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ヒロインな妹、悪役令嬢な私 作者:佐藤真登

十三歳編

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番外編は番外編で、別に投稿することにしました。
いえ、冷静になったらあまりにも本編とはかけ離れたパラレルだったので……。
感想欄でご協力いただいていた皆様のノリの良さに泣いたです。

それでは十三歳編のクリス、スタートです。
 私はクリスティーナ・ノワール。天才だ。
 天才として立ち上がってから、早十年以上。十三歳になった私はもう間もなく貴族子弟の多くが通う王国学園に入学する。
 前世の知識で舞台となった王立学園。今の私は、もちろん悪役令嬢などという愚かな役どころに納まる気などさらさらない。女傑として君臨し、先に入学している王族だからという理由だけでちやほやされているだろうこの国のバカ王子を押しのけ、高位貴族としての威光を示す予定である。
 そんな私の学園君臨計画の手駒一号と二号になる予定の人物が、同席していた。

「それで、試験はどうだった」
「試験? ああ、入学試験のことか?」

 街の片隅にひっそり存在する教会の一室。ここ二年で幾度となく訪れて、もはやなじみになった場所だ。
 そこでいつもの相手とボードゲームをしている私は、カツン、と相手の駒をのけて進軍しながら聞く。

「そうだよ。この間、あっただろ。王立学園の入学試験。どうだったんだ?」
「たぶん、落ちてることはないと思うぞ。解けない問題はなかったしな」
「ほう」

 たぶん、と言いつつも自信があるのだろう。解けない問題はなかったいうのも、なかなか剛毅な返答だ。横から盤面を興味深そうに見ているその表情に、不安の色はない。
 顔つきは精悍には程遠く、まだまだ少年らしさが抜けていない。ただ、背はもう大分レオンのほうが高くなっている。私もまだまだ大きくなる予定だが、ちょっと悔しい。
 レオン・ナルド。黒髪黒目を持つ、同い年の平民である。
 本来ならば私と席を同じくできる様な身分ではないが、私と超寛大な心を持っている。平民だろうと、優秀であり面白いやつだったら交流を持てる柔軟性はきちんとある。

「受かってるなら、それでいい」

 にんまりと口端をつりあげる。レオンには、手駒二号としていろいろと活躍してもらう予定だ。受かっていてもらわなければ困る。
 この国の貴族としての活動は、王立学園を卒業してから本格的に始まる言われているが、それは大きな間違いだ。将来、政界、社交界に上がる人物が多く在籍する王立学園での生活は、そのまま将来の己の人脈に直結する。
 だからこそ、天才たる私は学園の頂点に立つのだ。それがこの国の御三家、ノワール家の息女として生まれてきた私の責務だ。学生時代から圧倒的優位の地盤を築き、それを将来につなげるのだ。
 そして何より、ミシュリーが入学した時に居心地の良い学園にしておく姉の義務が私にはある。
 私が生まれ持った天才的頭脳に、前世の知識による未来予知に近い情報が揃えば敵などいない。そこに動かしやすい手駒が揃うのだ。完全無敵である。くっくっく。今から笑いがこみあげてきた。
 胸の中でほくそえんでいると、レオンがなぜかぶるりと身震いをひとつ。

「いま、何か悪寒がしたんだけど……」
「気のせいだろ。室内だぞ、ここは」

 私の子分になれるなんて、光栄に思うことはあれど拒否する要因はない。だから悪寒なんて感じる原因にはなりえないので、あっさり否定してやる。

「それとも試験前で根でも詰めたか? 無理をした疲れが出てるのかもな」
「いや。マリーワさんに、試験前のつめこみはするなって言われたから、それはない」
「なんでマリーワはお前にそんな甘いんだ?」

 つめこみをするなとか、言われたことすらない。私に対する授業では、マリーワは相変わらずぎりぎりを目指している。何がぎりぎりかと言えば、私の気力精神のぎりぎりだ。マリーワが授業中に私の体調を気遣ったことなど、ほとんどない。

「甘いもなにも、マリーワさんっていつも理論的だぞ? つめこみ作業みたいな教え方、しないだろ?」
「いや、絶対マリーワは根性論が好きだと思うんだけど」

 同一人物から教えを受けているはずなのに、あまりにかみ合わない教育方針に首を傾げる。

「まあ、いっか。マリーワだしな。で、サファニア。次の手はどうするんだ?」
「……黙りなさい」

 盤面を挟んで対面している手駒一号予定ことサファニアは、長考していた。まあ、まだ勝敗は分からないけど、私が優勢だ。このゲームではいまだにサファニアは負けたことはない。……マリーワに勝ったこともないが、それはそれだ。
 サファニアは、正直あまり成長していない気がする。相変わらずひきこもりで、相変わらず毒舌で、相変わらず負けず嫌いで、相変わらず簡単に泣く。
 熟考した末のサファニアの選択は予想の範疇だったので、ノータイムで手を返す。

「レオンは万が一入学試験に落ちたらマリーワに絞られるだろうな」
「恐ろしい事いうなよ……」

 ここ数年できちんとマリーワの恐ろしさを理解したらしいレオンは、もしもを想像したのか怖れおののいていた。

「それはそれで面白そうだけど……ほぼ受かってるんだろ? 手ごたえがあるんなら、試験の結果は心配するな。心配するなら、春から始まる学園生活の心配でもしてろ、平民」

 王立学園の入学者は八割がた貴族の子弟だ。そこに裕福とはいえ、平民のレオンが入れば嫌でも目立つだろう。優秀な成績を示せばなおさらだ。まず間違いなく、妬み嫉みが引きこされる。

「あんまり平民だけで固まったら、学園に入る意味はないしな。ちゃんとコネを作れよ?」
「そっちはあんまり心配してないんだけどなぁ。いまさら身分に気圧されるとも思えないし、失礼のない程度に気を遣えばいいんだろ? 後、コネっていうな。普通に友達になるだけだ」
「この考えなしが。ある程度の利害は考えろよ? 高位貴族の子弟だったら、まずそれを考えてないことはないからな。お前が何をできる人間なのかはきちんと示せ。そうして付き合うに足る人間だって証明しろ。そこが始まりだ。最悪、私の名前を出してもいいぞ」
「うぇー……分かったよ。クリスの名前はださないけどさ」
「分かればよろしい。後は頑張れ」

 最初のうちは放置してレオンがどの程度できるか見ておこう。私の名前に頼らないというなら、取り巻きに加えてやるのは後々でいいだろう。完全にひきこもり気質なサファニアは最初から私の陣営に引き込んでやる予定だけど、レオンは立場が違う。レオンなりの地盤を作らせたほうが、人脈も広がる余地がある。
 ふふふ。しかし、取り巻きか。いい響きだ。私、取り巻きとか大好きだ。承認欲求が満たされる。着々と学園支配計画も進んでいる。とりえず第一目標は、妥当バカ王子だ。手ごろに楽勝な相手だ。レオンでも簡単に勝てるだろ、あいつなら。

「またなんか寒気が……。それで、お前らどうなの? 俺が入学したら、お前らが学校にいないとかいうオチは勘弁してくれよ。特にサファニア。お前、人付き合いが嫌だから学校行きたくないとか言いだしそうなんだよ」
「姉たちも入学してるから、私だって入学させられるわよ……。一応、試験も受けたし」

 ここ二年で完全にサファニアの習性を把握したレオンの目は不信に満ちている。それをきにも止めず、盤面に集中しているサファニアはおっくうそうに返した。
 高位貴族である私とサファニアは、親が入学させると決めたら間違いなく入学できる。試験の結果は関係ない。ちなみに新入生代表の挨拶の栄誉はまず間違いなく私に与えられるだろう。同い年の王族及び公爵家の人間はいない。入学試験で首位を取った自身もある。

「そういえばカリブラコア家って、長女の方はともかく……次女のイグニアさんは、学園にいるな。ひとつ上だろ? うん。いろいろ協力してもらうのもいいな」
「やめなさい、想像もしたくないわ」

 明確に敗勢になってきた盤面に、サファニアがあからさまにイライラした仕草で髪をかき上げる。

「あー。そういえば、なぜかサファニアって姉妹の仲が良くないんだっけ」
「反抗期が長いんだよ、こいつ。長女の方は私もちょっと苦手だけど、イグニアさんは付き合いやすくていい人だしな。活動的な性格だから、学園でもなんかしてるだろう?」
「うるさいわね。姉のことなんて知らないわよ。そもそも『付き合いやすい良い人』とか言いながら姉とは猫被って付き合ってるくせに……そういえば、クリスは学園にいる時は淑女第二形態とか言う猫かぶりモードでいるの? だったら近づかないで欲しいわ。うっとうしいから。あれを見聞きしてると、鳥肌が立つのよ」
「ああ……。あの、もはや別人スタイルか。俺も、そのモードだったらなんて声かけていいか分からなくなるな。できればやめて欲しいな、あれ」
「お前らな……」

 好き勝手言ってくれる二人に、眉がひきつった。
 八年で鍛え上げた私の第二形態を、ここまでけなしてくれるとはいい度胸だ。今に見てろ。学園生活ではこき使ってやる。

「クリスは素でいたほうがいいと思うぞ? 本性を隠しながら学校生活をするのも面倒だろ」
「そうね。あれよりは、まだ今のほうがましよ。普通にしゃべりなさい」
「ふんっ。ダメだ」

 進言してくる二人の意見を、鼻を鳴らして却下する。
 お母様がおらず、乳母もなく、お父様の影響を大きく受けたこのしゃべり方。これは、ダメだ。少なくとも、王立学園での生活でこの口調を使うことは許されない。

「人の親切を無下にしないでくれないかしら。そもそもあなた、何で第二形態とやらにこだわっているのかしら。あなたの身分だったら、ごく一部を除けば無礼だどうだなんて気にする必要もないでしょうに。むしろ、偉そうなのがあなたのデフォルトでしょう?」
「だよなぁ。あの口調にこだわるっていうの、なーんかクリスらしくないんだよ。それにマリーワさんも言ってるじゃん。自分が教えるのはあくまで型であって、それを有用に活用しするのが理想なんだって。クリスもさぁ、あのモードに自分らしさを付ればいいじゃん」
「ダメだって言ったらダメだ。これは……」

 だって、これは。
 前世の知識の源『迷宮ディスティニー』で、悪役令嬢だったクリスティーナ・ノワールと同じ口調なのだ。

「……これは、淑女らしくないからな。なんか、悪役令嬢」
「まるでクリスが淑女みたいな言い方ね。……ていうか、なによ『悪役令嬢』って。あなた、前も言ってなかったかしら?」
「そうか? 覚えてないな」

 眉をひそめたサファニアをごまかすべく、駒を手に取って詰めの作業に入る。

「ま、何にしても、ここにいる三人は揃って入学するな!」

 口調の話題をごまかすように明るく言って、私はまずは今日のサファニアを叩き潰すべく駒を盤面に置いた。
 学園に入学できることが喜ばしいと思っていた私は知らなかったのだ。
 王立学園に入学することで訪れる、苦難の運命のことを。
書籍化の続報です。
閏 月戈様にイラストを描いていただけることになりました。そうです、二作品くらいアニメ化をされてるイラストレーター様です。
詳しくは活動報告で。

とりえず、クリスにアホ毛が生えました。かわいいです。幸せです。
こんなに幸せなのも、ここまでお付き合いいただいて、ブックマーク、評価をしてくださった皆さまのおかげです。

それと、ページ下部に第二回キャラクター人気投票のリンクを張りました。
よかったら投票していってください。

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嘘つき戦姫、迷宮をゆく
傲慢なご令嬢主人公リルが、コロという少女と出会って自分を見つめなおし、
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