想いを焦がして
「……よって政府は此処に、異性婚・同性婚に次ぎ対物性婚を認める法律を施行することを閣議決定致しました」
「イヤッホウウウ!!」
車の中でラジオから流れるニュースを聞き、僕の心は飛び上がった。ついに物体との結婚が認められる法律が出来たのだ。今までに二次元のキャラや亡くなった故人との結婚、動物との結婚まで認められていたのだから、モノを愛する性癖がこうして世に広まるまでそう時間はかからなかった。それでも僕にはとても長い間待っていたように感じられた。この法律が正式に決定される数年前に、友人のサミュエルなんかは親の反対を押し切って洗濯ハサミの「リリィ」と駆け落ちしてしまったほどだ。そして、僕にもずっと想っている相手がいた。「アリシア」だ。その夜僕は彼女に会うと、意を決してプロポーズすることにした。
「やあアリシア。今朝のニュース聞いたかい?僕の、君への愛はもう知っているだろう?…僕と結婚してくれないか?」
「あら…ごめんなさいCT60021‐4。私、カーナビと結婚する気はないの」