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〜運命〜
作:北斗



第四章:翔鸞飛翔




――ラスゲイツ平原中部――

ルザサは眉をしかめていた。
突然の介入者によって前線の部隊は壊滅。現在第二陣、第三陣が攻防戦を展開している。ルザサ達も急ぎ前線へと向かっていた。

やばいな、と独り言をつぶやくルザサの表情は固く険しい。三人はさらに速度を速めた。

「――!!」

三人は突然立ち止まり、刀を抜いて身構えた。
平原のど真ん中で殺気を感じるはずなどない、しかもその殺気を放つ者の姿はどこにも見えない。それ故に三人の緊張感は高まっていた。


――来る!!


彼の『眼』のお陰か、ジンだけが何かを感じ、ミリーをかばうように動いた。

刹那

何処から来たのかもわからないほどの速さで来た者の刀を双剣が受け止めていた。

(――速い、もしジンがいなかったら…)

ミリーの額を冷汗が流れる。ルザサはというと、その姿は元の場所にはなく、既に来襲者の背後に回り、大剣を振り下ろしていた。
だが、大剣は無情にも地面を切り裂いただけだった。
それとほぼ同時にジンが振り向いた方を、ルザサ達も反射的に見る。
その者は少し離れたところにある岩の上に座っていた。
その時に初めて来襲者の姿をまともに見ることが出来た。

「俺の姿を見た奴はお前らが初めてだよ。やっぱり《北斗聖団》は凄いや」

その言葉の意味を実際に攻撃を受けたルザサ達には理解できた。
ある程度離れてはいるが、この間合いもヤツの射程内なのだろう、と警戒し、男から目を反らさず身構えているのを止めずにいる。
実際に今の動きからすると、一瞬にして切り込んでこれると推測できる。
それに加え、ルザサ達には男がどこを見ているのかわからないでいた。
その原因は、本来額に巻くはちまきのような布を彼は自身の目のところで巻き、眼帯のようにしているからである。つまり、彼の目に光は入っていないのだ。
相手の目が見えない分ルザサ達は彼の行動が読み難く、いつもに増して緊張している。

ジンと同じか少し上ぐらいの歳と見える男の名は、ミケドニア帝国の最高機密部隊《四聖楼》の一角【翔鸞楼】のクリム・アルベルト、背中に刀を帯び、目を布で覆い盲目の状態にあるということ以外に目立った特徴はない、何処にでもいそうな少年である。
クリムは言葉を続けた。

「これ以上他の者に姿を見られない内に終わらせないとね」

その言葉にルザサは呆れた様子を見せた。

「てめえは敵陣の真ん中に入って来てるんだぜ!?今更何を――!!」

クリムの言葉の意味に初めて気付き、まのあたりにした光景に、言葉を詰まらせた。
護衛としてついてきていた兵士達は、皆既にその身を地に伏せていた。いつのまにかここら辺一帯に立っているのは四人のみになっている。
三人は驚きの表情を隠しきれない。

「そこの女、【星の子】じゃないのに聖団になってるなんて許せないね。生かしておけない」

えっ、とミリーは驚きの声を上げ、突然の殺気に恐怖し、顔を引きらせる。
言葉と同時に彼女の後ろでジンが刀を受け止めていた。

「ミリーさん、ぼさっとしてると本当に殺られちゃうよ」

ジンが彼女に葛を入れる。だが、ミリーは既に戦闘に参加できる状態ではなかった。しかし、それでも彼女も軍人の一人。恐怖心を払い除け、十文字槍を構えた。

彼女の戦闘能力は高い、それは聖団の団員が一番わかっている。
それでも、クリムと刃を交えるのは危険だと考え、ルザサはジンにミリーを守るように言い放ち、クリムに向かっていった。
ルザサは勢い良く大剣を振り、大地をえぐりながらの斬撃を飛ばす。
クリムは土や小石を巻き上げながら激しく襲いかかってくる斬撃を易々と余裕を持ってかわす。そんなことはルザサの想定の範囲内である。瞬時にクリムの背後…
でなく正面に移動し、剣を振り下ろす。更に、それを横に避けたのに平行して着いていく。
だが、クリムは急に方向を変え、切り込んできた。ルザサは咄嗟に受け止めようと身構える。更にカウンターを喰らわせようと打ち込まれる寸前に身体を半身前に踏み出した。
そのタイミングは完璧だった――が、ルザサの大剣には何の衝撃もなく、代わりに背後でジンが刀を受け止めている音を耳にした。

(――!!やろぅ、いつの間に)

一体何をしているんだ、と思いながらジンは刀を弾き返し、斬撃を加えるが、クリムはそれを嘲るように易々と回避した。
時間を与えまいとルザサが直ぐさま避けたクリムの背後を取り、不意に蹴りを入れる。
だがクリムはその不意打ちを足で止め、更にその足を踏台に逆の足で蹴りをお見舞いした。

ギリギリのところでそれを避けたが、左肩を刀が霞め、鮮血を流した。
避け様に放ったルザサの斬撃によって、クリムも少し脇の部分の服を紅く染めていた。


互いに決定的一打を与えられない攻防が続いた。

そんな中でミリーはジンに何か耳打ちをしていた。

「ジン、お願いがあるの――」

「――!!ミリーさん、それは…」

驚くことしか出来ないジンに、いいから、と落ち着いた様子で彼の言葉を遮った。彼女の言葉に迷いがないことを感じとったジンは、その
「覚悟」
を認め、受け入れた。

ジンは彼女から離れ、ルザサと激闘を繰り広げているクリムに斬り込んでいった。

「――!!」

クリムは少年の突然の動きで不意を突かれたが、双剣、大剣を共にかわし、残念だったね、とだけ言い残し刹那にして二人をかわしてミリーに襲いかかる。


正に一瞬の出来事だった――


クリムの刀が彼女の身体を深々と貫いた――
だがクリムは彼女のわずかな微笑みに気付き、すぐに彼女の意図を察した。

「お前、まさか――!!」

そう言ったときには既に背後から唱え声と共に紅に輝く斬撃が放たれていた。


業火煉星(ヘル・バースト)


斬撃が通過したところには土が焼け固まったものが残り、脈を造っている。
迫り来る紅の炎を避けようとするも、ミリーによって回避行動をとらせてもらえなくなったクリムは、刀でその炎を受け止めざるを得なかった。

その炎はクリムを包むわけでもなく、ただ煙を残し爆散した。


しかし、クリムにとって致命的、決定的一打であった。クリムの持っている刀は高熱を発し、刀身が溶けて変形していた。

ジンの放った業は、金属をも溶かす高熱の炎を放ち、相手の刀を溶かし逆に自分の『狼牙』を鍛えることができる。ミリーがジンに耳打ちしたのはこの炎を避けられないように誘導することだった。


刀を失ったクリムにルザサとジンが斬りかかるが、易々と避け、再び離れた岩の上に立った。そして、ジンの方を向き、おもむろに口を開いた。

「おい、お前名前は??」

「ジ…ジン、ジン・マルケスだ」

予想外の問いに少し戸惑いながら答える。クリムはそれに言葉を返した。

「ジンか、俺の名は四聖楼が一人、翔鸞楼のクリム・アルベルト。次に会う時は全力で相手をしてやる」

そう言い放ち、その姿を暗ませた。

(神速の守護神は噂通りの実力だが、あのジンってやつも厄介だね)



一気に緊張が途切れ、ミリーはその場に崩れるように倒れた。
二人が急いで駆けつけ、手当てを始めた。

そんな時、ルザサが口を開いた。

「お前は自分を犠牲にしすぎだ。お前に死んでもらっては困るんだよ」

「ルザサ…」
「仲間の事を想わないヤツがどこにいる」

ただそれだけだ――
最後に小さく言葉を足した。ルザサはミリーに手を貸し、行くぞ、と言葉を残して、一人歩きだした。

ミリーはわずかに目に溢れるものを隠すようにしながら後を追い掛けた。

急ぎ前線へと…また三人で――












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