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しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
そうだ! なかなか筋がいいぞ! by料理長
15/240

「お前らおれの身分を証明できるもの持ってる?」

一、管理人だよ


 お前ら

 おれの身分を証明できるもの

 持ってる?



二、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 さあ、いよいよはじまりました


 魔王討伐の旅シリーズ子狸編



三、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 なお、当シリーズは


 勇者さんの“漢”を見たい


 の流れを汲んでますので

 あしからず



四、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 おれ

 夢があってさ


 子狸さんが

 文句のつけようもないくらい

 びしっと完璧にシナリオをこなして


子狸「何も問題はない」


 って言うのを

 一度でいいから見てみたいんだよね……



五、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 流されてきました


 でも子狸は

 大きくなったら

 お屋形さまみたいになるらしいぜ……?

 (本人談)



六、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 何それ怖い……


 人間って成長すると

 原子配列変換とかしちゃうの?



七、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 母親似ってわけでもないしなぁ……


 で、王都の

 何があった



八、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 お前ら反応早いな……


 いや、大した事件でもないんだが


 お前らもご存知かと思いますが

 人間という生き物は何かと壁を作りたがる


 だから小さな村ならともかく

 街という街は街壁で覆われてる



九、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 おう

 おれたち対策だな


 長年ちまちまと街攻めした甲斐があったわ



一0、王国在住の現実を生きる小人さん


 じつはデメリットのほうが大きいんだけどな


 財政を管理してる領主からしてみると

 おれたちと戦うのがいちばん嫌らしい


 なんの旨味もないからな



一一、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おう


 で、我らが勇者一行は

 とくに問題なく街についたわけだが


 いや、正確には

 ちょっと気になる女の子と

 なんとか会話しようとした

 子狸の涙ぐましい努力があったのだが

 適当に相槌を打たれて終わったので

 省略する



一二、管理人だよ


 べつにそういうんじゃないよ


 一緒に旅をする仲間なんだから

 仲良くしておいたほうがいいだろ



一三、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 はいはい


 で、街の入口には門があって

 そこでは騎士が検問をしてる


 身分証明書を見せるよう

 要求されるわけだな


 勇者さんは問題なかった


 腰に差してる剣の柄尻に

 家紋が彫られているらしい


 まあ、旅装とはいえ

 布の生地からして平民とは違うからな


 騎士の対応も丁寧なものだった


 貴族の連れだし

 子狸も問題なく通れる筈だったんだが……


騎士「……あの、マントが不自然に膨らんでいるんですが」


勇者「…………」


 念のために訊いておく


 どうしてお前は

 勇者さんのマントに

 とっさに隠れたんですか?



一四、管理人だよ


 騎士

 怖い



一五、連合国在住の現実を生きる小人さん


 ああ

 そういえば、そんな設定もあったな



一六、空中庭園在住のとるにたらない不定形生物さん


 とりあえず

 満を持してツッコむけど


 おれたちが

 お前の身分証明書を持ってたら

 おかしいだろ?



一七、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


勇者「…………」


 無言でマントを引っ張る勇者さん


子狸「あ!」


 巣穴を失う子狸

 騎士と目が合う


子狸「ち、違うんです! 今日はたまたま! お、おれは何も……」


 素早く目線を逸らす子狸

 何も言われてないのに

 無実を主張しはじめる


騎士「…………」



一八、管理人だよ


騎士「……お知り合いですか?」


勇者「いいえ」


おれ「!?」


 パーティー解散の危機!


 お前ら

 助けて!



一九、かまくら在住のとるにたらない不定形生物さん


 早いな、おい……


 怒涛の展開に

 おれ唖然



二0、火口付近在住のとるにたらない不定形生物さん


 せめて

 平民を虐げる貴族の在り方を問う

 みたいな風刺的なイベントを挟んでほしかった

 っていうのは、おれのわがままなの?



二一、山腹巣穴在住のとるにたらない不定形生物さん


 わかるよ


 子狸と喧嘩した勇者さんが

 宿屋で一人


勇者「なによ、あのばか……」


 みたいなね



二二、管理人だよ


 何それ


 ちょっとときめいた



二三、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 おい。ときめいてる場合か


騎士「……ちょっと一緒に来てくれる?」


 おい。連行されそうになっとる


子狸「あ、はい……」


 連行された……


勇者「…………」



 注釈


・魔王討伐の旅シリーズ


 勇者が旅立ち、魔王を倒すまでの一連のシナリオは、魔物たちにとって一大事業である。

 そのため、関連する河を閲覧しやすいよう一括して編集、および保管してある。

 今回の「子狸編」を例に挙げるなら、「うっかり勇者誕生編」と「うっかり勇者旅立ち編」の二編が正統なシリーズにあたる。



・身分証明書


 街と街を行き来する商人等は、街を出入りする際に貨物のチェックと身分証明書の提示を求められる。

 一部の貴族が持つ「剣」は、完全なオーダーメイド品である。

 戦争の主軸が「武器」から「魔法」へシフトするにつれて、「剣」や「槍」などの鋳造技術が失われたためだ。

 よって「剣術」を伝える貴族は、専門の鍛冶職人を召し抱えて、剣を打ち鍛えさせている。

 剣の柄尻に家紋を刻むのは、大貴族のステイタスみたいなもの。

 政治の形態が異なる帝国や連合国においては、そもそも剣士がいない。

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