第八話 罠その五
「それだけは何としても」
「最低限で、若しくは何の犠牲もなしと」
「あくまで出来るだけですが」
「甘いという意見もあるでしょう」
シャカはこう言い捨ていた。
「それに関しましては」
「ですが」
「しかしそれもまた考えの一つ」
そのうえでの言葉であった。
「それでいいと思います」
「そうですか」
「貴方の優しさもまた必要なのです」
シャカは言う。
「時として」
「時としてですか」
「何故黄金聖闘士が十二人いるのか考えられたことはありますか」
「私達が何故十二人いるか」
「そうです」
今度はそれに関する話であった。
「一人いればその一人の正義があります」
「はい」
ムウはまたシャカの言葉に頷いた。
「それは確かに」
「つまり十二人いれば」
「十二人の正義ですか」
「正義は一つではないのです」
シャカはあえてこう述べるであった。
「ですが」
「ですが?」
「それでいて一つでもあります」
「一つでもあると」
「そうです」
これは決してムウを煙に巻く言葉ではなかった。シャカにとってみれば真実なのである。
「一つなのです」
「十二ありながら一つでもある」
ムウはその言葉を自分の口で反芻した。
「それは何なのか」
「つまりです。私達は聖闘士です」
話は一旦そこにまで戻る。
「正義はアテナを護り」
「人を護る」
既に語り合っている言葉だ。ムウは今更といった感情が己の中に宿ったのを否定できなかった。
「そういうことです」
「あっ・・・・・・」
その言葉を聞いてはっとしたムウだった。シャカが言いたいのはそれだったのだ。
「つまり私達の正義は根は同じだということなのです」
「そうでしたか」
「はい。私達十二人はだからこそ黄金聖闘士となった」
こうも述べてみせてきた。
「そうなのです」
「わかりました。それでは」
「私達の正義は根は同じです」
そのことをまたムウに告げる。
「それをお忘れなきよう」
「ええ」
これでムウとシャカの話は終わった。ムウにとってはかなり重要な話になった。彼は己の守護する宮に戻ってからもこのことを考え続けることになるのであった。
その頃デスマスクは。ジャミアン達を連れてロファールを追撃していた。ライプチヒ郊外の森を聖衣を着て進んでいた。
森は木々の間も結構あり下には落葉も少なく進み易いものだった。デスマスクを先頭として遠くに見えるロファールを追っていた。
「いいか」
デスマスクはジャミアン達に声をかける。
「絶対に見失うなよ」
「はい、それはもう」
ジャミアンがデスマスクのその言葉に応える。彼等は慎重にロファールを見つつ進んでいる。
「それでデスマスク様」
「何だ?」
ゾルダの言葉に応えて顔を向ける。
「これで追いついたらですね」
「ああ」
「やっぱりその時は合流しようとしている狂闘士の奴等をですね」
「そういうことだ、一気にやるぞ」
軽い調子でゾルダに答えてみせていた。
「いいな、それでな」
「一気にですか」
「ああ、ただな」
「ただ!?」
「御前等の出番はないかもな」
やはり軽く笑ってこう言ってきたのだった。
「ひょっとしたらな」
「ひょっとしたらって」
「じゃあ俺達は」
ブラウとレッシュがそれを聞いてデスマスクに問う。
「いる意味ないじゃないですか」
「狂闘士と闘うのが仕事なのに」
「ああ、それは安心しろ」
しかしデスマスクはこうも告げるのだった。
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