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しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
これは見事なスウィートルーム……by子狸
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「子狸さんが容疑者として追われてる」part1

一、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


騎士A「いたか?」


騎士B「いや。逃げ足の早い小僧だ……」


騎士C「いたぞ! こっちだ!」


 慌ただしく駆けていく騎士たち


 一方

 彼らの動向を裏路地から見つめる

 怪しい人影……


子狸「…………」


 お前ら

 突然ですまないが


 子狸さんが


 容疑者として


 追われてる



二、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 どうしてこうなった……



三、樹海在住の今のときめく亡霊さん(出張中


 管理人さんは

 いつだってそうだ


 いつもそうやって

 おれたちの予定を

 いとも簡単に狂わせる……



四、管理人だよ


 国家の陰謀に違いない……



五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 ねーよ


 ちなみに

 勇者さんと歌の人は

 何の問題もなく審査を通った


 今頃は今日の宿でも探してることだろう


 羽のひとは

 子狸に鷲掴みにされて運命をともにしている


子狸「あぶないところだったね……。でも、もう大丈夫だよ」


 励まそうとして微笑む子狸に

 羽のひとがひとこと


妖精「解せぬ」



六、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 子狸に二点ほど尋ねたい


 なぜ、おれを巻き込んだ


 そして

 なぜおれの危機を間一髪で救った

 みたいな感じなのか


 そもそも

 おれは門番の騎士と

 ちょろっと世間話をしてただけだぞ



七、管理人だよ


 あのひとたちは、いつもそうだよ


 そうやっておれに近付いてきては

 さしたる理由もなく署まで連行するんだ


 でも、いままでのおれとは違うんだよ……


 だいじょうぶ

 羽のひとは心配しなくていい


 おれが守るし!



八、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 暴走してやがる……



九、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 こうなると聞く耳、持たねーからなぁ……



一0、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 まあ

 じっさい王都の騎士は子狸を見かけたら

 とりあえずつかまえとけっていう

 妙な習慣があるからな……


 条件反射みたいなもんだ



一一、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 騎士Cです


 とりあえず

 連中は眠らせておいたぞ


 これで全部か?



一二、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おう

 おつかれ


 しかし目撃者が多すぎるな……


 一人ずつフォローなんてしてられん


 条件を指定して該当者の記憶をまとめて飛ばすぞ



一三、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 そうしてくれ


 例によって例のごとく

 子狸の印象を薄めるだけでいい



一四、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 だが、勇者さんも条件にヒットするぞ


 出力を上げればレジストは突破できるとしても

 記憶の整合性は怪しくなる


 そうなれば

 おれたちの干渉に気がつくかもしれん



一五、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 そうだな


 念のために勇者さんは対象から外しておく


 まわりの人間と話は合わなくなるだろうが


 彼女の性格からして世間話に興じるとも思えん


 あの社交性のなさは勇者さんの弱点だな

 利用できる



一六、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 お前らの

 その手慣れた対処っぷりが

 見ていて悲しくなる……



一七、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中


 子狸さん

 見てる?


 解決したみたいですけど……



一八、管理人だよ


 いや

 本当の狙いは勇者さんかもしれない……!


 急がなくては



一九、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 謎の勢力と戦いはじめちゃった……



二0、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 好きにするといいよ、もう


 必要ならおれたちが出張るし


 とりあえず

 羽のひと、がんばってね



二一、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 え~……


 まあ、べつにいいですけどぉ


 どうせ行くあてもなく街をうろついて

 迷子になるのがオチだろ……


 お前らも余計なこと教えるなよ?

 勇者さんの居場所とか



二二、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 先に謝っておくわ


 ごめんな


 普段はあれだけど

 こいつ

 魔法に関しては引き出しが多いんだ……


 その場でしゃがみ込んだ子狸が

 指先で地面に触れる


子狸「アルダ・グノー!」


 指先から放射された闇の波動が

 地表を這うように波打って拡散する


子狸「! お嬢、いま行く……!」


 いらんところで、いらん知恵を発揮するなぁ……


 羽のひとを肩に乗せて

 駆け出す子狸



二三、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 勇者さんの退魔性を逆手にとって

 所在地をあぶり出したのか……?


 小賢しい真似を……



二四、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おれたちとの鬼ごっこの成果だな……


 嬉しいやら悲しいやら



二五、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 どうでもいいけど

 魔法の使い方が完全に悪の手先なんだよな……


 こいつ

 発光魔法が得意とか前に言ってなかった?



二六、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 闇魔法は実質的に光魔法と同じものだからな……


 そういう考え方が

 いまの人間にはないから

 教官が誉めたんだよ

 他に誉めるところなかったし


 そのときの思い出を

 子狸さんは大切にしています……



二七、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 健気なやつだ……


 ちょっとは優しくしてやるか


おれ「おい。彼女は宿屋か?」


子狸「将来のことまではわからない……」


 どうする


 意思の疎通が困難だ……


 あ、わかった


おれ「職業じゃねーよ。いま宿屋にいるのかって訊いてんだ」


子狸「ああ、なんだ。でも、わからないよ。地面から離れてるみたいだ」


おれ「一階にはいないってことか。じゃあ宿屋だな。よし、それなら、おれが先行して宿屋のあるじに話をつけてやる」


子狸「……そうか。宿屋のひとも怪しいんだね?」


おれ「怪しいのはお前の思想だ。とにかく、余計な真似はするな。わかったか?」


子狸「そんなのだめだよ! おれも戦う……!」


おれ「何と!? もういい。黙っておれの言うことに従え!」


子狸「あ、はい」


 おれの真心が

 子狸に伝わった

 感動的な瞬間であるっ



二八、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 そうだね

 感動的な瞬間だね



二九、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 そうだね

 感動的な瞬間だね



 注釈


・闇魔法


 基本的に「アルダ(遮光)」の詠唱からはじまる魔法。

「闇」とは「光がない」ことなので、実質的には光を操作する魔法の一種なのだが、そうした理屈を知らなくともイメージで何とかなってしまうのが魔法である。

 良い機会なので細かく説明すると、魔法の詠唱にはひとつひとつに意味があり、イメージさえしっかりしていれば、魔法としてきちんと発動する。

 たとえば以前に青いひとが使用した闇魔法は、「アルダ(遮光)」「バリエ(融解)」「ラルド(拡大)」「アバドン(崩落)」「グノ(放射)」という五つの魔法を連結したもの。

 魔法使い同士の連携の問題があるため、学校では定型の詠唱を用いるよう教育するのだが、本来ならば詠唱に「こうしなければならない」という決まりはない。

 詠唱が違っていても、イメージが同一であるなら同じ現象を引き起こせるということだ。

 なお、国によって公用言語は異なるものの、詠唱に関しては統一されている。

 なぜなら、現在の詠唱を人間に伝えたのは魔物だからである。

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