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しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
わざわざすまないね。ひまなようで何よりだ……by宰相
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「おれたち絶賛放置プレイ中の件に関して」part3

八七、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 さいきん

 吟遊詩人

 増えてる?


 なんか、あちこちの河で見かけるわ



八八、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 言われてみれば

 そんな気もするな


 お屋形さまみたいに

 都で暮らそうとする若者が増えてるのかも



八九、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 いや、なんていうか


 千年祭で

 いろいろとありましたからね……


 人間たちも

 いろいろと思うところがあったのではないかと……



九0、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 うん

 まあ……


 共和国崩壊の影響が顕在化した面もあるんだろう


 何かと不安定な時期なんです……



九一、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 共和国の崩壊により

 ひとつの時代が終わりを告げた


 新時代の幕開けだ


 世はまさにフロンティア


 のちの大冒険時代である!


子狸「おぅ……」


 吟遊詩人が手にしている

 簡易食のクラッカーを

 子狸が物欲しそうに見つめている……


 世はまさにフロンティア



九ニ、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 なんたるフロンティア精神……



九三、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 知らない人からものをもらってはいけないと

 あれほど言ったのに……



九四、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 初対面……だよな?


 タマさんの例もある



九五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おう

 今度は間違いないぞ


 なんというか……

 線の細い子だな


 勇者さんよりも

 ひとつかふたつ

 年かさに見える


 元々は一人旅なのかな?

 商団とは、たまたま行き先が一緒だったから同行してた感じだな


歌人「……欲しいのかい?」


 子狸は、歌人の真意を探るように目を見つめてから


子狸「うむ……」


 重々しく頷いた


勇者「お昼ごはん抜きって言ったわ」


 勇者さんの機嫌がどんどん悪くなる

 ついで歌人を睨む


勇者「あなたも。わたしに無断で餌付けしないでくれる?」


 子狸を餌付けするためには

 勇者さんの許可がいるらしい


 まあ、何を隠そう小遣い制だしね



九六、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 南国の王さまはたしかに頂いたぜ



九七、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 南国の王さまだと!?


 ちょっと

 あとでひとくち

 くれ



九八、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中


 食うのかよ


 よせよせ

 シュールにも程がある



九九、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 残念

 これは綺麗にラッピングして宰相に贈るんだ


 うちのポンポコ一家がいつもお世話になってるからな

 おれたちより感謝を込めて……と



一00、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 おお。贈るときは言えよ


 お前、家の近くから離れられないだろ?


 贈り物だけ転送するのも味気ないし

 おれが背筋も凍るような夏と一緒に送り届けてやるよ



一0一、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中


 おう

 おれも協力するぜ


 こう見えて

 ポルターガイストとかわりと得意なんだ



一0ニ、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 ありがとう、お前ら


 宰相も、きっと喜んでくれると思う


 リアクションしたら負け

 みたいな感じで企画を組もう



一0三、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 おう

 ある意味、王都襲撃のリベンジだな


 スターズが直上会戦してても

 あの人びくともしてなかったからなぁ……



一0四、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 宰相のスルースキルは驚嘆に値するぜ



一0五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 まあ、いいんじゃないか?

 たまには息抜きもさせてやらないとな


 勇者さんに詫びる歌の人


歌人「ああ、これは申し遅れました。ボクはクリス・マッコールと言います」


勇者「誰も名乗れなんて言ってないわ。……アレイシアンよ」


 でも名乗る勇者さん


 称号名と家名は伏せたのは警戒心の表れだろう


 羽のひとに至ってはひとことも喋らず

 子狸の肩の上で

 胡散くさそうに見つめるだけである


 このパーティー

 セキュリティ高ぇなぁ……


 だが、お前らも知っての通り

 我らが勇者一行には致命的な穴があります


子狸「歌、うまいね。吟遊詩人ってみんなそうなの? あ、おれ、ノロ・バウマフ。趣味は読書です」


勇者「嘘おっしゃい」


 言下に否定される子狸


 ちなみに国語の成績は

 ある種、惨劇の領域に達している


 与しやすいと見てか

 子狸を標的に定める歌の人


歌人「ありがとう。ええと、バウマフくん」


子狸「ノロでいいよ」


 じっさいに与しやすいのである


歌人「わかった。ボクもクリスでいいよ」


 ちらりと肩の上に目をやる


歌人「君は? 妖精……だよね?」


 羽のひとも仕方なく答える


妖精「リンカー・ベルです。コイツの友達というか……まあ」


子狸「友達だよね」


妖精「品格が疑われるので、そういうのはちょっと……」


子狸「そっか。たしかに、ちょっと照れるね」


妖精「意味がわからないなら、わからないって言えや」


 品格

 ひととしての価値。格。教養など



一0六、管理人だよ


 そのくらい

 知ってます


 あと国語はけっこう得意です

 表現がうまくできないだけ



一0七、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 知ってて

 なおその会話なら

 一層ひどいだろ



一0八、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 数学とかと違って国語は

 とりあえず解答欄を埋めることはできるからな


 勇者さんの手前

 あれこれ訊くのも悪いと思ったのか

 歌の人が単刀直入に言う


歌人「もしよければ、しばらく同行させてくれないかな? 商人さんたちから話を聞いたんだけど、この先の街で封鎖がかかってるらしくて、少し退屈になりそうなんだ」


勇者「封鎖? 何かあったの?」


歌人「街道で魔物が出たらしいよ。しかも下位とはいえ中級らしくてね。騎士団には要請を飛ばしたそうなんだけど、到着はいつになるか……」


勇者「……妙ね。戦隊級ならまだしも……。まあ、わたしには関係ないわね」


歌人「それで、どうかな?」


勇者「好きになさい。街道が封鎖されているなら、どのみち街で一緒になるでしょ。わたしがとやかく言うことじゃないわ」


 しかし子狸には懸念がひとつ……


子狸「じゃあ、おれは歩いて行くね。お嬢、女の子同士だし、仲良くしなくちゃだめだよ?」


勇者「なんでそうなるの。しかも上から目線……。クリスだったかしら? あなた、馬は?」


歌人「大丈夫、連れてきてるよ。……それと、ノロくん。よく間違われるけど、ボクは男だよ。ほら、ちゃんと男物の服を着てるだろ?」


子狸「ホントだ。美少年というやつか。仲良くできるだろうか……」


 納得するのか……

 まあ、べつにいいけど


 ときに霊界のひとたち


 封鎖というのは

 お前らの仕業だな?



一0九、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 おう

 そういうことだ


 いや、じっさいスケジュールがやばいんだよ


 レベル3のひとたちが忙しすぎて

 今後の見通しがまったく立ってない


 ここでおれたちが時間を稼ぐ手筈になってる



一一0、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 なるほど

 すまないな

 苦労をかける


 そういえば

 鬼のひとたちを見かけないな


 例の中ボスの件か?



一一一、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 おう

 ラストダンジョンを景気良く掘削してるぞ


 いまは空のひとが現場監督してる



一一ニ、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中


 ふっ

 噂に聞く黒騎士か


 出番があるといいがな……


 子狸は

 おれたちが仕留める



一一三、管理人だよ


 なぜ

 お前らは

 真っ先におれを仕留めようとするのか……



 注釈


・戦隊級


 人間たちの基準における「都市級の魔物」がレベル4にあたることはすでに述べた通りである。

 ここで言う「戦隊級」というのは、騎士団を動員して辛うじて対抗できるクラスの魔物を意味し、これはレベル3~4の魔物に相当する。

 魔物の強さはけっこういい加減な部分があるため、魔物側と人間側の分類法は必ずしも一致しているわけではない。

 人間たちが用いる魔物の分類は、大別して四つ。

「騎士級」「戦隊級」「都市級」「王種」。

 そして「王種」を除く三つの級は、さらに「上位」と「下位」に細かく別れる。

 たとえば「下位騎士級」なら「レベル1」、「上位騎士級」なら「レベル2」の魔物におおよそ当てはまるが、たまに出没する絶好調の魔物は、この分類の枠をはみ出ることが多い。

 キングサイズだったりもするし。

「下位の中級」という言葉も出たが、これは民間で使われる簡単な分類。「中級」で、だいたいレベル2~3くらいを指し示す。

 なお、王種の魔物に上位、下位の区別がないのは、どのみち人間の手には負えない存在だからである。

 そう、すなわちファイブスターズのことだ。

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[良い点] 設定に設定を盛れば押し通せるという気概を感じる [一言] 好き
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