星降る夢のうた
二四七、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
間抜けが釣れた
それだけの話だろう
ポンポコ魔王も、また被害者の一匹に過ぎなかったのである
……子狸さんは、案外まともなほうだからな
前々から何かおかしいと思っていたんだ
二四八、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん
うむ。おれたちの子狸さんを陥れた罪、万死に値するぜ
二四九、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中
いや、情状酌量の余地はあるんじゃないか?
少なくとも、他の誰でもなく
子狸さんに目を付けた先見性は高く評価するべきだ
二五〇、住所不定のどこにでもいるようなてふてふさん
一理あるな
二五一、魔都在住の特筆すべき点もないライオンさん(出張中
うん、一理ある
二五二、住所不定の特筆すべき点もないてふてふさん
はっきりしたことが幾つかある
突如として発現した未確認生物は、勇者さんと敵対するのを避けたと見るべきだろう
だから、彼女が居なくなったとたんに活動を再開した
そして、それはあらぶる小鳥に限った話ではない
――王種だ
何事にも理由はある
自覚があるのか、それともないのか
いずれにせよ、動機なくして人は動かない
都市級を打倒しうる……
いや、正確には勝利を約束された存在である勇者の
敵に回ることを――
レベル5……つまり超高校級の選手は避けたのだ
内と外
両面から同時に干渉して、はじめて
二つの世界を結ぶ扉は開かれる
子狸バスターが放った幾千もの火線は、レベル4を狙ったものではなかった
では、レベル5を狙った攻撃なのか?
そうであれば良かった
しかし、違う
それは、身を守るための精いっぱいの防御だった
王都の上空
四人の屈強たるDFの更に奥――……
ついに姿を現した新一年生の守護神は
海、としか言いようのない威容をたたえていた
結論は、とうに述べた
討伐戦争は、精霊と精霊の代理戦争だった
だから、最後に立ちふさがるのは……
精霊でしか、ありえない
天地逆転した海面がさざめく
波間を揺れる、さまざまな海洋生物の輪郭が
浮上した核を食い漁るかのようだった
寄り集まり、巨大な人影を構築していく
まるで産声を上げるように
水の精霊は、甲高い咆哮を放った――
二五三、砂漠在住の特筆すべき点もない大蛇さん(出張中
本格的な戦闘に突入する前に
お前らに言っておきたいことがある
二五四、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
よせよ、縁起でもない
約束しただろ
ぜんぶ終わったら、また皆で……
次のピクニックには、おれと海のひとも参加するよ!
勇者さんも一緒にさ
子狸さんは、どうせ勘違いして妙な方向に走っていくだろうけど
ああ、歩くひとは一人三役だったな
大変だろうけど、でも、それで……!
二五五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
海底の
……聞こう
全員が生き残れる保証なんてない
連中が本気になれば、王都に残った人間たちを人質にとることもできる
不確定要素が多すぎた
おれの妹は……異常だ
詠唱破棄を封じて、お屋形さまと互角以上に渡り合っている
あいつは、他の魔法動力兵とは何かが違う。決定的な何かだ
二五六、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
ありえないだろ……!
お前、自分が何を言ってるのかわかってるのか!?
あいつが、おれたちと同じだとしたら
仮にそうだとしても……!
技術的に可能だったとしても、だからこそ許可が要る筈だ!
いいか、誘導魔法は確実に術者を選ぶ
危険すぎる魔法だ
開放レベル9に手が届くんだからな
魔法使いは厳密に管理されていなければおかしい
監視されている筈だ
あるいは、二重、三重のプロテクトが掛かっている
そうでなければ成立しない
おれたちと同じ……?
同じだと……!?
そんな許可を出す馬鹿がどこにっ……!
あっ……
二五六、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
山腹の
二五六、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
おう
【ドライさんの書き込みは削除されました】
二五六、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中
新型の、魔法動力兵……!
二五七、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
うむ……
あるいは、そうかもしれん
二五八、方舟在住の世界をめぐる不定形生物さん(出張中
ふふふ……
よくぞ気がついたな
そう
わたしは、魔王の腹心なのだよ☆
二五九、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
くっ、なんてことだ……!
魔王の腹心に侵入を許すとは……!
二六〇、墓地在住の今をときめく骸骨さん(出張中
王都さん、大変!
基本的な設定が破綻をきたしつつある……!
敵が魔界で
魔王の腹心で
じゃあ、おれたちは何者なの!?
二六一、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
お前らは、パンの精霊だ!
討伐戦争は、精霊と精霊の代理戦争だった
ならば、お前らが戦うべきは、ごはんの精霊だろうがよ!
お米は水で炊くもんだ!
違うか!? 違わねーだろ!
知ったことか!
事ここに及んでは告白するしかあるまい……
妹よ
おれは、お前がしねばいいと思っている
二六三、方舟在住の世界をめぐる不定形生物さん(出張中
お兄ちゃん
わたしたち、気が合うよね
わたしも、お兄ちゃんのこと……!
しねばいいと思ってる
昔からそう
事あるごとに、わたしの邪魔をするのは
いつも、あなただった……
いい歳した魔物が布団みたいになってさ
いつも、いつも、いつも……
あなたが、わたしの邪魔をする!
わたしは、もっと……
もっと、バウマフ家と遊びたかったんだ!
二六四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
だまれ!
変質者めっ
お前は性質の悪いストーカーだ!
二六五、方舟在住の世界をめぐる不定形生物さん(出張中
ひっどーい!
あなたにだけは言われたくないよ!
粘着質! ぬるぬる過保護っ
二六六、王国在住の現実を生きる小人さん
五十歩百歩ですぅ……
二六七、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中
あまりにも低次元な言い争いに
おれは悲しくなります
二六八、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中
お前ら、もう少し真面目にやれないんですか?
見ろよ、都市級とか超がんばってる
少しは彼らは見習ってだな……
二六九、山腹巣穴在住の現実を生きる不定形生物さん(出張中
だが、今ここに一つのシリアスが息を引き取りつつあった……
子狸「……!」
あらぶる小鳥に覚醒を促された小さなポンポコさんが
巣穴から這い出してきたのである
二七〇、王都在住のとるにたらない不定形生物さん
子狸さんの朝は早い
布団みたいになっているおれの下から這い出して
まず最初にやることは、日課のセルフこれまでのあらすじだ
けれど、過去よりも未来を見つめたい
先人の言葉を大切にする子狸さんは、早々に食事の支度に移る
あれほど、おれが忘れてはならないと言い聞かせてきた記憶力のトレーニングも忘却の彼方だ
それでいて、お馬さんたちの日々のお世話は欠かさない
一説によれば――
無意識下に群れなす小さなTANUKIさんたちが
本体の処理能力を越えた出来事を、順番にせっせとトロッコに乗せて運んでいるらしい
優先順位のようなものがあり、緊急性が低いものは下へ下へと埋もれていく
ときおり鋭いことを口にするのは、休日出勤した彼らが荷物の点検を行ってくれるからだ
だが、彼らの働きが必ずしも報われるとは限らない
子狸さん本体にはポンポコパラメーターなる意識の境界線が備わっており
これが一定の値を満たさなければ、巣穴に収納されてしまうのだ
ミーッと伸びていくポンポコパラメーターを、固唾をのんで見守る小さなTANUKIさんたち
急上昇は危うい傾向だ
たいていの場合、越えるか越えないかのところでぴたりと静止し、すとんと落ちる
……今日もだめだった
誰からともなく、ため息が漏れる
お互い励まし合いながら作業に戻る小さなTANUKIさんたちであったが――
彼らが立ち去ったあと、ふたたびパラメーターが動き出した
み、み、み、と徐々に盛り上がっていき……
そして、すとんと落ちた
子狸「…………」
とくに何事もなく、すり寄ってきた豆芝さんの毛並みを整える
毛繕いは、子狸さんにとって重要なコミュニケーションだ
ほとんど魔物扱いであるため、ぼんやりしていると動物たちが寄ってくる
しかし基本的な立ち位置は保存食だ
毛繕いを終えたあとは、狩りに出掛ける
子狸さんは実シリーズ拾いの名手だ
自慢の嗅覚で、狙った獲物を追いつめていく
それでも、いつもうまく行くというわけではない
今日の狩りはどうだろうか……
子狸「……!」
おや? 子狸さんが何かを見つけたようだ
素早く身を隠す
間一髪、騎士の群れに発見されずに済んだ
騎士団は、子狸さんの天敵だ
とくにこれといった理由もなく捕獲され、署に連行されてしまう
危うく社会的に抹殺されるところだった……
子狸「…………」
子狸さんは賢いので、天敵の動向を観察して情報収集に勤しむ
騎士たちは仲間割れをしているようだった
獰猛な彼らは、同じ群れで争い合うことも珍しくない
とくに鎧の色が異なる個体とは激しく反発する習性がある
気が立った騎士は、たとえ満腹でも子狸さんに自白を強要してくる
今日は狩り場を変えたほうが良さそうだ……
次に子狸さんが遭遇したのは、ポーラの群れだった
彼らは、子狸さんと共存関係にある素晴らしい生きものである
ふだんは穏和で争いを好まない彼らだが、今日は様子が違った
無理もない
ポーラたちは、この星の平和を守るために戦っていた
敵は、異星人だ
招かざる客――
許されざる侵略者たちである!
二七一、管理人だよ
そ、そうだったのか……
二七二、方舟在住の世界をめぐる不定形生物さん(出張中
洗脳した……