第百十四話 狂闘士の長その一
狂闘士の長
ムウはもうリーヴェと対峙していた。八大公、ルキフグスの彼とだ。
リーヴェは狂闘士とは思えぬ優しい笑みを浮かべていた。そのうえで今自分の目の前にいるムウに対してこれまた優美な声をかけてきたのである。
「アリエス」
「はい」
「ようこそと言うべきですね」
こう言うのであった。
「ここまで来られました」
「私の相手がルキフグス、貴方というのは」
「そのことですか」
「これこそが運命なのですね」
これがムウの言葉だった。
「そうなのですね」
「そうですね。これは今の世に決まったことではありません」
「先の聖戦でも」
他の闘いと同じ話になっていた。彼等もまたそうしたやり取りをするのだった。
「そうでしたし」
「あの時は敗れたのは私でした」
リーヴェは今も静かに述べた。
「貴方が持たれたライブラの武具によって」
「ライブラの。そうでしたね」
「あの武具は強大でした」
その時の話もする。先のアーレスとの聖戦においてはライブラの武具が勝利を決定付けたのだ。それでアーレスを冥界まで退けたのである。
「私達も。敗れる他ありませんでした」
「しかしそれは」
「それは?」
「私達の真の勝利ではありませんでした」
「いえ、勝利は勝利です」
しかしリーヴェはこう言うのだった。
「それに貴方はあの時正々堂々と私と闘いました」
「聖闘士として卑怯なことはしません」
ムウは優雅だが確かな声で答えた。
「例え何があろうとです」
「そう。貴方は正面から闘われた」
また言う彼だった。
「それこそが勝利の証です」
「そうなのですか」
「だからこそ。真の勝利でないとは言われないことです」
「成程」
「それにです」
リーヴェの言葉は続く。
「アリエス、貴方は今は違いますね」
「今の私には技があります」
「技がですか」
「このアリエスのムウ最大の技がです。あります」
「インドの時のあの技ですね」
「そうです。それでは私もです」
リーヴェも述べてきた。
「最大の技は持っています」
「貴方の最大の技ですか。貴方の」
「その技で貴方を倒します」
今このことをムウに告げるのだった。
「ここで」
「そしてアーレスを守りますか」
「我等八大公は狂闘士を統べるだけではありません」
それだけではないのだというのだ。
「アーレス様をお守りすることもまた、です」
「それも役目なのですか」
「はい」
ムウの言葉に対して答えた。
「その通りです」
「アーレスの親衛隊でもありますか」
「アーレス様こそは我等の神」
「神ですか」
「そうです、神です」
また述べたのだった。
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