「河の底で蠢くおれたち」
四五0、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
戻った
四五一、海底都市在住のごく平凡な人魚さん
おう
管理人さんは?
四五二、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
少し目を離した隙に厨房で雑用してたりと
まあいろいろあったんだが……
寝る間際になってごちゃごちゃ言い出したから
王都のが奥義で強制終了させた
四五三、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん
あの伝説のレクイエム毒針か……
四五三、火山在住のごく平凡な火トガケさん
知っているのか!?
四五四、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
そういうのいいから
海のひと
子狸バスター(仮)の進捗はどう?
四五五、海底都市在住のごく平凡な人魚さん
理論値はクリアした
小道具は鬼のひとたちに依頼するつもりだ
四五六、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
おう
鬼のひとたちの仕事には絶対的な信頼がある
理論値は、というと
やはり問題はソフトか?
四五七、海底都市在住のごく平凡な人魚さん
おう
つくづく思い知らされるね
人間はすげーよ……
いちおうサンプルは回収したけど
どこまで再現できるか……
いや
再現じゃだめってわかってるんだけどな
とはいえ
ある程度はアドリブになると思う
だもんで
いまは足回りをいじってる
四五八、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
おう
その調子で頼む
緑のひと
勇者さんシステムのほうはどう?
四五九、火山在住のごく平凡な火トカゲさん
いちおう計図を組んでみた
目の前に展開してるから見てくれ
四六0、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん
ほほう。これはなかなか
まるで
そう
例えるなら既製品を見ているような……
相変わらずいい腕してやがる
四六一、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
おい
おい。これ
今日から☆魔王スターターの流用じゃねーか
四六二、火山在住のごく平凡な火トカゲさん
出力をしぼって
オンオフ機能をつけてみました☆
四六三、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
つけてみました☆
じゃねーよ!
こんなもん投下したら
勇者さんが魔王さんに
華麗にクラスチェンジしちゃうだろ
表裏一体か!
本当
お願いします……
本当……
四六四、海底都市在住のごく平凡な人魚さん
ふつうでいいんだよ
ふつうで
四六五、火山在住のごく平凡な火トカゲさん
そうやって簡単に言うけど
原則が絡んでくるから
わりとどうしようもないんだからねっ
二番がだめなら
三番をいじるしかないんだけどなぁ……
それだと本人の資質しだいになるから
おれとしては、ちょっと納得がいかない
仮にやるとしたら
内部の数値に手を入れることになるんだけど
どこかにサンプル落ちてないかな……(ちらっ
四六六、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん
ちょっと王都行って
落とし穴、掘ってくるわ
四六七、火山在住のごく平凡な火トカゲさん
お屋形さまのデータが
役に立つわけねーだろ!
それ以前に殺されるわ!
さいきんあいつ見掛けないなぁ……
とか言われて
某所……
とかモノローグ入って
おれの大切な鱗ちゃんが
なべ敷きにでもされてたら
お前、責任取れんのか!?
ちょっと嬉しいじゃねーか!
四六八、海底都市在住のごく平凡な人魚さん
おちつけ
だいじょうぶ
こんなこともあろうかと
王立学校在籍の平均的な魔法使い(笑)のデータを採取しておいた
四六九、火山在住のごく平凡な火トカゲさん
子狸さんのことばかにしてんのか!?
可哀相だろ!
万が一うまく行ったらどうするんだよ!?
勇者さんとどう接したらいいかわからなくなるわ!
なあ、青いひと
王都のひとに協力してもらうわけにはいかないか?
あのひとが、いちばん人間に詳しいだろ
四七0、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
王都のは、バウマフ家への愛情が半端ないからなぁ……
たぶん厄介なことになる
おすすめはしない
四七一、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん
でもさ
勇者さん優しいとこあるよね?
子狸を同じ部屋に泊めてあげてるんだろ?
おれ、アリア家のことあんまり詳しくないけど
言うほどひどくないっていう印象だぞ
四七二、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん
いや、どうかな
庭園のが言うには
おれたちの襲撃を警戒してるんだろうって
でも子狸に甘いってのは、おれも感じてる
鬼のひとが言うには
ご機嫌取りってわけでもないらしい
そういうことする人種じゃないんだと
四七三、火山在住のごく平凡な火トカゲさん
たしかにな
おれは
いままでに何度かアリア家の人間と話したことあるけど
かなりざっくりした考え方してたぜ
指揮官の首をもってくるから
それで水に流せって言われたときは
正直びびった
なんとか思いとどまってもらったけど
他の人間とはオーラが違う
四七四、海底都市在住のごく平凡な人魚さん
ああ、あのときな
お前、噴火の主犯に仕立て上げられてたから(笑
四七五、火山在住のごく平凡な火トガゲさん
おれんちが噴火して
誰がびびったって
おれがいちばんびびったっちゅうねん(笑
四七六、古代遺跡在住のごく平凡な巨人兵さん
お前、テンパるあまり会話不能に陥ってたもんな(笑
注釈
・レクイエム毒針
不定形生物さんたちの中には、まれに毒を持つ個体がいると言われている。
まず、極限までねじった触手を「こより」みたいに尖らせる。
その先端で突き刺した対象を一撃で眠らせるのが、青いひとたちの奥義「レクイエム毒針」である。
じつは単なる睡眠の魔法なのだが、アクションを織り込むことで人前でも使えるよう工夫されたものである。
・計図
設計図の略。おもに魔法の設計図を指して言う。
魔物=魔法なので、魔法の深い部分の仕組みに知識で挑むことができるようだ。
・今日から☆魔王スターター
他者の魔法に干渉する能力の設計図を指して言う。
たいていの勇者は優秀な魔法使いであるから、絶大なリアクションを見込めるという理由で魔王役に実装されることが多い。
つまり勇者にとっての本当の武器は、愛とか勇気とか何かそうしたキラキラしたものなんだよね、という話に持っていくのが常道である。
・二番とか三番とか
「二番回線/回路」「三番回線/回路」の略。
魔法を扱う回路は大別すると三つある。
二番は無意識の領域の回線であり、三番回路は有意識の領域を司る。
つまり人間が魔法を使う場合、三番回線がメイン、二番回線はサブの役割を果たす。
基本的に双方向回線なので、魔法を使えば使うほど、魔法の影響を強く受けることになる。「原則」と呼ばれる、魔法の基盤構造だ。
ちなみに一番回路は魔物専用なので、人間は使用不能。