「なんか魔王が復☆活したらしいです……」part3
七一、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
教官
泣いちゃった
七二、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
泣いちゃいましたか
七三、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
泣いちゃいましたよ
七四、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
よっぽどだぞ
あの人が泣くとか
鬼の目にも涙と言うが……
なんか申し訳ない
うちの子狸が
七五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
いま
職員室にいるんだけどさ
わなわなと震えてる教官を
心配した子狸の発言がこれ
子狸「お、お土産……買ってきます」
終わった
七六、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
さよなら子狸
お前のことは忘れない
七七、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
冥土の土産を
もらう側になってどうする……
七八、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
まだ
旅立ってすらいないのに
ラスボス戦かよ……
いったい
どうなってるんだよ
お前の人生はよぅ……
七九、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん
少し
目を離した隙に
これだよ……
ただいま
八0、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
おう
他のひとたちは
なんて?
八一、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん
でかしたと
とくに
剣術使いが勇者というのが
またポイントが高いらしい
おれたち
魔法に対しては
採点が厳しいからな
八二、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
あ
子狸が吊るされた
八三、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
今晩のメニューは
狸なべですか
そうですか
八四、管理人だよ
お前ら
ごちゃごちゃ言ってないで
助けてくれませんか
八五、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
他のひとたちには
悪いけど
今日は旅立てそうにないな
八六、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
残念だけど
仕方ないな
子狸の
将来を思えばこその
苦渋の選択
八七、管理人だよ
おい
おい。お前らがおれを
子狸と呼ぶのは勝手だけど
どうして先生まで
おれをそう呼ぶ
八八、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
教官「この、子狸が……」
犬歯ってさ
とがってて
さわると痛そうだよね
八九、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
おれの家にさ
たまに
くちばしの鋭いひとたちが
遊びに来るんだけど
なんかおれ
べつに何をしたわけでもなく
お祈りされるのね
で
何かの拍子に
お子さんらに
つっつかれたりする
これが意外と
ほのかに
あったかいのよ
不思議な感触だわ
九0、管理人だよ
わかった
おれが悪かった
謝る
でも
ひとつだけ
はっきりさせておきたいんだ
鞭って
たとえば
人間を叩く以外の
用途はある?
九一、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
梱包に
便利なんじゃないか?
注釈
・犬歯
とがってて、さわると痛そうである。
・くちばしの鋭いひとたち
泳ぎが達者で魚をよく食べる。
魔物たちは、おもに自分たちを指して「~のひと」という表現を多用する。
しかし人類と敵対しているという設定上、心情的には動物の味方をしたがる。
すると彼らの中で不思議な心理が働き、動物に対しても「~ひと」という表現を用いることがままある。
その場合、自分たちとの混同を避けるために若干ながら形容が具体的になるらしい。