ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
もう一つの手掛かり
シシィはまずカノンに会いにいくことにした。
お姉様に会うのは久しぶりだわ…
千春やマリアとは仕事柄会う機会もあるが、カノンとは特に接点もなかった。
ユノに来て数年は皆自分自身の生活で精一杯だった。
シシィはシャークデビルに入り、新しいガーディアンの操縦に夢中だったし、カノンの方もエリザベートを引き取り、とうとう自身も精神科医にまでなった。
この病院に来るのは開業した時のパーティー以来だ。
懐かしい気持ちで竜崎メンタルクリニックの入り口にはいるとアロマの良い香りがシシィの尖った神経を優しく包んだ。
受付にいるぽっちゃりした若い女の子に院長に会いに来た事を告げた。
「どうぞこちらでお待ちください」
女の子は温かいミルクティーをシシィの前に置いて出ていった。
「いい病院ね。癒しの空間って感じだわ」
耳を澄ますとソプラノ歌手が唄うアベ・マリアのソフトな声がスウッと身体を満たしていく。
「お姉様の趣味ね…素敵、天使の囁きだわ」
シシィが唯一尊敬し、姉とも慕うカノンは相変わらず凛とした美しさでシシィの前に現れた。
「まぁシシィ!久しぶりね。急に現れるなんてどういう風の吹きまわし?」
「本当にご無沙汰してしまって…お姉様にもお変わりなくお過ごしでしたか?」
カノンは微笑を浮かべうなずいた。
「ええ、見ての通りよ。あなたはずいぶん変わったわ。あのお転婆娘がすっかり綺麗になってしまって…今はシャークデビルで働いてるそうね。千春からあなたの噂は聞いてるわ」
チッ!千春のやつめ、どうせろくなことは言っていないだろう。
「あんまり苛めないであげてね。やはり実は100年に一度の天才なのよ。彼と比べたらこの国の科学者などみんなただのボンクラだわ」シシィは紅茶をブッと吹き出した。
「ボ、ボンクラはあんまりじゃないかと…」カノンはアハハと笑いとばした。
「あなただってそう思っているくせに!」
シシィは力無くハハハと笑った。
「お姉様、今日伺ったのは他でもないその実のことなんです」
「…実の?」
シシィは姿勢を正した。
「はい、じつは…」
シシィは千春が見たと言う流星の話をした。「なるほどね…確かに千春ほど実のガーディアンを知りつくしている人はいないわ。」
シシィはうなずいた。「もし、実が生きているならエストニア王国自体がまだ存在しているということです」
カノンの顔色がサッと変わったのをシシィは見逃さなかった。
「だから私、もう一度色々調べなおそうと思います。そこから何かが分かるかもしれない…千春もすでにもう一つ手掛かりをつかんでいるようです」
カノンは思わず呟いた「…アーネスト…そうよアーネストだわ!」シシィは思いがけない名前に驚いた。
「マリアの息子ですか?」
「ええそうよ…彼はロストチルドレン、しかもとても特殊なタイプなの。私は、彼はもしかしたら我王の生まれ変わりじゃないかと思うことがあるわ」
シシィは胡散臭そうに言い放った。
「神経科医の言う事とも思えませんが…」
カノンはフフフと笑い「そうよね?笑われると思ってずっと言わなかったのに…でも不思議なのよ。彼はテラを…いいえ、エストニアを知っているの。しかも我王の目を通してその風景をみている。」シシィは苛立った。
「一体なんの話ですか?私にはなにがなんだか…」
「ああごめんなさい。私もマリアからこの話を聞いた時は自分の耳を疑ったわ。」
カノンはアーネストの見た夢の内容を詳しく話して聞かせた。
「そんな…信じられない。それは本当の話ですか?」
カノンはうなずいた。シシィはアーネストと会う事を決意した。
「お姉様、私にアーネストを紹介してくれませんか?マリアには知られたくないんです。彼女はあくまでユノ側の人間ですから」
「ええ、いいわよ。彼はよくエリザベートのお見舞いにくるから偶然を装って会いにきなさい。日時は私が知らせるから」
シシィはカノンに礼を言った。
「いいのよ…私だって同じ気持ちだもの」
カノンとシシィはお互いの手を握り合った。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。