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しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
子狸ぃ……by魔物一同
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「勇者さんの“漢”を見たい」part7

二八六、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 なるほど

 たしかに

 おれたちに訊くのが一番だな


 だが

 多少は頭が回るとはいえ

 しょせんは子供だな

 と

 おれは内心であざ笑います


おれ「それはな……」


勇者「それは?」


おれ「ばかめ!」


 と

 地面に転がっている

 マイこん棒を拾って

 反撃ののろしを上げます!



二八七、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 おれたち☆魔物!



二八八、管理人だよ


 お前ら☆魔物!



二八九、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 ひゅーひゅー!



二九0、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 お前らが歌ってる間に

 おれ一刀両断されました

 と

 お前らに報告します



二九一、管理人だよ


 おれは

 ちゃんと見てたよ!


 こん棒

 切られなくて良かったね



二九二、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 お前

 おれたちに対してだけは

 ときどき毒を吐きますね……


 ステルスモードに移行

 青いひとと合流します



二九三、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 鬼のひとと合流しました

 ハイタッチして友情を再確認します


 鬼のひとを

 打ち破った勇者は

 マントをひるがえして

 聖☆剣を仕舞います


勇者「主人に義理立て? 下らない……」


 と

 吐き捨てて

 来た道を

 戻りはじめました


 なんとなく

 ついて歩く子狸に

 感心したようです


勇者「その調子よ。あとは、そうね……こういう暗いところ、わたし苦手なの。先に立って歩くこと」


 ひょっとして自分に気があるのでは?

 と勘違いした子狸が

 はりきって提案します


子狸「まかせて! あ、そうだ、明かりつける? おれ、発光の魔法はけっこう得意なんだ」


 おれ

 ちょっと泣けてきた……

 と

 お前らに悲哀を訴えます


勇者「うるさい。なんのために、わたしが剣を仕舞ったと思ってるの?」


子狸「……鞘に入らないから?」


勇者「あなたと話してると、退屈しないわ」



二九四、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 何やら物音が聞こえたという設定で

 マイこん棒を構えて

 洞窟内部に侵入します



二九五、王国在住の現実を生きる小人さん


 焚き火の見張り番という各目で

 洞窟の外で待機します


 あえて戦力を分断するのが

 ニクい演出です

 と自画自賛します



二九六、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


勇者「外にも二体いるの。こっちの居場所を教えてもトクすること、ないでしょ?」


子狸「そっか。君、頭いいんだね」


 お前

 会うひと会うひとに

 そう言ってるじゃねーか……

 と内心でツッコミます


勇者「……そう? ありがと」


 勇者も呆れてます


勇者「ところで、さっきも言ったけど、その口のききかた……」


子狸「あ、もうひとり来たよ」


 お前ら

 帝国のの

 奮闘に刮目せよ

 とプレッシャーをかけます



二九七、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 ていうか

 会話が丸聞こえなんだよぉ……


 なんで

 おれのときだけ

 こんな試されるようなシチュエーションなの?

 と不平等を嘆きつつ


おれ「貴様ら……!?」


 誤魔化しようがない距離なので

 こん棒を振り回しながら

 勇者と子狸に向かって

 駆け出します



二九八、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 由緒正しい亜人走りで近寄ってくる鬼のひとに

 勇者は

 子狸の耳元で囁きます


勇者「撃って」


 後ろから両肩を支えられて

 どぎまぎしている子狸さんには

 申し訳ありませんが

 お前

 どう見ても

 盾にされてますよ?



二九九、管理人だよ


 なんで

 女の人って

 こういうとき

 みんな

 おれを盾にするんだろう……?


 撃ちますね


おれ「チク・タク・ディグ!」



三00、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 避けますね


 子狸の指先から放たれる空気弾


 迫り来る空気の弾丸を

 おれ跳躍し

 華麗に回避します



三0一、管理人だよ


 跳んだ!?


 なんで避けるの!?


 レベル1が

 やっていい動きじゃないでしょ……


おれ「ディグ! ディグ!」



三0二、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 連射……だと?


 子狸め

 すっかり

 大きくなりやがって……

 と

 感涙にむせびつつ

 空中で身をひねって

 全弾回避します


子狸「ちょっ……!」


 人間にやられるのは

 本望なのですが

 お前にやられるのは

 なんか

 納得いきません……


 軽やかな身のこなしで

 着地し

 じりじりと間合いを詰めます


おれ「お前とおれ、どちらが正しいか。つまりはそういうことだ……」



三0三、管理人だよ


おれ「……手を出さないで。おれがやる。おれがやらなくちゃ、だめなんだ……!」


 じりじりと回り込みながら

 全身に魔☆力をみなぎらせます……!



三0四、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


おれ「そうだ、それでいい。そうでなければならない……」


 マイこん棒を水平に構えて

 おれ考案の最強ポーズをとります



三0五、管理人だよ


おれ「……違う出逢い方をしてたなら、おれたち……」


お前「意味のない仮定だ」


おれ「意味なんてっ……!」



三0六、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


おれ「言うな! お前は……人間だ。おれたちとは、違う……」


お前「そんなのっ……!」


おれ「来い……!」


お前「この、わからず屋!」



三0七、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 ファイナルバトルに突入したお前らには悪いんだけど……


 勇者さん

 お前らの横を

 通過していきましたよ?

 と

 言っても無駄だろうなと

 なかば確信しつつも

 健気に忠告します


お前ら「うおおおおおっ!」


 ですよね


 はいはい

 空気を読めなくて

 ごめんなさいね


 青いひととの別れを惜しみつつ

 勇者の

 あとを追います



三0八、王国在住の現実を生きる小人さん


 その手があったか……



三0九、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 おーい


 主催

 お前は

 あっちに行ってくれるなよ?



三一0、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 まさかの

 子狸☆離脱



三一一、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 正直

 すまん


 おれの育て方が悪かった……


 お前ら

 あとは任せた


 例の件だが


 責任は

 子狸が取る



三一二、王国在住の現実を生きる小人さん


 了解


 お前ら

 お遊びは

 これまでです


 焚き火に

 薪をくべながら

 おれは言います


おれ「やはり貴様がそうなのか」


 背中で語るおれに

 洞窟から出てきた勇者が

 ぴたりと足を止めました


勇者「残るはあなただけよ」


 おれは

 ゆっくりと立ち上がり

 焚き火を踏み消します


おれ「違うな」


 そして

 おもむろに振り返ると

 片手を上げます


おれ「大人しく精霊の宝剣を渡してもらおう」


 背後の森から

 姿を現す


 おれ

 と

 おれ


勇者「……渡せと言われても、そんなもの知らないわ」


おれ「それも違う。精霊に何を言われたのかは知らんが……浅はかだったな。すぐに後悔することになる。すぐにな……」


 樹上から飛び降りてくる

 おれ


 一斉に立ち上がる

 周囲の茂みに潜んでいた

 おれ

 おれ

 おれ

 おれ……



 総勢


 20人


 全部おれ!


おれ「かかれ!」


 おれAの号令に従い

 おれB~Uが

 ところ狭しと

 勇者に

 殺到します



三一三、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


勇者「小賢しい真似を……」


 おや?

 勇者の様子が……


勇者「このわたしを……罠に……」


 すとんと

 表情が落ちました

 と

 お前らに報告します



三一四、王国在住の現実を生きる小人さん


 聖☆剣☆抜☆刀


 発動と同時に


 おれC

 おれD

 おれE

 は

 帰らぬひととなりました


 おれB

 おれF

 で

 連携攻撃を

 仕掛けます



三一五、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 勇者は

 一向にひるみません


 おい

 聞いてた話と

 違います


 王国のの

 連携攻撃を

 ものともしてません



三一六、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 待て

 見極める


 波状攻撃してみてくれ



三一七、王国在住の現実を生きる小人さん


 了解


 おれF

 反撃で召されました


 おれB

 いったん後退

 おれG

 おれH

 と合流し再突入


 おれI

 おれJ

 時間差で突撃


 なんだ?

 なんで

 当たらない?


 剣の扱いも

 身のこなしも

 大雑把なのに


 妙に余裕がある


 目がいいのか?



三一八、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 いや

 バランスがいいんだ

 体勢が崩れない


 見たことのない

 剣術だな


 しいていうなら

 昔の剣士の

 我流剣術に近いが……


 違うな


 なんだ?

 なんか……


 おい

 人間の動きじゃない

 速いとかじゃなくて


 正確すぎる



三一九、海底洞窟のとるにたらない不定形生物さん


 おい

 訓練で身につくような

 技じゃないぞ


 それどころか

 技ですらない


 才能とか

 そういう次元でもない


 こいつは……


 おい

 王都の!



三二0、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 アリア家か!?



三二一、王国在住の現実を生きる小人さん


 アリア家!?



三二二、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 アリア家!?



三二三、管理人だよ


 あの子

 アリアさんっていうの?



三二四、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 あのアリア家……かよ



三二五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 最悪だ……


 宰相

 あいつ……


 関わり合いになるのを

 避けたな!?


 海底の!

 至急

 他のひとたちに連絡を


 今回の勇者は


 王国の


 黒幕だ……!



 登場人物紹介


・勇者さん


 王国の大貴族、アリア家の令嬢。

 父に命じられて領地を見回っていたところ、青いひとに魔法レベルを開放されて聖☆剣の保持者となる。

 それまでの経緯がひどかったため、魔王が復活したと勘違いして旅に出た。

 勇者という存在に懐疑の念を抱いているが、自分が勇者になるぶんは構わないらしい。

 典型的すぎて逆に珍しいほど貴族貴族していて、完全に平民を見下している。

 アリア家というのは、代々王家に仕える重臣の家柄だが、そのじつ王国の王座を虎視眈々と狙う「謎の黒幕」ポジションの大御所である。

 帝国との戦端を開こうとしたり、内乱の糸を引いたりと健気にがんばってきた。

 そんなことを先祖代々繰り返してきたので、遺伝子レベルで感情の在り方が独自の方向に突き進んでいるらしい。

 剣士としての技量や身体能力そのものは飛び抜けて優れているわけではないが、自在に感情を除外できるため、怒りや恐怖に左右されることがない。

 子狸いわく「ちょっと可愛い」容姿をしているとのこと。



 注釈


・全部おれ


 正式名称は分身魔法。オリジナルと同等の能力を持ったコピーを、いくらでも増殖できる反則的な魔法である。

 バウマフ家の人間がいないところでこれをやると引っ込みがつかなくなるため、禁じ手のひとつとされている。

 とくにレベル3以上の魔物が「全部おれ」すると、人間側の心が折れてしまう。

 取り締まりを行っているのは通称「ファイブスターズ」と呼ばれる最高位の魔物たちで、そこには多分に妬みの気持ちも混ざっているようだ。

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