第八話 罠その四
「そこまでは」
「ですが。その時は貴方も」
「はい、その場合は必ず私達の出番になるでしょう」
これは安易に答えることができた。
「私達黄金聖闘士の。ですが」
「これからの戦いで誰か欠けるとでも」
「戦いとは命を賭けるもの」
ムウは言う。
「ならばそれも当然ではないかと」
「案じることはありません。貴方は死にません」
「私は!?」
「そして私もまた」
ムウに対して告げたうえで自らに対しても述べてみせた。
「黄金聖闘士はこの戦いでは誰も欠けません」
「そうなのですか」
「先に申し上げた通りです。私達には戦い抜くべき多くの戦いがあります」
「その戦いの為に死ぬことは許されないと」
「運命がそうさせているのです」
シャカはそれはあくまで運命だと言うのだった。
「私達の運命が」
「そうですか。私達は運命により多くの戦いを繰り広げる運命なのですか」
「不服ですか?」
顔を強張らせたムウに対して問う。
「それは。貴方は本来戦いを好まれない方ですので」
「いえ、それは違います」
ムウは目を閉じて一礼するようにしてシャカに言葉を返した。
「私が望まないのはあくまで無益な戦いです」
「無益な戦いをですか」
「そうです。しかしそれが誰かを守る為なら喜んで戦います」
「左様ですか」
「我々の力は知っています」
ムウはこうも言うのだった。
「我々が出る時はまさにこの世界の危機」
「はい」
黄金聖闘士とは言うまでもなく聖域にとって切り札である。その切り札を出すということはやはりその時は地球規模の危機でありそうした事態に出るということは最早多少の犠牲は止むを得ないと判断される場合なのだ。そしてその場合で起こることは。
「技を出すだけで多くの命が失われるでしょう」
「それは貴方にとって耐え難いことでしょうか」
「素直に申し上げます」
「ええ」
「耐え難いことです」
ムウはそれを正直に述べた。
「それを受け入れられる者、受け入れられない者がいるでしょうが」
「貴方は受け入れ難いですか」
「私の力はこの世を護る為の力」
そのことをあえて再び言う。
「それにより止むを得ないとはいえ多くの無辜の人々がなくなるというのは」
「ですがそれもまた受け入れなければならないもの」
今のシャカの言葉は峻厳ですらあった。
「そうではないのですか」
「わかっています。その時は背負ってみせます」
ムウはまた目を閉じて述べた。
「その時には」
「それでなくては黄金聖闘士には選ばれないのです」
「時として犠牲も厭わず、ですか」
「非情にならなくてはならない時もあるということです」
それがシャカの言いたいことであった。
「おわかりですね」
「わかりたくはないです」
それでもこう前置きするムウであった。
「ですが私達の力は」
「伊達に光の速さを誇っているわけではありません」
シャカはまた言う。
「ですから」
「ええ。私もまた戦う時は」
「時として非情にならなければなりません」
ムウの性格、気性はわかっている。しかしそれでも言うのだった。これはシャカの思惑あってのことなのだ。黄金聖闘士としての思惑が。
「それはおわかり下さい」
「我が師、いえ教皇にも言われたことがあります」
ムウは己の師でもあるシオンのことにも言及した。
「そのことは」
「そうでしたか。では」
「やはりわかってはいます」
ムウはまた答える。
「ですから」
「わかりました。では貴方は」
「ただ。出来るだけ犠牲は避けたいものです」
それでもやはりこう言うのがムウであった。
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