11。 シイナカエデの事情
「では今日は連絡事項は特にないのでここまでです。まあ気をつけて帰ればいいじゃない?心配なんてしてないんだからねっ!」
「うわー、ツンデレだ。ツンデレ。」
「春木、最近彼氏できたらしいよ。彼氏の好みかもね。」
シイナ『今日も疲れたなぁ。』
まりあ『ねえシイナ。今日、遊びに行ってもいい?ニシンにも会いたいしさ。』
シイナ『うん。もちろん。』
まりあ『ほら!カエデ、帰るよー。』
カエデ『ちょっと待ってよ。』
まりあ『早くしろよ!コノヤロォ!!おまえは亀か!!』
カエデ『ちょっ。何でそんな怒んの。』
まりあ『あと帰りにシイナの家に寄るけどカエデも行くでしょ?』
カエデ『えっ…?私もいいの?』
シイナ『何だよ、それ。当たり前じゃん。』
カエデ『あ、うん。ありがとう。』
まりあ『私、最近普通の女子高生になっちゃってるなあ。』
シイナ『何してるの?まりあ行くよ。』
まりあ『は〜いっ!』
カエデ『サーティワンもね。』
まりあ『………………。』
−シイナ家−
カエデ『おじゃまします。隣っていうのは知ってたけど来るのは初めてだね。まりあはもう何回かあるの?』
まりあ『ううん。私もまだ一回だけだよ。おじゃまします。』
カエデ『ああ、あの時ね。おじゃまします。』
まりあ『カエデに最初に会った時、話したよね。おじゃまします。』
シイナ『2人共、何回“おじゃまします”言ってんの。いいから上がりなよ。』
まりあ『今日は豚と中2病の弟はいるの?』
シイナ『んー?リビング覗いてごらん。』
まりあはスキップでリビングに入っていった。
カエデ『……複雑な家庭なの…?』
シイナ『うーん…。客観的に見るとそうなるのかなあ。気づかなかったけど。』
カエデ『あ…そう…。』
まりあ『きゃああ。』
突如聞こえてきたまりあの悲鳴に驚く事なく、シイナとカエデは明日の天気について話しながらトロトロ歩いてリビングに入ってきた。
まりあ『シイナ!大変なの!』
シイナ『どうした?まりあ。』
まりあ『ねえ見て!豚と猫が仲良く遊んでる!』
リビングではシイナの一番下の弟がニシンと遊んでいた。少し離れて中2病の弟もいる。
シイナ『??それがどうかした?』
まりあ『だって犬猿の仲っていうじゃない!豚と猫が仲良くしてるなんて変よー!!』
シイナ『…………まりあ。犬猿ていうのは犬と猿のことだよ。だから豚と猫が仲良くしてても全然不思議じゃないんだ。でも、実際はパンくんとジェームスみたいに仲がいい犬と猿もいるんだけどね。分かったかい?』
まりあ『そうなんだ。さすがシイナ。物知りね。』
カエデは中2病の弟のもとへ挨拶をしに行く。
カエデ『初めまして。お兄ちゃんの友達のカエデです。よろしくね。』
「あ、初めまして。」
カエデ『所で君は、勇者?ドラゴン?それとも魔法使い?』
「…………はい?」
カエデ『何かあったらお姉さんに言いなさい。旅に出るぐらいの資金は用意してあげるから。』
「…………はあ。」
まりあ『あ、そういえば今日はお義母様は?』
シイナ『たぶんラックの散歩でも行ってるんじゃないかな。どっちもいないから。』
まりあ『ラックって、お巡りさんの?』
シイナ『そうだよ。』
「オレちょっと友達と遊んでくるね。(何で兄ちゃんは変な女ばっかり連れてくるんだよ。)」
カエデ『またまたー。経験値を稼ぎに行くんでしょ。このこのー。』
シイナ『行ってらっしゃい。あんまり遅くならないようにな。』
「ねーねー。僕ね、お姉ちゃんに見せたい絵があるんだ。」
まりあ『へぇ。絵もかけるんだ。器用だね。
(…ん…?………あっ…!!ここで私と豚が出て行ったら、シイナとカエデ2人きり…………いい機会だから何をしゃべるのか拝聴させていただこうじゃない。)
……じゃあ、お姉ちゃんを豚くんのお部屋に連れてってくれるかな?別にスキーにも旅館にも連れてく必要はないけどね。』
「うん!行こう!」
まりあ『レッツゴー!アハ!』
まりあと豚は軽くステップを踏みながらリビングを出て行った。
カエデ『…………。』
数分後、まりあは何やらごそごそしている。物影に隠れて2人の会話を聞くつもりだ。そして傍らには封がされた少し大きめのダンボールが置いてある。
カエデ『…私たちさ、まりあと仲良くなるまではあんまりしゃべった事なかったよね。』
シイナ『…まあ、そうだな。』
カエデ『何?私たちって気まずいのかな?』
シイナ『え?そんな事ないじゃん。』
カエデ『だって…今日の休み時間だってまりあ一人でどっか行ってたし………』
シイナ『今“だって”2回でたね。』
カエデ『んな事どうだっていいんだよ!!!……私は……今までこんな、ちゃんとした友達付き合いなんてした事なかった…。どこか上辺だけの付き合いで、毎日がつまらなくて色々と自分をごまかしてきた。でも、今は楽しいの。すっごい楽しいの。何でかって考えたら、簡単なんだよね。
2人がいるからなんだよ…。
せっかくまりあとも出会えたし、それがきっかけでシイナとも仲良くなって……………でも………それは3人の時で…………。
ねえシイナ……
私はもっと近づきたいよ………。』
シイナ『………オレはまりあをオレらのカスガイだなんて思った事ないけどなー。』
カエデ『…あ……ご、ごめん…なんか私すごい変な事言っちゃったね。気にし』
シイナ『なあカエデ。』
カエデ『………え?』
シイナ『明日また黙って席替えしちゃお。』
カエデ『…シイナ…。』
シイナ『いつ話そうかって思ってたんだけど、ちょっと遅かったみたいだな…。ごめん…。』
カエデ『………へへへ……。ありがとう、シイナ。……でもっ、春木大丈夫かな?』
シイナ『まりあも何も言われてないじゃん。それにバレてもツンデレだから最後は許してくれるでしょ。』
カエデ『だよね。』
シイナ『そういや、まりあまだアイツと遊んでんのかな。』
カエデ『私たちも行ってみようよ。』
2人はリビングを出ると、なぜか廊下で眠りこけているまりあを見つけた。
カエデ『…………これは、一体………?』
シイナ『本当、ほっておけないよな。』
シイナはしゃがんでまりあの頭をそっと撫でる。
カエデ『あれ?それよりも弟どこにもいなくない?……神隠し?新たなジブリの作品とか?それじゃあヒロインは私よね?』
その時、まりあの傍らに置いてあるダンボールがガタッと動いた。それと同時にシイナは、ただただ悩ましい表情を浮かべるのであった。
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