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大富豪の局
サラの元にはすでにセシリア付きのルイーズが戻っていた。暫くするとカノン付きの栞とアリサ付きのエミリーも戻り、クリスティンから説明をうけた。
「ではこれから局を開放いたします。必ず各部屋に一人は案内人をつけること、そしてその案内人の指示には従う事、このルールはそれぞれの局の女官に伝えて下さい。では、皆さん!局の入り口を開けて下さい。」女官達はキャッキャと観光気分で気になる局へ見学に出掛けて行った。ケイトはルビーと共にまずは大富豪と噂の高いカノンの局に行くことにした。
局の入り口には局長の栞が立ち、女官達を迎えた。
「さあ、どうぞ。ゆっくり見学してください。奥のティールームにお菓子を用意してありますよ」
「うわ〜!お菓子まであるんだ。うちでも何か用意するべきだったかしらね?」ルビーの心配をよそにケイトは周りをキョロキョロ見渡した。まずは仕事を済ませてしまいたい。
「あの〜トイレをお借りしたいんですが…」近くにいた女官にたずねると
「どうぞお使い下さい。女官の休憩室内にありますわ。」
と言って案内してくれた。どこの休憩室内も同じつくりよね?ケイトはトイレを済ませて、そっと室内を歩いて誰も触れないような壁の上のほうに透明のシールをペタリと貼った。もし見られても壁にちょっと触れたくらいにしか見えないはずだ。なんせ局には何台もの監視カメラが取り付けてある。
注意せねばならない。ケイトは仕事が済みサッパリした顔でルビーのところに戻った。
「もう!遅いじゃないの。早く行きましょう…ところで休憩室はどうだった?」ルビーは興味深々だ。
「うちとまったく同じよ。安心した?」ルビーはえへへと笑って
「安心した。だってやっぱり女官は平等でなくちゃ!大富豪だから休憩室も凄いかと思ってたけど、よかったわ。」二人は大広間に入っていくなり感嘆の声をあげた。
そこはまるで日本の京都を思わせる造りになっていて、そこから眺める石庭も実に美しく、渡り廊下は硝子張りで下を見ると池の鯉が悠々と泳いでいるのだった。「ハア〜ほんとの金持ちってこうよね。なんていうの…へんにきらびやかじゃないところが素敵よね?」ルビーがそう言うとケイトはさりげなく置いてある壺を見て
「ほら、あれなんてきっと物凄く高価なものよ。」と話していると、案内係が
「あれ一つで城が建つほどだそうですよ。」と教えてくれた。ケイトはこの局じゃなくて良かったとしみじみ思った。
そんな高価な物が側にあったら割ったら大変!といつも気をもんでいなくてはならないだろう。ここの女官達に同情するわ。
ケイトが心でつぶやいていると。ルビーが衣装部屋に行こうと言い出した。
「きっと凄い数のお召し物でしょうね。楽しみだわ…今日のカノン様のお召し物もとっても素敵!着物っていうんですって。まるで芸術品よね」ケイトは今日のカノンはことのほか美しいと思っていた。淡いクリーム地に春らしくウグイスの刺繍をほどこした長い袖を揺らしながら歩く姿は艶やかな女の色気を感じさせた。衣装部屋にはすでに沢山の女官達が溢れていた。
よくみえるように沢山の着物がまるで絵画のように並べられていた「素晴らしいわね。まるで美術館じゃない。」二人は案内係に連れられ寝室を見学したが、そこには畳が敷かれ豪華な絹の布団が敷かれていた。
あたり前だけどうちの局と全然違う雰囲気ね。他の局もどんな風だか楽しみだわ。ガラスケースに並べられた数々の装飾品を見ていると、ひときわ大きなピンク色のダイヤをあしらったティアラが目に飛び込んできた。
「まあ〜!これを見てよ。このダイヤ鳩の卵位の大きさよ。」ルビーは興奮してケイトの袖を引っ張った。
「これはハートの女王と呼ばれるティアラで、これを着けた者は王者の花嫁になれるとの言い伝えがある品ですのよ。」案内係は二人にそう説明してくれた。
「まああ…ではカノン様もこれを被られてお妃様になられたわけね。ああっ私も被りたいっ!」ルビーは身悶えして周りの女官達の笑いをとっていた。数々の装飾品の中にケイトは一つ気になる物を見つけた。
「すみません。あれはなんですか?」
案内係はギョッとした顔で
「どうしてあれがここに…?」とつぶやいた。


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