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しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
あれ、なんか身体の調子がいい……by村人
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「おれ魔物だけどたまには善行してみる」part3

八五、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 貴族……

 剣術使いか?


 ん……

 まあまあだな


 速さはそこそこ



八六、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 貴族がお供もつけずに一人で魔物退治か?

 無理がある

 たぶん騎士だろ

 魔法剣士とかいうのじゃ?


 でも

 魔法を使ってくる様子はないな



八七、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 昔ならともかく

 魔法剣士の線はないだろ

 退魔性が低くなるから意味がないって

 けっこう前から言われてる


 大人しく魔法使っとけっていう話



八八、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 そうだな


 いまのご時世

 魔法に頼らず生活できる人間なんて限られてくる


 通りすがりの貴族ってところか



八九、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 とりあえず

 山腹の


お前「愚かな人間め……」


 これだけは譲れない


 おれは

 そのひとことを言うために

 海の底でずっと待ってる



九0、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 同意


 たとえ

 お前ら全員を敵に回したとしても


 おれはご近所さんを支持する



九一、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 わかった

 ここはお前らの顔を立てる


 言ったぞ


 とりあえず膠着状態になった


 村人を解放するよう要求されてる


 いま気付いたんだけど


 なんか

 おれが悪いことしてる前提で

 話を進められてる



九二、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 なんと


 青いひとたちの真心をなんだと思っているのか


 まあ

 自業自得なんですけどね……



九三、王都在住のとるにたらない不定形生物さん


 違いない


 二年前に王都を襲撃してるからね

 おれら……



九四、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 あの夜が忘れられないの……


 おっと

 話を進めるぜ


少女「命乞いするなら見逃したげる」


 なんという上から目線……


 見ろよ

 あの目

 おい

 ゴミを見るような目だぜ



九五、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 なんたる……

 親の顔が見てみたい


 ここは言い返すべきだろ


お前「どうやら命がいらないと見えるな……」



九六、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おれ☆超強気


 レベル1なのに☆


 ここらでばっさりやられとくべき?


 健闘しすぎたかも

 なんか怪しまれてる


少女「……なにしに来たの? 目的は? 言いなさい」



九七、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 なにしに来たのか……だと?


 ばか

 言えるかよ……(照


 目的も何も……

 たんに家から近かったからだしな


 何か適当にでっち上げるか



九八、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 おう

 いつものパターンだな


 そうだな……

 村長の家に秘宝とかねーの?



九九、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 あったらびびります……


 あ、そうか

 なんでもいいのか


 壺とか見繕って魔法で誤魔化しとくわ



少女「どこ行くの」



 呼び止められました……



一00、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 なんか地中に埋まってることにしたら?


 でも壺はやめとけ

 シュールにも程がある


 その子さ

 剣士なんだろ?


 だったら

 魔剣とかでいいじゃん


 封印が解けて現れた魔剣が

 その子をあるじと認めて

 お前がばっさりやられる


 これでどう?


 お前ら

 修正案あったら頼む



一0一、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 うん

 大筋はいいな


 ただ……

 その魔☆剣の役は誰がやるの?


 意思があるっていう設定なら

 魔法でぱぱっとやるわけにはいかんだろ


 最初に言っとくけど

 おれは嫌だぜ


 おれが陸に上がるときは

 海のひとと一緒だ



一0二、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 おれも同じ気持ちだ


 ここまで来たら

 二千年だろうと三千年だろうと待ち続けるよ



一0三、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 お前らの気持ちはわかった


 それなら

 魔☆剣そのものが意思を持つんじゃなくて


 なんか神々しい使い捨てのキャラクターを登場させて

 魔☆剣を授けるっていう感じでどう?



一0四、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 それいいな


 山腹の

 近くに木切れとか落ちてない?

 木切れじゃなくても

 棒状なら文句は言わない

 言わせない


 あったら

 そいつを加工して魔☆剣に仕立て上げよう


 いや


 聖☆剣だな



一0五、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 聖☆剣とか

 熱い展開になってきたな


 あ

 大好物です……



一0六、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 木切れってさ……


 案外

 落ちてないもんだな



一0七、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 終わった……



一0八、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 ああ

 終わったな……



一0九、王都在住のとるにたらない不定形生物さん


 !


 いや

 諦めるのは

 まだ早い!


 その子に聖☆剣を出せるようになってもらえばいい


 つまり魔法だ


 こう

 手から光が伸びてだな……



一一0、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 秘められた


 潜在能力が


 いま解き放たれる!


 いや

 だめだろ


 本人の資質が目覚めるパターンだと

 山腹のが村にいる理由がない



一一一、王都在住のとるにたらない不定形生物さん


 おう


 だから

 本人には神々しい何かから授けられた

 ありがたい道具っていう認識でいてもらう


 人間は

 無詠唱で魔法を使えないからな

 いけるだろ



一一二、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 え


 いいのか?


 詠唱破棄って

 レベル4以上だぞ


 人間が使える魔法って

 レベル3が限度じゃなかった?



一一三、王都在住のとるにたらない不定形生物さん


 それを言うなら

 バウマフ家はどうなる


 おれたちが申請すれば

 あの子狸ですら

 レベル9を使えると思うぞ


 あ、無理かな……

 お屋形さまと比べるのは

 ちょっと酷か……


 とにかく

 レベル4程度は余裕

 むしろ

 なんで使えないの?

 っていうレベル



一一四、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 言われてみればそうだな

 なんの問題もない気がしてきた


 というか

 たぶん過去に何度かやってる

 おれたちが知らないだけで


 なにしろ

 歴代の勇者とか

 確実に人類の限界突破してるのが何人かいる



一一五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん


 だろ


 さて

 神々しい何かはどうするか……

 光の精霊ってことでいいか


 映像は……

 引っ張ってくるの面倒くさいから


 子狸を女装させて

 むしろ女体化させて

 現地に連れてく


 寝てるけど

 目とか閉じてたほうが

 雰囲気あるだろ


 万が一のことを考えて

 お前ら

 演出と音声を頼むわ


 顔とか

 ぼやけさせといてくれ



一一六、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 わかった

 おれがやるわ

 光の柱でも立てとく


 それにしても

 子狸は便利だな……



一一七、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 お前ら……


 感謝する!


 くれぐれも

 ステルスは

 しっかりとな


 あ

 最終確認だけど


 おれは光の精霊(子狸)の気配(?)を察知して

 人里におりてきてるっていう設定でいいの?


 おれたち

 そういう生態してたっけ?



一一八、王都在住のとるにたらない不定形生物さん


 うん……

 ちょっと無理があるな


 誰かに命令された

 みたいなことを匂わせておいてくれ


 それでは

 各自健闘を祈る


 作戦開始



一一九、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


おれ「貴様に構っているひまはない」と言い放ちます


 さらに


おれ「あの方に例のものを捧げねば……」と意味ありげに呟きます


少女「だれ?」


 ストレートに訊かれました


 知りません


 というか

 存在しません


 おれは無言を貫きます



一二0、王都在住のとるにたらない不定形生物さん


 ステルス状態に移行します


 熟睡してる子狸に忍び寄って

 変化の魔法をかけます


 服にも変化の魔法をかけます


 念動の魔法で子狸を空中に固定します


 念のために睡眠の魔法を重ねがけします


 光の精霊

 射出準備完了しました


 ついでに

 完成した子狸の画像を河に流します



一二一、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 ママン



一二二、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 ママン



一二三、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 ママン



一二四、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 画像に目を奪われつつ

 ステルス状態に移行します


 転移の魔法で

 夜闇を切り裂き

 おれ参上します


 少女に忍び寄り

 発光の魔法で

 近場に光の柱を屹立します


 その片手間に

 念話の魔法で

 少女にダイレクト通信を試みます


おれ「わたしの眠りを妨げるのはだれ……?」


少女「…………」


 お前らに報告します


 緊急事態発生


 無視されました



一二五、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 お前らに報告します


 おれ

 凝視されてます


 気まずいので

 視線をそらして

 光の柱を見詰めます


 間が保たないので


おれ「まさか……目覚めたのか? 早すぎる……」とサービス精神を発揮します



一二六、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 おれは

 お前らの奮闘を

 優しい眼差しで見守ります



一二七、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 おれは

 お前らの奮闘を

 祈るような気持ちで見守ります



一二八、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 おれは


 構わん

 推し進めろ


 と助言します



一二九、王都在住のとるにたらない不定形生物さん


 助言に従い

 推し進めます


 子狸を連れて

 転移の魔法で

 おれ参上します


 間近で見る光量に

 内心で冷や汗を浮かべつつ

 子狸を光の中に放り込みます

 

 水死体みたいに

 ぐったりした子狸を

 念動の魔法で再度固定します



一三0、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 助言に従い

 推し進めます


おれ「悪しきものの手に渡してはならない……」


少女「…………」


 冷たく一瞥されましたが

 めげずに推し進めます


おれ「あなたに託します。魔を滅する聖剣をここに……」


少女「役に立つの?」


 食いついてきました


 現金な人間めと胸中で罵りつつ


おれ「悪しきものの手に渡してはならない。どうか……」


 無視された仕返しに

 おれも無視して邁進します



一三一、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 タイミングを合わせて

 念動の魔法で

 子狸の腕を持ち上げます


 発光の魔法で

 子狸の手から少女の手へ

 光の粒子が放たれ吸い込まれる効果を

 演出します


 少女の魔法回路を

 限定的に開放しつつ

 子狸を連れて巣穴に戻ります


 初回限定につき

 今回に限り聖☆剣を自動発動しておきました


 聖☆剣の詳細を記載しておきます


 詠唱破棄

 標的指定

 形状操作


 レベル4です

 本当にありがとうございました



一三二、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 少女の聖☆剣が

 無事に発動したことを見届けて

 発光の魔法を解除します


 上空に溶けて消える演出も欠かしません


 光の粉雪も降らせておきます


 本当にありがとうございました



一三三、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 一部始終を見届けてから

 おれは

 ここぞとばかりに

 少女に迫ります


おれ「ばかめ! 手間が省けたわ!」


 ふと村人をとりこんだままになっているのを思い出しました


 お前らの期待を裏切らないよう

 村人たちを触手で絡めとって

 盾にします


おれ「人間ごときに精霊の宝剣を扱えるものか! やれるか!? このおれを!」


 さりげなく精霊の存在をアピールしつつ

 聖☆剣の初心者道場を開催します


少女「うるさい!」


 理不尽に叱られました


 怒りに任せた一撃でしたが

 村人は無事です


おれ「ばかな……!」と一刀両断されます


 触手で傷口をおさえると見せかけて

 村人たちを優しく地面におろします


おれ「このおれが……人間ごときに……」


 過剰リアクション気味に

 のたうち回ってから

 断末魔の叫びを上げて


 転移の魔法で

 家に帰ります


 作戦終了!


 お前ら

 ありがとう!


 おつかれ!



一三四、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 おつかれ!


 感動した!



一三五、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 おつかれ!


 ちょっと焦ったぜ!



一三六、火山在住のごく平凡な火トカゲさん


 おつかれ!


 良い……

 やられっぷりだったぜ……



一三七、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん


 おつかれ!


 おれらは

 人間に負けれる設定じゃないからな……



一三八、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 おつかれ!


 たしかに

 無視されたときは

 正直びびったな



一三九、空中庭園のとるにたらない不定形生物さん


 おつかれ!


 目の前のことで

 頭がいっぱいだったんだろうな


 王都の

 あの子の魔法

 封印しとくか?


 手伝うぜ



一四0、王都在住のとるにたらない不定形生物さん


 おつかれ!


 いや

 放っておくよ


 おれに考えがある


 まあ

 面倒くさいだけなんですけどね……


 悪用はされないだろ

 たぶん



一四一、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 おつかれ!


 まあ

 人間には過ぎた力だと思うが……


 おれたちには

 影響ないな



一四二、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 おつかれ!


 そうだな

 レベル4の魔法で

 スターズに対抗するのは

 絶対に無理だ



一四三、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 お前ら

 本当に

 ありがとうな!


 また機会があったら

 そのときはよろしく!



 注釈


・剣術


 魔法が発達したこの世界では、特別な意味を持つ。

 剣術は魔物に対して非常に有効とされるが、対人戦においては魔法の優位性が目立つ。

 剣術使い(剣士)は魔法を使わないことが望ましいとされ、日常生活すら困難になるため、一部の貴族が門外不出の秘伝として扱っている。



・騎士


 おもに軍属の魔法使いを指して言う。

 この世界における人間同士の戦争は、馬上から魔法を撃ち合う、中~遠距離戦が主軸となっている。

 魔法への抵抗力が総じて高い剣術使いは、単体の戦力として魔法使いに劣るわけではないが、運用上の問題が多々ある。

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