第十七話 グランドキャニオンへその二
「彼は今冥界の奥深くにいる」
「そして出ることはない」
「そうですね」
「その通りだ。しかし彼等を指揮する者はいる」
このことも把握して戦略を立てているのであった。
「その聖域にやって来た争いの女神エリスだ」
「あの女ですか」
アルデバランがエリスという名に反応を見せた。
「そういえばあの女はアーレスの妹であり第一の腹心でした」
「先の聖戦においても猛威を奮った」
そのこともわかっているのだった。
「だが」
「はい。それでも今はあの時の様に仕掛けてきません」
アルデバランもそのことを奇妙に思っているのだった。
「あの女もまた」
「まだこれといってわかるものはないか」
シオンはこれまでの話を振り返り多少残念な声を漏らした。
「まだな」
「判断する材料が乏しいと」
ミロが問う。
「そういうことですね」
「そうだ。まだ確かな判断はできかねる」
シオンの結論はこれであった。
「だからだ。様子を見ておくとするか」
「はい。それでは今は」
「その様に」
「そして教皇」
アイオリアもまたここで顔をあげてきた。
「そのシュラへの援軍ですが」
「サガか」
「はい。サガもまたグランドキャニオンのことは把握しているのでしょうか」
「無論だ」
シオンの返答は即座だった。
「それはもう伝えてある」
「そうですか」
「このことについて御前達が不安に思うことはない」
「ないと!?」
「そうだ。あの男ならば問題はない」
サガに対して絶対なまでの信頼さえ見せていた。
「何もな」
「では教皇」
最後にアイオロスがシオンに対して述べてきた。
「後は」
「そうだ。これで話は終わりだ」
こう黄金聖闘士達に告げた。
「御苦労だった。下がっていいぞ」
「はっ、それでは」
「これで」
黄金聖闘士達はシオンの言葉を受けてその場で一礼した。そしてそのうえで立ち上がり教皇の間を後にしそれぞれの持ち場に戻ることになった。
だがここで。アイオロスはふとシャカに声をかけたのだった。
「シャカ」
「何か?」
シャカはすぐにアイオロスに応えて顔を向けた。今彼等は人馬宮に入るところだった。
「アーレスのことだが」
「まだ冥界の奥深くにいます」
こうアイオロスに対して答えるだけだった。
「それはもう教皇が話された通りです」
「今のところはな」
しかしアイオロスはこんなことを言ってきた。
「そうだな」
「今のところは?」
「そうだ。あくまで今はだ」
何処か引っ掛かる言葉であった。
「だがこれからは」
「アーレスが出て来るということも有り得ると」
「アーレスは神だ」
このことは最早言うまでもないことだった。彼等が仕えるアテナとそういう意味では同じだ。しかしその性質は全く異なるのだった。
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