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第百二話 ゲヘナの神その一
                 ゲヘナの神
 アルデバランもまた先を進んでいた。そこはやはり赤い宮殿の中だった。
 血というよりはルビーを思わせるその中を進んでだ。やがて玄室に出た。その古の宮殿や神殿を思わせる部屋にだ。彼がいるのだった。
「待っていたぞ」
「モロクか」
「そうだ、モロクのドーマ」
 こう名乗るのだった。
「覚えているな」
「忘れる筈もない」
 アルデバランは玄室の中央に来た。そのうえで彼に告げるのだった。
「貴様のことはな」
「そうか。忘れることはないか」
「ゲヘナの魔神」
 ドーマを見据えての言葉だ。
「そうだな」
「その通りだ。それはこのドーマだ」
 ドーマもまた同じであった。アルデバランを見据えそのまま対峙していた。両者をそれぞれ黄金と紅蓮の小宇宙が包み込んでいた。
「豪力の魔神だ」
「力か」
「そうだ。力だ」
 まさにその力だというのである。
「このドーマに力で勝てるのか」
「勝てると言えばどうする」
 アルデバランは静かに彼に言ってきたのだった。
「その場合は」
「タウラス、そういえば貴様はだ」
 ドーマはその彼を見据えてまた言ってきた。
「聖闘士の中で最も強い力を誇っていたな」
「そう言う者もいる」
 アルデバランが己を誇ることはない。だからこそこう言うのだった。
「ではだ。どちらの力が上かだ」
「ここで確かなものとするか」
「ここは通らせてもらう」
 アルデバランはドーマを見据えたまま言ってきた。
「何があろうともだ」
「いいだろう、それではだ」
「それではか」
「行くぞ、タウラス」
 ドーマの小宇宙がさらに強まる。それはアルデバランも同じだった。
「貴様は俺が倒す」
「通さないというのだな」
「無論だ。通しはしない」
 あくまでこう言うのだった。
「アーレス様の御前に行くことはまかりならん」
「その為にここにいるのだな」
「それだけではない」
 そしてだった。さらに言うのであった。
「タウラス、貴様と闘う為にもだ」
「ここにいるのか」
「そうだ。タウラス、それは貴様も同じ筈だな」
「そうだな。貴様はこのアルデバランが倒す」
 二人はそれぞれ鋭い声で述べてきた。
「行くぞ」
「その前に一つ聞いておこう」
 ここでドーマはふと言ってきたのだった。
「一つだ」
「何だというのだ?」
「タウラス、貴様は闘いは好きではないな」
 アルデバランのその気質を見抜いての言葉だった。
「そうだな。違うか」
「好きではない」
 その通りだと答える彼だった。
「それはその通りだ」
「貴様は本来静かに穏やかに過ごすことを好んでいる」
「俺は本来はこの場にいるべき男ではない」
 自分を見ての言葉だった。アルデバラン自身をだ。
「農園か牧場で静かに暮らすのが性に合っているのだ」
「しかし闘うのだな」
「アテナの為だ」
 その為だというのである。
「俺は闘うのだ」
「そうか。その為にか」
「俺は闘う」
 また言う彼だった。
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