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しいていうならお前の横を歩いてるのが魔王  作者: たぴ岡
子狸ぃ……by魔物一同
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「勇者さんの“漢”を見たい」part6

二0五、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 お前ら

 覚悟はいいか?


 おれは出来てる



二0六、王国在住の現実を生きる小人さん


 おれも出来てる


 はじまるぜ……

 子狸さんのスーパーうっかりタイムがよぅ……



二0七、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 ごくり……



二0八、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 ごくり……



二0九、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 ごくり……



二一0、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


子狸「……う?」


 その日

 子狸が目を覚ますと


 彼は

 見知らぬ女の子に


 踏まれていた……



二一一、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 踏まれ……え?


 勇者さん?



二一二、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 踏まれとる!


 ちょっ


 この女……


 おれたちの子狸さんに

 なにしてくれてんの!?



 いいぞ

 もっとやれ



二一三、王国在住の現実を生きる小人さん


 違うだろ

 子狸さんを踏んでいいのは

 おれたちだけだ!



 ああ……

 でも、この構図


 なんか

 しっくりくるな



二一四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


勇者「お目覚め?」


子狸「あ、はい……」


 なぜか敬語の子狸


子狸「えっと……あれ? おれ踏まれてる……」


勇者「あなたのせいよ。あなたのせいで、魔物につかまったわ。どうしてくれるの?」


 そう来たか……



二一五、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 なるほど


 正直

 その発想はなかった


 だが

 何を要求するつもりだ?


 旅の仲間に魔法使いが欲しいなら

 家から連れてくればいいだけのこと……

 貴族なんだろ?



二一六、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 確定情報じゃないな


 しかし

 現実問題として

 いかなる事情があろうと

 平民の剣士は食っていけない



二一七、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


子狸「え? あ……ごめん」


 とりあえず謝罪する子狸


子狸「えっとぉ……。あ、でも大丈夫だよ! すぐに勇者が助けに来てくれるから」


 え?



二一八、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 え?



二一九、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 え?



 あ!

 こいつ

 さては何もわかってねーな!?



二二0、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 いや!

 考えようによってはファインプレー!


 彼女が勇者だって

 ひと目でわかるのはおかしい



二二一、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 !


 今回は

 打ち合わせの時間がなかった……


 宰相は

 それを見越してたのか!


 大人って汚い!

 今度

 お歳暮

 贈っておきますね(にこっ



二二二、王国在住の現実を生きる小人さん


 うむ……

 さすがに苦労してる人間は違うな


 だが

 勇者の

 存在を知ってる時点で

 おかしくないか?



二二三、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


お嬢「……なんでそんなことがわかるの?」


 はい

 鬼のひとチームに1ポイント加算



二二四、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 あ

 くそっ


 サービス問題だったな……


 次は貰うぜ


 うっかり

 おれたちから聞いたことをバラす

 と見た



二二五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


子狸「え? なんでって……なんで?」


 正解は

 質問の意図を理解できない

 でした



二二六、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 言葉を失うって


 こういうことを言うんだなぁ……



二二七、王国在住の現実を生きる小人さん


 さすがバウマフ家



二二八、帝国在住の現実を生きる小人さん


 バウマフは格が違った……



二二九、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


お嬢「……勇者が生まれたなんて聞いてないわ。仮に生まれてたとしても、あなたはなんでそれを知ってるの?」


 と

 子供でもわかるよう

 懇切丁寧に

 説明してあげる勇者さん



 子狸さん

 いいから

 こっちへ来なさい



二三0、管理人だよ


 お前ら見てる?


 あのさ

 この子が

 何を言ってるのか

 よくわからないんだけど……


 ていうか

 ちょっと可愛いよね

 おれ

 緊張するんだけど



二三一、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 問題ない

 想定の範囲内だ


お前「夢で知らない女の人にそう言われた」と言え


 わかったな?

 このエロ狸が



二三二、管理人だよ


 ありがとう!


 言ったよ


 あと

 エロくありません



二三三、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 いや

 エロいよ


 お前

 ひまさえあれば

 女の子のことを考えてるだろ?


 まわりの人間が

 みんなそうだと思ったら

 大間違いなんだぞ?


 このエロ狸が



二三四、管理人だよ


 ごめん

 おれ

 エロかった……



二三五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 わかればいいよ

 わかれば……


 それは

 恥ずかしいことじゃないからな


お嬢「あの女ね。……余計なことを」


 おい

 理解が早いな



二三六、管理人だよ


 あの女?


 だれ?



二三七、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 お前です


 おっと

 とにかく

 会話してみろ


 話題は

 お前に任せる



二三八、管理人だよ


 うん

 わかった


おれ「そのマント、かっこいいね!」


 どう?


 可愛いね

 なんて

 いきなり言うのおかしいし



二三九、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 安心しろ

 十分おかしい


 なんの

 脈絡もねえ……



二四0、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


お嬢「とにかく。わたしが魔物につかまったのは、あなたのせいなの。わかる?」


 華麗にスルーされました



二四一、管理人だよ


 え~……?


 たぶん照れてるんだよ


 って

 お前どうした!?


 なんで寝てるの?



二四二、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 気にするな


 上流は見んでいい

 目の前のことに集中しろ


 というか

 今更かよ……



二四三、管理人


 おう


 というか

 お前らは

 この子のこと

 お嬢って呼んでるの?


 もしかして貴族さま?

 身分が違うんだな……

 ちょっと残念



二四四、王国在住の現実を生きる小人さん


 お前が残念


 いいから

 さっさと返事しろ


 お前の反応が

 にぶすぎて

 いらいらしてるぞ



二四五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん


 慌てて返事をする子狸


子狸「あ、ごめん。ちょっとわからない」


 やはり

 わかっていなかった


お嬢「……そうなの。そう……」


 依然

 子狸は踏まれている


お嬢「じゃあ、こうしましょう。わからなくてもいいわ。あなた、わたしの命令に従いなさい。名案だと思うの。どう?」


 名案だと思います



二四六、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 同じく

 この上ないかと



二四七、管理人だよ


 そうなの?


 なんか

 少し無茶なこと言われてる気がするんだけど……



二四八、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 少しなのか……


 まあいいよ

 好きなように答えろ


 おれたちがついてる

 だろ?



二四九、管理人だよ


 おう!


 じゃあ……


おれ「わかった。何したらいい?」


 あんまり

 逆らわないほうがいいよね



二五0、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 流されるままだな


 それでこそ

 おれたちの

 管理人だ



二五一、管理人だよ


 いたの!?


 声かけてよぉ~


 どう?

 さいきん

 元気してる?


 ちゃんと

 ごはん食べてる?



二五二、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 いえ

 いちおう

 こう見えても

 不老不死なんで……


 それより

 管理人さん

 いい加減

 起き上がられては

 いかがでしょうか?



二五三、管理人だよ


 あ、うん


 起きました


 優しい子なんだね

 足どけてくれた



二五四、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 そうだね

 優しいね


お嬢「よろしい。それじゃあ、あなた、わたしの身の回りのお世話をしてね。旅してる間、ずっと」


子狸「……ん?」


 優しいね



二五五、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 そうだね

 優しいね



二五六、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 そうだね

 優しいね



 海のひと

 おれは

 わかってる



二六六、海底都市在住のごく平凡な人魚さん


 ばか(照



二六七、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 お前ら

 そのネタ禁止だって

 言っただろー!


子狸「ずっと?」


お嬢「そう。ずっと」


子狸「ずっと……」


 悩む子狸


 何を悩んでいるのか……


 お前らは

 おわかりですね?


子狸「どれくらい?」


 正解は

 期間でした



二六八、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 まったく問題ない



二六九、王国在住の現実を生きる小人さん


 だな

 初級者問題だぜ



二七0、管理人だよ


 お前ら

 遊んでないで

 助けてくれませんか


 いま思い出したんだけど

 おれ……


 父さんと母さんに

 何も言ってないよ


 あれ?

 何を言うんだっけ?



二七一、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 ああ

 そうだよな

 忘れてるよな


 まあ……

 それなら

 ためしにそう言ってみたら?



二七二、管理人だよ


 おう


おれ「両親の許可がないと、遠出はちょっと……」


 彼女には悪いけど

 おれ……


 あ!



二七三、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 お

 思い出したか?


子狸「お土産どうしよう……」


 と

 軽くフェイントを交えつつぅ~


お嬢「ご両親のことなら心配いらないわ」


 スルーされぇの~


お嬢「あなた平民でしょ? わたしは貴族なの。その問題はこれでいいわね」


 はい

 出ました


 典型的な貴族です

 本当にありがとうございました



二七四、帝国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 いっそ

 すがすがしいわ


 本当にありがとうございました



二七五、王国在住の現実を生きる小人さん


 違うからね?

 典型的すぎて

 逆に

 めったにいないレベルだからね?


 平民にも優しくってのが

 さいきんの貴族の

 スタンダードだよ?

 本当だよ?


 ほら

 勇者とか

 基本

 平民出身だしさ



二七六、管理人だよ


 勇者!


 そうだった


おれ「いや! でも、おれ。勇者についていかなくちゃ……」


お嬢「それも夢?」


 夢?


 夢って

 なんだっけ



二七七、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 未来への

 架け橋かな……


お嬢「でも、それなら話は早いわね。あの子も懐いてるみたいだし」


 お馬さんのことかな?

 けっこう可愛がってるのか……


 そして

 この話の流れは……



二七八、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


お嬢「あなたは、どう思う? 勇者サマについて」


 子狸に背を向けて

 てくてくと

 鉄格子の前に移動


 いよいよか?

 いよいよなのか?


子狸「……ん?」


 子狸さん

 勇者よりも

 まず話の流れに

 ついていきましょうね


お嬢「わたしたちにとってはね、邪魔者なの。どちらかと言えば、魔王がだけれど」


 こいつは……


 おい

 王国の



二七九、王国在住の現実を生きる小人さん


 おう

 準備しておく



二八0、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 頼んだ


 おれは

 念のために

 標的指定の守護魔法を

 子狸にかける


お嬢「だから、今回はチャンスなの。お父さまもお喜びになってらしたわ」



二八一、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 肩越しに

 子狸を振り返り


お嬢「あ、言い忘れてたけど」


 聖☆剣☆疾☆走


お嬢「わたし、勇者さまだから。口のききかたには気をつけてね?」


 ひゅー!

 鉄格子を

 ものともしねーぜ!


 お前ら

 作戦再開!



二八二、管理人だよ


 えっと……


 ごめん

 ちょっと待って


 聖剣?


 この子が勇者なの?


 女の子なんだけど……


 あ

 本当は男の子なのかな……?


 ちょっぴり

 ショックです

 と本心を打ち明けます



二八三、海底洞窟在住のとるにたらない不定形生物さん


 大丈夫

 お前の大好きな

 女の子です

 と子狸の鋭気を養います



二八四、連合国在住の現実を生きる小人さん(出張中


 鉄格子を

 あめみたいに切断して

 牢屋の外に出てきた

 勇者が


 寝ているおれに

 歩み寄り

 聖☆剣を突きつけます


勇者「起こして」


 と

 子狸に

 おれの覚醒を促します


子狸「あ、うん」


 勇者のあとに続いて

 巣穴を出てきた

 子狸が

 魔法で

 などと

 おれたちのプランに

 気がついてくれるはずもなく


 ふつうに

 おれの肩を揺すります


 それだと

 お前にやらせる意味がないだろ

 と

 おれは内心でツッコミます


勇者「……まあいいけど」


 早くも

 勇者は諦め気味です


 諦めんなよ!

 と

 おれは内心でエールを送ります


 とりあえず

 仕方ないので起きます


おれ「……う?」


 間近で見る聖☆剣は

 意外とまぶしくない

 と

 お前らに報告します



二八五、王都在住のとるにたらない不定形生物さん(出張中


 何回か

 それで失敗しているので

 学習の成果です

 と胸を張ります


 今回は

 具がないので

 少し不安でしたが

 うまく行ったようで何よりです


 ところで

 お前

 脅されてますけど

 大丈夫ですか?


勇者「言いなさい。魔王はどこにいるの?」



 注釈


・魔物


 人類の天敵とされる、高い知性を有する不思議な生き物たち。人語を解し、ときに狡猾な手段を用いて人間を襲う。

 死骸は残らず、致命傷を負うと肉体が消滅するということになっている。魔法との関連性があるのではないか……と言われている。

 ときおり魔王とかいうのが登場する。魔王の言うことを、魔物はホイホイと聞く。きっと魔物の親玉なのだろうなあ……どうだろうなあ……。

 国家間の情勢が怪しくなると魔王が出てくるので、負の感情が凝り固まったものなのかなあ? どうなんでしょ……。

 そんな魔物たちの普段の暮らしぶりは、なかなかどうして謎に包まれていて興味深い。動物たちとはわりと仲良くやっているらしい。


 以下の内容は、バウマフ家と各国首脳陣(一部)が理解していること。

 じつは不老不死の存在である。ひとりひとりの担当地区が広大であるため何かと誤解されがちだが、言うほど個体数は多くない。

 狭義における「生物」とは一線を画し、その正体は魔法そのものだったりする。

 およそ千年前にバウマフ家の先祖(開祖と呼ばれる)が「魔法に心を与えた」ことで、うっかり誕生した。

 つまり意思を持った「魔法」であるため、人間が扱えないレベルの高度な魔法を難なく操れる。しかも無詠唱。

 寿命という概念がないため、何より退屈を嫌い、人類への干渉を度重ね行ってきた。

 当初は善行をメインにしていたのだが、おもにバウマフ家を熱く見守っていたため、ツッコミすぎて人格が多少(?)歪む。

 やがてバウマフさんちのひとが怒らない範囲でよそさまにちょっかいを出しはじめ、ふと気が付けば不倶戴天ポジションをゲットしていた。

 リアクションが面白いから、つい……と本人たちは自供している。しかし反省はしなかった。



・夢


 未来への架け橋である。

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