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8。 本音と猫とキズナ
 まりあがこの学園に来てから数日がたとうとしていた。



−休み時間−



まりあ『天気いいねえ。ゼア。』


シイナ(まだその設定生きてたんだ。あれ。でも今日のブレザーにはいないなあ。死んで星になったとか?我ながらうまいな。)


カエデ『ゼアって何?』

まりあ『……ん?何あれ。』

シイナ『ん?どした?』

カエデ『ねえ、ゼアって何?』


 シイナがまりあの指差す方を見てみると校庭の真ん中に何かが落ちているのが見えた。





まりあ『……デスノート……?』





カエデ『シカトすんな!!!』



 3人は(うわばきのまま)落ちている物を確かめに校庭へ出る。


カエデ『ゼアって』

まりあ『うるせえ。』

カエデ『…………。』





まりあ『……子猫……。』





 そこにはダンボールの大きさに似つかわしくない、小さな子猫が座って、力無くニャアニャア鳴いていた。どうやら弱っているようだ。



まりあ『トドメさそっか?』

シイナ『……………!?』

まりあ『漬け物にしよっか?』

シイナ『いや漬け物は野菜だよ。』

カエデ『じゃあ親子丼とか?』

まりあ『親猫捕獲するとこから始めんの?』

カエデ『っていうかあんた魔法使え』

まりあ『シイナ、この猫どうする?』


カエデ(…こいつ………。)


シイナ『そもそもいったい誰がこんなとこに。』



まりあ『……仕方ない。教室連れてくね。』





シイナ『………う、うん。』

カエデ『………そうね。』





 まりあは猫を振り回しながら教室へと走っていく。





シイナ『…もしさ…まりあがいなかったら、オレたち…。』

カエデ『見なかった事にしてたかもね……。』

シイナ『……ああ…。』

カエデ『………何か、彼女から教わる事いっぱいあるみたい。』

シイナ『……そうだな。』






−教室−



まりあ『2人とも遅いよ。』

シイナ『悪い悪い。』

まりあ『ほら、自販機から牛乳買ってきたんだ。』

 そう言うとまりあは一枚の紙をカエデに渡す。

カエデ『え、何よ?』


 その紙には汚い字で“領収書”と書いてあった。


カエデ『なぜ、私に渡す!?ってか100円ぐらい自分で出せよ!!!』


 まりあはバッグからガラスのコップを取り出すと紙パックの牛乳を注ぎ始めた。





「ガラスのコップ持ち歩いてるんだ。(でも何でコップ?)」





 まりあは牛乳を注ぎ終わるとおもむろに猫の頭をコップに突っ込む。





「ギャアアアアアアアア!!!!」






カエデ『あんた何やってんの…?』


まりあ『へっ?違うの?』


 猫は最初こそじたばたしていたが今は動く気配すら見せない。


シイナ『もう、まりあはそそっかしいなあ。』

カエデ『…そそっかしいっていうレベルか…?確信犯だろ…。』

まりあ『…い、いや…何か水圧とかで牛乳がスムーズに中に入っていくんじゃないかと思って………。…で、でんじろうが言ってたの!!』


 シイナは猫をコップから出すと躊躇う事もせずに人口呼吸を始める。






まりあ『……………………!?!?!?』






 しばらく行うと猫は口から牛乳をピューと出して息を吹き返した。


「ミ、ミャア。」



シイナ『…ふう。まりあ、もうこんなことしちゃだめだぞ!』


まりあ『…………。』



 まりあはシカトしている。


シイナ『まりあ?』

まりあ『ふんっ。』

シイナ『…何怒ってんだよ?』

まりあ『別に怒っていませんが。』





カエデ『ねえ、ゼアって』

まりあ『うるへー。』





キーンコーンカーン。


まりあ『一個足んないし。』


シイナ『ほら、授業始まるよ。前みたいにオレ一人だけ怒られるの嫌だからな。』

まりあ『…懐かしいね。私がこの学校に初めて』

シイナ『急げっちゅうにっ!!!』



ガラッ。


「ほらほら!授業始めますよ!早く席について。」



「で…がこうして…」



「“パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない”マリーがこう言うので私はこう言いました。“半分よこしなさいよ(美川風)”」






ぼそぼそ。
「で、結局さっきの猫誰がどうしたの?」

ぼそぼそ。
「私が最後に見たのはまりあちゃんが猫を無理矢理」

ぼそぼそ。
「…何か怖いからもういい…。」





 その時だった。



「ミャア。」



 まりあのペンケース(無印のプラスチック)の中から籠もった猫の鳴き声が聞こえる。






「ひぃぃぃぃ。どうやってあんな薄っぺらい箱の中にぃぃぃ。」






「ん?誰ですか?この教室に猫を連れてきている愚か者は。」



(愚か者……。)



まりあ『おニャン子クラブか猫ひろしじゃないですか?』



(猫ひろし……。)





まりあ『まあ、おニャン子クラブと言っても、残念ながら平成生まれの私たちは世代が違うので全然分かりませんが。国生さゆりが工藤静香に靴隠されたりとか、解散コンサートで中に入れなかったファンが警備員を押し破って入り口を突破したりだとか、奥田美香、榎田道子、吉野佳代子、友田麻美子、佐藤真由美らがわずか結成1ヶ月足らずで喫煙問題で解雇されたとか全然分かりませんが。』



「何でそこまで知ってんのよ。はっ!!あんたさては秋元康ね!あずきちゃんの原作の!」






まりあ『おまえバカか。』

シイナ『しっ。まりあ。』



「授業を続けます。えー満里奈は…いえマリーは、いったい名倉とはどこの名字なのでしょうか。」





ぼそぼそ。
シイナ『すごいなまりあ。』

まりあ『ふんっ。』



シイナ(…まりあ……。)






カーン。


「のど自慢か!」


「では今日の授業はここまでです。」



 授業が終わると同時にまりあは子猫を持って急いでどこかへ向かう。






「あっ!!やっぱりアイツ猫隠してたな!!!」






シイナ『まりあ…?』



 シイナとカエデもまりあの後を追う。


カエデ『まりあ、どこ行くのよ…!』


まりあ『調理室…。』


シイナ『えっ…何でまた…。』





まりあ『殺してあげるの。』





シイナ『はっ?何バカな事言ってんだよ!おい!まりあ!!』



 シイナはまりあの腕をつかみ無理矢理、制止させる。





まりあ『何よ…!元はといえば私が見つけて、私が救った命でしょ…!?私がどうしようと勝手じゃない…!!口出ししないで!!』





シイナ『……まりあ…。』





カエデ(……実質救ったのはシイナじゃ………。)





まりあ『………どうせ…あんたたちだったら見て見ぬフリでもしてたんじゃないの………!!』





シイナ『…………………。』

(……まりあはちゃんと見抜いている……。)

カエデ『…………………。』






まりあ『……だから…、あんな所で不憫な思いをさせるぐらいなら、私がこの手で殺してあげる……!!』






シイナ『…………まりあが、そんなこと言うなよ………。子猫…怖がってるじゃんか……。』



 子猫はちゃんと理解しているのだろう。まりあの手の中で身を震わせていた。






カエデ『…ごめん……。
まりあ。確かに…今までの私たちは、面倒な事、不毛な事から避けて生きてきた…。だからまりあがいなかったら、私たちはまりあの言った通りに行動していた…。でも……現実は違うじゃない…。私たちはまりあに出会った……!!私は偶然じゃなくて必然だと思ってる…!!………まりあに教えられた事がこの数日間だけでもたくさんあるの!


…だから…まりあがそんなこと言わないで……。
何でも、大丈夫って言って笑ってよ……!!


…でも……どうしても…まりあがその子猫を殺すっていうなら…私が育てる……!!』



まりあ『……ううん……!…カエデがそこまで言うんなら…私が育てる……!!』



シイナ『…いや…オレが………!!』





まりあ、カエデ『どうぞどうぞ。』





シイナ『………………。』



カエデ『引き取り手見つかってよかったね。まりあ。』


まりあ『あのマンションペット飼うの禁止だしね。』



シイナ『………………。』



まりあ『では、せめてもの思いで私、まりあエリザベスがこの子猫の名付け親にならせていただきます。』

カエデ『名付け親同好会、会長。よろしくお願いします。』


まりあ『では……シイナ、2号…、2、シイナ……2シイナ…、ニシイ……ニシン……。

この子を“ニシン”と命名致します!!』



 そう言うとまりあはニシンを『おめでとうございます。』の言葉と共にシイナに手渡す。



シイナ『あ、ありがとうございます……。』



 シイナはまだきょとんとしている。


カエデ『あっ、ほら。もう次の授業始まるよ!早く行こっ!』

まりあ『あっ、うん。』


 カエデが教室へと走る。まりあも後を追おうとするが、ぴたりと足を止めシイナの方へと振り返った。





シイナ『よろしくな。ニシン。』

 シイナはそっと声をかけ、ニシンの頭を撫でている。安心しきった表情で彼の腕の中で眠りかけているニシン、そんなニシンを見て嬉しそうな表情を浮かべているシイナ。



 まりあはそんな彼を見て『あの子猫は必ず幸せになれる。』そう考えていた。






まりあ『ねえ、シイナ!!』



シイナ『何?まりあ。』






まりあ『私、シイナとカエデのいい所いっぱい知ってるよ!!!

私も、2人から教わる事たっっっくさんあるの!!!』





シイナ『まりあ…。』



まりあ『ほら!早く教室行くよ!』



シイナ『ああ!』






 2人は走り出した。教室と、まだ見えない明日へ向かって。


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