大人になるために
エリザベートは心の中で我王と決別した。
今思い返すと自分の人生は常に我王を中心に回っており、恋愛以外には何も興味を向けなかった事に気が付いた。
「こんなことじゃダメだわ…自分の生き甲斐は自分でつくらなくちゃ!」今、その生き甲斐をみつけたエリザベートは生き生きと輝き出していた。
「エリザベート、今日も頑張ってるな!シシィがへたばっていたぞ」カインはエリザベートの元気そうな姿をみると目を細めた。
「前にシシィに言われたの。私は幼い頃から全てを犠牲にしてこれに取り組んできたのよ。あなたなんかに出来るわけないじゃないの!ってね…そりゃあそうよね?本来ガイアにはシシィがのるはずだったんだもの。それをズブの素人に奪われたら誰だって悔しいわ」
カインはエリザベートの頭を撫でてやった。
「お前、大人になったな。」
エリザベートは頬を染めてカインを見上げた。
「カインにそう言われると照れるわね。」
心配したが、なんとか乗り越えてくれたようだ…。
「よし!今度は俺がお相手するぜ。ヘルムートの調子もみておきたいからな。シシィはすっかりアルテミスをのりこなしているようじゃないか?」
「ええ!ホントに凄いわ。あの才能が羨ましい。ガーディアンズブレインって一体どんな訓練してるのかしら?」
「さぁな。俺たち凡才は鍛練あるのみだぞ。さ、練習練習!」そんな二人を我王は影からそっと見ていた。
我王はジブラルタルのラウンジでくつろいでいるカノンの隣に座りこんだ。
「コーヒーでもどう?」
「ああ。頂くよ…」
カノンはエリザベートの吹っ切れた顔を見て事態を察していた。
「どうしたの?珍しく落ち込んでる顔ね?」大体の事情はわかっていたが、我王の話を聞いてやろうと思いカノンはあえて知らないふりをした。
「俺が日本に行ってる間に彼女、すっかり大人になっていたよ。」カノンはクスクス笑って
「なんだか残念そうじゃないの?」と我王をつついた。「彼女も相当苦しんだはずよ。どうするの?これから。」
「…俺、エリザベートにフラれたんだ。」
ウフフ…エリザベートったらやるじゃない!
「アラアラそれで落ち込んでるわけだ。」
我王は渋い顔をして
「そうじゃないんだよ。俺と別れてからの方が魅力的な女になっちゃったからさ。なんだか悔しいじゃないか…」
「仕方のない人ね。彼女の成長を喜んであげなくちゃ!」
「…ああ。わかってる」
「ヨシヨシいい子ね!」カノンは我王の頭を撫でてやった。
「あなた他にも私に話たい事があるんじゃないの?」我王はやれやれといった顔で
「君には隠し事も出来ないな。何でもお見通しだね…」
「私を甘くみてもらっちゃ困るわよ。マリアって何者なの?ただの友達じゃなさそうね?」
我王は目を丸くしてマジマジとカノンを見た。
「君にはどう見える?」
「…そうね。少なくともあなたの愛人の座を狙ってるようには見えないわ。」
我王はこういう時、カノンはまさしく一馬の娘であると実感する。
「彼女はユノのスパイだよ…なんとか彼女から情報を引き出したいんだ。」
カノンは難しい顔で我王の告白を聞いた。
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