本編
episode1 Little Busters②
「……死後の、世界だって?」
「……その通りよ。死因は分からないけど、貴方はすでに死んだ人間なの」
「ば……バカな!? だとしたら、ここにいる俺は一体何者なんだ!?」
「……貴方は貴方。『棗恭介』君って言うんじゃないの?」
「ああそうだ。確かに俺は棗恭介だ。けど、俺はもうすでに死んでるって……!?」
次の言葉を言いかけて、恭介は気付いた。
……いや、思い出したという表現が正しいのだろう。
彼は間違いなく、すでに死んでいたのだ。
それは、彼自身が一番よく知っている……そして、彼が経験するはずのなかった死であった。
「……そうか。思い出したよ。俺、すでに死んでたんじゃないか……少し前に、ほんのちょっと前に、俺は命を落としてるんじゃないか……!!」
「……」
奏は、恭介が悔やんでいる間、口を挟むようなことはしなかった。
代わりに、
「……しばらく、一人にさせてくれないか? 立華。落ち着いてよく考え直したいんだ」
「……分かった。私、寮に戻ってるわね」
恭介に言われて、奏は保健室から出ていく。
保健室の中には、ベッドで半身を起こしている状態の恭介だけが残された。
「……」
窓から外を覗き込む。
外は先程も見た通りグラウンドだけしか見当たらなくて、そこに奏が一人、夜のグラウンドを歩いている姿だけが映っていた。
「……俺は、アイツらを最後まで救い切ることが、出来なかった……」
一人、恭介は保健室の中でそう呟いた。
まるで、今までのことを悔やむかのように……寂しそうな声で、涙を流しながら。
*
楽しい学園生活だった。
毎日『ミッション』と名付けられた、所謂バカ騒ぎをして楽しんで、夜の女子寮に恭介は自らの妹を放ち、そして自らが創ると言い出した草野球チームのメンバー勧誘をさせたりと、騒がしい毎日を送っていた。
……彼らは自分達のことを『リトルバスターズ』と名乗った。
リーダーは恭介自身で、最初は幼なじみメンバー五人で構成されていたのだが、気付けばいつの間にか十人近くにまで発展していた。
野球が出来る程の人数になり、恭介達はその学園の野球部に試合を申し込んだ(というより、恭介が独断で勝手に申し込んでいた)。
その試合は、僅かな所で力が及ばず、惜しくも敗北。
だけど、彼らは楽しかったのだ。
試合に負けた彼らだったが、勝ちたかったという想いも多少は残っていたが、それでも試合をやって楽しかったという嬉しさが込み上げてきたのだ。
そんなわけで……彼らは最高に楽しい人生を送っていた。
ただ一つ恭介にとって気がかりだったのは……自分の妹である鈴と、幼なじみの内の一人である直枝理樹という少年の心が成長しなかったことにある。
その面に関しては、これからゆっくり強くしていけばいい。
彼の頭の中で、何処か安心感みたいなものが募ってしまっていて、理樹が言った通り、
「この時間が……いつまでも続けばいいのに」
という言葉には、酷く感銘を受けた程であった。
……彼の人生は、満たされていたのだ。
それが崩れたのは、理樹達の修学旅行の日であった。
修学旅行といえば、その学園では高校二年生が行く行事であった。
しかし恭介は高校三年生。
大学受験や就職活動で忙しい年である。
恭介自身も、就職活動をしている身だったのだが……楽しい行事を逃すわけにはいかないと思った為か、そのバスに、乗り込んでしまった。
もちろんバス内は大騒ぎ。
他クラスの生徒が入ってきていたのが発覚しただけではなく、今度は高校三年生の生徒まで乗り込んできていたとなると、いくらなんでも騒がずにはいられないだろう。
しかし……そんな騒ぎなどどうでもいいと感じさせる程の事件が、恭介達の身に降り注いだ。
「……うおっ!?」
……突然バスが崖から転落し、生徒達は、そのまま……。
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