「おれたち絶賛放置プレイ中の件に関して」part1
一、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中
おれたち
絶賛放置プレイ中の件に関して
二、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中
おれ
そろそろ家に帰らないと
通常業務に支障をきたしそうなんだが……
三、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中
速報も入らないしな
まさか三泊するとか言い出さないよね……?
四、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中
そもそも二泊してる時点でどうかとおれは思う
五、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中
だいたい順調すぎると思ったんだよ……
そういうときは
たいていどこかに穴があるんだ
六、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中
つまり結論から言うと
子狸ぃ……
七、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中
子狸ぃ……
八、管理人だよ
子狸ぃ……
九、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中
自虐かよ
いつの間に
そんな高度なテクニックを覚えた
いや
青いひとの差し金だな?
一0、管理人だよ
違います
青いひとに
やれって言われた
一一、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中
それを差し金と言わず
なんだというのか
こんにちは管理人さん
待ちわびました
一二、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中
待ちわびすぎてテンション低いですけど
ご了承下さい
配置についてから
現時点で二十四時間経過
相変わらず
語彙が少ないですねっ><b
一三、管理人だよ
まあね
低学年の子にも
よく言われるよ
子供は素直で可愛いね
一四、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中
うん
青いひと
いる?
一五、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
おれは
いつでも
お前らを
見守ってるよ
一六、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中
ばか(照
一七、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
二度目はないと
言ったはずだぞ
一八、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
ぎゃーっ!
一九、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
海底の~!
二0、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
まさかあれは……
氷縛千刃殺界陣!?
二一、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん
かまくらの
知っているのか!?
二二、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
すまんな、骨のひと
待ったか?
二三、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中
ううん
いま来たところ(にこっ
二四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
お前らもか
二五、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
ちょっ
違
ぎゃーっ!
二六、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
庭園の~!
二七、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん
王都のが暴君と化した……
二八、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
王都のは昔からそうだよな
さすが
いや
うん
二九、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
さすが
初代魔王だな!
三0、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
うるさい
過ぎたことだ
忘れろ
ああ
見えるひとも
待たせたな
けっきょく
昨日は丸一日
タマさんの職場案内で終わってしまった
勇者さんは宿屋で華麗に読書
三一、管理人だよ
カチコミの才能があるって
褒められたよ
ごちゃごちゃ考えるより
ハートで勝負
だぜ!
三二、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん
勇者さんの護衛をまっとうできるようにと
連れて行かれたのに
どうして鉄砲玉のスキルを習得してくるんだ……
気付いたら宿屋のスタッフの一員みたいになってて
一流のシェフになってから迎えに行くとか
意味不明なこと言い出すし……
三三、管理人だよ
え?
だって
それがいちばん近道だろ?
三四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
ごめん
本当に……
いろいろと
ごめんなさい
こいつ
勇者さんに恋したとか言い出してさ
一人前の料理人になれたら
そのときは結婚しようって
ひとりで決意しちゃったんだ……
その延長で、いま
はりきって昼食を作ってます……
三五、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中
血は争えない、か……
お屋形さまも
いきなり結婚するとか言い出して
おれたちもびびったけど
嫁さんがいちばんびびってたよな
三六、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中
いらんとこばかり似て困る
ちなみにシェフ
本日のメニューは?
三七、管理人だよ
おれ「魔どんぐりの甘煮です!」
勇者「却下」
おれ「なん……だと?」
修行が足りなかった……!
三八、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん
そういう問題じゃねーよ
勇者「わたし、魔法の果実は食べないの。作り直して頂戴」
子狸「好き嫌いはいけません」
勇者「……どう説明したらいいかしら……」
途方に暮れる勇者さん
勇者「剣士だから……って言っても、わからないわよね……」
子狸「はあ……」
え?
わからないの?
三九、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
いや、ふつうは知らない
義務教育の制度が施行されたとき
民衆が反乱を起こしたらどうするかってのが
議題に挙がったはずだ
時期的に見て
その頃を境に剣士の……というより
魔法の情報がいくつか秘匿されてる
騎士でもなければ
剣士と知り合う機会はまずないしな
平民ともなればなおさらだ
じゃあお前は
いままでのおれたちのやりとりを
なんだと思ってたんだっていう話になるけど
それは置いておこう
よくあることだ
勇者「一般には公開されてないけど、たくさん魔法を使うと魔法に弱くなるの。わたしは剣士だから、魔法を使わない代わりに魔法があまり効かないし、魔物に対して優位に立てる」
子狸「……なるほど」
子狸
本当に大丈夫か?
ついてきてるか?
四0、管理人だよ
え?
べつに……
ようは
三番が閉じてるから構成が走らないってことでしょ?
四一、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
お屋形さま
こんにちは!
四二、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中
いつもお世話になっております!
四三、樹海在住の今をときめく亡霊さん(出張中
お子さんも
すっかり立派になって!
感無量とは
このことですな!
四四、管理人だよ
え
父さん?
どうしたの?
四五、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
お前がどうした!?
一瞬、本気でお屋形さまかと思ったわ!
まあ、わかるよ
そっち関連の知識は
おれたちが徹底的に叩き込んだからな……
四六、管理人だよ
授業にぜんぜん役に立たない知識を
ありがとう
勇者「……たくさん魔法を使うと、魔法に弱くなるの。これでどう?」
そして
なぜ勇者さんは
同じことを繰り返したんだろう……
おれ「なるほど」
勇者「……だめね。ごめんなさい。忘れて?」
なかったことにされた……
勇者「とにかく。魔法の果実は、魔法の影響を……いえ、なんでもないわ。苦手なの」
おれ「好き嫌いはいけません」
勇者「そう。こうして繰り返されるのね……」
やっぱり修行が足りないってことなのか……
四七、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん
仕方ねーな……
おれがフォローしてやるよ
おれ「リシアさん、大丈夫ですよっ。食べちゃいましょう!」
勇者「……どうして?」
おれ「リシアさんが魔法に強いのは、なんとなくわかります。それって逆に言えば、魔法の果実を食べても影響を受けにくいんじゃないですか?」
勇者「そうね。だから?」
すまん。無理だったわ
四八、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
子狸「よくわからないけど、熱を通してるから大丈夫だよ」
どういう理屈?
勇者「どういう理屈なの」
子狸「理屈ですか……。えっと、つまり、お嬢は回線が閉じてるから……魔法さえ使わなければ、あとは意識の問題ではないかと。うん、外部入力は関係ないよ」
勇者「」
ひいっ……!
四九、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん
ひいっ……!
五0、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
はい
うっかり出ました
お前ら
今日もがんばって誤魔化しましょうね
五一、管理人だよ
あ!
言っちゃまずかった?
五二、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん
まずいというか
それは人類社会に存在してはならないクラスの知識だよ
まあ、安心しろ
おれたちは
いかなる暴露にも
屈さず対処してきた過去の実績がある
登場人物紹介
・骸骨さん
いよいよ登場したレベル2の魔物。「骨のひと」と呼ばれる。
白骨化した戦士の亡骸と言われているが、単にそういう見た目をしているだけである。
武器の扱いに長けており、魔法もレベル2までなら自由に使える。
いちおう死のふちから蘇ったという設定なので、驚異的な生命力を誇る。
また、レベル2以上の魔物は例外なく単体種である。というより、レベル1の魔物たちが例外的な存在であり、基本的に魔物は一種一体のみ。
分身魔法がある上に自在に瞬間移動できるので、本来的に同種の個体は必要ないのだ。
注釈
・魔どんぐり
異様に巨大などんぐり。食べると、ほのかな甘味がある。
魔法の影響を受けて歪な発達を遂げた「魔改造の実シリーズ」のひとつである。
同シリーズを、人間は「魔法の果実」と呼ぶ。
魔改造の実に共通する特徴は、季節を問わず土壌に無造作に転がっていること。
木々に成っている姿を見たものはいないため出自は定かではないが、その形状から近しい果実の名称で呼ばれる。