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しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
スイカさん、なぜあなたはしましまなのですか……by子狸
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「子狸はこんらんしている」part2

三五、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 なん……

 いや


 え?


 おれ、はっきり言ったよね?



三六、管理人だよ


 うん?


 うん



三七、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 あ

 お前

 その反応……


 さては何もわかってねーな!?



三八、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 どうしちゃったの

 管理人さん!?


 そんな……

 うそだろ!?


 目を覚ましてくれよっ……


 ようやくこれから……


 おれたちの冒険が

 はじまるんじゃなかったのか!?



三九、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 管理人さん!



四0、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 管理人さん!



四一、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 管理人さん!



四二、管理人だよ


 なに?



四三、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 さて続けようか



四四、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 おう。短い夢だったな



四五、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 まさか三十分と保たないとはな……


 つーか悪化してねーか?



四六、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 限界まで頭脳を酷使した反動かなぁ……?



四七、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 え!?

 あれしきで限界なの!?


 お猿さんでも

 もうちょっと

 がんばれるだろー!



四八、管理人だよ


 お前ら

 おれを

 見くびるな!


おれ「お嬢、さがって!」


 勇者さんは


 このおれが


 守る!



四九、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 お前が何もわかってないというのは

 よくわかった


 だが

 これを見ても同じことが言えるかな?


おれ「愚かな人間どもめ……。大人しく我々の手のひらの上で踊っていればいいものを……」


 見よ!


 これぞ


 猛虎の構えだ!



五0、管理人だよ


 !


 青いひと?


 青いひとなの!?



五一、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 そうとも


 人呼んで

 ザ・ブルー


 大空を翔ける蒼き閃光とは

 このおれのことよ!



五二、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 お前も

 子狸と面と向かうと壊れるなぁ……


 庭園のが口上を述べている間に

 羽のひとの結界は完成


 周囲の風景が歪み

 衆目は閉ざされる


 こんらんがとけた子狸の頬を

 勇者さんが引っぱる


子狸「……ん?」


勇者「よく伸びるわね」


 罰のつもりらしいが

 教官の手で鍛え上げられた子狸の頬の柔軟性は

 おれたちも一目置いているほどだ


 ここで眼帯が進み出る


眼帯「度胸も親父譲りか。だが、ここはおれのシマだ。さがってな、小僧」


 そう言って子狸を押しのける


側近「叔父貴。連中に理屈が通じるとは……」


眼帯「そんときは頼むわ」


 側近の提言を軽く流して

 庭園のに詰め寄る眼帯


 手をポケットに突っ込んだ横柄な態度である


眼帯「おう。おめえらは言葉がわかるのに、人の話を聞こうとしねえ。お前はどうだ? 聞く耳はあるか?」


庭園「人間風情が……対等のつもりか? 言ってみろ」


 とりあえず

 こき下ろしておいて

 対話に応じる庭園の


眼帯「そうかい……。じゃあ、こうだ!」


 そんな庭園のの優しさに突け込んで

 眼帯の蹴りが炸裂☆


眼帯「誰に断っておれのシマを荒らしてんだ。ああ!?」



五三、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 やだ……怖い



五四、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 やだ……怖い



五五、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 庭園の……?



五六、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 久しぶりに……


 キレちまったよ……


おれ「やってくれるな……下等生物が!」


 だが、思い上がるな

 いちばん厄介なのは


 お前なんだよ子狸ぃ……


 喰らえっ

 レクイエム毒針・影!


 これが

 お前への葬送曲だ!



五七、管理人だよ


 おれ!?



五八、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 いいぞ!


 やっちまえ!



五九、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 われわれは


 同志の闘争を

 心の底から応援するものですっ……



六0、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 残念っ……


 射線を見切った勇者さんが

 踏み込むと同時に触手の横腹を指でなぞる


 霧散する触手


 こうして、あえなく青いひとの奥義は敗れ去るのであった……



六一、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 ちっ……



六二、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 ちっ……



六三、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 ちっ……


 なるほどな

 これがアリア家の血か


 背筋が震えたぜ


 だが

 子狸に一撃を入れるまでは終われるかよ……!


おれ「おのれっ……」


 飛び退くおれ


 子狸は、あとでじっくりと料理してやる


 まずはお前からだ!


おれ「冥府に沈め! アルダ・バリエ・ラルド……」



六四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 庭園のが

 詠唱しつつ

 眼帯に奥義を乱れ撃つ


側近「ディレイ!」


 正直、単なる指圧なのだが

 なんとなくやばそうなので

 側近が盾の魔法で迎撃


 この側近

 じつに優秀である


庭園「アバドン・グノ!」


妖精「マジカル☆ミサイル!」


 あれ?

 そんな技名でしたっけ?


 魔法に関しては独自の路線を行く羽のひとが

 光の誘導弾で

 庭園のの血と汗と涙の結晶である闇の底なし沼を

 華麗に相殺


妖精「リシアさんっ、いまです!」



六五、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 妖精魔法ですね

 わかります



六六、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おれ涙目


 妖精ってつけば

 なんでも許されると思うなよー!



六七、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 庭園の

 うしろうしろー!



六八、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 きゃあ



六九、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 どうかね

 おれと勇者さんのコンビネーションは?


 眼帯を盾に素早く回り込んだ勇者さんが

 愛用の剣で青いひとを背後から切り裂く


 のたうつ青いひとにひとこと


勇者「冥土の土産はくれないの?」


 そして子狸が空気な件



七0、管理人だよ


 もう一度

 おれに

 チャンスを下さい



七一、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 そしてまさかのスーパー子狸タイム



七二、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 構わんが高くつくぜ?


 具体的には

 南国の王さまを寄越して下さい

 お願いします



七三、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 えらくこだわるな……


 なにがお前をそうまで駆り立てる?



七四、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 宰相に贈るんだ


 おれは

 自分の言葉にまっすぐ生きる



七五、管理人だよ


 お金ないんです……



七六、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 勇者さんにお願いしてみたら?


 つまり

 お小遣いだな



七七、管理人だよ


 お前……


 頭いいな



七八、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 引き換えに

 いろいろなものを失うと思うんだが……


 まあ

 子狸がそう言うなら


おれ「くれてやるさ……。おれが、なんのために、そこの小僧の影に、潜んでいたと思う……?」


勇者「ひまだったから?」


 正解(にこっ


 おっと

 この勇者あなどれん……

 真理を突いてくるな……


おれ「きさまは、なにも知らない……。おれは、あのお方の遣いに過ぎない……。いずれ、思い知ることになる……。地獄で待っているぞ……アレイシアン・アジェステ・アリア……聖騎士の、末裔よ……」


 きれぎれに言ってから

 ぐったりしてみる


 子狸

 準備はいいか?


 おれが

 最後の力を振り絞って

 勇者さんに襲いかかるから


 お前が

 身を呈してかばうんだぞ?



七九、管理人だよ


 え?



八0、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 え?



八一、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 え?



八二、管理人だよ


 お小遣いは?



八三、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物(出張中


 意味が……


 わからん……


 がくっ



八四、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 庭園の~!



八五、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 庭園の~!



八六、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん


 かくして

 子狸の前に

 敗れ去った青いひと


 フェードアウトしていった

 彼の言葉は

 この先、勇者一行を待ち受ける

 苦難の旅路を予感させるものであった……


 それはそうと

 勇者さんは

 子狸の頬の感触が

 お気に召したようである


勇者「もうへんなの憑いてないでしょうね……」


 おれだったら

 こんなへんな生き物は

 さっさと置いていくのだが


子狸「え? おれ、何かついてる?」


 本当に不思議でならない……


 一方

 眼帯の疑惑は払拭できたようである


眼帯「憑き物が落ちたみてえな顔してるぜ。そっちが素なのかい……不憫な」


側近「……叔父貴。ですが、能ある鷹は爪を隠すって言いますよ」


眼帯「いいや、思い出したぜ。小っちぇえ頃から、あんなだったわ。こちとら生死の境をさまよってるってのに、“おかゆは?”“おかゆは?”だのと人の耳元でよぉ……」


 幼い頃から利発な子でしてね……


子狸「! タマ!? タマなの!?」


タマ「てめーの頭ん中で、おれはどういう扱いになってんだ!?」



八七、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 また会えるかな?


 タマさん



八八、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 会えるといいな


 タマさん



八九、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 さあな


 ただ、これだけははっきりと言える


 我々の業界じゃあ


 こういうのは珍しいことじゃない……



 注釈


・猛虎の構え


 まず、中腰になる。

 次に、片足を前に出して、ひざを程良くたわませる。

 最後に、両腕を広げて、ひじを直角に曲げた状態から、両手の指に万力の力を込めて鉤爪を表現する。

 上記の手順を、青いひとたちは触手で代用して成し遂げる。

 あえてボディと顔面をがら空きにすることで、王者の風格を醸し出すらしい。

 別名「魔王の遊び」とも称されるこの構えは、青いひとたちの代名詞でもある。

 なお、身体の向きは斜め45度が最も美しいとされる。



・妖精魔法


 妖精たちが扱うとされる魔法。

 詠唱を要さない、既存のものとは異なる体系の魔法ということになっているが、単に詠唱破棄してるだけである。

 羽のひとは殊更にイメージを大事にするので、なんだか神聖な感じがする光弾系の魔法を専ら多用する。

 今回の場合、青いひとが使用した闇の魔法はレベル3に相当するため、詠唱破棄でほとんど開放レベルを持って行かれている「マジカル☆ミサイル」では相殺しきれないのが本当のところなのだが、「妖精魔法」は「聖属性」ということになっているため、(状況次第ではあるが)実質的なレベルを無視した結果になることが多々ある。

 この「属性」という概念は、仕掛け人の魔物たちが長年に渡って築き上げた「トラップ」と呼ばれる「嘘のルール」であり、魔法の本質を人間に悟られないよう工夫を凝らしている。

 たとえば、水の魔法は火の魔法に対して優位ということは、本来なら起こらない。

 しかし人間は「当然そうなる」と信じて疑わないため、二番回線の働きにより「当然そうなる」のだ。

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