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忘れられた存在Ⅱ
実とダミアンはその影がついてきているとは気付かないまま、居住空間から正反対の方向に歩いて行った。

薄暗い通路を通ると奥に金属の重い扉が見える。
実がすぐ隣にあるガラス板のような物に手を載せると青白く光り輝いて扉はゆっくりと開いた。

中には透明な繭を思わせるカプセルがいくつも天井からぶらさがっている。

ダミアンはそのカプセルの一つに、いくつもの管を慣れた手つきでセッティングしていく。
実はその様子をただじっと見守っていた。

「…千春は俺達を信用してると思うかいダミアン?」

ダミアンは手を休めず「俺のことはともかく君の事は信用してるさ」と断言した。


「…そうかな?」


「どうしたんだ?いつだって彼女は結局このカプセルに入ってるじゃないか」


「…そうだったな」


ダミアンは手を止めて実の方に振り返った。

「カミュは気乗りしないのか?ずいぶん千春に想い入れが強いようだね。じゃあアマテラスは?君はアマテラスでなく千春を選ぶ…そういうわけか?」


「そうは言ってないよ」


ダミアンはかぶりを振った。


「いいや!そう言ってるよ」


「ダミアン…怒ってるのか?」

「そうだよ、当たり前だろ。じゃあハッキリ言わせてもらうけど俺はアマテラスにしか従わない!姿は同じでも千春はアマテラスじゃないんだ。彼女からは何のオーラも感じないよ。俺は確かに君に協力してるけど、それはアマテラスの願いだからさ」


「…すまないダミアン。君の気持ちも考えないで」


頭を垂れ、すっかり意気消沈してしまった実の様子にさすがにダミアンも言い過ぎたと思ったのかゴメンと素直に謝って、「…俺も言い過ぎたよ。さぁ、準備は出来たからそろそろ我らが女王様を連れてきてくれ。俺は保管庫からストックを運んでおくよ」と実に微笑んでみせた。


「…それにしてもなぜ皆に保管庫を見せたんだ?しかも嘘までついて」


「もしものためさ」

「……?」

理解出来ない実にダミアンは呆れ顔で説明した。

「あのジャンが大人しくこの母船の中でじっとしていると思うかい?きっと今頃はもう居住区を脱け出してあちこち探検してるんじゃないかな」


「なるほどね…先手を打っておいたわけか」

ダミアンはうなずいた。

「まさかあの人間達がアマテラスの餌だとは気付くまい…」


実は重い足取りでこの血生臭い部屋を出て行った。

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