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「子狸がレベル2に挑むようです」part6

二四一、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 歌人率いる骨のひとたち九人に対し

 勇者さん率いる騎士たちは八人

 門番の四人と署内待機の四人、駐在の騎士を全員ひっぱってきてる


 数の上では、ほぼ互角だが……趨勢は決したな



二四二、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 うむ……


 騎士団の一個小隊だ

 霊界のひとたちに勝ち目はない……



二四三、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 そうだといいがな……


 骨のひと、頼む




二四四、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 おう


 このときを、待っていた……


 すまんな、歩くの



二四五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 子狸との決闘に敗れた骨のひとAが、死力を尽くして叫ぶ


骸骨A「小僧だッ……! あの小僧を……狙えッ……」


 怨嗟にまみれた言葉を最後に、力尽きる骨のひとA

 全身の骨格にひびが走り、たちまち崩れて灰になる

 積もった灰は、くしけずられるように、さらさらと微風に混じり見えなくなる……


 見事な、散りぎわだったぞ……



二四六、湖畔在住の今をときめくしかばねさん


 お前らというやつは……過保護が過ぎるぞ…… 


おれ「! カイルっ……!」



二四七、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 だれだよ!?


 え?

 おれのことなの?



二四八、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中


 素敵なお名前ですね(にこっ



二四九、墓地在住の今をときめく骸骨さん(主張中


 だまれ! このっ……!


 いや、お前よりはましか……

 怒鳴ってごめんな



二五0、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中


 ちょっ、それ余計に傷つく……!



二五一、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 羽のひと、子狸を回収してくれ


 お遊びは終わりだ

 魔王の腹心ルートに切り替える



二五二、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん

 

 やだよん



二五三、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おっと、手ひどく裏切られた気分だ



二五四、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 まあ、そういうことだな


 王都の、好きにしろとは言ったが

 おれたちの管理人は……

 子狸だ


 決めるのは、あいつだよ



二五五、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 さいわい、と言っていいのかどうか……

 あいつ、本物の治癒魔法を見たことないしな


 おれたちを当てにしすぎるということはないだろ



二五六、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 なにより、お前がついてる

 自信を持てよ、王都の

 お前ならやれる……否、お前にしかできないんだ……!



二五七、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 丸投げしてるだけじゃねーか!


 ちっ……だから嫌だったんだよ……


 おれの温泉旅行が……

 ライブのチケットまでとったのに……



二五八、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 なにをこっそりと計画してんの!?


 お遊びは終わりどころか、いままさにはじまろうとしてるじゃねーか!



二五九、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おれのバカンス計画がひとつ幕を閉じた、一方その頃……


 まあ、おれのいないライブは開幕するわけだが……


 ふらふらと危なっかしく空中をさまよっている羽のひとに

 骨のひとたちが一斉に照準を合わせる


骸骨B~J「チク・タク……」


 まるで、おれの希望を象徴しているかのような勇姿だ


 だが、騎士どもが小賢しくも先んじる


騎士A「パル!」B「グレイル!」C「ラルド!」D「ディグ!」


 くそがっ……なんなんだよ、そのふざけたチェンジリングは……


 幾条もの忌々しい光槍が放たれ、おれの夢ごと骨のひとBを粉砕する

 その光景を何かに例えるとしたなら、そう、まるで……

 おれにはたまの休暇も許されないかのようであった……


 座して待っても、待ち受けるのは年中無休という名の牢獄である

 骨のひとたちの半数が、おれの夢を乗せて矛先を騎士どもに変える


骸骨C~F「ディグ!」


骸骨G~J「っ……ディグ!」


騎士E「パル!」F「ディレイ!」G「エリア!」H「エラルド!」


 詠唱がかぶさって、なにを言ってんのか聞き取りづれーんだよ!


 わかるものにはわかるだろう

 これは、おれの夢と世界にはびこる悪意の代理戦争である


 だが、おれの夢は屈さない

 いつの日か、必ずや第二、第三のおれの夢が現れ

 おれを夢の楽園へと連れ去ってくれる…… 

 


二六0、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 お前の夢で、前が見えない


 ふざけたチェンジリングじゃなくて、チェンジリング☆ハイパーな


 人間め……わけのわからん技術を開発しやがって……

 胸が熱くなってきやがるぜ……!



二六一、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 骨のひとたちの圧縮弾は、あえなく騎士たちの光盾に弾かれる

 盾というより、もはや壁である


妖精「シールド!」


 速度を重視したのが裏目に出たな

 羽のひとへと撃ち放った圧縮弾もまた、妖精バリアに阻まれて散る


妖精「騎士さんたち、そのまま! 下級魔法なら、わたしでも防げます!」


 きれいな羽のひとが騎士たちに続投をうながす


 さすがに本職の軍人はものが違うな……

 さらに言うなら、連中はふつうにレベル3の魔法を使える

 骨のひとが手加減してるのもあるけど、まともにやっても勝てるかどうか……


 劣勢を見て取った歌人が、怒りの形相で叫ぶ


歌人「なにをしてる!? 人間だぞ!? たかが人間に、なにを押されてるんだッ!」


 じつに芸達者なひとである

 不意に悪い笑みを浮かべ、騎士たちに向かって声高らかに謳う


歌人「いいのか!? こんなところにいて! 今頃、貴様らの街は火の海だぞ!」


 片手を振り上げて骨のひとたちを制止した歌人に、騎士たちも動きを止める


騎士A「なんだと!?」


歌人「まんまと誘き出されてさ! ばかみたいだ!」


勇者「また嘘」


 しかし勇者さんの牙城は崩せない


勇者「あなたはとても演技が上手ね。黒衣の魔物というのは、あなた本人のことだったのかしら?」


歌人「……アレイシアンさん、ちょっと黙っててくれないかな?」


勇者「そうね、ひけらかすつもりはないわ。……いまさら言い逃れはできないでしょ。あなたたちは、わざわざ自分たちの存在を知らしめてまで、何かを待っていた。そして、わたしたちに近づいてきた。あなたたちが本気で街を陥とそうというのなら、最低でも街道が封鎖される前に手を打つべきだったわ。それも下策なのだけれど……」


 もしも自分なら、もっとうまくやったと言いたげである

 王国の未来が危ぶまれる……


勇者「それと、もうひとつ。……あなた、わたしに興味があるんじゃなかったの? わたしの言ったこと、ぜんぜん聞いてなかったのね」



二六二、湖畔在住の今をときめくしかばねさん


 おっかねー!

 この勇者、おっかねー!


 だめだ、おれの手には負えん……


 これ以上ぼろを出す前に、さっさと決着つけるわ……と思ったら


勇者「……なにを勝手に止まってるの? 二度は言わないわよ」


 勇者さんの怜悧な視線が騎士たちを射抜いた


騎士A「あ、はい」


 戦闘再開



二六三、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 勇者さんが歌人を論破している間に

 難なく危険領域を抜けた羽のひとが

 ぶらんぶらんしている子狸を、勇者さんの横に着陸させる


妖精「リシアさん! ノロくんを!」


 勇者さんの返事を待たず、急上昇する羽のひと

 騎士たちの真上を陣取り、骨のひとたちの指揮をとっている歌人を見つける


妖精「クリスさん! なんで……なんでですか! ノロくんは、あなたのこと信じてたのに!」


 きれいな羽のひとの弾劾に、一瞬だけ目を丸くしてから

 歌人は哄笑を上げる


歌人「なんで? なんでだって? おかしなことを言うね、君は。……見てわからないの? 一目瞭然だろう? ボクは、こっち側の存在だったってことだよ」


妖精「そんなことっ、ノロくんはとっくに気づいてましたよ! それなのに!」


歌人「……なんだって?」


 無論そんなことはありえない……と思うのだが……


 お前ら、どう思う?



二六四、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 じつは気づいてた……


 そうだったら、どんなにか素敵だろう……



二六五、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 うん、素敵だね……



二六六、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 うん、素敵だ……


 お前ら、すまない


 口からでまかせなんだ……



二六七、湖畔在住の今をときめくしかばねさん


 おい


 おい。まじでびびったし


 くそぅ……羽のひと、やるな……

 だが、おれを甘く見るなよ……


おれ「なにを言うかと思えば……。そんなこと……知ってたよ」


 さあ、どう出る……?



二六八、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 こいつ……!


 なるほど……いいだろう

 さしずめ、チキンレースといったところか

 その勝負、受けて立ってやる……!


おれ「!? 知っていたなら、どうして!」



二六九、湖畔在住の今をときめくしかばねさん


 ほう……

 あくまでも退く気はない、と


おれ「生きる世界が違うんだよ。……いまになって思えば、ノロくんは君たちを巻き込みたくなかったんだろうね。だから、自らおとり役を買って出たんだ」


お前「!」



二七0、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 っ……いまのは……効いたぜ

 

おれ「ノロくんは、そんなことひとことも……!」


お前「それはそうだろうさ。素直に言えば、君は彼を行かせたかい?」


おれ「……それは……」


お前「ボクはね。あるいは、それならそれでいいかと思ったんだ。君たちがノロくんを置いていくようなら、そのまま見過ごすつもりだった」


おれ「……なぜですか? あなたは……」


お前「彼と過ごした時間は、そう悪くなかったからね。ほんのお礼の気持ちさ……」



二七一、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 お前らが架空の子狸さんで遊んでいる一方その頃……


 騎士たちの快進撃は続く


 立ち止まらないことは戦場の鉄則だ

 敵味方が入り乱れる乱戦のさなか

 自在に陣形を組み替えることで対応する騎士たちに

 骨のひとたちは防御を固め、散開と突撃による小隊の分断を図る


骸骨E「バリエ!」


騎士F「ディレイ!」


 しかし集団から隔離され突出した骨のひとは

 騎士たちにとって、ていのいい的でしかない……


骸骨D「どけっ……!」


骸骨E「!?」


騎士C「レゴ!」B「グレイル!」A「ラルド!」D「ディグ!」


骸骨D「ぐふっ。ちっ、このおれとしたことが……。焼きが回ったな……」


骸骨E「ばっ、ばかやろう! どうしておれをかばった……!?」


骸骨D「知るかよ……身体が勝手に動いちまった……どうしてかな……そう悪くねえ気分だ……」

 

 骨のひとたちが一人、また一人と散っていく


 敗色濃厚を察した骨のひとたちは、ドラマ路線に変更したようである


騎士A「なにをしている! 手を休めるな!」


騎士C「し、しかし……」


 人として殲滅を逡巡する部下たちに

 勇者さんに見守られてる騎士Aが非情にも追撃を命じる


騎士A「まだわからんのか!? それは甘えだっ……! その甘さが、王都襲撃を招いた!」


騎士C「!」


騎士A「だれしもが薄々は勘付いているはずだ……魔王は約定を違えた! 和平の道は途絶えたのだ!」


 王都襲撃か……いまは何もかもが懐かしい……


騎士A「王都襲撃はきっかけでしかない。だが、長年くすぶっていた火種を、われわれは自覚してしまった! いま世界各地で燃えひろがりつつある激情は、もうだれにも止められん……!」



二七二、沼地在住の平穏に暮らしたいトカゲさん


 某所……


おれ「見ろ、威勢だけではないか。脆弱、非力……そんな調子では、とてもとても……」


騎士「ひるむなっ! 撃て! 討てッ! この世界に……魔物の居場所などないッ!」


 親狸ぃ……



二七三、迷宮在住の平穏に暮らしたい牛さん


 さらに某所……


おれ「ちっ、また騎士どもか。あとからあとから、うじ虫みたいにわいて出やがる……」


騎士「? 君は、こんなところでなにを……? お嬢さん、ここは危ない。地上まで送ろう。さ、こっちへ来なさい」


おれ「はあ? お前ら、おれを倒しに来たんじゃねーのか?」


騎士「! まさか、君が……!?」


おれ「まさかじゃねーよ! つの生えてんだろ、つの! しっぽも!」


 親狸ぃ……



二七四、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 そして場面は戻る……


騎士A「“時代”だっ! 人類史上かつてない未曾有の大戦が幕を開けようとしている! 怒りと憎しみ……! どちらかが滅びるまで終わることのない……戦歌と終の時代が訪れるのだ!」


 親狸ぃ……



二七五、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 親狸ぃ……



二七六、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 親狸ぃ……



二七四、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 演説を終えた騎士Aが、時代の波に後押しされたかのように突撃する


騎士A「ゴル!」


 両手に現れた火炎が、大気を焦がし燃え盛る

 レベル3で一挙に殲滅するつもりだ


 子狸がそうであるように、訓練で心身へと刻み込まれた躍動に

 騎士たちは従うより他ない


騎士C「っ……タク!」


 迷いはあるのだろう。それでも……


歌人「させるかッ!」


 ほとんど水平に地を蹴って加速する歌人の脚力は

 あまりにも人間離れしている


 同じ姿をしていても、手を差し伸べるには遠すぎて……

 

騎士F「ロッド!」狸「魔どんぐり」B「そうそう、甘くて煮るとおいしい……って、こら!」


 子狸さんが巣穴を飛び出したようです



二七五、湖畔在住の今をときめくしかばねさん


 おれが間違ってた

 けっきょくのところ……そういうことなのか


 避けては通れないんだな

 子狸ぃ……



二七六、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 子狸の近年まれに見る頭脳プレーにより、失敗に終わるチェンジリング☆ハイパー 

 あんなひとことでつぶせるほど騎士の技は甘くないが……言わぬが華か


歌人「っ!」


 目を見張った歌人が、急停止して飛び退く


歌人「ノロくん……」


子狸「クリスくん……」


 床に突っ伏したままの子狸が、おっくうそうに顔を上げた

 二人の目が合う


子狸「おれ、これだけは……言っておかなくちゃと思って……」


 勇者さんに頬を引っ張られつつも、子狸は懸命に笑った


子狸「その服、似合ってる」


 それだけ言うと、子狸は満足そうに巣穴へと戻っていった…… 

 ふたたび眠りに落ちる


 さらば子狸

 寝る子は育つ


歌人「ちっ……!」


 そのとき、歌人に異変が……



二七七、湖畔在住の今をときめくしかばねさん


 いかん……

 なんか、うるっときた


 やばい

 おれ、涙腺が決壊しそう



二七八、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 お前、そういうとこあるよな……


 いいから、こっち来い。とんずらするぞ



二七九、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 目頭に熱いものがこみ上げてきた歌人が、虚勢を張る


歌人「……やめだ! ひきあげるぞ!」


騎士A「逃がすと思うのか?」


 背後から声を掛けてきた騎士Aに、歌人はあでやかに笑う


歌人「思うよ。あなたたちは、アレイシアンさんの命令には逆らえない」


勇者「わたしは、掃討を命じたわ」


歌人「だったら、気が変わったんだね。……わかるだろ? 君は、賢いひとだ。ボクが本気になれば、騎士の一人や二人は道連れにできる……」


勇者「そうね。だから?」


歌人「わかってるくせに。ボクらは、捨て駒だよ。これ以上、つきあう義理はない」


 すると、勇者さんは悩むような素振りを見せる


勇者「……そう。そうかもしれない」


 子猫よろしく子狸の襟首を掴んで持ち上げようとするが、持ち上がらない

 非力だ。勇者さんは、なかったことにした


勇者「お友達なんでしょ? 置いていっていいの?」


 ちょっと~……絶対にバレてるって、これ…… 


 だが、歌人の笑顔に陰りはない


歌人「今度は、本当に……少し、君に興味が出てきたよ」


勇者「行きなさい」


歌人「ボクらが行ったあと、ゲートに宝剣を突き立ててみるといい。それで、ゲートは閉じるよ。じゃあね」


勇者「さよなら」


 軽く片手を振る歌人に、勇者さんは言葉だけで答えた


 苦笑らしきものを漏らしてきびすを返した歌人を、騎士たちは黙って見送る


 上空で滞空している羽のひとの真下を、歌人が通り過ぎる


妖精「クリスさん……」


歌人「ばいばい。……ごめんね。ノロくんには、うまく言っといてよ」


 生き残った骨のひとたちを従えて、歌人はゲートに沈んでいく

 最後まで、彼女は振り返らなかった



二八0、湖畔在住の今をときめくしかばねさん


 こうして、僕らの戦いは終わった……


 この戦いで、僕らは何を得て、そして何を失ったんだろう……



二八一、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 というか、おれのこん棒を返してくれないか



 注釈


・チェンジリング☆ハイパー


 騎士たちの基本にして奥義とも言える、高速詠唱技術。

 原理的にはチェンジリングと同じで、先の発言を詠唱に当てはめるものだが、これを騎士たちはを多人数で行い、高速で魔法を連結する。

 詠唱とイメージを同一の規格で統一しなければならないため、汎用性は著しく損なわれるものの、魔法の撃ち合いにおいて圧倒的な速射性と火力を同時に実現できる。

 純然たる戦闘技術であり、実生活に役立つことはいっさいない。それゆえ、チェンジリング☆ハイパーを修めた騎士たちはたまの休日を家でごろごろして過ごす。

 なお、騎士たちはこの技術を「戦歌」と呼ぶ。かぶさる詠唱を和音に例えたものだが、正式名称は飽くまでもハイパーである。

 通常のチェンジリングと区別するためにハイパー化したわけだが、「ハイパーとか……ねーよ……」と当の騎士たちには大不評だった。

 それなのに、どういうわけか数年周期で「いや、一周してむしろアリかもしれない」という勢力が現れる。

 ハイパーをめぐり、やがて騎士団を二分するほどの大論争が巻き起こったため、騎士団の軍規には「ハイパー禁止」という項目がある。

 しかし、このことが、のちの騎士団にさらなる混迷をもたらすこととなる……。

 光(聖)、闇(影)、火、水、氷(凍結)、雷(魔)、土(豊穣)に続く、第八の属性「ハイパー属性」の誕生と、ハイパーに魂を売り渡した「外法騎士」の登場である……。

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