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異世界で回復魔法チートはハーレムフラグではなかった! 作者:二六零/高崎三吉

第十六章 とある御家騒動の話

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改めてミリンサと

 映像のウァリウスが完全に姿を消したところで、オレにはちょっとばかりホッとした気持ちがあった。
 あのままウァリウスと会話しているとついつい引き込まれて、帝都まで会いに行く事に応じてしまいかねない気持ちがあったのだ。
 ひょっとするとウァリウスが平然としていたのも、オレのそんな気持ちを察していたからなのか?
 いや。幾ら何でもそんなことはないはずだ。
 自分でもよく分からないもやもやした気分を抱きつつオレが部屋から出ると、ドロムが緊張した様子で待っていた。

「無礼は承知で伺いますがもしも差し支えなければ、陛下との事についてお話下さい」

 ここでとぼけるなら『皇帝陛下との二人きりの会話の中身を口にしろと言うのですか』とでも口にすればどうにかなるかもしれないが、ここは差し障りのない範囲で、本当の事を教えるか。

「皇帝陛下はこの町の領主選びが進展した事に安堵されていましたよ。もちろんしきたりによって決まった領主について、口出しする事もありません」
「そうですか……それ以外には何かありませんか」

 一応は安堵した様子だが、まだ信じ切れないらしいな。

「少なくともこの町に帝国軍がやってくるとか、そういう話にはなっていませんよ」
「分かりました。あなた様のお言葉ですから信じましょう」

 ウァリウスはこのドズ・カムではなく、地域で同意する町に駐屯所を設けて軍を進出させ、その軍事力を背景に地域ににらみをきかせたいらしいので、少し詭弁めいているがここはドロムを安心させるとしよう。
 ただドズ・カムでも帝国との距離を巡っていろいろ対立しているワケだが、もっと親帝国の方針を採用して帝国軍を駐屯させ、その軍事力を背景に自分の地位を固めたい領主だっているのは間違い無いだろう。
 今までそれを行っていなかったのは、帝国内部でゴタゴタが片付いていなかったのと、それでも反発が無視出来なかったからだろうけど、オレを利用する形で反発の方は押し切るつもりらしい。
 ただ統制を強める中央政府と、自治を守りたい地方領主、そのどちらが正しいとか、間違っているとかそういう話ではないので、オレとしてはただ無益な流血を産まないように性急な行動を避けるように願うしかない。

「とにかくドロムさんは、帝国の事は気にせず、新しい領主選びに異論が出ないように仕切る事に専念して下さい」
「それでは失礼します」

 ドロムは一礼すると、あたふたと去って行く。
 オレの事だけで無く、いろいろな勢力についての情報収集に忙しいらしいな。
 心労と過労で倒れないか、そちらの方が心配になってくるよ。
 しかしオレの方もそれで一安心とは行かなかった。

「アルタシャ様! ここにおられましたか!」

 ミリンサがオレのところにやってきたのだ。
 その表情はかなり険しいものだが、やっぱり家族の事でいろいろと悩んでいるのだろう。
 残念ながらいったん亀裂が入った家族関係があっさりと修復されるようなうまい話はそうそうないだろう。
 そうすると気休めでもオレが出張るべきかな。
 一応は皇帝にも繋がりがあって、なんだかんだで持ち上げられているオレが取りなせば、家族が元通りとまではいかなくとも、立ち直るきっかけぐらいにはなるかもしれない。

「あなたの家族の事ですけど、よかったらわたしが説得しましょうか?」
「そのお気持ちはありがたい限りですが……申し訳ありません!」
「え?」

 どういうわけかミリンサの方は力を込めて謝罪しつつ、頭を下げた。
 先ほどオレがどれだけきつい事を言っても、平然と流していたウァリウスの態度を見ていたせいか、ちょっとばかり意表を突かれたよ。

「あ……す、すいません。いきなり大声を出して……」
「それは構いませんけど、いったいどういう事なのか説明してもらえますか」
「実は……あなた様がお越しになったので、領主選びが進展したと聞きました。それで今まで私の一票が高く売り込めたのですけど……」
「つまりそれが台なしになったので、ご家族の方はわたしを恨んでいると言う事なのでしょうか?」
「そういうことになります……」

 実際にはオレが直接何かしたわけでもないのだが、ドロムはそういうことにして権威付けに利用しているし、オレも黙認しているから文句は言えない。
 これまでも何度もあったけど、恨まれるのも仕方ないと割り切るしかないな。

「もちろんあなた様を恨むのは筋違いなのは分かっています。私もそれは言ったのですが、皆憤慨していまして……」

 まあオレが恨まれる事でミリンサの家族が少しでも関係がよくなってくれるのならそれでいいか。

「ミリンサが気にする事ではありません。むしろそれで家族の皆さんの仲が前よりもよくなっているのなら、わたしとしては構いませんよ」
「な? それは本当ですか」
「とにかくミリンサは家族の人達に落ち着くように頼んで下さい。わたしが恨まれる事で、あなたの家族が元通りになる手助けが出来れば、それで十分です」
「本当にあなた様は気高いお方なのですね……わたし達とはまるで違いすぎる」

 理由はどうあれ知り合いの家族同士が憎み合うよりは、オレを憎んで家族関係が修復された方がまだマシというだけなんだが、やっぱりそのあたりの感覚は大違いということか。
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