新しい命
ヤンはこの巨大なコンピューターをいっそ破壊できないだろうか?と真剣に考えていた。
このままではエストニア王国の存在まで知られてしまう!それだけはなんとしても阻止せねば!
それ以上余計な事を喋ってくれるなよ…
「ビーッビーッビーッビーッ」
耳をつんざく電子音に皆一斉に退いた。
「な…なんだ!どうしたんだ?」
「ビ…ビビッ…私の役目は終わりました。この秘密を話したら…停止す…る…よう…プログラム…され…て…」
シューという音と共に蒸気が吹き上がり、マザーは停止してしまった。
チャンはコンピューターにゆっくり近づいて行った。
「…こりゃあもうダメですね。あちこちの配線が焼け焦げてます。しかし凄いな…そのカミュという奴。ますます興味がわいてきましたよ」
ルジンはフン!と鼻を鳴らし、「感心している場合ではないだろう、我々は指導者を無くしたのだ。囲いが無くなった羊は暴走するのがおちだからな!大統領、これからが大変ですぞ」と弱気な大統領を脅してやった。
だが大統領は晴々とした表情で壊れたコンピューターを見上げていた。
「これからだ…これから本当の世界を創るんだ!チャン、そうだろう?」
「ええ!忙しくなりますね」
皆が大統領官邸に戻る隙にヤンは闇の中に消えていった。
その頃まだ何も知らないサラはアリサのお産に立ち会っていた。
「あ…ああっ!う…痛い…」
脂汗をかき、天井から吊るされた綱を握りしめ苦しそうに唸り声をあげているアリサのそばで一心に祈りを捧げていた。
その顔が苦痛に歪む。
「クッ…一体何が…?」
サラは突然苦しそうに胸をかきむしると、前のめりに倒れこんでしまった。
「サラ様!どうなさいました?しっかりしてください、サラ様!」
女官の必死の呼び掛けにも全く反応しない。
その時、「ウンギャッ…オギャア〜!オギャア〜!」と元気な産声があがり丸々とした赤子が産み落とされた。
「アリサ様、おめでとうございます!お姫様の誕生でございますよ!」
そのすぐ隣ではサラが安らかな顔で横たわっていた。
医師はサラの側で懸命に蘇生を行っていたが、とうとう諦めて死亡を宣告した。
あまりの出来事に女官たちは取り乱し、右往左往している。
アリサは荒い息を整えて、「みな落ち着きなさい!サラ様を神殿にお運びするのです。そしてセシリア様に連絡を!」と指示を出した。
女官達は慌てて産屋を出て行った。
「サラ様…まるでこの子と入れ替わるように亡くなるなんて…突然すぎます。私達はこれからどうしたらいいんですか?」
胸に産まれたばかりの赤子を抱きながら、アリサは目に涙をためて「お願い…我王…帰ってきて…私達の側にいて」と不安に震えていた。
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