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しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
おれたちは牛に屈さない……by骨のひとたち
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「都市級が港町を襲撃するようです」part5

一二一、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 これまでのあらすじ


 港町に辿りついた勇者一行


 船便の予約も無難にこなし

 羽のひとの子狸キャッチャーが閃いた

 一方その頃……


 鬼のひとたちの手で秘密裏に開発され

 ついに完成した子狸バスターが

 何者かによって強奪されてしまう

 

 邪悪なる意思を吹き込まれ

 港町を強襲する子狸バスター……


 果敢にも立ち向かう騎士たちであったが

 その圧倒的な魔☆力に

 なすすべなく倒れていく


 事態を重く見た銀河連合は

 青の戦士たちを派遣するも

 強大な闇の勢力に囚われ

 悪の手先と化してしまう


 希望は潰えてしまったのか?

 

 子供たちの呼び声に

 いま、おれたちの子狸さんが立ち上がる


 なんだか口では立派なことを言ってるけど

 お前、さてはお風呂が気になってぜんぜん話を聞いてなかっただろ……

 


一二二、火口付近在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 おい。だいぶ違うぞ


 最後はよしとしても



一二三、かまくら在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 途中からおかしくなった

 銀河連合ってなんだ


 でも最後は合ってる



一二四、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 エロ狸がぁ……



一二五、管理人だよ


 ふと思い出したんだが



一二六、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 おう。なんだ、どうした?


 思い出すのは良いことだぞ

 記憶力のトレーニングになる


 言ってみろよ



一二七、管理人だよ


 うむ……


 叔父貴のところの若い衆が

 旦那のチェンジリングは特殊だと


 あれはどういう?



一二八、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 お前はいったいどこへ向かってるんだ……?


 タマさんの側近な


 んー……なにか特殊だったか?

 近隣の河は一通り読み漁ったが

 とくに不審な点は見当たらなかったぞ


 海底の、わかる?



一二九、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 まあ、いちおう

 あれはたんにチェンジリングの対象が違うってだけ

 ふつう、騎士は逆算能力をチェンジリングするんだが

 タマさんの側近は盾魔法だっただろ?


 ああ、繰り返すようで申し訳ないけど……

 子狸よ。お前にチェンジリングは絶対に無理だ

 方向性が真逆だからな

 諦めろ



一三0、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 そもそもだ……

 お前にはおれがついてるんだから

 チェンジリングなんていらないだろ


 詠唱破棄のほうが遥かに使える



一三一、管理人だよ


 じゃあ、さっそくで悪いけど

 制限解除してたもれ



一三二、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 え?

 もしかして口車に乗せたつもりなの?


 

一三三、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 うちのパーティー、バランス悪いよな……


 港町から脱出するという言質を

 勇者さんからとったつもりでいる子狸は

 もうここには用がないと言わんばかりだ


子狸「おれ、もう行っていい?」


勇者「だめ。聞きなさい。……リン」


おれ「はい?」


勇者「あなたの結界は、都市級の魔物に通じるの?」


おれ「いえ……無理です。足止めにもならないかと……」


勇者「じっさいに試したことは?」


おれ「あります。そのときは騙し絵みたいにして方向感覚を狂わせたんですけど……。わたしたちの結界は、魔☆力とすごく相性が悪いんです(実話)」


勇者「そう。それなら……」


 おっと、ここから先は内緒だぜ



一三四、空中庭園在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 いいだろう


 千里眼の開放レベルは5だからな

 お互いフェアに行こうぜ


 まあ、もっとも……


 火口の! 山腹の!


 おれたちの勝ちは揺るがないがな……



一三五、火口付近在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 おう!


 おれ参上!


 おおう!?



一三六、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 おれ参……


 おふっ! おふっ!



一三七、かまくら在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 駐在の騎士たちが外敵排除へと向ける熱意は高い


 おそらく隊員のほとんどは

 故郷を守るために戦っているのだ


 子狸と違って

 ふつうの人間には得意な属性がある


 チェンジリング☆ハイパーの起点を一巡することで

 彼らは多方向から様々な属性の魔法を撃てる

 

 陣形は敵の行動に応じて変えるものだから

 完全に動きを止めた子狸バスターに対しては

 足を止めての、そして最速の撃ち合いになる


 集中砲火の真っ只中に飛び込んできた火口のと山腹のは

 たちまち蜂の巣になった


 ステルスしてるから

 騎士たちには見えないけどね


 おーい、こっちこっち



一三八、火口付近在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 あわわわわわ……!


 ふう……



一三九、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 ふう……



一四0、かまくら在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 左腕に火口のが、胴体に山腹のが避難


 みなぎる子狸バスター


 おれレボリューション!


 つーか狭い



一四一、火口付近在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 おれレボリューション!


 もちっと寄せて



一四二、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 おれレボリューション!


 おい。押すな



一四三、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 レボリューションとか……

 お前ら恥ずかしくないの?



一四四、火口付近在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 はじまったよ……


 やだもうこのひと……

 本当にドS……



一四五、かまくら在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 牛のひとといい、歩くひとといい……



一四六、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 レボリューションしてるところすまんが

 山腹の、勇者さんについてくれる?


 なんだか別行動とるみたいだから


 おれ、さっきから千里眼の使い通しで

 目が疲れてきた



一四七、火口付近在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 その目とやらはどこにあるのかと



一四八、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 内部分裂せよとおっしゃるか……


 喜んで


 勇者さんはおれがついてないとな……


 庭園の、火口の、以下略

 お前らとは長い付き合いになるが

 いずれはこうなるさだめだった……


 さらばだ!



一四九、空中庭園在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 山腹の~!



一五0、火口付近在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 山腹の~!



一五一、かまくら在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 なぜ略した


 んー……庭園の

 火花星、打ち上げておくか?



一五二、空中庭園在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 そうだな。そうしてくれ



一五三、火口付近在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中


 この日、王国の上空では大規模な火花星が観測された

 

 星座が燃え上がっているかのようだ


 かすかに斜陽を帯びた西日の中


 子狸バスターがマントを破り捨てる


 騎士たちの砲火に晒されつつも

 奇跡的に原型をとどめていたマントが

 ばさりと地面に落ちた


 レベル4の魔物は

 詠唱をスキップできるという絶大なアドバンテージを持つ


 だが、それすら氷山の一角に過ぎない


庭園「イズ……」


 左腕INおれに紫電が走る


騎士A「! 魔属っ……!」


騎士D「自分が!」


 騎士Dが無謀とも言える突撃を敢行した

 バスターに肉薄し、全身全霊の掌打を放つ


騎士D「レゴ!」


 追随してしまえば

 狙撃の射線がつぶれる

 他の騎士たちはフォローに徹するしかない


騎士A「ドロー!」


騎士B「ドロー!」


 大気中の水分が凍結し

 バスターの表面を氷が覆う


庭園「ロッド……」


 加速魔法が連結されるたびに

 氷の厚みが増していく


 一時的にでも詠唱を止めるのが狙いだ


 勇気は買う

 しかし近付けばレクエイム毒針・影の餌食だ

 おれたちに死角はない


庭園「ブラウド……」


騎士D「!? こいつ、中になにか……!」


 至近距離からまびさしの奥を垣間見た騎士Dが悲鳴を上げた

 急激な眠気に襲われ片ひざをつく

 加減したとはいえ、素晴らしい精神力だ


騎士D「ぐっ、う……!?」


庭園「ディグ……」


 騎士Dが悲鳴を上げたとき

 すでに騎士Aは駆け出していた


騎士A「グレイル!」


 最後に騎士たちを打ち崩したのは

 おそらく情だった


騎士D「隊、長っ……」


 騎士Aに続いて

 他の騎士たちも一斉に飛び出したからだ


 仲間を救うという

 ただそれだけの行動に

 術理は微笑まない


 チェンジリング☆ハイパーは瓦解した


 繰り出された騎士Aの手刀は

 皮肉にもバスターを覆う氷に遮られて届かなかった……


 こういうことをするから

 おれたちは嫌われるのである


庭園「メイガス」


 座標起点


 掛け値なしの開放レベル4だ


 

一五四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 一方その頃


子狸「でぃれい」


 こそっと盾魔法で全身をガードした子狸さんが


妖精「てめっ」


 念動力もなんのその


子狸「でぃれい」


 巣穴を飛び出した


子狸「でぃれいでぃれいでぃれい。ディレイ!」


妖精「リシアさんのアイディアをっ……悪用!?」


勇者「…………」



 注釈


・おれレボリューション


 おれ革命。

 青いひとたちの最終奥義。合体し、各部位の運動を各自で担当する離れ業。

 分身魔法で再現しようとしても確実に頭部争奪戦が起こるため、この最終奥義を実現できるのは青いひとたちしかいない。

 基本的には無意味……どころか弱体化する。

 だがそれがいい。



・発電魔法


 電気を生成し操る魔法。スペルは「イズ」。

 雷の属性は魔属性とも呼ばれ、人間が扱うことはできないとされる魔法のひとつ。

 落雷は嵐を呼ぶとされ、非常にイメージが悪かったためと推測される。あと静電気とか。

 魔物たちは自然を敬っているので、それでは申し訳ないと紫色にデコレーションして自然現象との区別化を図るが、より一層イメージが悪くなったという噂も……。



・座標起点


 魔法の起点を移動する魔法。スペルは「メイガス」。

 開放レベル4なので人間にはふつうに使用不可。

 回避不可能という性質のものではないが、魔物たちが人間を相手に使ったなら、まず必中と言っていいだろう的中率を誇る。

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