孫子の第一原則「地形を最重要視する奴は馬鹿」
孫子の兵法でもっとも重要なポイントを解説します。
兵法の世界では馬鹿の馬は馬謖の馬といわれるほど、この第一原則は有名です。
では馬謖が何をしたかというと、街亭の戦いにおいて、諸葛孔明から街道の防衛を命じられていたにもかかわらず、それを無視して山頂に陣を敷いたのです。
これに対して敵将張郃は馬謖軍の補給路を寸断し、水の確保を阻害します。これに馬謖軍が動揺したところを張郃軍は攻めかかり士気が崩壊した馬謖軍は崩壊します。
なぜ馬謖が山頂に陣をとったかというと、兵法において地理的に高い場所と低い場所なら高い場所の兵は低い場所の兵より戦闘において優位であるという原則があるのです。
しかし、孫子いわく、地形はあくまでも副次的なものであり、軍は勢いを最も重要視しなければならないと教えています。
これこそ孫子の第一原則。
軍は勢いを尊ぶべし。
この大原則に従い、張郃は敵の水の手を絶って相手が動揺したところを攻めました。
本来であれば、兵糧攻めにしたほうが敵は多く消耗しますが、敵が水がこないと知って動揺した
段階で、犠牲を覚悟で攻めかかっています。その時が敵が混乱し、一番勢いがそがれているときだからです。もう少し時間が経過すると、敵は消耗し、飢えますが、精神的には落ち着きをとりもどしてしまいます。
このように、軍において大事なのは勢いなのです。
地形はあくまでも副次的なものです。この大原則を忘れてはなりません。
この地形は、現代になおせば、マーケットの優位性ともいえます。
出版業界においては、本を発売した初動こそ大事であり、それから数ヶ月後に予算が下りるから
その時になってから大々的に宣伝をしようという姿勢では失敗します。あくまで初動の勢いがある時に
集中的にたとえ、予算が少なくても宣伝しなくてはなりません。
これは関が原の合戦においてもそうであり、徳川家康は兵法を心得ており、石田光成が自軍に有利な
地理に布陣したにもかかわらず、その中に突っ込んでいっています。
この時、徳川秀忠の軍が遅参しており、その軍をまって行動すれば軍勢の数では有利になりますが、
徳川家康は軍勢の数でも、地理的条件でも不利な関が原にあえて、突っ込んでいます。
それは、この時点で西軍の結束が固まっておらず、この勢いがない時を逃せば、西軍の結束が
固まり、たとえ兵力に勝っていても、戦に負けると判断したからです。
このように、徳川家康も孫子の兵法、「戦いは勢いをたっとぶべし」という教えを忠実に守っています。
孫子の兵法において、もっとも重要なのは「勢い」である。心理的要因が極めて重要である。
相手の勢いをそぎ、こちらの勢いを増すためにあらゆる方法論を駆使しなければならない。
地形はあくまでも副次的要因であり、地理的優位性を確保するために、勢いを犠牲にしてはならない。
それは敗北への道である。