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魔王の器 作者:月野文人

第三章 皇国動乱編

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初めての慶事

 カムイとヒルデガンドの結婚式は初日は厳かに、そして二日目は盛大に行われている。会場は国外からの来客の事を考えて、ノルトヴァッヘが選ばれた。
 アーテンクロイツ共和国にとっては、あまり良い思い出がある場所ではないのだが、国王の結婚式の会場とする事で、逆に、その暗い思い出を吹き飛ばしてしまおうという思惑もあって、それほど揉める事なく決まった。
 今、そのノルトヴァッヘには、アーテンクロイツ共和国の各地から、結婚を祝福する多くの来客が訪れている。
 各街や村の長、魔族の各種族の族長などの招待客、それだけでも、結構な数になるのだが、それ以外にも、アーテンクロイツ共和国での初めての慶事を一目見ようと、共和国中から民衆が訪れてきていた。
 それに応対するカムイたちの方は大変だ。
 始めのうちこそ、会場で一人一人と談笑していたのだが、その列に並ぶ者達は、増える一方で、このままでは何日掛けても終わるとは思えない。
 途中から会場を飛び出して、建物の外で顔見せをする事になったのだが、それでも結局は、二人と一言でも話をしたいと多くの者が前に並ぶことになった。
 それによって、もっとも困る事になったのは、ヒルデガンドだ。

「カムイ王、国旗の下に吊るされている白い旗はなんでございますか?」

 カムイたちが並ぶ、すぐ横には、アーテンクロイツ共和国の国旗が掲げられている。そして、そのすぐ下には白い旗が。何らかの魔族の慣習かと興味本意で聞いてくるものが多いのだが、その度にカムイは言葉に詰まってしまう。

「あっ、あれね。あれは……」

「王妃殿下の乙女の証ですわ」

 そして、口ごもるカムイの代わりに、ヒルデガンドの付き添い役として控えるルシアが答えるのも何度目か。

「乙女の証?」

「簡単に言うと初夜のシーツですわね」

「ああ……、なるほど。それで乙女の証ですか。なるほど、なるほど」

 この答えを聞くと、人族の場合は、聞いた方が反応に困ってしまう。

「古の慣習にあるのです。アーテンクロイツ共和国での初の慶事ですから、出来る限り故事に習おうと、ああしておりますの」

「しかし……、あっ、いえ」

 ヒルデガンドが皇国のテーレイズの妃であった事は、多くの者が知っている。この反応も多くの人たちと同じだ。

「テーレイズ様は驚く程、律儀な方で、カムイ王が学生として皇都に居た時の約束を守られていたのです」

「約束ですか?」

「ええ。テーレイズ様は、カムイ王とヒルデガンド様の仲をご存知だったのです。それで、皇子として皇帝陛下が決めた結婚は、受け入れざるを得ないが、いつか必ず返すと約束を」

「……そんな事情があったのですか。それで乙女のままで。いや、それは目出度い」

 祝福の言葉を掛けられても、ヒルデガンドとしては、完全に晒し者の気分だ。

「……ありがとうございます」

 一言、お礼の言葉を口にするので精一杯。それだけだと無愛想にも思えるのだが、それが顔を真っ赤に染めて、恥ずかしそうに口にしているとなると、新婦らしい初々しさを相手に感じさせる事になる。
 聞いた者は、満足そうな笑顔を向けて、その場を離れていく。

 そして相手が魔族となるともっと恥ずかしい事になる。
 魔族の多くは吊るされているシーツの意味を知っている。それに目を留めると、挨拶は後回しにして、シーツを広げ、そこに残されている染みをしっかりと確認しては、これまた満足そうな顔で祝福の言葉を述べに戻ってくるのだ。

「うん。良いことだ」

「ありがとうございます」

「うんうん、良いことだ」

 大抵が何を納得しているのか、わからない言葉を口にして去っていくのだ。
 それが延々と続いた所で、さすがに一旦休憩となった。建物に引っ込んだヒルデガンドが真っ先に口にするのは、当然シーツの事になる。

「な、なんで、あんな事になっているのですか?」

「それが……。故事に習っては本当の事らしくて」

「あんな慣習が昔はあったのですか?」

「そうみたい」

「……すごく恥ずかしいのですけど」

「だよな。でも、あれが魔族にとっては大切な事らしくて」

「どうしてでしょう?」

「何ていうのかな。元々は、神の望む結婚の在り方だったらしい。結婚するまではお互いの純潔を守るという事。皇族や王族が嫁ぐ相手に純潔を求めるのはその名残らしい」

「それが良い事であるのは分かります。でも」

 初夜のシーツを晒すことはない、と続けようとしたヒルデガンドの言葉は、カムイに遮られる。

「でも、魔族にとっては、そうはいかない。寿命が長いという事は、その分、死に別れる事が多いという事になる」

 魔族の寿命は長い。だが、当然、誰もが長く生きられる訳ではない。それに寿命が長いので、年齢というものを、余り気にしないのだ。二十歳の男と百歳の女が恋に落ちるなど、当たり前にある。

「……そうなりますね」

「でも、残りの人生は長い。一人の人を想い続けて生きるのは魔族にとって辛いし、難しい事だ。一生の中で何人もの人と恋愛、結婚を経験する事になる」

「それは……、そうですね」

「だから、そういう処女性というのかな。そういう事は、決して相手に対して望まない。望めないからこそ、それを大切にする。……説明になってるかな?」

「なんとく分かりました」

「恥ずかしいのは分かるけど、我慢してくれるかな。俺もどうかなと思ったけど、無愛想な者が多い族長たちが、あんな嬉しそうな顔をしているのを見るとな」

「無愛想?」

 ヒルデガンドが知っている魔族となると、カムイたちの師匠たちだ。彼らは、気難しさは感じるが、無愛想には、ほど遠い性格をしている。

「長く生きると、それだけ感情の起伏が小さくなる。色々な経験をしているから、些細な事では、感情が動かなくなるらしい」

「そうなのですか? でも、ライアン殿やシルベール殿たちは」

「両極端なんだ。いつまでも若々しい精神を保って、子供みたいな魔族と、すっかり老成して、感情の色を見せない魔族との」

 ライアンたちは前者だ。そうであるから、師匠役が出来るのだ。

「……分かりました。恥ずかしいですけど、我慢します」

「頼む」

「まだまだ続きそうですね?」

「ちょっと誤算だった。招待客以外がこれほど来るとはな」

「初の慶事ですから」

「そうだよな。今まではただひたすら頑張るばかり。お祝い事なんてなかったからな。これからは、そういう事も考えないと」

 これを考えられる余裕が、ようやくノルトエンデ、アーテンクロイツ共和国にも出来たという事だ。

「お祭りとかですか?」

「そう。お祭りって、神への祭事ってだけじゃなくて、ただ楽しむ為にもあるべきだなって」

「お祭りまで考えなければいけないなんて」

「ああ、でも、そういうのは魔族は得意だから任せておけば良い」

「そうなのですか?」

「それも長く生きる中での知恵って奴かな。人生にメリハリをつける為のというのかな」

「そう。楽しみですね」

「あの。お楽しみ中、申し訳ありませんが、そろそろ」

 申し訳なさそうにルシアが声を掛けてきた。

「ああ、分かった」

 そして、結局、夜が更けるまで、国民たちへの挨拶は続くことになる。

◇◇◇

 カムイたちにとって、予定外の来客は、一般国民だけではなかった。外国からの来客にも、思わぬ人物が混ざっていたのだ。

「申し訳ありません。カムイ王はご覧の通りの有り様ですので、すぐには時間が取れそうもありません」

「いえ、構いません。招待もされていないのに、押し掛けたこちらが悪いのです」

「しかし……、よく分かりしましたね。王国に気づかれるような動きをした覚えはないのですが?」

 アルトが応対しているのは、ルースア王国上級文官のヴァシリー・セロフだった。突然、現れた王国使者。これが結婚の祝いの使者となると、無下にも出来ない。ノルトヴァッヘまでであれば、支障はないと、迎え入れる事になった。

「貴国の動きを探った訳ではありません。そんな事をすれば、痛い思いをするのは、こちらの方ですから」

「それでは、どうやって?」

「貴国の動向をわずかなりとも知ることが出来る場所があります。今回の件は、そこを調べた結果です」

「……護民会ですか」

 招待状を出した先は限られている。その中で何処かとなれば、この結論しか出ない。

「はい。護民会の会長が、ベネディカを出るとなれば、その目的地が貴国である事は、容易に想像が付きます」

「それは困った」

「それ程、困らないでしょう? 今回のような事であるからこそ、護民会の会長は動いたのです。それ以外で動きを見せるとは思えません」

「まあ、そうですが」

 実際にはアルトは全く困っていない。
 今回のモディアーニ会長の来訪は、護民会の会長としてではなく、元孤児院長としてのもの。つまり私事だ。護民会にアーテンクロイツ共和国の機密が流れる事はない。

「あえて、護民会を監視している事を認めた事で、ご容赦願いたい。今の王国は貴国と敵対する意思はありません」

「今は、ですよね?」

「将来が約束出来ない事は、貴国とて同じ事ではないですか?」

「そうですね。分かりました。それでご用件は? まさか本当にただ祝辞を述べにいらした訳ではありませんよね?」

 駆け引きは終わりにして、本題に入る事にした。

「はい。実は折り入ってお願いがございます」

「何でしょうか?」

 お願いと聞いて、アルトの警戒心が一気に高まる。

「カムイ王に返礼を名目として、王国に参って頂く訳にはいきませんか?」

「それは……」

 珍しくアルトは交渉の席で言葉を詰まらす事になった。ヴァシリーの申し入れは、それだけアルトの予想外のものだった。

「いかがでしょう?」

「……王自らが、王国に伺わなければ理由を教えていただきましょう」

「はい。我が国の陛下に会って頂きたい」

「それは訪問すれば、そうなるでしょう。その理由は?」

「……ここでの話は内密にして頂くことをお約束願いたい」

 ヴァシリーは周囲を気にする様子を見せながら、こう告げてきた。

「それはどこまでの範囲でしょう? 陛下には当然伝えなければなりません。側近も知る事になります」

「そこで留めていただきたい。外部に漏れる事がない範囲と言い換えても結構です」

「それであると結構な範囲に広がると思いますが?」

「外部でなければ構いません」

 アーテンクロイツ共和国の機密保護、防諜対策が、どれだけ優れているか、ルースア王国は身をもって知っている。

「分かりました。我が国の重臣の中でも限られた者の中に話はとどめます。国王、王妃、右丞相、まずはここまでに致します」

「はい。では、お話致します。我が国の国王陛下ですが、あまり先が長くないかもしれません」

「それは……。それだけの秘密を我が国に伝える意図は?」

 国王の体調問題など、機密の中でも最重要事項だ。これを他国に知らせようとする意味がアルトには分からない。裏があると考えるのが普通だ。 

「これを話さねば、カムイ王に来ていただく理由が話せないのです」

「ご病気ですか?」

「いえ、衰弱しているという表現が正しいかと」

「老衰にはまだ早いのではないですか?」

「やはり、長く戦陣に居た事が堪えたようです」

「それでしたらお体を休めて回復に専念されれば良い」

「体ではなく、気力のほうが衰えております。つまりは、こういう事です。我が国にとって、皇国を超える事は、何百年も求め続けた悲願です。それが先般の戦役で、思いの外、容易く達成してしまった」

「いや、そうは言っても」

 先の戦いで王国が手に入れたのは、皇国の東部辺境領の一部に過ぎない。それで悲願達成は大袈裟にアルトには思える。

「はい。まだまだ皇国の領地は広く、その力は侮れるものではありません。しかし、あの程度の揺さぶりで、皇国は簡単に膝を屈してしまった。あれはもう、我が国の前に壁の様に立ちふさがり続けた皇国ではございません。陛下にとっては、対抗心を燃やす相手として相応しくないのです」

「……それで、やる気を失ったと?」

「はい。それだけ、我が国の国王という地位にとって、大陸の覇権というのは重いものなのでしょう。これについては臣下である私には理解出来るものではないと思います」

「……それで?」

 アルトにも理解出来る事ではない。アルトにすれば、勝つ事は目的を達成する為の必要条件の一つに過ぎない。

「貴国がもし皇国の三分の一でも領土を持っていてくれたら、恐らく陛下も今のような事になっていないと思います。貴国を新たな対抗相手として、気力を燃え上がらせる事も出来たでしょう」

「それは……。申し訳ないといった方がよろしいのでしょうか?」

 このヴァシリーの話はもっと理解出来ない。

「さすがにそれは。だが問題がそこにある事は事実です」

「我が国が小さいから、貴国の国王陛下は、という事ですか?」

「そうです。国王陛下にとっては、まだまだ貴国は小さい。だが、期待を抱かせる存在でもある。こういう言い方は失礼ですが、前途有望な若者を見守る大人のような気持ちでしょうか」

「なんとも言えませんが、言っている意味は分かります」

「そして、その気持が陛下を混乱させてしまった」

「混乱……、ですか?」

 ヴァシリーの話は、更に、アルトの予想外の方向に進み始める。

「陛下には同じように期待を膨らませる存在が嘗ていらしたのです。王国を大陸の覇者に押し上げてくれると期待していた存在が」

「亡くなられたアレクセイ皇子殿下ですね?」

「そうです。陛下は亡きアレクセイ皇子殿下と、貴国のカムイ王を重ねあわせております。混乱とはそういう事です」

「まさか?」

 ようやく少しだけアルトにも話が見えてきた。ただ、俄かには信じ難い事だ。

「ある部分だけ記憶が飛んでいるのです。貴国のカムイ王を、アレクセイ皇子殿下のご子息と思い込んでしまっております」

「……それで我が国の王に会いたいと」

「馬鹿げた話だとお思いになるかもしれません。しかし、お疑いなら、どうぞお調べになるが良い。貴国の力を持ってすれば、今、私が申し上げた話が事実だと分かるはずです」

「しかし、仮にそうであったとしても」

 アレクサンドル二世王はそうであっても、ルースア王国のカムイに対する感情は別であるはずだ。

「カムイ王を名乗る必要はございません。使者の中の一員として潜り込む形で結構です。いえ、どちらかと言うと、そうして頂きたい」

「それは、つまり我が王の来訪を心良く思わない者がいるという事ですね?」

「その通りです」

「そうですか」

 アレクサンドル二世王の気持ちはともかく、ルースア王国の敵意は変わらないままという事だ。

「こちらの事情はこれで全てお話ししたつもりです。いかがですか?」

「申し訳ないが、即答は出来ない」

「それは分かっております。カムイ王の意向を確認して頂けるかを知りたいのです」

「いえ、それを図ることも、しばらく待っていただきたい」

「……何故ですか?」

 ヴァシリーの表情が険しくなる。さすがに、カムイに話す事もしてもらえないとは、思っていなかったようだ。

「この話をすれば、我が王は間違いなく王国に伺う事になります。それが、どんなに危険な事であったとしても」

「……なるほど。そういうお方ですか」

「まあ、仮に危険があったとしても、それを切り抜ける算段は致します。ただ、それをしたらしたで、貴国の我が国への感情が、急激に悪化する事は避けられません。良くは思わない方の筆頭は、現王太子殿下ですよね?」

「……はい、その通りです」

 ヴァシリーとしては、これは素直に認めるしかない。そうしなければ、交渉がうまく行かない事は分かっている。

「まあ、気持ちは分かります。ずっと昔に亡くなられた兄への期待は、依然衰える事を知らず、しかも、事もあろうに、我が王にそれが移ったとなれば、よく思わない方がおかしい」

「はい」

「失礼を承知で言えば、国王陛下が、実際に早々に亡くなられた場合、王国と我が国は戦争となってもおかしくない。この危険が分かっていて、私は王にそれを伝える事をすぐには出来ません」

「そうですね。私も同じ立場であれば、そう考えます」

「そういう訳で時間を頂きます。まずは実際に調べさせて頂きます。それからの判断となりますので、間に合わない場合もあります」

「……それは仕方がありません。元々、無茶な願いと分かっております」

 少なくとも、訪問の可否を判断する為の行動がおこされる。ヴァシリーとしても、ぎりぎり納得出来る内容だ。

「しかし……、王国も落ち着きませんね。せっかく覇者となったのに」

「それにはお答えできません。今の私は、現陛下の臣として行動しておりますが、新王が立てば、新王の臣として、成すべき事を成すまで。そう易々と覇者の座から降りるつもりはありません」

「それは、そうですね。では来賓控室にご案内致します。そちらでお待ちください。我が王も国民への挨拶がそろそろ終わる頃です」

「分かりました」

「おい! セロフ殿を来賓控室にご案内差してくれ!」

「はっ!」

 扉の外に控えていた文官に来賓控室への案内を指示すると、アルトはそのまま部屋に残った。
 そのアルトの正面には、すでにミトが姿を現していた。

「聞いてたな。すぐに王国の様子を探らせてくれ」

「どこまで探りますか?」

「王国の警戒は?」

「かなり固いものになっております」

 魔族の諜報能力が優れているとはいえ、王国もいつまでも、それを許していない。王城、それもその中の限られた空間であれば、いくらでも備える方法はあるのだ。

「国王は難しいか?」

「張り付かせる事は」

「ふむ。じゃあ、国王は様子を少し探るだけで良い。王太子の動きの方に重点を置いてくれ。それである程度分かるはずだ」

「承知しました」

「さてと、面倒な事になったな。カムイは何て言うかな?」

「すぐに話すのですか?」

 カムイにはすぐに話さないと言った、アルトの言葉もミトは聞いている。

「当たり前だろ? カムイに隠し事なんて出来るかよ」

「でもさっきは」

「はっ、カムイがそんな甘い男か。あれは、そう思わせておいた方が、後々役に立つと思ったからだ。王国とはこれからだからな」

「……勉強になります」

 油断も隙もない。アルトも、そしてカムイも、こういう相手なのだ。

「問題は王国に行くことで何か得るものがあるか……。まあ、それはカムイとの話の中でだな。さてと、次の問題は……、間違いねえのか?」

 王国の件は、ここまでと、アルトは別件に話を移した。どちらかと言えば、対応を悩むのは、こちらの件だ。

「はい。顔を確認しました」

「今はどこに?」

「こちらに向かっている最中です。数日中にこちらに着くかと。このままノルトヴァッヘに入れてよろしいのですか?」

 招かれざる客は、ヴァシリー以外にも居た。それも、これ以上ないという程の、招かれざる客だ。

「一人なのは間違いねえな?」

「皇都を出たのも一人。砦に現れた時も、周辺に潜んでいた者はおりません」

「……何しに来やがったのか。一番計算出来ねえのが来ちまったな。まあ、話を聞かねえと何も始まらねえか。入国を許可する」

「分かりました。では、テレーザ・ハノーバーはこのままノルトヴァッヘ連れてきます」

 テレーザは、クラウディアの命令通りに、アーテンクロイツ共和国に向っていた。何もかも、生への執着さえ、捨て去って。
+注意+
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