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第百二十三話 サガの素顔その六
「それに気をつけることだ」
「髪か」
「そうだ、髪だ」
「私の髪にあるのか」
「それを言っておく」
 こうサガに告げる。
「覚えておくことだ」
「意味がわからないのだが」
 サガ自身はそう言われてもだった。目を閉じて言うのであった。
「全くな」
「わからないならいい。しかしだ」
「しかしか」
「それでもだ」
 また言うポポスだった。
「私の言葉は事実だ」
「それもまた言うのだな」
「そうだ、言っておく」
「まさか知っているというのか?」
「むっ?」
「我が弟のことを知っているのか」
 こうポポスに対して問い返す。今倒れようとしている彼に対してだ。
「カノンのことを」
「生憎だが私が興味があるのは貴様だけだ」
「カノンにはないのか」
「その名前もはじめて聞いた」
 ポポスは何とか立ちながら述べた。
「貴様に弟がいることもはじめて知った」
「そうだったのか」
「また言うが私が興味があるのは貴様だけだ」
「私だけか」
「貴様の家族やそういったものには何の興味もない」
 敵として、戦士としてのサガだけだというのである。それだけだというのだ。
「だからだ」
「それは知らなかったのか」
「そうだ。言ったな」
 サガを見据えながらの再度の言葉だった。
「ジェミニよ、貴様の司るものにこそあるのだ」
「ジェミニか」
「そうだ、貴様にだ」
 ポポスは最後の力を振り絞りながらサガに話す。
「貴様のそのジェミニにこそだ」
「それがあるのだな」
「人の顔は一つではない。ジェミニは二つの顔があるな」
「それか」
「それだ。貴様のもう一つの顔のことを忘れるな」  
 こう告げる。
「それをだ」
「ジェミニのもう一つの顔を」
「覚えておくことだ。そしてだ」
「そしてか」
「克服するのだな」
 サガを気遣う言葉だった。それも出してきたのである。
「この生でな」
「私の名がサガであるその時にだな」
「そうだ、その時に終わらせるのだ」
 サガを見ての言葉であった。
「その時にだ。そして次の聖戦を楽しみにしている」
「私にはまだ貴様の言葉の意味はわからない」
 サガはまずはこう前置きした。
「しかしだ」
「しかしか」
「貴様の言葉は忘れない」
 それはだというのである。言い切った。
「決してな」
「その言葉を聞いて安心した。ではまた会おう」
「次の聖戦でだな」
「我等とのな。その時を楽しみにしている」
「わかった」
 サガはここまで話してポポスに背を向けた。そのうえでその場を去りアーレスの前に向かう。闘いはこれで終わった。そして最後の戦いがはじまろうとしていた。
 ポポスは立ったまま倒れた。静かに微笑みそうしてだ。そのまま息を引き取ったのだった。彼もまた誇りを持ったまま倒れたのである。


第百二十三話   完


                2010・5・16
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