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第百二十二話 二つの顔その一
                   二つの顔
「ジェミニよ」
「何だ」
 サガはポポスの言葉に応えていた。二人も赤い玄室の中で対峙している。
「どうしたというのだ」
「貴様は一人か」
 不意にこんなことを問うてきたのだ。
「どうなのだ。一人なのか」
「何が言いたい」
 眉を顰めさせて返したサガだった。
「一体何をだ」
「一人には思えないのだ」
 ポポスの言葉は続く。
「そう、あの時からだ」
「先の聖戦からだというのか」
「如何にも」
 こう返すポポスだった。
「どうもな」
「私は確かにジェミニの聖闘士」 
 サガ自身も己のことに言及した。
「しかしだ」
「しかしか」
「私は一人だ」
 これは自分でも強く言い切った。
「それは言える」
「一人か」
「ジェミニのサガはこの世に一人」
 彼はまた言ってみせた。
「私以外に誰がいるというのだ」
「そうだな。貴様は一人だ」
 ポポスもそれを認めるようにして述べた。
「それは間違いない」
「では何故そう言う」
「心の中に何があるかだ」
「心の中だと」
「そうだ、心の中にあるものだ」
 ポポスの話がここで変わった。
「貴様の中にだ」
「私の心の中か」
「確かに貴様は高潔な戦士だ」
 ポポスもそれはわかっているというのだった。
「だが」
「だが?」
「心は一つではない」
 こうも言うのだった。
「そう、一つではないのだ」
「人の心には多くの顔があるということか」
「如何にも」
 彼が今言いたいのはこのことだった。このことをサガに対して言ってみせているのだ。
「多くの顔がだ」
「全て私の顔だ」
「貴様の顔だというのか」
「そうだ、私の顔だ」
 それだというのである。
「それ以外の何者でもない。違うか」
「顔が同じならば全て同じだというのか」
「違うというのか?それで」
「顔にも色々ではないのか」
「何っ!?」
「人の顔も色々とある」
 ポポスは今度はこうサガに対して言うのであった。
「色々とだ」
「まだ言うのか」
「言おう。そしてだ」
 まだ話すのだった。
「それは全て貴様ならばだ」
「私ならばか」
「そのまま何人も貴様がいるということにならないか」
「笑いもあれば怒りもある。悲しみもあるというのか」
「その通りだ。そしてだ」
 ポポスの言葉がだ。遂にその中心に入るのだった。
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