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しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
わざわざすまないね。ひまなようで何よりだ……by宰相
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「おれたち絶賛放置プレイ中の件に関して」part2

五三、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 では、ここでいったん状況を整理しよう


 いまは、最初の街から次の街に向かって移動している途中


 いい時間になったということで

 街道わきの少し開けたスペースで

 一行はランチタイムに突入


 子狸が魔どんぐりを採取してきた森を

 背にしている格好だ


 おれたちの襲撃を警戒してか

 見晴らしのいい拠点とは言い難いが

 不思議なもので誰かが休んでると

 他の誰かも釣られて同じところに拠点を築きはじめる


 あとからついてきた行商人の集団も例外ではなかったようで

 少し離れたところに拠点を作ってくつろいでる


 目撃者は多数だが、会話を聞かれてはいない


 商団に混ざってた吟遊詩人がライブしてる最中だから

 盗み聞きされる心配はまずない


 そして

 お題はこちら


勇者「……何が言いたいの?」


 さあ

 お前ら

 どう答える?



五四、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 とりあえず

 火というものが

 人類社会において

 いかに大きな役割を果たしてきたかを

 熱く論じてみてはどうか



五五、管理人だよ


 なるほど


 具体的には?



五六、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 どこに

 納得する要素があったというのか


 お前の

 その

 よくわからないけど

 じつは深いところでおれは理解している的な謎の自信は

 どこから来るんだ?



五七、管理人だよ


 自分を信じることは大切だって

 お祖父ちゃんが言ってた



五八、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 グランド狸かよ……

 同じ穴の狢じゃねーか


 勇者さんじゃないけど

 そうして繰り返されていくんだな……


 なんにせよ、だ

 その手の誤魔化しは

 勇者さんには通用しないだろ


 久しぶりに

 超古代文明の民ルートやってみるか?



五九、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 お前、おれに何か恨みでもあるんですか?



六0、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 火口のには悪いけど

 あれはあれで綺麗にまとまったよな

 最後の詰めが甘かっただけでさ


 蘇った超兵器を鎮めるために

 命を賭して封印を施した場面なんて

 おれ、ちょっとホロリと来たぜ



六一、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 そんで

 行方不明になったはずの

 なんちゃって古代の民が

 お前らと宴会はじめちゃって

 酒の勢いで

 ゲストに勇者を招くとか言い出して

 収拾がつかなくなったんじゃねーか……


 ドッキリのプラカード持って宴会会場に突撃したの

 誰だと思ってんだ?


 おれだぞ!


 お前らは

 バウマフさんちのひとが女の子だと

 一気に甘くなる傾向があるんだよ……


 泥酔した古代の民に絡まれてる勇者とか

 見るに耐えなかったわ!



六二、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 でも

 おかげであのときは

 お前だけ勇者のお説教フルマラソンを免除されたじゃん


 酔いつぶれた古代の民もだけど



六三、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 ぜんぜん嬉しくねーよ!


 けっきょく事後処理とか

 全部おれに丸投げしやがって……


 あのときの恨み

 おれは、まだ忘れてないからな……


 というわけで

 超古代文明の民ルートは却下


 あのときは

 バウマフさんちのひとが女の子だったから許された

 みたいなとこあるし



六四、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 まあ、一理あるな


 じゃあ逆転の発想で

 お前が古代の民ルート行ってみるか



六五、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 おお。それいいね


 勇者さんプライド高そうだし



六六、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 おう。いいんじゃないか?


 子狸に対してはガードが甘いところあるしな



六七、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 まあ、時間稼ぎにはなるかもな……



六八、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 お前ら

 なに言ってんの?


 おい


 言い訳なんてする必要ないだろ


 単に子狸の方が

 勇者よりも博識だったってだけの話じゃん



六九、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中


 おれもそう思う


 お前ら悔しくないの?


 誤魔化すってことはさ

 おれたちの子狸さんが

 格下に見られてるってことだろ


 バウマフ家は

 おれたちが認めた

 世界で唯一の契約者だぞ


 アリア家だろうと何だろうと

 おれたちの子狸さんが

 他の人間に劣るわけねーだろ……!



七0、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 !


 おれたちが間違っていたのかもしれん……



七一、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 ああ

 目が覚めたよ


 お前らの言う通りだ……



七二、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 そうだな


 媚びる必要なんて

 何ひとつとしてないんだ



七三、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 おう!


 強気で攻めようぜ!



七四、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 では、子狸さん


お前「え? 知らないの?」


 これでお願いします


 知ってて当然でしょ?

 みたいな感じで



七五、管理人だよ


 おう!


 言ったよ


勇者「……その態度。お昼ごはん抜きね」



七六、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中


 ははっ



七七、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中


 ははっ



七八、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 ああ、でもうまく行ったな


 子狸からぶんどった魔どんぐりを

 勇者さんが黙々と食べはじめたぞ


勇者「……へんな味。もぐもぐ……」


妖精「ノロくん、わたしのごはんは?」


子狸「え? あ、うん。あるよ。はい、はちみつ」


妖精「いいから肉よこせよ、肉」


子狸「妖精さん!?」


妖精「ちっ……まあいい。今日のところはこれで我慢してやるよ」


 小さじに盛られた

 はちみつを

 すくって食べる羽のひと


 幻想的な光景である


 つーか

 子狸は素で忘れてると思うけど

 おれたちに食事は必要ない



七九、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 豚肉を食べると

 世界中のブタさんが

 ちょっと幸せになるって

 前にスターズから聞いたぞ


 おれたちが食べたものは

 魔法に変換されるんだとさ



八0、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 まじで?


 おれたち

 そんな隠し機能があったの?


 千年も生きてて知らんかった……



八一、管理人だよ


 というか

 お腹、空いたんですけど



八二、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 大人しくしておけば

 勇者さんが残りをくれると思うぞ

 たぶん、また無茶な条件と引き換えだろうけどな


 期待して待ってると

 逆にもらえないと思うから

 用心しろ



八三、管理人だよ


 難しいことを言うね君は……


 だったら……



八四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 子狸は

 考えることをやめた


 ん?


 演奏を終えた吟遊詩人が近寄ってくる



八五、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 羽のひとがいるからな


 好奇心が強いんだろう



八六、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 おれか?


 まあ、そうだろうな


歌人「ねえ、君」


 話しかけられたのは子狸である


 初対面の人間になめられるという特技が

 ここで生きたな


 省エネモードの子狸は

 のろのろと顔を向ける


子狸「……おう」


 言語も省エネ

 これはひどい


歌人「ん?」


子狸「おう……」


 おうおう言っている子狸に

 何か思うところがあったのか

 食事中の勇者さんが対応する


勇者「何か用?」


 血の雨が降らないことを祈るぜ



 登場人物紹介


・亡霊さん


 骸骨さんと同じくレベル2の魔物。「見えるひと」と呼ばれる。

 怨念を宿した半透明の霊体とされているが、そんなことはなく、単に身体が霧状なだけである。

 いかんせん霧状なので、物理的な攻撃は無効化できるし、障害物をほとんど無視して行動できる。

 ふだんは樹海に住んでいて、迷い込んできた人間を森の外までリリースする業務に励んでいる。恐怖体験もセットで。



 注釈


・お前が古代の民ルート


 あなたの正体はじつは超古代文明の末裔だったんです! というルートだと、バウマフ家の人間は思っている。

 が、じつは違う。失言を有耶無耶にする手法のひとつである。

 バウマフ家の人間に「知らないの?」とか言われると、たいていの人間はプライドを刺激されて「そんなことはない」と否定する。

 とくに自負心が強い人間に対しては絶大な効果を発揮するようだ。

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