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命の選択
千春は廃墟と化したビルの陰からマイクに合図を出した。

マイクは素早く移動を開始した。

二人の視線の先には飛び立つ為に浮力調整をしているスターシップがある。二人の鬼たちが見張りに立って銃を構え、油断なく周りを警護している。

「あれに決定よ!」

マイクは反対側からOKサインを出した。

千春は内ポケットから透明で米粒大のカプセルを取り出した。

それを鬼めがけて思い切り投げつけた。
マイクも同じ物を投げつける。

カプセルが鬼に取り付くと、殻を破り中から小さい虫のような小型ロボットが姿を現した。

沢山の針のような脚をサカサカと動かし、鬼の体毛をよじ登っていく。あまりの小ささに鬼たちは全く気付いていない様子だ。

千春はゴクリと生唾をのみ込むと鬼たちの表情をじっとうかがった。

虫は鬼の醜い鼻の穴に、もぞもぞと入っていった。
鬼は激しく咳き込み白眼をむいてバッタリと倒れた。

「行くわよマイク!」
マイクは銃でスターシップのハッチを撃ち抜くと中の鬼に銃口を向けた。

鬼は両手を挙げ、抵抗する気のないことをアピールしている。

「私達の言う通りになさい!そうすればあなたに危害は加えないわ」

「こりゃあ驚いた。こんなことをして一体どうするつもりなんだ?」

鬼は薄ら笑いを浮かべて二人に向き直った。
「このスターシップであの母船に潜入する!あなたにはその手助けをして貰うわ!」

鬼はそれを聞いてさも呆れたようにケタケタ笑い声をたてた。

「俺達の母船にだって?それでどうするつもりなんだ?あの船がどこに行くのかも知らないくせに…」

「…し、知ってるわよ。あんた達の星でしょ?」

「フン…まぁそうだが、ずっと先の未来の星だぞ」

千春は首を傾げた。

「…未来…ですって?」

「ああそうだ!ずっとずっと先の未来、この星の現在からだとざっと千年以上の未来だ」
千春はガックリと膝をついた。

「…そんな…じゃあ…じゃあアンタ達はこの星の運命を知っているのね!?」

「もちろんだ。今更知ってもどうにもなるまいが、これも何かの縁だ教えてやろう。この星はあと数時間で跡形もなく消滅する。元々の予定よりは早まったようだがまぁ差し支えない程度の誤差だろう」

「でも…どうして!?天変地異なの?そんな気配は無かったわ。なぜ急に?」

「カミュが爆弾のスイッチを押しちまったからな…オイ、どうでもいいが今は一刻を争うんだ。早く母船に戻らないと…」

マイクは鬼のこめかみに銃を突き付けた。

「そうしたけりゃあサッサと俺達の言うことを聞け!」

「分かったよ!!分かったからその物騒な物をしまってくれ、これじゃあ操縦できないぜ」

「両手は空いてるだろ?気にせず操縦しろ!」

鬼はマイクに向かってプッと何かを吹きかけた。

マイクが一瞬気をとられた瞬間に銃は鬼に蹴りあげられ、床に落ちた。

マイクは苦し気に床をのたうち回っている。
千春は思わずマイクに駆け寄った。

「ハハッ他愛もない。これで形勢逆転だな!」

今度は鬼が千春に銃口を向けた。

「一体彼に何をしたの!」

マイクの毛穴からポツポツと血液が溢れ出てきた。

「これは俺達の星にある毒性の植物のトゲだ。即効性だからあと10分もしたら死に至る」

「そんな、なんとか彼を助けて!お願いよ!」

「散々脅しておいて今度は命乞いか?図々しいにもほどがある!」
千春は自分の銃を捨てて鬼にとりすがった。
「お願い、なんでも言うことを聞くわ!だから…だから彼を助けて…」

ハラハラとこぼれ落ちる涙を鬼は不思議そうに眺めた。

「人間とはつくづく変な生き物だな。目から水が出てる」

鬼は何かを思いついたようにハッとした顔つきに変わった。

「もしかして…そうか、なるほど…そういうわけか!」

ひとり納得する鬼の脚を千春は思い切り叩いた。

「早くしないとマイクが死んじゃうわ!」

「わかったわかった、母船に毒の成分を消す薬がある。行くぞ!」
そこで千春は我に返った。

「そうだ…マリア、クリスも私達を待ってるわ…」

マイクは虫の息で千春に訴えた。

「…千春…俺はもうダメだ。俺はいいから…アーネストやマリアを助けてやってくれ…頼む…」

千春はマイクの血だらけの体を抱きかかえた。

「嫌よ…私はあなた無しでは生きられないわ!」

「バカな…俺の愛した君はそんな弱い女性じゃないはずだ…」

マイクはそっと落ちている銃を拾いあげた。
「…愛しているよ…永遠に…君を…」

パン!

乾いた銃声が千春の耳をつんざいた。

千春はマイクの腹から流れる血を見て意識を失った。


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