妻達の思惑Ⅰ
アリサの局に着くと、アンリエッタは下がっていき代わりにアリサ付きの侍従長が晩餐の席まで案内してくれた。
アリサだけかと思っていたらセシリアの姿もあった。
アリサはお腹を庇いながらゆっくりと立ち上がり、アグネスを迎えた。
「いらっしゃいアグネス、セシリアさんも貴方に会いたいと仰るのでお招きしましたよ」
アグネスは身を屈めて大臣でもあり、研究者でもある聡明なお妃に挨拶した。
「お久しぶりでございますセシリア様。私のためにわざわざお越しくださりありがとうございました。」
セシリアはホホホと笑い、「そんな他人行儀な!あなたは家族も同然なんですからそんなに畏まらないでちょうだい。ユノの様子を詳しく教えて貰おうと思って…もう政府も気付いているでしょう?テラの胎動を!」
アグネスは頷いた。
さすがにセシリア様、察しが早いわ!
テラの危機についも意見を聞きたいけど…アリサ様が一緒ではそれも無理か…。
いいわ、折りをみて別の機会に聞いてみよう。
「はい、お察しの通りユノではテラ人の反乱が起こるのではないかと色々策をこうじているようですわ。」
「まさか我々がテラにこうして生き残っているとは夢にも思っていないでしょうね…」
「はい、今のところは全く気付いていない様子です。ですが既にユノはテラの活用法を考えています。これからは用心しないと…。探査隊が来るのも時間の問題かと…」
セシリアは目を細め、アグネスの意見に耳を傾けていた。
「そうでしょうね、こちらも対策は考えています。心配いらないわアグネス!ユノよりテラの方が文明は進んでいたんですもの。負けやしないわよ。」
それまで二人のやりとりをじっと聞いていたアリサも口を開いた。
「そうですよアグネス!王様もいらっしゃるし、こうしてまた御子も産まれてきます。エストニアの繁栄は続いているのですもの。」
愛おしそうに大きなお腹を撫でるアリサをセシリアは鋭い目で射し貫いた。
「今日はね、そのことについても話し合う良い機会だと思ってお訪ねしたのよ。」
セシリアはアグネスとアリサを交互に見据えてそう話をきりだした。
「アグネス…正直に話して欲しいんだけど我王はまだ存在しているのかしら?」
アグネスはビクッと肩を震わせた。
その核心をついた質問にアリサは思わず立ち上がった。
「セシリアさん!何なのそれは?あなた自分が言ってること分かってる?」
セシリアはしごく冷静にアリサの問いに答えた。
「ええもちろんよ。私もアグネスの返事をきくのが怖いわ。でもね…はっきりさせておかなくちゃいけない事でしょ?私が考えるに、あの装置にはやはり問題があると思うのよ」
「…問題…ですって?」
「ええ、あなたも覚えているでしょう?エリザベートの事件を。」
「もちろんよ!それが原因でエリザベートは子を産めない身体になってしまった…そして妃候補の座を降りたんですもの。」
アリサは親友でもあったエリザベートのあの当時の苦しんでいる姿を思い出して胸が痛んだ。
「エリザベートは知能が劣る動物相手であの始末なのよ?今度は同じ人間同士、やはり一つの肉体に2つの魂というのは負担が大き過ぎる…」
アグネスは二人の妃の真剣な眼差しを浴びながらどう話したものか言い淀んでいた。
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