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しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
子狸ぃ……by魔物一同
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「勇者さんの“漢”を見たい」part3

一0九、連合国在住の現実を生きる小人さん


 状況開始


 国境を越えて

 現地へ

 おれ参上します



一一0、帝国在住の現実を生きる小人さん


 状況開始


 国境を越えて

 現地へ

 おれ参上します


 ついで

 居候としての義理を果たすべく

 王国のに手袋を投げつけます


 手袋が

 手元になかったため

 ガントレットで代用しました



一一一、王国在住の現実を生きる小人さん


 地味に痛かったと報告します


 王国を代表して

 よかろう

 それでは戦争だ

 と受けて立ちます



一一二、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 お前ら

 けっこう余裕あるなと内心で呆れつつ


 連合国の事なかれ主義を見習って

 お前らを放置します


 ついで

 おれ参上した

 青いひとから

 子狸を預かり

 受諾証明書に判を押します



一一三、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 今回

 おれたちの出番は

 なさそうだな


 王都の

 あとの四人はどうした?



一一四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 そうだな

 鬼のひとたちの仕事には

 絶対的な信頼がある


 あとの四人は

 絶賛氾濫中の河を

 鎮めに行った


 山腹のは

 ああ言っていたが

 勇者が現れると

 まず例外なく荒れるからな



一一五、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 前々回は

 ひどかったからな


 人選は理想的だったのに

 なんで

 ああなった……



一一六、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 これは

 インテリジェンスの問題だから

 言わないでおこうと

 思ったんだが……


 子狸がいない

 いまだから

 この場を借りて

 はっきりと言わせてもらう



 バウマフ家の人間は


 変人に好かれる



一一七、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 残念です……


 まあ

 救国の英雄が

 まともな人間に務まる道理も

 ないか……


 お前ら

 認めよう

 あの正義感あふれる

 清廉潔白な

 若き英雄は


 バウマフの親友だった……


 ハイレベルな

 変人だったんだよっ……!



一一八、王国在住の現実を生きる小人さん


 くぅっ(泣



一一九、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 くぅっ(泣



一二0、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 くぅっ(泣



 で

 お前ら

 ひととおり

 光と闇をスパークさせたし

 もう満足だろ?


 シナリオを進めますよ

 と促します



一二一、王国在住の現実を生きる小人さん


 連合国には

 そういうとこあるよな

 と愚痴を漏らしつつ


 ステルスモードに移行

 人前では晒せない

 健脚を披露して

 森を駆けます



一二二、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 同じく

 並走しつつ


 あるある

 八方美人な癖して

 技術力が怖いし

 ナチュラルに

 他国を見下してる

 と賛同を示します


 枝から枝へ飛び移りつつ

 勇者を肉眼にて視認と

 お前らに報告します



一二三、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 お前ら

 あとで

 ちょっと話し合おうな

 と平和的解決法を模索しつつ


 子狸を抱えて

 所定の位置へ移動します



一二四、王国在住の現実を生きる小人さん


 これだよ

 と戦慄しながら


 ステルスモードを解除

 減速しつつ


 太陽を背に

 満点ものの伸身六回転を披露して

 完璧に着地を決めてくれた

 帝国のに

 合図します



一二五、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 王国のの

 合図を受けて

 ステルスモードを解除

 あとに続きます


 のんきに

 お馬さんに

 またがっている

 勇者を横目に

 茂みを

 これ見よがしに

 揺すります



一二六、王国在住の現実を生きる小人さん


勇者「?」


 物音に反応した勇者に

 あふれるテンション


 飛び出せおれ

 とばかりに

 茂みを突き破って

 勇者の眼前に躍り出ます



一二七、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 勇躍おれ

 二番手も続きます


 小物臭漂う挙動を

 心掛けつつ


おれ「また懲りずに獲物がやってきたようだな!」


 と

 ひそかに伏線を張ります



一二八、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 というか

 今更だけど


 あれ馬か?

 ロバの間違いじゃ?


 と疑問を呈します



一二九、王国在住の現実を生きる小人さん


 少し不細工かもしれませんが

 お利口なお馬さんです……


 と勇者の愛馬を

 フォローしつつ


おれ「人間のメスは美味いからな。ついてるぜ」


 と

 見たことも聞いたこともない

 グルメ情報を捏造します



一三0、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


勇者「…………」


 路傍の石を見るような目ですが

 めげません


 でも

 おれの繊細なハートは

 脆くも傷付きました

 と

 お前らに報告します



一三一、王国在住の現実を生きる小人さん


 ひとさまに向けていい

 視線じゃねーぞ……

 と

 おれは内心で零しつつ

 馬から降りる

 勇者さんを律儀に待ちます


 話し合いという選択肢を

 はなから無視して

 静かに抜剣した勇者さんに

 ちょっと素でびびります


 なぜ

 聖☆剣を使わない……


 と内心でうめきつつ

 帝国のに

 ひそかに目配せします



一三二、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 まだ

 慣れてないのかもな

 と推測を述べつつ


おれ「ちっ、剣士か……」


 と

 わかりきったことを口にします


 そして

 この緊迫した場面

 道端でお食事をはじめたお馬さんに

 空気を読めと

 無理な注文をぶつけたい

 おれが

 います



一三三、王国在住の現実を生きる小人さん


勇者「命が惜しくはないの?」


 降伏勧告の迂遠な表現だろうと

 好意的に解釈しつつ


 凶器を片手に

 ゆらゆらと歩み寄ってくる

 勇者さんに

 希望を見出すことができません


 よって

 シナリオを繰り上げます


 シナリオBを破棄

 シナリオCへ移行します



一三四、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 了解しました

 シナリオCへ移行します


 子狸をともなって

 時間差で

 おれ勇躍します


 幸せそうに寝息を立てている

 子狸に

 この日のために

 丹精込めて削り上げた

 こん棒を

 突き付けます


おれ「武器を捨てろ! こいつがどうなってもいいのか!?」


 と

 伏線を回収します



 さあ

 どう出る……?



一三五、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 ごくり……



一三六、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 ごくり……



一三七、王国在住の現実を生きる小人さん


勇者「……仕方ないわね」



 要求を


 呑んだ


 だと……?



一三八、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 い、意外だな……


 てっきり

 子狸を見捨てて

 反撃してくると思ったが……


 聖☆剣があるから

 問題ないと考えたのか?


 おい

 どうする?



一三九、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 どうもこうも


 シナリオ通り

 連行するしか

 ないだろ……


 ただし

 奇襲に気をつけろ

 慎重にな……



 注釈


・氾濫


 河での議論が白熱するあまり、収拾がつかなくなった状態を指して言う。

この状態を鎮めるには第三者が介入するのが一番とされる。

 とくに青いひとたちは、子狸速報をはじめとする様々な情報を提供する優秀な諜報員であるため、敬意を表する魔物が多いらしい。



・シナリオ


 ようは対人間用マニュアル。

 かれこれ千年ほど人類の天敵を演じているため、「こきゅーとす」には相当量のシナリオがあり、また編集されている。

 いわゆる「お約束」をこよなく愛する魔物たちであるから、既定路線に沿って行動することに無上の喜びを感じるらしい。

 大変便利なシナリオであるが、バウマフ家には通用しないという致命的な欠陥がある。



・こいつがどうなってもいいのか


 どうにかなって困るのは、むしろ魔物たちのほうである。

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