鰐梨
彼女が僕の持ってる買い物かごにアボカドをいれた。
既に牛乳、ジュース、僕のビールと重量物を買ってるのに、
その上、パン、ジャガイモ、卵やらいろいろと、、、
こんなに買うならカート持ってきたのに、
って言うか、初めに言ってよと、
お店に入る時に「沢山買うものあるよ」とか。
彼女はこちらを見て申し訳なさそうに、
新たに買いものかごを取り、またアボカドをいれた。
両手を震わせながら、相変わらず計画性のない二人だと感心する。
彼女とはネット上のサークルで知り合った。
見た目や会話でなく文字から友達になり親しくなった。
始めて会ったのは飲食店、二人とも仕事で遅くなり急いで食べた。
何を話したか記憶がないけど、文字の彼女が映像の彼女になった。
僕は文字列の想像力が無いって事を知った日でもあった。
そして、また会う約束を会話でした。
計画性のない二人だったから、デートで行く場所も会ってから考える。
大雑把に「北と南、どっち行く」みたいな感じ。
彼女も「どっちでもいい」って感じ。
途中で情報雑誌を買って考える行き当たりばったりデート。
「寒いから南に行こう」「太陽に向かって行こう」みたいな。
今にして思えば、
僕に遠慮してたのか、強引にでも決めてほしかったのか分からない。
僕にして思えば、
一緒に居れればそれだけで楽しくて嬉しくて幸せだったけど。
いつも昼食で迷う僕を情けないと思ったのか、可哀そうと思ったのか、
申し訳なさそうに、彼女はお弁当を作ってくれた。
その中にアボカドのサンドイッチがあった。
アボカドを知らなかった僕は、「バターやチーズの一種?」と聞いた。
アボカドのサンドイッチは美味しかったし、彼女の笑顔が嬉しかった。
アボカドの果実は人を幸せにする成分が入ってると思った。
買い物かごの中で、落ちそうなアボカドを見てると、
申し訳なさそうに、カートを押してくる彼女。
まだ、買い物は続くらしい。。。