独での居住に拘らない部族もいるかもしれない。そうでなくても、街までは不要で、村程度の規模でも平気かもしれない。こう考えて、ディーフリートも、この件については保留することにした。ライアン族の連合加盟の障害になるくらいなら、その方が良い。

「他にも何かあるのか?」

 居住地に関する問題の先送りを、ディーフリートも受け入れたとみて、バッカスは他の条件がないか聞いてきた。

「今のところは、これくらいです。そちらは?」

「……今はないな」

「では、連合の加盟について受け入れてもらえますか?」

「……結論は持ち帰って、協議してからにさせてもらう。人族の国との連合となると、さすがに一存では決められん」

 これはバッカスのちょっとした駆け引きだ。千年もの長きに渡って、荒れ果てた土地に住み続けていたライアン族。苦しい暮らしの中で族人の数はじりじりと減ってきている。この先も今の状況が続けば、いつかライアン族は滅びてしまうという危機感を覚えるくらいに。
 今回の交渉は現状を脱却する絶好の機会だと思ったからこそ、この場に出てきているのだ。その上、山岳地を出た緑豊かな地に領地までもらえるとなれば、断る理由などない。

「そうですか。では回答を待っています」

「ああ。決まり次第、伝える」

「では。今日はこれで」

 椅子から立ち上がってディーフリートは手を差し出した。バッカスも立ち上がり、その手をがっちりと握る。
 このバッカスの反応で、ディーフリートはライアン族の連合加盟を確信したが、特に何を話すでもなく、去っていくバッカスの背を見送っていた。

「……本当にあの相手と?」

 バッカスがかなり離れたところで、ディーフリートにカルロスが話しかけてきた。

「どういう意味かな?」

「さっきの話だとライアン族はカムイに従う魔族の敵だ。カムイたちがそう思っていなくても、ライアン族の方は敵視しているのではないのか?」

 魔族の力を手に入れる。その為に別の魔族を敵に回しては意味がない。まして、その相手はカムイに従う魔族だ。

「……平気そうなことは言っていたけど。まあ、もう少し調べてみようか」

「どうやって?」

「えっ?」

 ディーフリートの軽い答えをカルロスは流さなかった。ライアン族を連合に加盟させることに、カルロスは今ひとつ納得いっていないのだ。

「千年前から今までの関係など、どうやって調べる?」

「そこまで調べなくても。それに連合が共和国と敵対することはない。距離も離れているし、接触する機会はまずないね」

「まさか伝えないつもりなのか?」

「伝えなくても、すぐに知るよ」

 共和国の諜報能力をディーフリートは良く知っている。

「自ら伝えるのと、間者によって知られるのは違う」

「カルロス。そこまで共和国に気を使う必要はないよ。連合には連合、共和国には共和国の思惑がある。それぞれ自分たちの目標に向かって行動するだけだ」

 シドヴェスト王国連合は、共和国の傘下にあるわけではない。ディーフリートの言っていることは間違いではない。
 それはカルロスも分かっている。分かっているが不安なのだ。

「もう少し慎重に動いても良いのではないか?」

「慎重には動いているよ。でも時間がない。物事はあっという間に動き出す。その時に慌てないように、今から準備を整えておかないと」

「……その動きが本当に正しいのかと言っている」

「今更? 大陸三分統治策には君も納得してくれたはずだよね?」

「それは……策は否定しない」

 大陸三分統治は、ディーフリートが今後の方策として打ち出したものだ。西方北部を除く地域をシドヴェスト王国連合が、西方北部と大陸中央をアーテンクロイツ共和国が、そして大陸東方をルースア帝国が治めるというもの。
 大きな構想のように聞こえるが、要はルースア帝国成立前の状況に戻そうというだけのこと。シドヴェスト王国連合がシュッツアルテン皇国に成り代わったに過ぎない。ディーフリートにとっては最初の一歩というところだ。

「その為にはルースア帝国を西方から押し出さなければならない。しかも反撃を許さないように速やかに」

 シドヴェスト王国連合の目標はディア王国の領土。それを入手するだけで、初期の目標はほぼ達成される。問題は同盟国であるオッペンハイム王国を出来るだけ抑え込み、最終的には連合傘下に置くこと。
 後はルースア帝国本国からの反撃を防ぐだけだ。ただディーフリートは、これを共和国もしくは中央諸国連合にやらせようと考えている。だから大陸中央は共和国の領土と考えているのだ。

「それは共和国の協力がなければ不可能だ」

 カルロスも策については良く分かっている。実現するには共和国、カムイをその気にさせないとならないと。

「協力はしてくれるよ。ルースア帝国の支配なんて、本気でカムイが受け入れているはずがないからね」

「……そうだとしても」

 カルロスは続く言葉を飲み込んだ。
 カムイがその気になった時、果たして大陸中央を治めるだけで終わるのか。カムイに欲がなくても、周囲の者たちがそれだけで許すのか。
 カムイとその仲間たちの野心が大陸制覇に広がった時、シドヴェスト王国連合は、ディーフリートはどうするつもりなのだと考えると、カルロスの胸には不安ばかりが広がって、とても問いを口にする気にはなれなかった。
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