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20。They notice their mind
シイナ『ただいまー。』


 シイナが帰宅すると末っ子の弟、通称ブタ(しかし決して肥満児ではない。)が待ってましたとでも言うように嬉しそうに駆け寄って来た。


「おかえり。お兄ちゃん。」

シイナ『んー、ただいま。』


 シイナは笑顔で弟の頭を撫でる。

「…ねえ、お兄ちゃん。お願いがあるんだけど…。」


シイナ『お願い?』



−−−−−

−−−





まりあ『今週の日曜日?うん。もちろんいいよ。行こう行こう!』

シイナ『ありがとう、まりあ。弟がどうしても今週の日曜に映画観に行きたいって言い出してさ。何ならまりあ達も誘おうと思って。カエデも大丈夫だろ?』

カエデ『…あっ、ごめん。私、今度の日曜は家族とステーキ食べにちょっとそこまで…。』

まりあ『えーなになに?近くにおいしいお店でもできたの?』

カエデ『んー、それは知らないけど、私はちょっと神戸までね。』

シイナ『……………。』

まりあ『神戸!?神戸って『出身はどこですか?』って聞かれて『兵庫』と言わずに『神戸』と答えるあの神戸!?名古屋も同様の…。』

カエデ『…さ、さあ?私、神戸人じゃないから分からないけど。』

まりあ『ふーん。あっそ。それじゃあシイナ、わざわざ神戸まで出向いて逃げ惑う牛を一思いに惨殺し、それを悪魔のように喰らうバカネモチはほっといてブタくんと3人で映画観に行こっか。』

カエデ『武豊の脳みそ喰うあんたに言われたかないわよ!!!』

まりあ『うるさいわね!おいしかったわよ!!ええ!おいしかったです!!!!』

カエデ『何、逆ギレしてんだよ!!しかも味なんか聞いてねーよ!!』

シイナ『…2人ともなんちゅー話してんだよ。』






「……………。」

「まりあちゃん来てからシイナくんもカエデも本当変わったね。」

「もう別の意味でね。」

「どう考えても、まりあって魔法使いじゃなくて、ただの厄介者だろ…。」

「まあシイナは元々変人だけど。」






まりあ『あっ、シイナ、マヤマさんも誘うんでしょ?』

シイナ『あー、それがさっきメールで聞いたら録画して溜まってる天才てれびくん観なきゃいけないから無理だってさ。』

まりあ『へーそう。………って何であんたは私の知らない所で色んな奴とネットワークで繋がってんのよ!!!』

シイナ『仕方ないじゃんか。いつも向こうから聞いてくるんだから。』

まりあ『何よ!?その言い方は!!!ふんっっっ!!!私は絶対に聞いてあげないから!!』

シイナ『別に構わないよ。』

まりあ『何ですってぇ!?!?』

シイナ『だって別に必要ないだろ。』


まりあ『£※§☆●√◇‡!!!!!!!!』



シイナ『いつも一緒なんだから。』



まりあ『あまーーーい!!!』

カエデ『古いよ、それ。』



まりあ『…んっ……。あれっ?カエデだっていつも一緒じゃん。…おい。こら。こっち見ろよ。』



−日曜日−

 まりあ達、3人の姿はブリティッシュヒルズアヴィニティの屋上にあった。(と言うかカエデに無理やり連れてこられて来た。)



シイナ『まさかこのマンションの屋上に関係者以外立ち入り禁止の楓家専用ヘリポートがあったとは……。』

まりあ『もしかしたらと思ったけどやっぱりこのマンションもカエデの父親がオーナーだったんだね。全部、管理会社とのやり取りだったから気がつかなかったよ。…そういえば私、ここの部屋借りるのに礼金35ヵ月分払わされたんだったわ。』

カエデ『そう。パパがあまりにも暇だったから衝動買いしたの。』

まりあ『暇つぶしにマンション買うなよ。そもそもそんなに金持ちならマンションになんて住んでないで豪邸建てればいいじゃない。』

カエデ『家は今、建設中で、このマンションは仮住まいよ。』

まりあ『……………。さぞかしすごい豪邸なんでしょうね。』

カエデ『……うーん、いや、でも、そんな事ないわよ。ざっと10億弱って所だし。まあ峰には勝ってるけど。』


まりあ『……………。』

シイナ『……………。』


 カエデがヘリコプターに乗り込もうと扉に手をかける。

カエデ『あまりパッとしないけど、おみやげ用に最高級神戸牛霜降りサーロインステーキ肉、用意するから楽しみにしててね。』

まりあ『動物愛護団体に一目置かれてる私がそんなの食べる訳ないでしょー!?』



シイナ(じゃあこの前行ったケンタッキーは……?)



カエデ『じゃあ、いいのね。』

まりあ『食べるわよー!!!』

シイナ『結局食うのかよ。カエデ、オレの分もね。』

カエデ『分かってるよ。じゃあ弟さんと映画楽しんできてね。』

 ヘリコプターに乗り込んだカエデは窓から顔を覗かせ2人に手を振っている。そしてゆっくり離陸して行ったと思えば、3秒とたたない内に、2人からはもう既に見えなくなっていた。


シイナ『いったいどんな速さで進んでいるんだ……。』

まりあ『何で今日はあんなに金持ちぶり全開なのよ。ほんと腹立つ。死ねばいいのに。』

シイナ『………。』



まりあ『しかもこんな朝っぱらから。(現在、午前4時)』



シイナ『…………。』


まりあ『ふぉろぉぉみぃぃ。(あくび)……じゃあもう一眠りしたらシイナの家に行くね。』

シイナ『…………。』

まりあ『…………。』

シイナ『…………。』

まりあ『起きろっっ!!!』

シイナ『あっ、ごめんなさい。』

まりあ『うひょひょ。(←シイナの反応に萌えた。)』



−−−−−

−−−




 自分の部屋へと戻ったまりあはベッドへは入らずにクローゼットを開き、熱心に洋服を選び始めた。その姿はいつものまりあではなく、好きな人とのデートで少しでもかわいい自分を見せたいと思う恋する普通の女の子そのものだった。

 これだ!と思い手に取ったのはCanCamで蛯原友里が着ていたワンピースと“似ている”ワンピース。普段制服以外では、いつもジャージ(新事実)というまりあにとって、ワンピースというのは自分にとってもみんなにとっても大冒険だ。

 着替え終わるとふと鏡に目が行った。髪も普段は何もせず、いつもマシェリの鈴木えみのようにわざわざ風のある所へ行って自慢の黒いロングヘアーをなびかせていたが、今日はせっかくだからという事でアイロンで緩く巻いてみた。今日のまりあは気合いが入っている。気合いが入っている…。気合いが…。

(…あれ?…)


 まりあ自身もそれに気づいた時、自分の中で“ある疑問”が生まれた。



(………このオシャレって…誰のため………?)


(………………。)


(………私…本当に…シイナの事が………)



(……好きなんだ……)



−椎名家−


まりあ『ピンポーン、ピンポーン。』

 シイナが窓を開け顔を覗かせる。

シイナ『何で口で言ってんの?入ってきていいよ。……ってどうしたの?そのかっこ…。』

まりあ『え…へ、変かな…?(←お決まりのセリフ)』

シイナ『ううん。まりあ背が高いからそうゆうの着ると似合うよね。』

まりあ『やだっ。私が身長172もある事言っちゃだめだよー!(新事実)』

シイナ『(この巨女が。)そんなにあったんだ。文章だけだから気づかなかったよ。それじゃオレとあんま変わんないじゃんか。』

まりあ『蛯原友里になんか負けないもん。』

シイナ『ついに上行っちゃったよ。』

まりあ『それに最近、人気に陰りが見えるしね。』

シイナ『……………。(ノーコメント)』

 まりあは椎名家の玄関先でポージングしている。

シイナ『弟も準備できたから行こうか。』


−−−−−

−−−





まりあ『ブタくんは映画何が観たいのー?クレヨンしんちゃん?ドラえもん?いったいいつまでリメイクすれば気が済むんだろうねえ。来年こそは新作やれよって感じだよねえ。』

「僕はねぇ“蒼き狼 地果て海尽きるまで”が観たいの。」

まりあ『……………。』

「菊川怜うまそー。」

まりあ『ほんと兄の顔が見たいわ。』

シイナ『オレだよ。』


−−−−−

−−−



−数時間後−


まりあ『うーん。結局、何を観たのかはあえて言わないけどあの映画は盛り上がりにかけたわね。主演の俳優も棒読みが目立ったし。』

シイナ『(ずっと寝てたくせに。)まあ何を観たのかは言わないけど、弟も観たい映画が観れて喜んでるよ。なっ?』

「菊川怜、何か華が無くなった。」

まりあ『まあ何を観たのかはあえて言わないけど。』

シイナ『まあ最初に言ったけどね。』

まりあ『ブタくんは次、どこ行きたい?』

「イタリア。」

まりあ『欧米かっ!!』

シイナ『違うよ。』


 2人はシイナの弟に手を取られ色んな所へ連れ回された。ゲームセンターでエアホッケーをしたり、プリクラを撮ったり、マクドナルドでハンバーガーを食べたりなど。そして現在、陽も沈みかけた今、帰路につく。疲れ果てた弟はシイナの背中で寝息を立てていた。そんな2人をまりあは優しい眼差しで眺めている。


まりあ『シイナは本当に弟想いないいお兄さんだよね。』

シイナ『そんな事ないよ。』


 数秒の沈黙を破りシイナが口を開く。


シイナ『…びっくりしたよ。』

まりあ『……え?何が…?』

シイナ『…今日、窓開けて最初にまりあ見た時。』

まりあ『……あ…あはは……な、何か…柄にもなくこんな格好しちゃったけど……やっぱり変だよね……。私はジャージの方が似合うよね……。』

シイナ『そんな事ないよ。』

まりあ『…ほんとに?』


シイナ『かわいすぎ。』


 まりあは顔を赤らめ俯いてしまった。



シイナ『でもオレの前だけがいいかな。』



まりあ『えっ?何?ごめん。聞こえなかった。』

シイナ『…何でもないよ。』

まりあ『えー、何よ。言いなさいよー。』

シイナ『何でもない言うとろうが。』

まりあ『何よ。そのぎこちない関西弁は。』



 誕生日のサプライズパーティーの時から、シイナの中である魔法がゆっくりとかかり始めていた。新しい感情。それが何なのかはシイナ自身も分かりかけている。でも当分、彼は気づこうとはしないだろう。気づかなければならない、その時まで。






まりあ『あれ?カエデだ。』

カエデ『おおー。いたいた。ただいまー!』

シイナ『何だよ。もう帰ってたのか。どうだった神戸は?』

カエデ『うん。よかったよ。』

まりあ『で、ステーキ肉は?』


カエデ『うん。メール便で送ったから近々届くよ。楽しみにしててね。』


まりあ『メール便!?』

シイナ『生肉を……。』

カエデ『送料安いし。』

まりあ『持って帰ってこいよ!!!』


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