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9。 園長の行方
 まりあが転校してきてから数日が過ぎようとしていた。



「では教科書32ページを開いてください」



カリカリカリカリ。



「で、ここがこうであるからして。」


まりあ『……………。』


「つまりここをここに代入すれば。」



カリカリカリカリ。



まりあ『ここは特進クラスか。偏差値70の学校か。』


ぼそぼそ。
シイナ『いったいどうしたの?まりあ。』


まりあ『どうしたもこう…』


ぼそぼそ。
シイナ『授業終わったら聞いてあげるから。今はいい子にしてなさい。』





まりあ『私何キャラなんだよ!!!』





キーンコーンカーンコーン。



まりあ『あ、今日は普通にチャイム鳴った。』


 授業が終わりシイナは教科書などを片付けると、後ろの席のまりあへ体を向ける。と、同時に2人のもとへカエデもやって来た。


シイナ『まりあ、どうしたの?父さんに話してみなさい。』

まりあ『ちょっとやめてよ。あんた飽くまでも私の恋人なんだから。』

カエデ『授業中何こそこそしゃべってたのよ。』

シイナ『いやまりあは普通にしゃべってたよ。最後は!マークもつけてたし。』

まりあ『もう…何よ!この学校は!特進クラスでも、特別偏差値高い学校でもないのにカリッカリッカリッカリッうるさいこと!授業中しゃべってた私が可哀相な人みたいじゃない!!』

シイナ『………………。』

カエデ『………………。』



まりあ『実際に可哀相な人を見るような目で見るなぁぁぁ!!!』



シイナ『…だってここ学校だから。』


まりあ『ふんっ。こう見えても私IQ180なんだから!金田一一と同じなんだから!』

シイナ『……………。』

カエデ『……………。』



まりあ『私はかわいそうな人間じゃないっっっ!!!』





「もう桜散っちゃうね…。」





まりあ『それだっっっ!!!』



 まりあはシイナとカエデを連れてどこかへ向かっているようだ。

まりあ『園長室どこ?』

カエデ『いったい何する気?』

まりあ『午後の授業はお花見にしてもらうの。せっかく校庭に桜の木がいっぱいあるのよ。これじゃ歌唱力を買われてモーニング娘。に入った保田圭の加入後の活躍じゃない。』


 シイナは足を止め、ふと考える。


シイナ『ああ。……“もったいない”って事か。』



 まりあは園長室のドアをノックすると勝手に開けた。

まりあ『午後の授業、お花見にしてください。』

カエデ『挨拶より先に本題なんだ。』

 しかし園長室はもぬけの殻だった。

まりあ『あのデブいねえのかよ!!』

カエデ『っていうかあんた初日とキャラ変わってない?』

まりあ『園長先生、いませんねえ。』

シイナ『どこか出かけたのかな。』

まりあ『職員室に行ってみましょう。隣ですけど。』



 まりあは(ノック無しで)職員室のドアを開けた。

まりあ『園長先生はどこですか?』

カエデ『口調は変わったけどやっぱりストレートなんだ。』





「園長先生?さっきまで園長室でAKB48のスカートひらりを歌ってたんだけど、何か思い立ったようにどこかへ出かけたわよ。」





まりあ『わかりました。ありがとうございます。』

シイナ『……スカートひらり……。』

カエデ『失礼します。』

シイナ『……スカートひらり………。』





カエデ『まだ外にいるかもね。』

シイナ『よしっ。行ってみよう。』

まりあ『………私主役なんですが。』



 職員用の出入り口に向かうとちょうど用務員が掃除をしていた。

まりあ『あっ!用務員のおっさ…おじさんがいます!聞いてみましょう。』


 まりあが用務員に話しかける。

まりあ『すみません。今アンケートをとっているんですが、あるあるに次いではなまるも怪しいんじゃないかと』

シイナ『園長先生見ませんでしたか?』

「園長先生かい?そういえば近所のスーパーに行くとか言って出て行ったなあ。PORTERのサイフ持って。」

まりあ『わかりました。』

シイナ『園長が…PORTER…。』

カエデ『ありがとうございます。』

シイナ『園長が…PORTER…。』



まりあ『近所のスーパーなら歩いて行ける距離ですね。』

シイナ『でももう次の時間始まるよ。』

まりあ『何言ってるんですか!犯人を捕まえるのが先です!!』

シイナ『そうだな!』

カエデ『何の犯人よ。まあ何かしら犯罪、犯しそうな顔してるけど。』



キーンコーンカーンコーン。


−教室−

「…まりあ、シイナ、カエデの3人は…?」

「探さないでくださいって言ってました…。」

「ちょうどいいわね。」





 スーパーに着いた3人は手分けをして園長を探す事に。



シイナ『いないなあ…。そもそもスーパーに何しに。職員の昼食は出前が基本だろ。○○先生は何にしますかぁ?とか』



まりあ『婦人服売り場にもいませんねぇ。』



カエデ『もう学園帰っちゃったのか………あーーーーっっ!!』



「何よ。もう、うるさいわね。」
「バカみたいに大声出しちゃって。」



カエデ『ご、ごめんなさい。』



 カエデはレジで何やら大量に買い物をしている園長を見つけた。

カエデ『みんな呼んでこなきゃっ。』



−3人合流−

カエデ『もうー。何でまりあ男物の下着売り場なんかにいたのよー。探すのに時間かかっちゃったじゃない。』

まりあ『ちょっ。誤解生むような発言やめてください。私はただ』

シイナ『で、園長は?』

カエデ『あっ、そこのレジに………はもういない…。』



 まだ外にいるかもしれないということで3人は外に出て辺りを見回す。


まりあ『いませんね…。もう学園に向かってしまったのでしょうか。』

カエデ『私レジのおばはんに何か聞いてないか聞いてくる。』

まりあ『今“聞く”が2回でてきた。』



カエデ『すみません。さっき安そうなスーツ着たデブでハゲのおっさん来たの覚えてます?』

「今“きた”が2回出てきたね。来たよ。あのおっさん、やっぱり犯罪者なの…?どうもね怪しいと思ったのよ…。」

カエデ『で、何か話などは?』

「あれね、お菓子を大量に買って行ったんだけど、ジュースを買うの忘れたらしくて」

カエデ『(お菓子…?)じゃあ、まだ店内に!?』

「ううん。近くに安い酒屋さんあるから教えてあげたわ。ジュースも取り扱ってるし。」

カエデ『……何で自分の店勧めないんですか…。』

「あたし安い時給で働いてるただのパートだもん。」

カエデ『……ありがとうございます。』





まりあ『あ、カエデさん。どうでした?』

カエデ『何か、近くの酒屋さんに行ったみたい。』

まりあ『…ミカワヤさん…?』

シイナ『行ってみよっか。』






−酒屋−

シイナ『すみませーん。』

「はいはい。何だい。」

まりあ『…サブちゃん…?』

シイナ『あのもしかしてちょっと前に、安そうなスーツ着たどことなくちょっと気持ち悪いデブでハゲのおっさん来ませんでした?』

「おお。来てった!来てった!…何だい?やっぱりあのおっさん犯罪者なのかい…?」

まりあ『ウキエさんとはうまく』

シイナ『それで…何か言ってませんでしたか?』

「まあウチでジュースをたくさん買ってって」

カエデ(どんだけ一人で持ってんだよ。)

「何だっけな?ロジャーラビットだか、シード権なんかがほしいとか言ってたからとりあえず近くのホームセンター案内してやったよ。」

まりあ『いったい何のシード権……。』

シイナ『へぇー。シード権とかロジャーラビットってホームセンターで買えるんだ。』

カエデ『買えないと思うよ。』



まりあ『とりあえず事件の真相を探るべく、ホームセンターへ向かいましょう!!』





−ホームセンター−

カエデ『まりあ、いた?』

まりあ『いえ、あっちにはいませんでした。あっ、シイナさん。』

シイナ『こっちにもいなかったよ。』

まりあ『……そもそもここには何を買いにきたのでしょうか。』

カエデ『スーパーではお菓子を大量に買ってたらしいよ。』

シイナ『お菓子にジュース…。ロジャーラビット、シード権。』



「あっ、これさっきのハゲデブの犯罪者みたいなおっさんレシート忘れてっちゃった。」



まりあ『…えっ!!すみません!その犯罪者、いえおじさんは何か言ってましたか?』

「……え?そうね…そういえば重くてしょうがないからタクシー呼んで帰るって言ってましたよ。」


シイナ『まさか経費で落とすつもりじゃ……。』


カエデ『……学園帰ろっか。』

まりあ『…そうですね。ありがとうございました。』

「あっ、ちょっとちょっと。」

まりあ『はい?』

「あなたあのおじさんの知り合いならこのレシート届けてもらってもいいかな…?」

まりあ『あっ、はい。かまいませんが。』



 まりあはレシートを受け取りポケットに入れようとした時、ふとレシートの内容が目に入った。






まりあ『………あっ………。』





シイナ『んっ?何か言った?まりあ。』

まりあ『……ううん。何でもない。早く学園に帰ろっっ。シイナ。カエデ。』

カエデ『元に戻った。』





 学園に到着すると3人は園長室へと向かう。






「あっ、園長先生お戻りになったんですか。………何ですか?その荷物は…?」

「あっいや、これはだな。」

「そういえばさっき2年C組のまりあエリザベスたちが園長先生の事をお探ししていましたよ。では、私はこれで。」

「…まりあくんが。」


 その時だった。



まりあ『失礼します。』



「おぉ。まりあくん。」


 そう言うと園長は荷物を足元に隠した。



まりあ『ありがとうございます。園長先生。』



「…何のことだい…?」

まりあ『私たち、園長先生に用があってずっと後を追ってたんですよ。』


「…そ、そうなのか…。」


まりあ『スーパーでお菓子、酒屋でジュース、ホームセンターで』


シイナ『………?』

カエデ『………?』


まりあ『レジャーシートをこんなに大量にどうなさるおつもりですか?』


 まりあはそう言うとポケットからレシートを取り出した。



シイナ(ロジャーラビット、シード権……ロジャーシード……レジャーシート……!またくだらないことを……。)

カエデ『えっ?つまりどういうことよ?』



まりあ『今買って来たんだから当然これらは学校で使う訳でしょ?レジャーシートは外で使うもの。でもレジャーシートの枚数からいうと教師全員でも多すぎるわ。』


シイナ『……そういうことか。』


カエデ『え?話が見えない。』

まりあ『つまり園長先生は初めから教師、生徒全員でお花見をしようと計画していたの。そういうことですよね?園長先生。』


「…ばれてしまったか…。……ん?…初めからとは?」


まりあ『実は、私たちもお花見を提案しようと園長先生を探してたんです。えへへ。』

「なんだ…。そうだったのか。しかし…やはりお菓子もジュースもまだまだ足らないのだよ……。急がなくては……。」



カエデ『それなら大丈夫です。そういう事ならうちのパパたちに頼みましょう。』



まりあ『え…どういうこと?』

シイナ『カエデの父親がケルビー、カエデのおじさんがコケコーラの共に重役らしいよ。』

まりあ『何の苦労も知らないお嬢様って訳ね。』

シイナ(まりあだって似たようなもんじゃないのか?)


 カエデはどこかに電話をかけている。



カエデ『パパ?私よ、私。……え!?…私って誰だ?オレオレ詐欺じゃねえよっ!!娘の声も知らねえのかっ!!!いい?今すぐ学園にお菓子とジュースをざっと500人分ぐらい持ってきて。急いでね。』



「…カエデくん。生徒の君にこんな事をしてもらうとは…。大変面目ない……。本当にありがとう。お父様にもよろしく伝えておくれ。」



カエデ『いえ、いいんです。パパは私に頼りにしてもらえるのが嬉しいみたいだから。でもいったいどんな風の吹き回しですか?こんな事初めてじゃないですか。』



「い、いや。それは」



「え、園長…!!校庭にヘリコプターが何台も…!!」



カエデ『やっと着いたみたい。遅かったわね。』





まりあ『どんだけ早えーんだよ!!』





「よしっ!じゃあまりあちゃん任せてもいいかい?」

まりあ『もちろんですっ!!』



ピンポンパンポーン。


まりあ『えー迷子のお知らせ』

カエデ『違うでしょ。』





「…一体何だ…?」





まりあ『えー本日は午後の授業を全て廃止にし、校庭でお花見を行います。準備を行いますので全生徒、職員は授業が終わり次第………』

カエデ『………まりあ?』

シイナ『好きなようにしちゃいなよ。まりあ。何かあったらオレらも連帯責任だ!なあカエデ。』

カエデ『えっ?』



まりあ『………だよねっ!!シイナ、カエデありがとう!…みんな…!今すぐ校庭に集まれぇーーーっっ!!!』



カエデ『もう…。』






「マジでーーー!?」
「やったぁぁぁー!!」


「春木先生いったいこれは?」
「私にも分かりませんが……でも、こういう日もいいんじゃないでしょうか?」
「…そうですね…。」
「行きましょうか。」



わいわい。


がやがや。



 教師、生徒全員が集まり賑やかにお花見の準備を始めている。しかしその中には園長とまりあの姿はない。



シイナ『あれっ、まりあ…?』


−園長室−

まりあ『…園長先生…?どうしたんですか?』

「ああ、まりあくんか…。」

 園長は窓からお花見の準備をしている教師、生徒の様子を眺めていた。


まりあ『…みんな、笑ってますね。』


 まりあが園長の隣に移動する。


「………みんなのこんな笑顔を見るのは初めてかもしれんな……。今朝、ふと何気なく目にした桜がほんとにきれいに感じてなぁ…。まりあちゃんならきっとお花見をしようと言うと思ったんだよ。まさにその通りだったがな。ハハハ。」

まりあ『あは。すみません。』

「いやむしろ有り難いと思っているんだ。私がこう行動できたのも、まりあくん。君のおかげなんだから。」

まりあ『私はただ自分らしく学園生活を謳歌しているだけですよ。』

「…それがとても簡単なようで難しい事、なのかもしれないな……。」

まりあ『もう…!ほらほら!いつもしんみりして終わっちゃってるんだから今日ぐらいは盛り上がったまま終わりますよ!!』

「そうだな。それじゃあ行こうか。」

まりあ『はいっ!』






「あっ、園長先生。どちらにいらしてたんですか?」
「園長先生の一声がなければ始めようにも始められないんですよ?」



シイナ『まりあ、どこ行ってたんだよ?』

まりあ『ちょっとね。』






「いや…花見開始の一言は私じゃなく………2年C組、まりあくん、シイナくん、カエデくん出てきなさい。」





まりあ『えっ?』

シイナ『何でオレたちまで。』

カエデ『さあ…。』






「おーしっ!いけぇ!お前ら!!」
「まりあちゃん、カエデファイト!!」
「シイナっ!しっかり盛り上げろよ!!!」



 3人は拍手喝采の中、前に出てきた。



シイナ『えー今回、園長のイキな計らいでこんな素晴らしいお花見を開くことができました!以降我が学園の伝統行事となる事でしょう。』



「いーぞー!!!シイナ!!」



カエデ『なお、その際は私カエデアイの父から飲食料の提供をさせて頂きます。』





「すごーーーいっ!!カエデ!!」





まりあ『(カエデの方がキャラ変わってんじゃん。)みんなーーっっ!!ちゃんとコップ持ってるっーー!?』





「持ってるよーーーー!!」





まりあ『じゃあみんなで行くよ!!せーのっ!!!』





「カンパーイ!!!!」



まりあ『最終回じゃないよ。』


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