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第二十四話 変わらない物
「おいゼロ!!起きろ!!」

ん・・・・?
俺は・・・・・?
あ、そうか・・・レンカの投げた鞘に当たって気絶したのか・・・
そうか・・・なら・・・早く起きなければ・・・

『は、早く起きろ・・・きょ、今日は大切な日だろ・・・?は、早くしないと・・・こ、困る・・・』

静かに目を開け、辺りを見渡すゼロ
自分はいつの間にかベッドに運ばれ、寝ていた・・・はず
だが、自分が居るのは保健室と呼べるような場所ではなく、とある一軒家の一室
窓から外を見て、ここが二回だと言う事に気付いたゼロ
一度体を起して、声のした方を見るゼロ
そこには、普段身に纏っている装備ではなく、普段着を着ているレンカの姿があった
だが、その顔はほのかに赤く、何かを照れていた

「よ、ようやく起きたか・・・きょ、今日はあの日なんだぞ?いつまでも寝てないで、しっかり起きてくれ・・・」

「???レンカ、何を言っている?」

「だ、だから・・・きょ、今日は・・・その・・・」

恥ずかしそうに体をもじもじさせるレンカ
そして、その顔はトマトのように真っ赤になっていて、自分に何かを告げるのを戸惑っていた

「わ、私と・・・・お前の・・・その・・・け、結婚式・・・・だろ・・・?」

「・・・・・・・・・・は?」

「な、何度も言わせるな!だから・・・今日は結婚式だと言っているんだ!!分かったら着替えろ!馬鹿者が!!」

突然、レンカが突然枕をゼロに投げつけた
それが顔に直撃し、辺り一面が真っ暗になった
枕が重力によって落ちると、そこには・・・

「じ、じろじろ見るな・・・馬鹿・・・」

もじもじしながらこちらを見つめる純白のウエディングドレスを着たレンカ・・・
ゼロとレンカは結婚式の式場に居たのだ
(・・・ちょっと待て!?俺達は一軒家の二階に居たのではないのか!?)と、ゼロは心の底から叫んだ
だが、その声は届くことなく、顔を隠した神父により話は進められた

『えぇー、二人は常にお互いを愛し、敬い、慰め、助け変わることなく、その健やかな時も、病める時も、富める時も、貧しいと気も・・・』

すらすらと噛むことなくと読みあげる神父
しかし、その声に違和感を感じたゼロ・・・
じっと神父を見ると、その神父の顔が少しずつ晴れて行き、ようやく顔を見る事が出来た

『死が二人を分かつまで、命の日が続く限り、汝の夫、妻に対して、堅く節操を守る事を誓いますか?』

「・・・おい待てレイヴン。なんでお前が神父なんだ?」

『細かい事は気にしなーい。さぁ、とっとと愛を誓うんだゼロ!じゃないと、乱入者が・・・』

「・・・何を馬鹿な事を言っている。こんな晴れ舞台に自ら飛び込んでくる馬鹿な乱入者など居る訳がなかろう?」

ゼロが神父役をしていたレイヴンにそう言い放ち、呆れたようにため息をついた
だが、ゼロがそう言った瞬間、突然式場のドアが蹴破られた

「待って!!私はまだ諦めてない!!」

ドアを蹴破り、吹き飛んだドアがレンカの方へと飛んでいった
ゼロは慌てて対応しようとしたのだが、レンカは隠し持っていたのか、どこからか太刀を取り出し、鞘から刀を出し、ドアを真っ二つに切り裂いた
ゼロは今目の前で起こっている事が現実でない事を死ぬほど願った
何故・・・・何故ソフィアがウエディングドレスで乱入してきたんだ・・・?
心の声がソフィアに届いたのか、ソフィアは凄いスピードでレンカとの距離を詰めた

「レンカァァァァァァ!!!」

「ソフィアァァァァァ!!!」

太刀とナイフがぶつかり合い、ガチン!!と金属音が鳴り響いた
ゼロはとばっちりを受けないよう遠くに離れようとしたのだが
バッ!!とこっちを見てきた花嫁(オーラがめっちゃ怖い)が一斉に見つめてきた

「待ってろゼロ!今この小娘を殺って式を続けるからな!!」

「待っててねゼロ!こんな胸だけが大きい単細胞なんてすぐに葬り去って、一緒に平和に暮らそう!!」

・・・普通の男が女性からこんなに熱烈なラブコールを受ければあっさり「OK」してしまうだろう。
だが、ゼロは「OK」と言う言葉が口にできなかった
まず、結婚式の式場で、花嫁の座を争う花嫁二人をどう対処すればいいのか分からないのと、先ほどから弓とナイフが飛んできたり、真っ二つになった物を避けたりするのに精一杯だった
普段のゼロなら簡単に避けて、平然としているだろうが、目の前で起こっている現実が、あまりにも悲惨なため、落ちつけ落ちつけと、心の中で必死に叫んでいたのである
というか、ソフィアは平和に暮らそうと言っている割に、やっている事は完璧な殺し合いである。
これで、平和的にと言われても、ゼロはとても困った

「おいレイヴン・・・どういうことだ?」

「あっはっは・・・君が悪かったんだよ?二人の告白を棒に振るったと思ったら、いきなりレンカに告白してさ・・・ソフィアが発狂したの覚えてる?」

「ま、待て・・・まずそこから俺は知らないんだが・・・」

「その後に、ハーツ村に住んでた娘達も現れてさ・・・「ゼロは私のだ!」ってソフィアが言って、すんごいディープなキスしたんだよ?覚えてないの?」

「い、いや待て・・・俺はそんなことした記憶もなければ、された記憶もないぞ?・・・というか・・・まず、俺は婚約指輪すら買っていないんだが・・・」

ゼロがそう呟いた瞬間、レイヴンは何かを感じ取ったのか、椅子と椅子の間に緊急回避をして避けた
それとほぼ同時に、ゼロに向かい真っ二つになった椅子や、ナイフ、弓矢が飛んできた
ゼロはその場で回避し、攻撃を全てかわしたが、こちらを睨んでくる花嫁達の目はとてもじゃないが、人の目ではなかった・・・

「ゼロ・・・私に結婚を迫っておいて婚約指輪を買っていないだと・・・?ちゃんと渡してくれたではないか!!」

何故か左手の薬指には、美しく輝く指輪があり、ゼロが私にくれたと、レンカが主張した

「ゼロ・・・私にもちゃんと渡してくれたよね・・・?「お前を一生幸せにする」って言ったじゃない・・・」

ソフィアの左手の薬指を見ると、レンカ同様指輪をしており、それを渡したのがゼロと主張
しかし、本人であるゼロはまったくと言うほど覚えていないので、一体何が何だか分からないような顔をしている

「・・・ゼロ・・・これはどういうことだ・・・?」

「・・・ゼロ、許してあげるから正直に答えテ・・・?」

二人とも、もうすでに人間と言える物ではない存在になってしまったような気がした
後ろから燃え上がる黒い炎は、まるで闘気のように辺りを吹き飛ばしていた
一歩歩くごとに、地面は悲鳴を上げて、床に敷き詰められたパネルが砕け、宙へ舞った

「お、落ちつけ!!」

ゼロが必死になって止めようとするが、二人は一向に止まる気配を見せない・・・
そんな中、レイヴンは椅子の隙間からこんな事を言っていた
「ゼロ・・・君はいい友達だったよ・・・」と・・・


「さぁゼロ・・・?心の準備はいいか・・・・?」

「ゼロ・・・ちゃーんと話会おうねー?・・・ベッドの上で。」

ソフィアが物騒な事を言ったが、ゼロはどうしていいか分からず、後ろに下がった
そして、突然頭の上に瓦礫が落下し、ゼロは気を失った・・・









「・・・・はっ!?」

ゼロは、真っ白な空間の中に居た
カーテンで遮られていて、辺りは見えないが、薬品の独特の匂いのするこの場所は・・・
カーテンをそっと開けると、そこには昔に少しばかり世話になった保健室の光景が広がっていた

「・・・夢・・・だったのか?」

良かった・・・と、心の中でため息をつくゼロ
当然だろう。あんな事が現実で起きたら、まず自分は明日の朝日は拝めないだろう
それに、レンカもソフィアも、あそこまで起こる訳・・・・・・・・ないだろう。

「・・・っ・・・レンカめ・・・思いっきり投げやがったな・・・」

まだ痛む頭にそっと手を当て、そのまま独り言をつぶやいた
こんなに乱暴な言葉を使うのはいつ以来だろう・・・

「・・・まったく、レンカもソフィアも・・・少しは自重してくれたっていいだろ・・・」

頭をさすりながらベッドから降りて、脱がされていた装備を身に纏う
だが、乱暴な言葉を使ってはいるが、少しだけ頬が緩んでいるのはゼロにも分からない・・・

「・・・さて、行くか。」

目的はない・・・だが、太陽の位置を見る限り、まだ訓練はやっている時間・・・
ならば、まだ見終わっていない、レイヴンの訓練や、教官の訓練をもう一度見なければ・・・
保健室から外へ出て、一度大きく深呼吸すると、ゼロは歩き出した





「・・・・おっ、やっているな」

先ほどとは違い、レンカ達も訓練生達に訓練をしていて、ソフィアも真剣な眼差しで訓練をしている
・・・先ほどの事はあまり思い出したくないが、ゼロはまだ見終わっていない、レイヴンと教官の訓練を見に行った

こそこそと隠れるように移動しているのは、夢の中でレンカとソフィアにボコボコにされたトラウマのせいだろう


「ほらそこ!!休まず追撃!!状況を見て判断する!!」

「・・・レイヴン」

レイヴンの後ろにひょっこり現れたゼロ
すると、レイヴンは分かっていたかのようにゼロを見た


「まったく・・・遅すぎだよ?君はいつもそうだよね・・・皆がピンチの時には遅れて登場するのに、それが終わるとすぐにどこか行っちゃうんだもん・・・」

「・・・すまないな。だが、俺は別に正義の味方を気取ってるわけじゃないぞ?」

「そんなの分かってるよ。君はどこまで行っても、君だからね。」

「・・・・答えになっていないぞ」

「ははっ、それもそうか。」

昔のようなやりとりだ・・・
懐かしい・・・レイヴンとこうやって話すのも随分久しぶりのように感じられる・・・

「ほらそこ!!ゼロが居るのに、だらけない!!」

ビクッ!!とレイヴンが大きな声でゼロの名前を呼んだため、肩を震わせるゼロ・・・
だが、この時は決して振り向かなかった
レンカやソフィアと目を合わせれば・・・先ほど見た夢のような事になりかねない・・・

故に、ゼロは振り返らなかった

「・・・レイヴン、お前は相変わらず教えるのが下手だな・・・」

「なぁっ!?いきなり何言うんだよ!?俺の訓練のどこが下手だって!?・・・あ」

「・・・喋り方が昔に戻っているぞ?」

「う、うるさいよ!!仕方ないでしょ!?」

うっかり、昔の喋り方に戻ったレイヴンを注意して、ゼロは少しにやにやと笑った
それを見て、レイヴンはむっとなり、ゼロの方に手を回した

「この赤髪むっつりスケベーーー!!」

「だ、誰がむっつりスケベだ!?離せ!!」

右拳をガンガンとゼロにぶつけ、じゃれあう二人
それを見て、ぽかんと口を開けたまま驚く訓練生達・・・
昔も・・・こうやってお互いにじゃれあった記憶がある・・・

やはり・・・変わらないな・・・コイツ(レイヴン)は・・・

『・・・嘘・・・まさか、昔にゼロにかかってた同性愛疑惑って、本当だったの・・・?』

『な!?え、縁起でもない事言うなソフィー!!そ、そんなわけないだろう!?あの、ゼロが・・・ど、同性愛など・・・』

『・・・どうしてレイヴンは良くて、私は駄目なの・・・?まさか・・・ゼロって、スレンダーな体型の子が好みなの・・・?』

『そ、それでは私はどうしたらいいのだ!?』

後ろの方で、とんでもない単語が聞こえたので、バッ!!とレイヴンから離れるゼロ
レイヴンも会話を聞いていたのか、ほぼ同じタイミングで離れた

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・さぁ皆!続けようか!!ぜ、ゼロは教官の所行ってきなよ!!ね!?」

「あ、あぁ!!世話になったな!!」

無言でお互いを見つめ合い、そしてアイコンタクトでこのままでは変なうわさが流れると悟った二人は、潔く離れることにした


『あ、離れた・・・なんだ、ゼロもレイヴンも、同性愛主義者ではなかったのか・・・』

『・・・分からない。でも、アイコンタクトで「またベッドの上で会おう」って言ったのかもしれない・・・』

『え、縁起でもない事を言うなぁ!!!』

しかし、レンカとソフィアは勘違いしたままで、教官の所へ向かうゼロは、一度大きなため息を吐いて教官の教えるハンマーの訓練場の所へ向かった・・・






「おらおらおらぁぁ!!お前等かかってこぉおおおおい!!」

ハンマーを教えている教官の所へ向かうと、教官が無装備で訓練生達を投げ飛ばしていた
恐らく、教官の事だ・・・「俺に一発入れれば合格だァ!!」とか言って、訓練生達と模擬戦をしているのだろう

「おぉ!!ゼロ!!丁度いい機会だ!!お前達、見てろよぉ!!」

ゼロを見つけた教官が、こっちへ来いと手招きをした
ゼロはそれを見て少し微笑むと、前へと進んだ

「さぁゼロ!!かかってこい!!」

「・・・・勝利条件は?」

「簡単だ!!俺の腰にあるこの紐を奪えばお前の勝ち!俺にブッ飛ばされたら、お前の負けだ!!」

単純だが、とても難しい訓練だ・・・
何せ、相手があの剛腕の持ち主の教官だ。
訓練生達にとっては、素手でティガレックスに挑むのと同等の恐怖があるだろう
だが、ゼロはそれを恐れることなく、前へと歩み寄った

「では・・・始めぇい!!!」

「っ!!!」

教官の声と共に始まった模擬戦・・・
ゼロは、声が聞こえた瞬間にはすでに動いており、教官との距離を詰めた

「がーっはっはっは!!お前とこうやって模擬戦をするのも久しぶりだなァ!!」

そう言いながら、太い腕をこちらに向ける教官
その剛腕から放たれる一撃は、リオレウスでさえも怯む一撃・・・
それを避けて、教官の懐にまで乗りこまねばならぬのだ

「そうです・・・・ね!!」

教官の放ったパンチが、地面に当たり、その周りには衝撃波が伝わり、ゴウッ!!と言う大きな音を立てて地面が揺れた
なんという力強い一撃・・・!!
だが、ゼロはそれに臆することなく向かった

「うぉおおおおおおおお!!」

それはあっという間の出来事だった
教官の攻撃が地面に当たった瞬間、ゼロは教官の懐に滑り込み、腰にあった紐を獲り、そのまま教官を抜き去ったのだ

この訓練で試すのは・・・勇気。

勿論、教官が手加減をしているのは知っていた。
それと同時に、教官は一回しか攻撃しない事も知っていて、ゼロは教官の懐にあった紐を獲ったのだ
訓練生からしてみれば、とても勇気のいる物だ・・・

だが、ゼロのように歴戦の戦いを勝利してきた猛者には、アトラクションのようにスイスイ行えるのだ

ゼロは奪った紐を静かに握りしめ、教官の方へと歩み寄った

「・・・・奪い取ってやりましたよ」

「・・・やはり、お前は俺の教えてきた中で、一番の男だな・・・」

そう呟き、ゼロは握手を求めるように教官に紐と手を差し出した
教官が差し出した手を強く握りしめ、紐を渡し、ゼロは言った

「・・・・やはり、教官は教官ですね・・・」

ゼロの呟きは・・・風に運ばれ、どこかへ消えたとか・・・
この声を、しっかり教官は聞いていた・・・

「おう!俺は、いつまでも俺のままだ!!」

そういい、ゼロの背中をバンバンと叩く教官。
その顔はとても嬉しそうで、大声で笑っているその姿を見ると、不思議と気分が安らいだ・・・


やはり、見た目は変わっても、心までは変わっていない事を知る事が出来たゼロは、少し微笑みながら空を見上げた

「・・・・変わらないな・・・」

ここから見上げる空も・・・変わらない・・・
そして、教官も・・・レイヴンも・・・レンカも・・・ソフィアも・・・
やはり、何も変わっていなかった。

変わったのは・・・恐らく自分だけ・・・

だが、不思議と孤独感は無かった
それは・・・信じる仲間たちが居るから・・・

「・・・・ありがとう。」

そう呟き、レンカ達の集まる場所へ足を運んだ・・・
・・・はい。今回は短めのお話にしました

いや~・・・前回のアレ、何気に好評でしたね・・・

いや、まさかソフィアファンが居るとは思いませんでした・・・
自分的にレンカの方が好きなので、なんとも言えない心境ですね・・・

沢山の感想をありがとうございます!!

不定期更新ですが、見てくれると嬉しいです!!

では、次回!!


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