14。 お久しぶりです。楓藍さん
「早く帰れ!バーカ!この落ちこぼれどもが!!」
「…すごい言いよう。」
「…彼氏にふられたからって俺らに当たるなよな。」
「ふられてねえよ!!こっちからふってやったんだ!!!こんちくしょい!!!うわーん。」
春木は泣きながら教室を飛び出していった。
シイナ『日本は平和だなあ。』
まりあ『さあ!ついにこの時間がやって参りました!カエデアイさん、準備はよろしいですか?』
カエデ『えっ。何の事?』
まりあ『またまた。とぼけてくれちゃって。』
カエデ『……やっぱり、本当に行くの?』
シイナ『じゃあやめとく?』
カエデ『……行く……。』
まりあ『……位置について』
カエデ『えっ、何よ!?』
まりあ『よーい…』
カエデ『えー!?ちょっと!!スタンディング?クラウチング?クラウチングだとパンツ見えちゃうんだけど!』
まりあ『ドン!!』
カエデ『もー!!』
かけ声とともにカエデは走りだした。
シイナ『ハハハ!ほら!まりあも行くぞ!』
まりあ『はーい!!』
まりあとシイナも教室を飛び出して行く。
「ふーん。カエデあの部長と進展あったんだ。よかったね。」
「あの性格じゃ一生ムリだと思ったけどね。」
「あの2人のバックアップがあったからでしょ。」
「でも最近学校の雰囲気変わったと思わない?」
「うんうん。何か前より明るくなったよね。」
「これもやっぱり」
「“魔法”かもね。」
−文芸部部室−
カエデ『あー、ねえドキドキしてきた。どうしよう。こんな時、土左衛門がいてくれたらなあ。』
シイナ『…水死体…。』
まりあ『ねえ開かないよ。』
シイナ『まーたまりあは何も考えないで勝手に扉、開けようとして。…ってまた開かないの?また開かないんだ?へーそう?』
カエデ『…い、いないのかな?…』
まりあ『…何か聞こえる。』
シイナ、カエデ『えっ?』
ぴとっ。
3人そろって扉に耳をくっつける。
カエデ『……声……だよね。』
まりあ『やっぱり中にいるんじゃん。文芸部1人しかいないみたいだしマヤマさんでしょ。…………えっ?1人で何しゃべってんの?』
シイナ『防音対策がされてるからこもってよく聞こえないなあ…。』
まりあ『なぜ文芸部に防音対策をする必要がある。』
カエデ『ここの部室、前はダイナマイト部が使ってたのよ。だから。』
まりあ『だからって…。…そもそもダイナマイト部って何だよ………。それに“防音”云々の話じゃないじゃん。』
その時だった。
マヤマ『来るな!!!』
まりあ『……………?』
カエデ『………え…。』
シイナ『………。』
その場が一瞬静まり返った。
まりあ『………今“来るな”って言ったよね?』
カエデ『……………。』
シイナ『……あのマヤマン。オレたちです。2年C組のシイナとまりあです。』
カエデ(……マヤマン……?)
シイナ『あと…』
シイナはカエデに一度、目を向ける。
まりあ『…………。』
シイナ『“もう1人”連れてきました。』
マヤマ『うるさい!!!僕はもうダメなんだ!!!もうみんなどうぞお帰りください!!!』
まりあ『ちょっと!マヤマさん!聞こえますか!?一体何があったんですか!?聞こえてたらキャルンキャルンて言ってください!ねえ!キャルンキャルンて!』
マヤマ『ああ!!!もう僕はお終いなんだ……。違う!!獅子舞じゃない!!!あのつまらない芸人みたいに言うな!!なんだ!!あの腹の字は!!?』
まりあ『キャルンキャルンて言えーー!!!』
シイナ『キャルンキャルンはもういいから。』
カエデ『…………。』
カエデは動揺を隠せない様子でただその場に立ち尽くしている。
シイナ『……カエデ、大丈夫か?』
カエデ『キャルンキャルンはもうどうでもいいわよ!!』
シイナ『もうキャルンキャルンの話はしてないだろ!?』
まりあ『キャルンキャルンて言えーー!!!ちくしょー!!!』
−
−−
−−−
−−−−
−−−−−
「ねえ!大変大変!!何だか文芸部の部室がヤバいらしいよ。」
「え!?どんな?」
「なんかねキャルンキャルンが出たらしいよ?」
「…キャルンキャルンて何よ?」
「何か聞いた話だとこの学校の文芸部に昔からいる、妖怪と妖精の混血のヨウカイセイっていう生き物らしくて、それが今ついに出たんだって!文芸部の部長が喰べられかけてるみたい!!あの人細いから脂はそんな、のってないかもね。試食できるかもしれないからとにかく行ってみようよ!!」
「えっ。生?焼くんでしょ?あたしレアがいい!!」
−−−−−
−−−−
−−−
−−
−
マヤマ『うぎゃあ!!僕は、僕はもう助からないんだー!!!あー!!僕がアンパンマンならぁ!!アンパンマンなら頭を変えるだけで心身一転リフレッシュできるのにー!!!どうして僕の頭はアンパンじゃないんだーー!!!うわーん!!!せめてカレーパンなら!!!ああ!!でもやっぱりこしあんがいいよーー!!!粒あんこわいよー!!!』
まりあ『やべーよコイツ。』
シイナ『確かに。』
カエデ『………。』←フォローできないでいる。
そこへまりあのクラスメートたちが駆けつけてきた。
「エリザベス!カエデ!大丈夫!?」
まりあ『名字で呼ばないで。』
シイナ『名字じゃないじゃんか。』
「キャロラインが出たんだって?」
シイナ『…キャロライン?』
「私はキャサリン=ゼタ=ジョーンズが映画のJAWSを観てジョークを言ってスピルバーグと殴り合いのケンカになったって聞いたけど。」
マヤマ『……もう死んでやるんだ…。』
カエデ『………えっ…………。』
防音対策がされている部室の中でマヤマが呟くように発した言葉。本当は聞こえるはずもないのに、その上周りが騒がしい中、それはたった1人カエデの耳にだけ届いた。
「おい、シイナ!叶恭子の宝石を盗んだ犯人が本当は文芸部の部長だったってのは本当かよ!?そもそもなんだ!?あの乳は!?肉まん何個分なんだよ!!」
シイナ『…いったいどうなったらそうなるんだ。』
次々と生徒たちが集まってくる。
ザワザワ。
「ねえ、まりあ!!いったいどういう事よ!?」
カエデ『……………。』
ザワザワ。
「おいシイナ!はっきり言えよ!!」
カエデ『…………。』
「真山大丈夫かよ。おいそこの2年!なんか知らねーのか!?」
ザワザワ。
「あたくしの質問にお答えになって!!」
カエデ『……。』
「真山は無事なのか?」
ザワザワ。
「ねえ!!答えなさいよ!!!矢田さんは今何してるの!!?」
カエデ『プチっ。』←キレた。
まりあ『押さないでくださぁーい。整理券配りますからぁー。ちょっとそこぉ!片足はみ出てるわよぉ!え?どんなに忙しくても猫の手を借りる事はできない?猫の手は手じゃなくて前足だから?あーなるほど。って知っとるわ!!!』
カエデ『うるっっっっっさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいい!!!!!!!!』
その頃部室、室内では
マヤマ(何だかやけに外が騒がしいな。)
テレビの電源をオフにするマヤマ。
マヤマ(地デジ内蔵のHDD&DVDレコーダーで録画しておいた“中学生日記”を大音量で見てたから気づかなかったけど一体何の騒ぎだ?)
扉の鍵をはずそうと手をかけた時だった。
カエデ『マヤマ!!!』
マヤマ『…………!』
そこにいるまりあ、シイナをはじめとする何十人もの生徒が一斉にカエデに注目をする。
カエデ『………悩みがあるならとことん悩めばいいじゃない………!!』
マヤマ『…………。』
カエデ『…悪いほうに考えるのも良しとしましょう…。何もかも嫌になり現実逃避にはしるのも良しとしましょう…。つらくてつらくて涙がこぼれ落ちる日も良しとしましょう…。自分以外の誰も信じられない日があったとしても、それも良しとしましょう…。死ぬこと以外なら、全部全部良しとしましょう……!!』
まりあ(………カエデ………。)
カエデ『……でも…結局は…どんなマイナスな考えも…
マイナスとマイナスで必ずプラスになるんです……。
…どうせ、行き着く先が同じなら最初からプラスを目指しましょうよ…。
余計な回り道が嫌いなマヤマさんにはそっちの方が向いていると……私は思いますよ……?』
マヤマ『………。』
カエデが深く息を吸い込む。
カエデ『真山翔!!!しっかりしろ!!!立てーー!!!立つんだ!!!ショー!!!』
シイナ『…ジョー…?』
鍵が外され扉が開く。そこには騒ぎを聞きつけ集まってきた何十人もの生徒がいた。しかしマヤマの目に映っているのは何十人もいる生徒の中のたった1人だけだった。それは人目をはばからず他人のために大声を出して説教をし、体を震わせながらも凛とした強さを感じさせる瞳を持つ女の子だった。
一体、彼女は…………。
マヤマがカエデの元へ一歩一歩、歩いて行く。
今、マヤマの頭の中では、あの日の後ろ姿のカエデアイが去り際の途中で立ち止まった。そして自分の方へと振り返ると太陽にも負けないぐらいのきらっきらに明るい笑顔を見せる。そう。顔は
マヤマ『……君が……』
カエデはしっかりとマヤマの目を見据えて答える。
カエデ『初めまして。楓藍です。』
マヤマが微笑みながら口を開いた。
マヤマ『改めて、真山翔です。……………お久しぶりです。楓藍さん。』
驚いた表情を見せるカエデにマヤマが手を差し出す。今度ばかりは恥ずかしそうに顔を赤らめながらもカエデは彼と握手を交わした。
こうして正式に2人は出会った。あまりにも時間がかかりすぎた出会い。これまでのようにゆっくりと魔法にかかっていくのか。それとも既に2人は魔法にかかっているのか。それは誰も知らない。
まりあ『どうでもいいけどいつまで握手してんのよ。』
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。