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魔王の器 作者:月野文人

第四章 大陸大乱編

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ルースア王国の野望

 シュッツアルテン皇国の分裂。この事態を一番喜んでいるのは、恐らくはルースア王国だろう。何もしていないのに敵対勢力が勝手に弱体化したのだ。
 だが、この状況にあってもルースア王国は直ぐには動こうとしなかった。
 理由は二つ。一つはアレクサンドル二世王の容体が、いよいよ本格的に悪化した事。国政はニコライ王太子に引き継がれている為、ほとんど影響はないのだが、いざ崩御という事態になれば、慣習上、一年は喪に服す必要がある。この状況で戦争を初めて良いのかという意見が出ていた。ただ、これについては大陸制覇の絶好の機会を逃しては、アレクサンドル二世王の志を無にする事になるという意見が大勢であり、それほど大きな障壁とはなっていない。
 問題はもう一つの方。肝心の戦略で揉めているのだ。
 戦略は大きく二つに割れている。混乱に乗じて攻め込み、一気に旧シュッツアルテン皇国の全ての領土を手に入れようという積極論と、当面は静観し、潰し合いで疲弊した所を狙って侵攻を開始すべきだという慎重論だ。

「敵の最大勢力は皇国の四万! 我軍はこの三倍の軍勢を用意出来る! これで何を恐れる必要があるのか!?」

 積極論の筆頭であるアイザック・ボンダレフ将軍が、会議の場で大声で訴えている。

「何度説明すれば良いのだ。それは個別に戦った場合の戦力比。我軍の侵攻に敵が協力して向かってきた場合は良くて五分だ」

 ボンダレフ将軍の意見に反論するのは、ユーリ・ロマノフ将軍。慎重論を唱える側の筆頭だ。

「だからこそ、敵が協力する隙を与えずに攻め込むべきなのだ!」

「だから、我軍が攻め込めば敵が纏まる可能性がある。それよりも、敵同士で戦わせて、弱らせた後で攻め込んだ方が効率的だ」

 主張はずっと平行線を辿っている。このままでは無駄に時ばかりが過ぎてしまうという事で、軍部での意見集約が出来ない状況でありながら、今回の会議にはニコライ王太子も出席している。最終的な判断を仰ぐためだ。
 それが分かっているので、両将軍は、これまで以上に熱心に自分の主張を訴えている。

「一つ質問させて頂いてよろしいですか?」

 そして、今回に限って出席しているのはニコライ王太子だけではない。最終的な判断が下される場という事で文官からも何人か参加していた。
 その一人であるヴァシリーが声を上げた。

「……どうぞ」

 今となってはヴァシリーは、共和国を含む西方の一番の識者とルースア王国内で思われている。そのヴァシリーからの問いという事で、両将軍の表情にやや緊張の色が浮かんでいる。

「今回の侵攻作戦において、どこまでを敵とされるおつもりですか?」

「それは……」

 ボンダレフ将軍は直ぐに答えを口に出来なかった。本音は全てとなるのだが、この答えでは誤りを指摘されると分かっている。

「敵同士で争った結果、もっとも力を残した所だ」

 ロマノフ将軍の答えはこれ。こういう答えになる事は誰もが予想出来ていた。

「では質問を変えます。アーテンクロイツ共和国と戦うのですか?」

 求めていた答えが得られなかったヴァシリーは、真っ直ぐに聞くことにした。こういう聞き方では、共和国を恐れている様に思われるので嫌だったのだ。実際に恐れているが。

「当然戦う」

 ボンダレフ将軍は今度ははっきりと言い切った。

「力を残したのが共和国であるなら……」

 一方でロマノフ将軍は歯切れが悪くなる。漁夫の利を狙う以上、こういう答えにならざるを得ないのだが、共和国が消耗するどころか、逆に他国の力を吸収してしまう可能性が頭に浮かんでいる。

「ありがとうございます。私の質問は以上です」

 答えを聞いただけでヴァシリーは引き下がった。軍議に文官が必要以上に口を挟んでは、余計な軋轢を生む事になるとヴァシリーには分かっている。
 それに、両将軍の反応から言いたいことは充分に理解されていると思えていた。

「……共和国と戦うとなれば、即戦で決着を付けるべきだ」

 最初に折れたのは慎重派のロマノフ将軍だ。共和国の弱点が人材数の不足である事は分かっている。皇国の人材を吸収するような事態になれば、その弱点が消えてしまう可能性がある。

「まずは皇国を倒し、その上で数の力で圧倒するという手もある」

 ボンダレフ将軍も初めの勢いを引っ込めた。一度の侵攻で全てを手に入れるというのは、あまりに楽観過ぎると思い直したのだ。

「大切なのは、敵勢力を纏めない事だ。共和国は把握しているだけで一万五千。皇国が四万、皇国東部も同じく四万。これにオッペンハイム王国が加われば、我軍と同等か下手すれば超える」

 元々、総兵数は皇国の方が多かった。分裂した勢力が纏まれば、王国は数の力を失う事になる。
 これはロマノフ将軍の最初からの主張だが、今はボンダレフ将軍も聞く耳を持っている。

「外交か」

 ボンダレフ将軍の視線がヴァシリーに向いた。敵勢力の分断は、外交か謀略の類に属する事だ。軍部の仕事ではない。

「共和国と皇国が手を組む可能性は限りなく低いと思いますが、手は打っておくべきでしょう。ただ、どちらに対して働きかけますか? これはどちらを敵にするかで変わってきます」

 交渉は攻める側の反対と行う事になる。

「攻め易いのも、交渉し易いのも皇国となりそうだな」

 ヴァシリーの問いに、ボンダレフ将軍は悩んでしまう。
 共和国が攻め難いのは、強兵であるだけでなく、ノルトエンデの守りが堅いという点もある。ノルトエンデに篭もられると戦いが長期化する。これは第三国に隙を作る事になってしまい、ルースア王国としては避けたい事態だ。
 交渉については何の説明も要らない。これまでも散々に皇国は交渉事で失敗してきているのだ。

「マトモに侵攻すれば共和国とぶつかる事になる。北部がどうかだが、東方伯家の反乱勢力は共和国と繋がっていると考えた方が良いのであろう?」

 ロマノフ将軍がヴァシリーに意見を求めてきた。

「まず間違いなく。東方伯家は共和国と皇国の二つに割れる事を選んだのです」

「そうなると北部も駄目だ。中央、そして南部も共和国と繋がっている可能性が高い」

 ルースア王国が西方に侵攻しようとすれば、北部には元東方伯家のサミュエルを中心とした勢力にぶつかり、中央は元東部辺境領の領土を突破する事になる。共和国がそれを黙ってみている可能性は低いとロマノフ将軍は考えている。

「……皇国だな」

 これまでずっと黙って話を聞いているだけだったもう一人の将軍、筆頭将軍であるセルゲイ・バスキンがポツリと呟いた。

「それは?」

「戦う相手は皇国になる。ずっと考えていたが、これしか選択肢はない」

「ずっとですか……」

 ずっとバスキン将軍は軍議に参加していた。しかも一言も喋る事なくだ。この理由が、今ようやくロマノフ将軍にも分かった。

「但し、共和国の動向によっては、共和国を敵にする可能性もある」

「い、いや、それは失礼ながら、中途半端ではないですか?」

 もしくは行き当たりばったりにロマノフ将軍には思えてしまう。

「中途半端にはしない。こちらと決めたら、そことの戦いに集中する」

「……はい。それはそうするべきと思います」

「だが恐らくは皇国との戦いになる」

 又、皇国との戦いとバスキン将軍は言い出した。これだけでは、周囲は何を考えているのか、さっぱり分からない。

「……出来ましたら理由を」

「共和国に南で戦争をする余裕があるか?」

「……南部をまず平定するという事ですか」

 共和国は北部の平定に追われているはず。その状況で遠い南に軍を出せるとは思えない。もし出せば、皇国は喜んで隙を付こうとするだろう。交渉でそうする様に仕向けるのだ。

「違う」

「はっ?」

 だが、バスキン将軍はロマノフ将軍の考えを否定した。

「南部侵攻は共和国との直接衝突を避ける為だ。ある程度進んだ所で北上する」

 南方伯はバスキン将軍の眼中にないようだ。

「……南部を攻めると見せかけて、皇国中央を攻めるのですか?」

「そうだ。皇国の不意を突く。外交担当には死んでもらう事になるな」

 皇国とは対共和国戦の共闘をぎりぎりまで交渉する。それによって、最後まで王国の意図を掴ませないという作戦だ。

「……それは卑怯とされないでしょうか?」

 小国であればまだしも、大国であるルースア王国が奇襲を行うというのは、体裁の良いものではない。

「陛下であれば許さないかもしれない。だが、戦いは勝たなければならない。正義が常に勝者の物である事は歴史が証明している」

 覇者としての振る舞い。アレクサンドル二世王であれば、これを意識するかもしれない。だが、ルースア王国は実質的な覇権だけでは物足りずに、物理的に大陸を制覇しようとしている。大陸統一、これが今のルースア王国、ニコライ王太子の野望だ。
 亡き兄を、父である現国王を超えるには、これだけの実績が必要だとニコライ王太子は考えている。

「皇国を飲み込み、共和国を蹴散らし、ルースア王国が大陸全土を統べる。大陸統一が我らの目標だ!」

 立ち上がって大陸統一を宣言するニコライ王太子。これを口にするのは今日が初めてだ。ニコライ王太子の気持ちは、既に自分による新しい施政に向いている。

「目標実現に向けた諸君らの健闘を期待する! 以上だ!」

「「「はっ!!」」」

 ニコライ王太子の声に応えて、臣下たちが一斉に敬礼を向ける。
 この日から、ルースア王国は大陸統一という新たな、そして壮大な目標を掲げる事になった。

◇◇◇

 北方領土の支配下を推し進めているカムイたち。まだまだやらなければならない事は多く、それぞれが仕事であちこちを飛び回っている。
 そんな中で、今日は全体会議の日。北方制圧に出ている者たちが一同に会するのは久しぶりの事だ。

「国都から重要な情報が伝わってきた」

 会議の始まりを宣言して、最初にアルトが口にしたのはこれだ。

「重要な情報?」

 アルトの言葉にカムイは首を傾げている。重要な情報であればあるほど、それは真っ先にカムイの耳に入るはず。だが、アルトの言う重要な情報に心当たりがなかった。

「マティアスとルシアが接近している」

「……はい?」

 この内容ではカムイの耳には入らない。

「まあ、世間話をする程度らしいが、それでもこれまでにねえ変化だ」

「……重要情報」

「人の恋愛話は重要機密って、昔、誰かが言ってたな」

 誰かは、当然カムイだ。

「いつの話だ? しかし、この場で話すような事か?」

 話し合う事柄は山程ある。ノルトエンデでの建国の時よりも、遥かに多い事案を、遥かに早く押し進めていかなければならないのだ。

「いや、最近、遊び心が不足してんなって思ってよ。そんな所に久しぶりの美味しいネタだ」

「……嫌いではない。でも、マティアスとルシアか」

 カムイからはコメントしづらい二人だ。

「この事案を検討するにあたって、はっきりしなければいけねえ事がある」

「何だ?」

「お前、ルシアをどう思ってる?」

 見事なまでに直球な質問。アルトでなければ出来ない事だ。

「それをこの場で聞くか?」

「この場以外にどこで聞く? まさか奥さんが居る前では聞けねえだろ?」

 この場にはヒルデガンドは居ない。アルトの他にはルッツ、イグナーツ、マリア、そしてヴェドエルといった軍を率いている者たち。そして、この話題が出るのを知っていたかのようにオットーが居た。

「カムイ、また側室増やすつもりなのかい?」

 オットーは学院時代からヒルデガンドを応援している。カムイが側室を増やす事には反対の立場だ。

「いや、増やさないから。ルシアは可愛いけど、妹としか見れない」

「だったら早くはっきりしてあげれば良いのに。変に気を持たせるのは可哀想だ」

「……オットーは、こういう事には厳しいな?」

 オットーのごもっともな意見に、カムイはこれしか言えなかった。

「僕は奥さん一筋だからね」

 オットーと妻のディーライトとの関係は順調の様だ。

「男の子と女の子の二人だっけ?」

「三人。この間、もう一人女の子が生まれた」

「……それは、おめでとう。デトにお大事にって」

 カムイには去年も同じ言葉を聞いた記憶があった。順調過ぎるくらいに順調の様だ。

「お大事にってもう生まれたよ。カムイたちはまだ?」

 産後、少しは休ませろというカムイの忠告はオットーには届かなかった。

「忙しくて……」

「それ言い訳だね? 大切にしないと駄目だと思うよ」

 奥さんも子供も大好きなオットーだった。

「はい、そこまで! 話を戻すぞ。ルシアは妹としてしか見れないと。じゃあ、マリア、お前はどうして諦めた?」

「ええっ? マリアにそれ聞く?」

 いきなりアルトにとんでもない質問を振られたマリアが文句を言ってきた。

「参考にする為だ。お前も妹扱いだったじゃねえか。そして、お前はカムイを諦めて、手近に居た男で妥協した」

「おい。手近な男って誰の事かな?」

 イグナーツもアルトに文句を言う。イグナーツの方はアルトの挑発もあって、かなり険悪な雰囲気だ。

「テメエ以外に誰が居る? それとも何か? もう振られたのか?」

「何だと!?」

「はい! お約束止め! 楽しい話が喧嘩になってどうする?」

 あまり激しくならないうちにカムイが仲裁に入った。何度も言うが話し合う事は山程あるのだ。

「ルシアはやらなければならない事が分かっているけど、問題はマティアスの方だ。俺、マティアスには何も言えないからな」

 ルシアに対して、気持ちをはっきりと伝える。これはカムイの責任だ。だが、マティアスにはカムイは頑張れとも諦めろとも言えない。相手は自分の妻なのだ。

「……確かに。介入は無理か、そうでなくても時期尚早か。じゃあ、この話は保留って事で」

「だったら、どうして持ち出した?」

 あっさりと検討事案から引き下げるアルトに、カムイは呆れ顔だ。アルトの気持ちはカムイにも分かっている。久しぶりに懐かしい顔が揃ったのが嬉しくて、はしゃいでいるのだ。

「本題に入る前の軽い運動だ。この先の議論はちょっと難しい」

「……なるほど」

 アルトが何を話そうとしているかカムイは知っている。一度で結論を出すには難しい内容だ。

「ルースア王国がいよいよ動き出す」

「おおっ!?」

 ルースア王国との戦争が始まると考えて、ルッツは驚いた様な喜んでいる様な声を出した。

「侵攻予定地は南部。前回の戦争で王太子の野郎が侵攻したルートとほぼ同じと思われる」

「……南か」

 ルッツの表情が真剣なものに変わる。南部は遠い。介入するにも北方をもっと固めておかないとごく少数しか送り込めない。

「数ははっきりしねえが十万は超えるはずだ。これが全て南から侵攻する予定」

「……南、やばくない? ディーフリートさんの所って、どれくらい揃えられる?」

「二万。かき集めれば三万はいくかもしれねえが、十万相手じゃな。数よりも質を揃えた方が俺は良いと思うぜ」

「そうだな。でも二万じゃ、キツイ」

 勝てないとはルッツは言わない。ただ、仮にルースア王国に勝てても、それで軍がボロボロになっては、南方伯の思う壺だ。

「但し、ルースア王国の目的は、南部から隙を突いて一気に皇国中央を落とす事だ。ディーフリートの所はほどほどに戦っておけば、やがてルースア王国は居なくなる」

「なんだ。じゃあ、良かった」

「この情報が本当であればな」

「えっ?」

 これまで偽情報を掴まされた事はない。だが、アルトの言葉は明らかにそれを疑っている。

「作戦を考えているのは、セルゲイ・バスキンって将軍だ。この将軍が一人で考えている」

「……つまり、どういう事?」

「本当の作戦はこいつの頭の中だけにある。口にした事が本当か嘘か判断出来ねえ」

「やるな。こういう手があったか」

 ルッツは素直に感心している。いくら魔族でも心の中が読める訳ではない。会議や書類の内容、そして密告者から情報を得ているだけだ。
 誰にも話さず、公式文書に記述がないものは調べようがない。

「バスキン将軍の弱みは?」

 残るは本人を脅して口を割らせる事。これが出来るかカムイは確認している。

「無し。家族よりも仕事。女遊びはしても執着はしない。金は好きだが困っては居ない。こういう奴だから、選ばれたんだろうからな」

「情報が嘘であるとすると?」

 嘘の情報であるなら、その目的を探らなければいけない。

「南ではなく、北もしくは中央から攻める。ただ、これは可能性としては低い」

「そうだな」

 今、いくら偽情報を流していても、実際に大軍が動き出せば侵攻路は分かる。これでは意味はない。

「本気で南部を占領する。いつか去るはずだと、こちらを油断させるのが目的」

「……後は?」

 可能性としてはあり得る。だが、南部制圧を優先する理由が分からない。南部諸国は猛烈な反発を見せるはずで、その平定にはそれなりの時間が必要となる。
 これは皇国を喜ばせる結果にしかならない。共和国も南部を見捨てる決断をすれば、北方平定に力を注ぐ時間が得られる事になる。

「こちらがルースア王国の予想の裏をかいて南部に軍を送る。ひねくれた誘いだ」

 共和国に裏をかかせて南部に軍を引き寄せる。だが、これは全く意味がない。

「送らなければそれで終わりだな」

「その通り」

「……真実だとして、こちらの対応は?」

 これで情報が事実だと信じた訳ではないが、偽だという証拠も今は見つからない。カムイは議論を先に進める事にした。

「皇国を支援する事は?」

 アルトが逆に問いを返してきた。この大方針はカムイが判断する事だ。

「ない。シュッツアルテン皇国がシュッツアルテン皇国である限り」

「……じゃあルースア王国への工作を急ぐしかねえ。後は皇国の人材を何とかこちらに引き込む事」

 皇国は負ける。この前提でアルトは考えている。

「人材の引き込みはタイミングが難しい。皇国にはこちらの準備が整う時間を稼いでもらわなければならない」

「そうなんだよな。頑張ってもらわねえと」

 王国に対する工作は進めているが、まだ充分と思える程ではない。皇国にはルースア王国と長く戦いを続けて、時間を稼いでもらいたい所だ。下手に人材を引き抜くと、それが出来なくなる可能性がある。

「オットー。ルースア王国への進出状況はどうだ?」

「王国に保護されている商人が強くてね。中々、食い込めないね」

 皇国は草であった元宰相の策略や、戦争の混乱が続いた事で、新興であったオットーの商会が食い込む隙があった。だが、ルースア王国はそうではない。

「買い占めは難しいか……」

 後方における兵糧攻め。カムイはこれを考えていた。

「それはもうやってる。保護されていても、忠誠を誓っている訳じゃないからね。目の前に利をぶら下げれば食いついてくる商人は多い」

「……オットーくん。立派になったねえ?」

 先手を打って動くようになっていたオットー。オットーも今や大商家の主だ。一国の施政者並の視野は持っている。

「ただ軍を止めるまでは無理だよ? ルースア王国は常に戦争を準備をしているからね。慌ててかき集めるなんてしないから」

「それは分かっている。さて、後は」

 オットーへのお願いは終わり。残りの手をどうするかだ。

「撒いた種がどこまで育っているかだ。収穫時期にはまだまだ早えのは分かってるけどな」

 何をすべきかアルトには分かっている。問題は、それがうまく行くかどうか。こればかりは、幾ら話し合っても分かる事ではない。
 ただ、その日に向かって、出来るだけの事をするだけだ。
+注意+
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